第166回国会 厚生労働委員会 第32号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 まず初めに、本日、野党は委員会を欠席いたしております。国民生活に直結をした労働三法の審議を欠席をする、そのことに対し厳重に抗議をしておきたい、このように思います。

 まず初めに、労働契約法について質問してまいります。

 先般本委員会におきまして審議をされ、成立をいたしました改正パートタイム労働法の審議におきまして、短時間労働者につきまして、通常の労働者、正社員との均衡のとれた処遇を図る、また、その一方で、そうした通常の労働者の労働条件を逆に引き下げることがあってはならないとの議論がございました。これにつきまして、雇用均等・児童家庭局長からは、判例法理によって、合理性のない就業規則の一方的な変更は無効であり、労働契約法においても就業規則の変更が合理的であることが求められる旨の答弁がございました。この労働契約法を見ますと、第八条から十条までの規定に、労働契約の内容の変更に関するルールがございます。

 そこで、まずお尋ねいたしますが、この労働契約法の八条から第十条までの規定によって、使用者が自由自在に、労働者にとって不利益に労働条件の変更を行うことが許されるものではないことがルール化されることになっているのでしょうか、この点についてお伺いをいたします。

○青木政府参考人 労働契約内容の変更に関するルールについては、今お触れになりましたように、労働契約法第八条におきまして、「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。」という合意原則をまず明確に規定しております。

 その上で、就業規則による労働条件変更に関する最高裁判所の判例法理に沿って、第九条において、まず、原則として、使用者が労働者と合意することなく、就業規則の変更により、労働者の不利益に労働契約の内容を変更することはできない旨を規定いたしております。さらに、第十条におきまして、変更後の就業規則が労働者に周知されており、就業規則の変更が合理的なものである場合に、労働契約の内容である労働条件は、変更後の就業規則に定めるところによるものとする旨規定しております。

 このように、労働契約法案は、労働条件の変更に関して、労働者と使用者の合意を原則としつつ、現在の判例法理に沿ったルールとするものでございます。

 また、就業規則による労働条件の変更ができる場合の合理性の判断要素として、「労働者の受ける不利益の程度、」という、個々の労働者にとっての影響でありますとか、あるいは「労働組合等との交渉の状況」という、就業規則の変更に当たっての労使協議の状況を明示いたしております。そういったことなどで労働者の保護に十分配慮したものとなっているというふうに考えております。

○古屋(範)委員 ただいま局長から、労働者の受ける不利益の程度、また労働組合との交渉の状況など、労働者の保護に十分配慮した規定であるとの御説明がございました。

 さて、就業規則の変更に関するルールを定めるに当たりまして、現に企業の労務管理実務においても定着をしていると思われる、最高裁判所の判例法理として確立している就業規則変更法理を参考にすることが考えられます。

 これにつきまして、労働政策審議会の審議の過程におきましても、労働契約法案に盛り込まれる就業規則の変更ルールが最高裁判所の判例法理と同じものなのかどうかという、この議論が大いに行われたと伺っております。

 そこで、この就業規則の変更につきまして、最高裁判所の判例法理はどのようになっているか、また、今回の労働契約法の内容はその判例法理の内容に沿ったものと言えるかどうかをお伺いいたします。

○青木政府参考人 秋北バス事件の最高裁判決では、新たな就業規則の作成または変更によって既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは原則として許されないと解すべきと判示されておりますので、この労働契約法案の第九条では、まず、就業規則によって労働条件を変更する場面における原則として、このことを規定しております。

 その上で、秋北バス事件の最高裁判決では、当該就業規則条項が合理的なものである限り、個々の労働者において、これに同意しないことを理由としてその適用を拒否することは許されないといたしまして、就業規則によって労働条件を変更するためには、就業規則が合理的であることを要件としております。

 就業規則の変更についての合理性の判断基準については、この秋北バス事件最高裁判決では具体的には述べられておりませんけれども、その後、大曲市農業協同組合事件の最高裁判決では、変更の必要性と内容の両面から合理性を判断する枠組みが示されました。

 そして、第四銀行事件の最高裁判決では、秋北バス事件の最高裁判決やこの大曲市農業協同組合事件の最高裁判決において示された判例法理を引用、踏襲した上で、その引用した判例法理における合理性の判断に当たっての具体的な考慮要素を示しております。

 この労働契約法案の第十条では、こうした判例法理に沿って就業規則の変更ルールというものを規定したものでございます。

○古屋(範)委員 この労働契約法第十条の条文を読みますと、「労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況」と、四項目が書かれております。これら四つはすべて満たされなければならない、いわゆる要件ではなく、これらを含めて総合的に就業規則の変更の合理性を判断する、その際に、主に着目すべき考慮要素として挙げられたものである、そのように私は理解をいたしております。

 局長の御説明によりますと、これらは判例法理に沿ったものであるということでございますが、第四銀行事件判決においてはその考慮要素を七つ挙げられていまして、第十条は判例法理に沿ったものとは言えないのではないか、このような意見がございます。

 確かに、事情を知らずにこの条文を見た方は、七つの要素が四つに減ってしまった、他の三つの考慮要素は考慮しなくてもよくなったと誤解してしまうおそれがあるかもしれません。

 そこでお尋ねいたしますが、この第四銀行事件判決で掲げられている七つの考慮要素に相当する事実、労働契約法案第十条に規定する四つの考慮要素の中でどのようにしんしゃくされているのか、お伺いいたします。

○青木政府参考人 確かに、御指摘の第四銀行事件最高裁判決で述べられました合理性を判断する際の考慮要素、これは七つでございますが、この七つの考慮要素の中には内容的にお互い関連し合うものもありますため、立法いたしまして労働契約法第十条を規定するに当たっては、関連するものについて統合して列挙しようということで、十条の四つの考慮要素にまとめたものでございます。

 その、三つが、おっしゃったように、どういうことになっているかということでございますが、「変更後の就業規則の内容の相当性」というものを挙げておりますけれども、これには就業規則の内容面に係る制度変更一般の状況が広く含まれるものでございまして、第四銀行事件の最高裁判決で列挙されている考慮要素であります変更後の就業規則の内容自体の相当性だけではなくて、もう一つ挙げられております代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、またもう一つ、同種事項に関する我が国社会における一般的状況、これも含まれるというふうに思っております。

 それからまた、三つ目でありますけれども、「労働組合等との交渉の状況」というのを挙げておりますけれども、この「労働組合等」には、多数労働組合や過半数代表者のほか、少数労働組合や、労働者で構成される親睦団体等、広く労働者側の意思を代表するものが含まれるものでございます。したがって、第四銀行事件の最高裁判決で列挙されている労働組合等との交渉の経緯のほか、他の労働組合または他の従業員の対応という、もう一つの、七つ目の要素も含まれるものでございます。

 このように、第四銀行事件最高裁判決で示されました七つの考慮要素は、労働契約法案の第十条において掲げました四つの考慮要素にいずれも含まれるものとして規定しているものでございます。個別具体的な事案ごとに、就業規則の変更の合理性を判断する際には、御指摘になりましたように、総合的にこれらの事実が考慮されることになるというふうに考えております。

○古屋(範)委員 ただいまのお答えの中で例示された四つの考慮要素の中でそれぞれ考慮をされていくものである、残りの三つについては考慮されなくなるものではない、判例法理を変更するものではないということでございました。

 この労働契約法が成立した暁に、そうした規定の正しい解釈をぜひ判例などとあわせまして整理をして、一般の労働者また使用者にわかりやすく周知をしていく必要があると考えます。その点を何とぞよろしくお願いを申し上げます。

 次に、労働基準法の一部を改正する法律案について質問してまいります。

 今回の労働基準法の改正法案では、月八十時間を超える時間外労働につきまして、法定割り増し賃金率を五割に引き上げることとなっております。一方、中小企業におきましては、この法定割り増し賃金率の引き上げについて猶予措置が設けられているところでございます。

 長時間労働を抑制していくことはもちろん中小企業においても必要ですが、中小企業については、事業主の負担も考慮しながら、現実的な対策を講じていくことが効果的であろうと思います。このようなことから、公明党としても、昨年四月に公表いたしました少子社会トータルプランにおきまして、長時間労働の見直しを徹底して図ることとあわせまして、この長時間労働の見直しの取り組みを積極的に進める中小企業に対しては、新たな支援策を講ずることによってその負担を軽減することを提言しているところでございます。

 そこでお伺いいたします。今回の法案で、中小企業における長時間労働の見直しにつきまして、中小企業への支援策も含めてどのように取り組んでいかれるのか、お伺いいたします。

○柳澤国務大臣 現在の労働者の置かれた状況を一口に申しますと、非正規労働という方々が三分の一になんなんとする比率を占めるに至った、こういうことがある一方、正規の雇用のもとにある労働者、いわば正社員というべき方々が非常に長時間労働をしておる、その長時間労働のレベルが高どまりをしているということが特徴的に見られるわけでありまして、やはり、労働者の健康あるいはワークライフバランスというようなことの中で、労働者が、家族であるとか子育てであるとか、地域社会への貢献とかあるいは自己啓発とか、こういうようなことにその時間を割くというようなことが実現されなければならない、こういうように考えておるわけでございます。

 そこで、今回の労働基準法の改正におきましては、月八十時間を超える時間外労働については、法定割り増し賃金率を五割に引き上げるということをいたしたわけでございます。

 しかしながら、今委員が御指摘になられますように、経営体力が必ずしも強くない中小企業におきましては、そういうことが行われたからということで、大企業のごとく、業務分担の見直しをするとか新規の雇い入れをするとか、あるいは省力化投資をすぐさま行うとかというような対応をとるのがなかなか難しい、厳しい条件のもとにあります。要するに負担が大きいということになるわけでございますので、そういったことを考慮いたしまして、この五割増しの割り増し賃金率というところにつきましては、中小企業に対してはその適用を猶予するということをさせていただいたところでございます。

 しかし、だからといって、中小企業の方々が長時間労働の抑制をしなくていいということではございません。私どもといたしましては、大臣告示ということで限度基準を設けているわけですが、その大臣告示を改正して、そこで定められた限度基準を超える労働時間については、割り増し賃金率を、基準の二五%よりも、これを超えるようなレベルに引き上げてもらいたい、それからまた、時間外労働そのものをできるだけ短くしてもらいたい、こういうようなことで、労使双方にその二つの面についての努力をしてもらうという努力義務を課しているわけでございます。このようにして、中小企業における労働者につきましてもぜひ時間外労働の抑制を図ってもらいたい、こういうことをお願いしているわけでございます。

 それと同時に、私どもが今やろうとしていることにつきましては、今委員も、公明党さんの方でも考えたということでございますが、時間外労働の削減に積極的に取り組む、そういう中小企業の方に対しては助成金を創設するということを考えているわけでございます。

 こうした総合的な取り組みを通じまして、中小企業におきましても長時間労働抑制の実効を上げてまいりたい、このように考えているところでございます。

○古屋(範)委員 これまでの質疑におきましても、大臣からはワークライフバランスの重要性ということをお述べいただいております。しかしながら、非正規労働者の増加、あるいは正規社員の長時間労働ということで、なかなか現実は進んでいないというふうに考えます。この労働基準法の改正が、真の意味で労働時間の抑制につながっていくことを心から期待するところでございます。

 次に、年次有給休暇の趣旨について伺ってまいります。

 今回の法案では、法定割り増し賃金率の引き上げとともに、もう一つの柱といたしまして、年次有給休暇制度の見直しが盛り込まれております。この年次有給休暇につきまして、労働者の権利として認められているわけでありますが、なかなかその取得が進まないということがしばしば指摘をされるところでございます。せっかく労働者の権利として認められているのに、実際はその取得が進まない。どうにかしてこの年次有給休暇が有効に活用され、働く方々がめり張りのある、そして仕事と生活の調和がとれた働き方ができるようにしていくことが必要であると考えます。

 そこで、まず現行の年次有給休暇の趣旨についてお伺いいたします。そして、今回の法案による、時間単位での年次有給休暇の取得を可能にするというのはどのような趣旨なのか、あわせてお伺いいたします。またさらに、このような制度を導入することによりまして、休養のため日単位で年次有給休暇を請求したが、会社の都合で時間単位に変えられてしまうというようなことがないか、この点についてもお伺いをいたします。

○青木政府参考人 労働基準法における年次有給休暇は、労働者の心身の疲労を回復させまして、労働力の維持培養を図るとともに、ゆとりある生活の実現にも資するということから、毎年一定日数の有給休暇を与えることを規定しているものでございます。

 今回の労働基準法改正案の年次有給休暇の改正については、現行では日単位以上で取得することとされているわけでありますが、特に子育て世代の女性から時間単位の取得の希望があったということを踏まえまして、かつ、年次有給休暇の本来の趣旨も勘案して、五日を上限として時間単位の取得を可能とすることとしたものでございます。これは、年次有給休暇を使いやすいものとするためのものでありまして、これにより年次有給休暇を一層有効に活用できるようになるというふうに考えております。

 また、年次有給休暇は、請求時季が事業の正常な運営を妨げるものでない限り使用者は付与しなければならないということになっております。この原則は時間単位での取得においても変わらないものでございます。御指摘のような、労働者が日単位で請求した場合に使用者が時間単位に変更することは、時季変更には当たりません。また、労働者が請求した年次有給休暇のうち、一定範囲について取得を認めないということにもなるわけでございまして、労働者による自由な年休取得を阻害することとなります。このため、こういったことは認められないものであるというふうに考えております。

○古屋(範)委員 こうした時間単位での柔軟な有給休暇の取得、これが子育て世代あるいは介護をしている働く方々にとっても資するものである、このように考えるところでございます。

 次に、最低賃金法の一部を改正する法律案について質問をしてまいります。

 現在、我が国の最低賃金制度におきまして、大きく分けて、地域別最低賃金また産業別最低賃金、二つの種類の最低賃金が存在をしております。

 今回の改正法案では、地域別最低賃金については法定基準の見直しや罰則の強化が盛り込まれておりまして、セーフティーネットとしての機能の強化がされているところであります。一方、産業別最低賃金につきましては、規制改革・民間開放推進三カ年計画でも、そのあり方について検討を求められたわけですが、今回の改正法案においては産業別最低賃金についてどのような考え方で見直しを行うこととしたのか、この点についてお伺いいたします。

○青木政府参考人 まず、最低賃金の第一義的な役割というのは、すべての労働者について賃金の最低限を保障する、そういう安全網でございます。この役割は地域別最低賃金が果たすべきものであるというふうに考えております。このため、今般の見直しにおきましては、地域別最低賃金について、お触れになりましたように、各地域ごとに決定することを義務づけるとともに、不払いに係る罰金の上限額を引き上げるなどの見直しを行うこととしております。

 一方、お尋ねの、産業別最低賃金でございますけれども、関係労使のイニシアチブにより設定され、企業内における賃金水準を設定する際の労使の取り組みを補完する面、それから公正な賃金決定にも資する面、こういった面がございますので、安全網とは別の役割を果たすものとして見直しを行うことといたしたものでございます。

 具体的には、産業別最低賃金につきましては、一つは、関係労使の申し出というものを法律上必須の要件といたしました。申し出があった場合において、必要があると認めるときに決定することができるというふうにいたしました。もう一つは、最低賃金法の罰則は適用しないということといたしたところでございます。

○古屋(範)委員 中小企業等の関連もございます。きょうは内閣府にもおいでをいただいております。

 政府におきましては、成長力底上げ戦略におきまして、中小企業の生産性の向上とともに、最低賃金を引き上げるための施策に取り組まれていることと思います。この最低賃金が、企業の支払い能力から乖離した水準に決定することが不適切であるという以上、中小企業の生産性を高める、またこれと相まって最低賃金の引き上げに取り組むという政府の方針につきましては、私も共感するところでございます。

 しかしながら、この戦略の成否は実効ある中小企業支援策が講じられるか否かにかかっているというふうに考えます。そこで、この成長力底上げ戦略につきまして、中小企業の生産性向上に向けた取り組みについて、その基本的な考え方、そして、本戦略全般を担当する内閣府からの、これについての取り組みをお伺いしたいと思います。

○山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の成長力底上げ戦略でございますが、これは、経済成長を下支えします基盤の向上を図ることにより、働く人全体の所得、生活水準を引き上げつつ格差の固定化を防ぐ、こういうものでございます。中小企業底上げ戦略はその中の一つでございまして、御指摘のように、働く人の賃金の底上げを図る観点から、中小企業の生産性の向上とともに最低賃金を引き上げるということで、産業政策と雇用政策の一体運用というものを目指すものでございます。

 これに関しましては、具体的には、政労使が参加します円卓会議というのを設置してございます。これは国においても設置してございますし、また各都道府県においてもこういう形で、地方版の円卓会議を今立ち上げたところでございます。

 その中で、特に御指摘の、中小企業の生産性の向上でございますが、まず、全体にわたる共通基盤的な対策としまして、下請適正取引の問題でありますとかIT化の促進等を進める一方、また個別に、特に生産性の低い業種、地域を対象にしました個別対策、これの組み合わせという形で、中小企業の生産性向上にまさしく全力を尽くして推進していきたい、こういうように考えている次第でございます。

○古屋(範)委員 ただいま内閣府の方から、本戦略におきます中小企業の生産性向上支援策について、基本的な考え方を御説明がございました。

 やはり中小企業の生産性の向上ということにつきまして、具体的には中小企業庁さんが中心となりまして取り組んでいかれることとなると思います。中小企業の生産性向上に向けた具体的な取り組みにつきまして、中小企業庁からの御説明をお願いいたします。

    〔伊藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕

○加藤政府参考人 お答え申し上げます。

 中小企業の生産性向上に向けた取り組みにつきましては、昨日閣議決定されました骨太二〇〇七あるいは円卓会議におきますこれまでの御議論を踏まえまして、成長力底上げ戦略の具体的な対策として中小企業生産性向上プロジェクトを実行してまいります。その中で、特に下請適正取引の推進が即効的な方策として重要だと考えておりまして、業種ごとのガイドラインを策定し、取引価格の決定などにおいて下請事業者に十分配慮するよう要請してまいります。

 具体的には、下請取引の適正化推進につきまして、三月に甘利大臣みずからが経団連あるいは日本商工会議所に要請いたしました。加えまして、実は本日でございますが、甘利大臣出席のもと、下請適正取引の推進のためのガイドライン策定検討会を開催したところでございます。まず、七つの業種、素形材、自動車、産業機械、繊維、情報通信機器、情報サービスそして広告、この七つの業種につきまして、関係業界の代表、学識経験者などによる審議を行ったところでございます。公正取引委員会にもオブザーバーとして参加していただいております。

 さらに、中小企業生産性向上プロジェクトにおきましては、IT導入のためのコンサルティング、あるいは生産性向上特別指導員による経営指導などによるIT化、機械化、経営改善、それから中小企業の事業再生などの取り組みも推し進めていくこととしておりまして、これらによって中小企業の生産性向上につなげてまいりたいと考えております。

○古屋(範)委員 賃金の上昇、また非正規から正規への転換、こういうことを考えましても、やはりかぎを握るのは中小企業であろうというふうに考えております。ぜひ、この生産性向上は大きく推進されることが必要というふうに考えます。

 最後になります。大臣にお伺いいたします。

 この最低賃金の引き上げに向けました環境整備は極めて重要な観点であると認識をいたしております。こうした取り組みも含めまして、今後、最低賃金の引き上げについて大臣のお考えをお伺いいたします。

○柳澤国務大臣 今回の国会におきましては、私ども、今の労働市場に起こっておりますいろいろな問題について総合的な取り組みをさせていただくということで、六本、あるいは勘定の仕方によってはもう一本多いわけでございますけれども、そういう法律の改正を打ち出させていただいた次第でございます。

 その中で、特に非正規を含みます労働者が、いわゆる労働の形態というものが、あるいは雇用の形態というのがどういうものであっても、安心、納得して働ける、そういう条件のもとで働いていただきたい、こういう考え方のもとで最低賃金の見直しというものを打ち出させていただいておるわけでございます。

 最低賃金法の改正法案におきましては、最低賃金というものがセーフティーネットである、安全網である、こういう観点に立ちまして、具体的な最低賃金の決め方というのは、地域別の最低賃金でございますので、これについて、その水準を決める際には、生活保護との整合性を考慮して決定するということを今度の改正で明確にさせていただいているところでございます。

 そして、我々の法律案というものは、そういうまずセーフティーネットとして十分に機能するようにということで、生活保護の施策との整合性ということをうたわせていただいているわけでございますが、中長期的な最低賃金のあり方ということを考えますと、今後ぜひこれを引き上げの方向に導いていきたい、ぜひそれを実現したい、こういうことを考えているわけでございます。

 そういうことを可能にするものは何かといえば、これは具体的には中小企業を中心とするわけですけれども、やはり生産性の向上というものがなければ、これはなかなか実現できない、こういう考え方があるわけでございまして、そういう中長期的な観点から、今委員が内閣府の政府参考人等と御議論をいただきましたように、成長力底上げ戦略推進ということを新しい政策として打ち出しているわけでございます。そういう戦略の推進を、具体的には円卓会議というものを組み立てまして、そこに政労使の代表にも加わってもらって、その中長期的な生産性向上を踏まえた最低賃金の引き上げの方針について合意をしてもらう、こういうことで、この円卓会議を運営させていただいているわけでございます。

 その合意を踏まえて、最低賃金の中長期的な引き上げに関して、これは今、下請の代金について産業政策の面から非常に積極的な取り組みを経産省がしてくださる、こういう答弁があったわけですけれども、そういった産業政策と私どもの雇用政策とが一体となってこれを実現していく、こういう政策展開を考えているわけでございまして、この中長期的な生産性に見合った最低賃金というものがそういう取り組みの成果として実現される、こういうことを期待いたしているというところでございます。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 以上で質問を終わります。

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