第174回国会 衆議院 厚生労働委員会 17号
○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。
きょうは、参考人の皆様方、国会においでいただき、貴重な御意見をいただきましたこと、心から御礼を申し上げたいと思います。
初めに、山崎参考人にお伺いをしてまいります。
昨年、総選挙がございました。そのときに、民主党は後期高齢者医療制度の廃止を掲げたわけでございます。しかし、今は新制度へ移行をする、二〇一三年には新たな制度を構築するということで、高齢者医療制度改革会議というものを立ち上げました。二〇〇八年の六月には廃止法案というものを提出しておりました。
また、三党の連立政権の合意の中で、「後期高齢者医療制度は廃止し、医療制度に対する国民の信頼を高め、国民皆保険を守る。廃止に伴う国民健康保険の負担増は国が支援する。」このような連立合意を出しておりました。
その中で、この後期高齢者制度は、改善すべき点はあるにせよ、現在こうして落ちついて一定の機能を果たしている、このように思うわけなんですが、廃止という方針に関してはいささか現実味がない、私はこのように考えておりますが、山崎参考人はいかがでしょうか。
○山崎参考人 私自身は、現行制度の基盤の上に見直しをする、これは前政権下で始まっていたことでありますし、私も舛添厚生労働大臣のもとの検討会議に出ておりました。そして、与党自民党のヒアリングにもお伺いしたことがありまして、現行制度をもとにしていろいろ調整していくということは必要だと思っていましたが、完全に廃止するというのはいささか性急過ぎるんじゃないかなというふうに思っております。
○古屋(範)委員 後期高齢者医療制度を即廃止すべき、こうした意見は余りにも性急である、私自身もそのように考えております。
先ほど先生の意見陳述の中で、七十五歳という年齢区分は差別ではない、このように言及をされました。であるならば、六十五歳から七十五歳までの間、この前期高齢者の部分も今後さらなる検討が必要である、これは私もそのように考えております。
こうした六十五歳からの前期、あるいは七十五歳以上、全体の制度設計を含めまして、先ほど先生も御指摘ありましたように、これは十年の歳月をかけてつくり上げたといいますか協議をしてきた制度ではありましたけれども、さらなる改善に向けて、当事者、それから現場でかかわっていらっしゃる地方自治体の皆様、また、政権交代ということが起きまして、そこにはマニフェストに掲げたさまざまな社会保障制度の改革というものがそれぞれの党でございました。
しかし、年金もそうですが、こうした医療、国民の生命、健康と密接にかかわった制度に関しまして、これが政権交代ごとにくるくると変わっていく、例えば後期高齢者医療制度は即時廃止、このようなことが起きますと非常に国民生活が混乱をする、こういうことも考えられるわけです。
ですので、当事者、自治体、もちろん関係団体も含めてなんですが、与野党も含め、大きな方向性というものは協議をして、一定の方向を見定める必要があるのではないか、このように思いますが、いかがでしょうか。
○山崎参考人 おっしゃるとおりでございます。
私、研究者としてはいろいろ意見を持っておりますが、関係者が、これだけ利害が錯綜している中で、何とか折り合いをつけていただきたいということで、そういう意味で、前回の改正というのは、ぎりぎりのところで手を握っていただいたというのは本当に感謝、奇跡の合意だったというふうに思っております。それをもとに戻せばまた混乱が起こるだけということで、来春までに合意が得られるような状況には全くないと思います。
ただ、はっきりしていますのは、後期高齢者の保険者を広域連合にしたというのが非常にファジーという先ほどからの御意見もありますけれども、地域の住民ときちんと向き合える主体でなければいけない。それは現実には市町村だろう。市町村もいろいろ問題を抱えていることはあるんですが、私は、それは最終的にもう一度町村合併を進めて、住民と向き合える市町村になっていただきたい、そのために国も努力していただきたいというふうに思っております。
それから、広域連合をすべて悪いと思っていないんです。財政とともに事務組織の、事務の共同化というのは大いに、市町村を支援する上で、特に零細な町村を支援する上で、人手も能力も乏しいわけでございますから、そういったところで広域連合を引き続き残すというのは十分にあるというふうに思っております。
以上です。
○古屋(範)委員 今回の後期高齢者医療制度、奇跡の合意、それをずっと注視してこられた先生にとって、やはりそういう結論であったんだろう、私自身もそのように思っております。
広域化に関しましては、事務の共同化など、そういった面で大いに生かしていくことができるということでございました。
住民と向き合える自治体は市町村なわけなんですが、当然、介護保険も今そこで保険者として行われているわけでありまして、先生は、医療と介護が連続して一体化して実施されることが理想だというお話だったかと思いますが、私たちも今、特に介護問題について、公明党において、昨年、介護総点検というものを行いまして、十万人の調査を行いました。そういう中で、医療と介護の連携ということが非常に大きな課題として上ってまいりました。
医療、介護の連携強化あるいは統合、この点に関して、もう少し御意見があれば先生から伺いたいと思います。
○山崎参考人 実は介護保険がある程度成立しそうだという、構想段階でございますが、法案化されて間違いなく成立しそうだという時期に、私は将来的には、この際、これだけ介護保険で合意を得たのだから、高齢者医療もドッキングするような形で一体化できないだろうかというふうに考えたことがあります。つまり、高齢者医療介護保険制度というものを地域を主体にしてできないだろうかと考えたことがありますけれども、それは私の夢でございますが、現実にはすぐにそこまでいくとは思っておりません。夢として語るだけでございます。
○古屋(範)委員 ありがとうございました。
次に、倉田参考人にお伺いをしてまいります。
先ほど、後期高齢者医療制度の廃止というものは現場に携わる者としては余り現実的ではない、このような御意見であったかと思います。若干の修正をしていくことが現実的だという御意見でございました。さらに、四十七の広域連合を千七百五十に分散すること、旧老人保健制度に戻すことには反対であるという意見表明がございました。
現在、都道府県の関与というものはどのように機能しているか、今の課題と、それから都道府県に望むことがあればお聞かせいただきたいと思います。
○倉田参考人 お答えをいたします。
後期高齢者医療制度については、今、私は大阪府の連合長を仰せつかっております。一定の機能はしているものの、住民から遠いところに保険者がいる、これは事実でありますが、ただ、徴収等、市町村の窓口が我が市民、我が住民のためにそれぞれが頑張っているという事実は、そう異なってはいないのではないかと思っております。
加えて、都道府県の関与、市長会としては、この制度の発足に当たって、都道府県に逃げられたと思っています。やはり、これは都道府県も一定の責任を持って関与していただかなければならないと思っていたからであります。ただ、財政基盤安定という形で、いわゆる財政面でいささかの援助をしていただいている、これは事実でございます。
それから、広域化についていろいろな御意見があります。本来は市町村が基本的に住民と向かい合う一番の基礎自治体であるからでありますが、財政的にはそうは言い切れません。先ほど言いましたように、お隣同士で保険料が違ってくる、同じ保険証を持っていって、医療は同じ医療を受けられるのに保険料が違う、それはやはり都道府県単位あるいは国が一元的にしていただく方がいいのではないかというのが全国市長会の主張でございます。
○古屋(範)委員 ありがとうございました。
次に、白川参考人にお伺いをしてまいります。
ことしの二月の十二日に声明を発表されています。先ほどの意見陳述にもございましたけれども、高齢者医療制度改革会議の議論を待たずに制度の根幹を一方的に変更すること、また、協会けんぽの後期高齢者支援金に対する国庫補助を減額して健保組合等に肩がわりをさせること、さらには、その財源を本来国の責任で確保すべき協会けんぽの給付費等に対する国庫補助に充てて、予算のつじつま合わせをすることに理がない、このように表明をされております。
今回こうした法案が出てまいりました。先ほども、相互に支援をし合うこと、この辺についてやぶさかではない、このようにもおっしゃっておりますけれども、ここには、大きな方向性というものが見えた上での肩がわりといいますか、そういうものが求められてしかるべき、このように思っておりますが、いかがでしょうか。
○白川参考人 御指摘の点でございますが、再三申し上げておりますとおり、私ども健保組合あるいは健保連は、高齢者の方々の医療問題というのは医療保険制度の最重要の問題だというふうに認識をしておりまして、それは、国民全体でどのような仕組みで支えていくかということを、今現在も議論中でございますが、国民全体で議論をして決めていかなきゃいけないというふうに考えております。
そのほんの一部とはいえ、政府の方で御提案がありました今回の法案につきましては、そういう議論を経ずに法案として提出されたということで、私ども疑問を呈しているわけでございます。
先ほども申し上げましたけれども、私どもが一番困るのは、私ども保険者として、加入者の方とか事業主の方に合理的な説明をする責任を負っているわけでございますが、今回の法案については合理的な説明ができかねるという状態で困っておるということもあわせて付言させていただきたいと思います。
以上でございます。
○古屋(範)委員 保険者それから被保険者に対する合理的な説明がつかない、納得させることができないという御意見でございました。私自身もそのように考えております。ありがとうございました。
次の質問を考えておりましたが、時間が参りましたようですので、以上で質問を終わらせていただきます。貴重な御意見、大変ありがとうございました。