第171回国会 衆議院 青少年問題に関する特別委員会-7号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 本日は、青少年総合対策推進法案についてお伺いをしてまいります。

 本題に入ります前に、先般、質疑の折に、育児・介護休業法案の提出につき小渕大臣に質問いたしまして、大変力強い御答弁をいただきました。現在、衆議院を通過したところでございますけれども、一日も早い成立を求めておりますので、本当に感謝をいたします。ありがとうございました。

 では、本法案の質疑に入ってまいります。

 青少年をめぐる問題は、家庭、学校、職場、そして地域、社会と、あらゆる分野にわたる広範な問題であります。青少年の健全な育成に関する施策を効果的に推進するためには、国、地方自治体、その他の関係機関、国民の協力など、密接な連携のもとで広がりを持った取り組みが必要であります。

 私たち公明党では、二〇〇二年の十一月に、初めて若者を対象といたしました政策、ユースポリシーを発表いたしました。

 若者が日常生活で直面することが多い課題の解決を目指した政策提案、例えば、フリーターなどの就労を総合的に支援するジョブカフェ、それから奨学金制度の拡充ですとか、あるいは携帯電話の番号ポータビリティー制度などの政策を実現してまいりました。若者の声を聞いて、それを本当に国に反映させていこうとしてまいりました。

 また、昨年の十二月には、党の青年委員会が中心となりまして、若者の雇用、生活支援を初め、出産、子育ての支援、そして、国の将来を背負っていくのは青年であるとの思いから、仮称、若者支援新法の早急な法制化、また、青年担当大臣・庁の設置を求めてまいりました。それが今回、青少年総合対策推進法案として実現をし、本委員会において審議をされることになったということは、大変うれしく思っております。

 そもそも、青少年問題とは、教育、福祉、医療、経済など多領域の専門家が縦割りの垣根を越えて連携しながら対応すべき問題であります。若者の育成支援を国そして地方公共団体、関係機関などが地域のネットワークとして整備して総合的に取り組んでいく課題でもあります。そうした意味からも、関係機関の連携を盛り込んだ今回の法案は大変意味のあるものと評価をしておりますが、改めて、本法案の制定の意義について小渕大臣にお伺いいたします。

○小渕国務大臣 お答えをいたします。

 若者をめぐる状況というものは大変大きく変化をしておりまして、深刻化もしておる中であります。しかし、ややもしますと、この若者世代に対しての施策や予算というものが決して十分とは言えない中でありまして、それぞれで頑張ってやっていただいておるんですけれども、十分に連携がとれていなかったというのが現状ではないかと思っております。

 この法案では、対策推進本部の設置や施策の大綱の策定など、関係施策の推進のための枠組みをしっかり整えていくということとともに、ニートやひきこもりの若者に対し地域の関連機関が連携をして支援していくための取り組みを整備するものであります。

 これまで私は、少子化問題をやりながら、この少子化というものは、当事者だけの問題ではなく、みんなの問題である、本人はもちろんですけれども、社会も地域も職域も、みんなで協力をして子どもを支えていかなければならないということを申し上げてきましたが、若者に対しても私は同じ思いを持っております。

 先生が御指摘のように、家庭、学校、職域、地域、あらゆる分野の関係者が相互に協力をしながら一体的に取り組むことが大切であると思っておりますので、本法の制定によりまして、若者に対する施策を抜本的に強化するための第一歩になると思っております。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 やはり、切れ目のない支援、どうしても施策が高齢者に偏りがちかなと思うことも間々ございますが、我が国を担う青少年に対する手厚い支援、これが本当に必要なのだなというふうに思います。

 次に、本法案における支援の対象者についてお伺いをしてまいります。

 第二条の基本理念の中の第五号によりますと、「修学及び就業のいずれもしていない青少年で、自立した社会生活を営む上での困難を有するものに対しては、その困難の内容及び程度に応じ、自助の責任を踏まえつつ、必要な支援を行うこと。」とございます。さらに、第十五条でも、支援の対象として、「修学及び就業のいずれもしていない青少年で、自立した社会生活を営む上での困難を有するもの(満十五歳に達した日以降の最初の三月三十一日を経過した者に限る。)に対する次に掲げる支援を行うよう努めるものとする。」と明確に規定をされております。支援対象者から義務教育年齢の青少年が除外をされているわけであります。すなわち、本法案においては、ひきこもりや不登校の小中学生などは支援の対象になっていないわけです。

 しかしながら、現状では、不登校を経験しているニート、ひきこもり状態の青年が非常に多いということを考えますと、やはりこの小中学生も本法案によって設置をされる青少年自立支援地域協議会で支援する対象としていくべきではないか、このように考えますけれども、いかがでございましょうか。

○松田政府参考人 政府案におきましては、基本的に、学校教育や雇用など、従来の法制度では直接的な対象となっていなかった、修学も就業もしていないニート等の状態にある十五歳以上の青少年、これが自立した社会生活を営むことができるよう協議会において支援をするという形で法案の骨格としておるわけでございます。

 それで、自立した社会生活、そして修学に加えて就労という、ある意味で一つの自立の出口といたしまして就労という政策目標を掲げておりまして、そうした中で、就労といいます場合、労働関係法上原則雇用してはならない十五歳未満の者をそういう出口として据えるのはいかがかということで、協議会の直接の支援対象からは除くというのが政府案の考え方でございます。

 先生御指摘のとおり、中学校での不登校など、ニート等へつながっていくおそれのある早い段階から対応していく必要があるということでございますけれども、政府といたしまして、市町村教育委員会に、中学校を所管いたします教育委員会等に協議会に入っていただいて、事実上、この協議会のネットワークを活用して不登校に対処していただいて、その上で、十五歳になれば、当然、ニート化するおそれがあるという形で、政府としては、原則就労を目指すという中で、不登校の問題にはそういう形で事実上対処し得るのではないかというふうに考えておったところでございます。

 ただ、修正案では、逆に、こうした状況を踏まえまして、地域におきまして、義務教育段階の不登校など、本当にニートにつながるおそれがあるんだという問題につきまして、早い段階からの取り組みを行うことが一つのねらいということで、法律上きちっと位置づける、協議会の業務として対応していくようにする、この修正案がそういうものであるものと認識をいたしております。

 政府といたしまして、修正案を含みます法律の趣旨を十分踏まえまして、子どもから若者まで幅広い年齢層の円滑な社会生活に困難を有する方々につきまして、早い段階から円滑な支援につなげていくことができるよう、しっかり取り組んでまいりたいと存じます。

○古屋(範)委員 私も、修正案において小中学校生もこの支援の対象に含めるということにしたことに関して、やはり一定の評価をしたいと考えております。

 次に、先ほどのお二人の委員からも御指摘のあった点でございますが、ひきこもりの現状とその対応についてお伺いをしてまいります。

 青少年にとって、ニートやひきこもり状態が続くことは、社会の中で自分の居場所を築けないという疎外感、あるいは社会から排除されている感覚、さらに、就労を通じた職業能力を蓄積することが困難である、自立した生活ができなくなる不安が生じております。また、社会全体にとっても、ニートやひきこもりの若者の増加というものは、我が国の活力の低下の大きな要因の一つとなることが懸念をされております。

 現在、ニートに対する注目度も増してきた結果、働く意欲や能力を高める総合的な対策を推進しようと、ジョブカフェ、若者自立塾、あるいは地域若者サポートステーションなど、ニートへの自立支援は、徐々にではありますけれども、進んでおります。

 その一方で、ひきこもりの問題は、これからとの感がどうしてもいたします。

 ひきこもりとは、長期にわたって自宅に引きこもっている、社会参加をしない状態が続いている。その原因はさまざまと指摘をされておりまして、精神疾患や発達上の問題によるものも考えられ、それ以外のものは社会的ひきこもりとも呼ばれております。しかし、これらが原因のすべてではなく、それぞれが複雑に絡み合ってひきこもり状態を引き起こしているとも考えられております。

 そしてまた、ひきこもり第一世代がもう既に四十代を迎えているということ、平均年齢は三十歳を超えようとしており、彼らとともに高齢化しつつある親たちの不安というものも一層深くなってまいります。

 こうしたひきこもり状態にある若者の実態、ひきこもりへの対応、取り組みについてお伺いいたします。

○坂本政府参考人 厚生労働省では、厚生労働科学研究というのがございまして、十六年度に実態調査を行いました結果、ひきこもりのいる世帯数は全国で約三十二万世帯と推定されております。また、十九年度からは、思春期を中心とした実態把握と支援のあり方に関する研究を進めているところでございます。

 ひきこもりといいますものが、単一の疾患や障害の概念ではなく、さまざまな要因が背景になっている状態であることから、厚生労働省におきまして、精神保健分野や児童福祉分野そしてニート対策等、さまざまな分野にわたる取り組みを行っているところでございまして、今後とも引き続き必要な対策を実施してまいりたいと考えているところでございます。

○古屋(範)委員 研究は進んでいる、進めているということであります。

 私も今回の法案の質疑に当たり、斎藤環先生、このひきこもりの問題に長年取り組んでいらっしゃる精神科医の著書を読んでみました。

 やはり、長年引きこもってしまうそういう方々にとっては、非常に状況が難しく、どうしても専門家の手をかりる以外にない、放置をしておいてそれが改善するというケースはほとんどないということであります。

 あと、興味深かったのは、先生が長年臨床でかかわってきた方々、そのほとんどが男性、男児である、長男が多いというような興味深いことも書かれているんですが、この社会的ひきこもりの問題は、二重三重に不遇な状況に置かれていて、その一番の問題というのは、予防や治療をやりさえすればある程度可能なんだけれども、しかし、それに当たる専門家が少ない、受け皿がないということであります。

 こうした事例を抱える家族が困り切って相談に行く場所としては、とりあえず精神科しかないと思うんですが、その精神科医も対応はやはり消極的であり、対応策が余りにも立ちおくれている、ひきこもり状態は自然に解決することはほとんどなく、社会、家族を巻き込んだ一つの病理システムとして理解し、その解消に向けた努力をすべきだとおっしゃっております。

 そこで、この若者のひきこもりについては、まず、精神保健福祉センター、保健所、児童相談所等において本人や家族に対する支援が行われております。厚労省は、本年度から、ひきこもり地域支援センターを設置して、児童期から成人期までの各ライフステージに対応する一貫した支援を行うこととされています。これは、長期のひきこもりに対して、専門の知識を持った職員による相談窓口、各段階に応じた対応が必要なわけでありますけれども、各関係機関のネットワークの連携強化が図られて、必要な情報を広く提供できるひきこもり地域支援センターの設置は、非常に重要であると思われます。

 本法案では、地方公共団体は、青少年育成に関する地域住民からの相談に応じて、関係機関の紹介や必要な情報提供、助言を行う拠点としての機能を担う青少年総合相談センターの設置の確保に努めるように規定をされております。ひきこもり地域支援センターは、どのような位置づけとなるのか。本法案制定によって機能強化も期待されるわけですが、この点、いかがでしょうか。

 また、青少年育成にかかわる施策は、教育、福祉、保健、医療、矯正、雇用等多岐にわたっておりまして、地域の皆様から寄せられる相談も多様なものが予想されるわけであります。

 そこで、あらゆる相談に対応できる知識と経験を持った的確な判断のできる専門スタッフの配置など、青少年総合支援センターが真に総合相談窓口として機能するための人材育成、体制強化が必要と考えますけれども、いかがでしょうか。

 二点について、お伺いします。

○坂本政府参考人 先ほど御答弁申し上げましたが、さまざまな要因が背景になっておりまして、ひきこもりの相談も、御指摘のとおり、児相でありますとか保健センターそして福祉事務所、いろいろなところに来ております。

 厚生労働省といたしましては、平成二十一年度から、新規の事業といたしまして、都道府県、政令指定都市に、ひきこもりに特化いたしました第一次の相談窓口としての機能を有しますひきこもり地域支援センターを整備いたしまして、推進をすることといたしております。

 地域の実情に応じまして設置の形態は区々にわたると思いますけれども、この支援センターは、この青少年総合対策推進法案に明記されております関係機関等で構成される地域協議会を構成する機関の一つになるのではないかと考えているところでございます。

 この法案の成立によりまして、関係機関とのさらなる連携強化等における支援体制の充実につながるものと考えているところでございます。

○松田政府参考人 総合相談センターの関係につきましてお答え申し上げます。

 ワンストップ相談窓口と申しますか、できるだけ住民の皆様の近場にワンストップの相談窓口があればいい、青少年に関する総合相談窓口があればよいという考え方から、この法案に総合相談センターの機能を確保するということをうたっておるわけでございますけれども、このためには、やはり、ニートを初めといたしまして不登校、いじめ、非行、さまざまな青少年が抱えます問題、それから、対応をどうするんだという、関係機関につきまして基礎的な知識を有する、そういうことで、一次的な相談に応じたり、あるいは他の適当な機関を紹介できるだけの知見、こういったものを持ったスタッフを配置する必要がございます。そうした人材を育成するために、私も、国の支援もまた欠かせないものと認識しております。

 内閣府としても、いろいろこれまで研修、情報交換等々やってきたところでございますが、さらに内容の充実に努めてまいる所存でございます。

 いずれにしましても、相談要員としての人材養成、これは一次的な窓口としてのレベル、それから先ほどのひきこもりの地域センター、これは精神科医的な、そういう専門的なノウハウを持たれた人材、あるいは元NPOの方々、本当に、生の人間にどういうふうに寄り添っていくのか、共感していくのか、そういった人材、いろいろな人材の養成がございまして、さまざまな人材がまさに今求められている。そういった中で、相談としては、一次的な相談要員の人材というものもきちっと確保に努めてまいりたいと存じております。

○古屋(範)委員 では、時間ですので、最後の質問に移ります。

 私たちは、若者の声をしっかりと聞き、そしてそれを政策に反映させていく必要があると思います。

 非正規労働の若者がふえて、所得が低いワーキングプアが多くなる、このまま続けば、結果的には、やはり若者が社会の犠牲になりかねない、希望を失った若者がふえれば、いずれ社会は不安定化してしまう。社会保障や雇用に限らず、青年に対する総合的な政策展開が今求められていると思っております。

 今こそ、小渕大臣のリーダーシップのもとで、国は総力を挙げて、若者が希望を持てる社会を築いていくためにも、若者自身の意欲や努力を引き出すことができるよう、実効性のある施策とともに本法案の早期実現を目指していきたいと思います。

 最後に、将来の日本を見据えた若者支援のあり方について、大臣にお伺いいたします。

○小渕国務大臣 お答えをいたします。

 今こそ、委員が御指摘のように、若者に対する支援を充実させ、強化させていく必要があると思っております。

 この法案が制定されました後には、まずは、地域の関係機関が連携して支援するためのネットワークである協議会をしっかり整備していくこと、これが大きな柱の一つであると思っております。それとともに、いろいろと困難を抱えた若者がふえてきている中で、そうした若者を十分に支援する体制が整っていない。やはり、特に、人材の質の向上、育成というものが大切であると思っております。

 そして、何よりももう一つ重要な点は、そうした若者に対する支援をするための予算というものもしっかり確保していく必要があると考えております。

○古屋(範)委員 では、時間でございますので、以上で質問を終わります。

 ありがとうございました。

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