第174回国会 衆議院 厚生労働委員会 18号
○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。
まず初めに、医療関連で二問、質問してまいります。
近年、睡眠時無呼吸症候群の増加が指摘をされております。この症候群、日中に眠気を引き起こすということで事故が発生をしたりもしております。また、心血管疾患などのリスクも高めるというふうにも言われております。
専門外来も拡大をしてきておりまして、治療に用いられますCPAP、シーパップというそうなんですが、この保険請求につきましては一カ月に一回受診することが必要とされております。
しかし、状態がかなり安定をしている場合には、一カ月に一回受診をしなくてもよいのではないかというふうにも思います。薬剤投与の長期化などに倣いまして、二カ月に一回ですとか、もしくは三カ月に一回の受診で可能になるようぜひとも見直しを行っていただきたい、このように思いますが、いかがでしょうか。
○長妻国務大臣 これに関しては、睡眠時無呼吸症候群でありますけれども、睡眠時に無呼吸、十秒以上呼吸が停止するのが五回以上ある病態を総称的に指すということでありますけれども、今御指摘の点は、今月から始まりました診療報酬の中でもどうするかという議論がありまして、これは日本呼吸器学会より同じような御提案もございまして、そして医療技術評価分科会のもとに設置された呼吸器関係の専門家から構成されるワーキンググループで議論をいたしました。
その結果、この睡眠時無呼吸症候群については、やはり少なくとも一カ月に一回は、状態が改善しているかどうかを確認するとともに所要の指導を行うことが必要である。確かに、安定しているのか、安定しているように見えるのかということもありますので、これはいろいろな御意見はありましたけれども、結論としてはそういう結論となったわけで、今回の診療報酬では一カ月に一遍というような限定で報酬をするということとなったところでございます。
○古屋(範)委員 今回の診療報酬改定の過程で、ワーキンググループでは議論になった点であるということでございました。
こうした方々も、実際には働いていらっしゃる方々も多いわけですし、仕事を休んで月に一回受診に行くというのもなかなか大変なことだろうというふうに思います。ぜひ、この課題につきましては次期の改定に向けて前向きな検討を引き続きお願いしたいということを要望しておきます。
それからもう一問、パルスオキシメーターの流通についてお伺いしてまいります。
このパルスオキシメーター、体に針を刺したり切ったりもすることなく、SpO2、経皮的動脈血酸素飽和度の測定を行うことが可能でありまして、これにより心肺機能が常時正常であるかを知ることができるということで、患者の呼吸リハビリの継続あるいは病状の自己管理などに有用なツールとされております。
医療機器というものの区分なんですが、一つは一般医療機器、クラス1ということで、リスクは極めて低い。この中には、メス、ピンセットあるいは家庭用の救急ばんそうこうなどが含まれております。また、もう一つは管理医療機器、クラス2ということで、リスクが比較的低いということで、エックス線の撮影装置ですとか家庭用のマッサージ器、磁気治療器などが含まれます。三番目の高度管理医療機器、クラス3、4、これはリスクが非常に高いという区分で、人工呼吸器、透析器、コンタクトレンズ、ペースメーカー、このような分類になっております。
このパルスオキシメーターを製造販売していることに関しましては、管理医療機器の製造販売を対象とした第二種医療機器製造販売業の許可が必要となっております。製品ごとに、クラス分類に応じた承認もしくは認証の取得、届け出を要しております。パルスオキシメーターは、指定管理医療機器として、国の指定する第三者認証機関による認証が必要とされております。
しかしながら、パルスオキシメーターは、血圧計ですとか体温計と同様に、人体に危害を及ぼす可能性が極めて低い、安全な測定機器でありまして、この1の一般医療機器に分類されてもよいのではないか、このように考えております。
現在、パルスオキシメーターの価格が比較的高く、その購入に当たって患者団体から助成制度の創設が要望されております。そこで、この医療機器の区分を見直して低価格化を図るべき、このように考えますが、いかがでしょうか。
○長妻国務大臣 今、パルスオキシメーターの説明をいただきましたけれども、おっしゃられたような使い方と同時に、例えば、人工呼吸器を装着して呼吸補助を受けている患者さんに対して、本当に人工呼吸器がきちっと作動しているのかどうかというのを、このパルスオキシメーターをその患者さんにつければ患者さんの呼吸状態がわかりますので、呼吸がなされていないという状況が、そこでアラームが出れば人工呼吸器のふぐあいだと推定するということで、ある意味で、確かに血圧計と同じ側面の使い方もあるわけでありますけれども、今申し上げたような使い方でありますと、これは最悪の場合、命にもかかわる状況になる危険性もある、可能性もあるということも言えるのではないか。
そして、今御指摘いただきましたように、日本国の医療機器というのはクラス1、2、3、4と四種類に分類して、四番目が一番厳しいチェックがなされて、一番低いのがクラス1ということで、今おっしゃられたメスとかピンセットとか、これは承認というのは必要ないわけであります。
今おっしゃっていただいたものはクラス2ということでありますが、これを例えばクラス1に下げますと、承認が不要ということになります。そういう意味では、使い方によっては命にかかわるような使われ方も今実際なされているという現状にかんがみると、これを直ちにクラス1に下げるのは困難であるというふうに現状では考えております。
○古屋(範)委員 大臣、命にかかわる使用方法もあるという御説明でございました。
一方で、こうした機器が広く低価格で普及をしていくということは多くの人々の健康に資するものでもありますので、こうした使用用途の別もございますので、ぜひ前向きな御検討をお願いしたい、このように思っております。よろしくお願いいたします。
では次に、高齢者が安心をして、また尊厳を守って暮らしていける社会の構築ということで、介護、医療にも関連をいたします高齢者の問題について質問してまいりたいと思います。
私は当選以来、高齢者虐待防止の問題に取り組んでまいりました。平成十六年に高齢者虐待防止対策のワーキングチームを立ち上げまして、当時、日本高齢者虐待防止学会の田中理事長を初めといたしまして、多々良先生ですとか高崎絹子先生、専門家をお呼びし、さまざまな勉強会を行いながら、また、視察、関係団体のヒアリングも行ってまいりました。
こうした中で、高齢者虐待の問題は私たち政治家が責任を持って取り組むべき課題である、このように訴えまして、与野党の皆様にも御協力をいただきながら法制化を進めることができた、このような経緯がございます。
そして、この春で、高齢者虐待防止法が施行されて四年になります。数々の課題も浮かび上がってまいりましたので、この件につきまして、まずはお伺いをしてまいりたいと思います。
厚労省で昨年発表いたしました調査結果によりますと、高齢者に対する虐待件数が平成二十年度で、家庭内で一万四千八百八十九、前年度比一二%増となっております。また、介護施設内での虐待は七十件ということで一三%増に上りまして、十八年度の高齢者虐待防止法施行から二年連続で増加をしていることがわかっております。これとともに、市町村への相談、通報件数も、両者ともに増加をしております。法施行後三年を過ぎまして、住民や施設事業者などに理解が進んだ、そういうことが言えるかと思います。
高齢者虐待防止法が議員立法で成立をしまして三年目に入りましたが、この間、地域包括支援センターが整備をされまして、虐待防止、早期発見、権利擁護のためのネットワークも少しずつではありますが形となってきました。また、都道府県の虐待状況調査、公表、立入調査の取り組みなどもあらわれております。反面、数々の課題も浮かび上がってきていることも事実であります。
大臣に、まず、高齢者虐待への御認識、そして法制化の成果について、御見解をお伺いいたします。
○長妻国務大臣 これについては古屋委員が長年取り組んでおられるということで、これは民主党の議員からもよく聞いておりまして、まずは敬意を表します。
これは、施行されて約四年が経過をしたということで、そういう意味では、今数字もおっしゃられましたけれども、実態の把握というのはある程度できるようになってきたということであります。通報件数も相談も増加をしているということでございます。
その一方で、いろいろな御議論の中で、やはり六十五歳以上ということ、あるいは医療機関においての虐待はどうするのか、あるいは立入調査についても、おそれではいいのかだめなのか、いろいろな論点が、これは国会議員の中でも言われているということは承知をしております。
厚生労働省としても、今はこの法律の範囲内で、さらに高齢者虐待の防止に努めて高齢者の権利擁護をしっかり図っていきたいというふうに考えております。
○古屋(範)委員 大臣から、幾つかの論点、御指摘がございました。私たちも、最初に法律をつくるときにもさまざま議論になった点でございます。今回、改正をしていきたいという意向もありまして、当初の論点も含めて、今議論をしている最中でもございます。
その中で、虐待の定義ということについてなんですが、法の附則に、施行後三年を目途として、施行状況を勘案して検討を加え、必要な措置を講ずるということを当時定めまして、今、有志の議員のメンバーで検討を行っているところでもございます。
虐待の定義ということなんですが、これは当時も非常に議論になった点であります。高齢者の虐待というのは、加害者と被害者、こういう立て分けをするのが非常に難しい案件であります。また、児童虐待と違いまして、両者ともに大人であるということもございます。そういう上で、犯人捜しをする、加害者を見つけて罰する、それが目的ではないわけであります。
その中で、五種類の定義を当時、類型として立てました。身体的虐待、高齢者の身体に外傷を生じ、または生ずるおそれのある暴行。また、ネグレクト、高齢者の介護や世話の放棄、放任。また、心理的虐待、心理的に著しい外傷を与える行為。そして、性的虐待。最後に、経済的虐待。この五つであります。
アメリカにおいては、こうした法律は日本よりも先にできておりますけれども、アメリカの州法の中で、セルフネグレクトというもの、本人が全く生きる意欲を失ってしまう、自分は生きていても価値がない、死んだ方がいい、そのような状況に陥ってしまう、そういう者を放置してしまうということも定義に入れております。なかなかこれも難しい点があろうかというふうには思いまして、当時は類型に入れなかった経緯がございます。また、身体拘束、向精神薬の投与など、どこまで虐待とするのか、それも非常に難しい点だったと思います。
今回、虐待防止法を見直すに当たりまして、このセルフネグレクトを虐待類型の中に新たに追加すべきだというのが私の意見であります。
セルフネグレクトは、みずからの権利利益を侵害して、自分自身の生命、健康、生活を損なうままに放置している状態でありまして、これは、老人福祉法に基づく、やむを得ない事由による措置の対象として救済をされる道はあるにはあります。しかし、セルフネグレクトの状態にある高齢者の側から積極的に支援を求めるということは非常に考えにくいわけであります。
そこで、まず、セルフネグレクトの状態にある高齢者について、これを国としてしっかり把握して対応しているのかどうか、この点についてお伺いいたします。
○山井大臣政務官 古屋委員、御質問ありがとうございます。
思い返せば四年前、本当に公明党として、この高齢者虐待防止法の原案を中心になってまとめられたのが古屋委員でありまして、当時私も、園田議員を中心に、一緒になって民主党案を、うちの事務所の上で、秘書なんかも事務局になってもらいまして、つくって、それで与野党協議をしてこの法案ができ上がったわけであります。
しかし、三年後の見直し規定が入っておりますように、やはりこの虐待の問題というのはなかなか表に出ない問題でありまして、今、その見直しが必要だということで、党派を超えて議論をしていただいているところだと思っております。
お尋ねのセルフネグレクトについてですが、定義自体は明確ではありませんが、みずから介護サービスを受け取ることを拒否している方、あるいは認知症のために介護サービスを受けることが困難な方は、いわゆるセルフネグレクトの状態にあると考えられます。
厚生労働省としては、今年度から実施する、日常生活圏域ニーズ把握手法のモデル事業において、ひとり暮らしや引きこもりの高齢者の状態像やニーズの把握手法を検討することとしており、こうした事業等の展開により、セルフネグレクトの問題について検討してまいりたいと考えております。
○古屋(範)委員 ありがとうございました。
モデルケースとして、こうしたケースをこれから把握する努力をしていくということでございます。これからますます独居老人がふえていくと思いますし、現在、孤独死も増加をしているという状況であります。そういう中で、高齢者がみずから生きる意欲を失ってしまう、こういう状態、だれかが働きかけていかなければいけないんだと思います。これは、介護の問題とも重ね合わせまして、積極的な現状の把握に努めていただきたいと思っております。
このセルフネグレクトなんですが、これからモデルケースとして行っていくということでありますけれども、もっともっと積極的な介入が必要ではないかと考えております。今おっしゃったように、認知症の高齢者も非常に急増しているというところから、これを放置するというわけにはいかないと思っております。
セルフネグレクトを虐待防止法の定義に追加することによって、通報義務の範囲に含まれることとなり、その通報により、ある程度顕在化が図れるのではないか、市町村の措置に導かれることが期待をされる、有効な解決策につながってくると思っております。
この虐待の定義にセルフネグレクトを加えることについて、政務官はどのようにお考えか、お伺いいたします。
○山井大臣政務官 古屋委員、御質問ありがとうございます。
セルフネグレクトは、家族や介護従事者の手による虐待とは異なり、加害者が存在するわけではないことから、身体的虐待や経済的虐待とは同じ虐待の類型の中には入らないとは考えておりますが、私もつらい経験がありまして、私の知り合いの寝たきりの高齢者の方が、御主人が介護疲れで亡くなって、ひとり暮らしになられて、それからもう生きる意欲を失われてしまって、結局、最終的にはホームヘルプも食べることも拒否してしまわれて、そのまま亡くなってしまわれたというケースが身近にございました。
そういう意味では、本当にこういう方々をある意味で放置するというのも、やはり何とかならないかという気もしますので、先ほど申し上げましたモデル事業での実態把握にまずは努めていきたいと思いますし、このあたりはまさに超党派の議連の中でも御議論いただければと思います。
○古屋(範)委員 行政の側としてもそうした実態把握にしっかりと努めていただきたいというふうに思っておりますし、私たちは議員立法、改正の段階で、これは定義に含めて今後対応していく必要がある、私自身はこのように考えております。
また、昨年の三月なんですが、ちょうどもう一年になりますけれども、群馬県渋川市の高齢者入所施設、静養ホーム「たまゆら」で火災が発生をいたしました。十名が死亡するという非常に痛ましい事件でございました。また、墨田区が入所者十五名を同施設へ紹介していたということでありまして、入所者の多くは都内自治体から生活保護を受けている受給者でありました。
静養ホーム「たまゆら」は、実態は有料老人ホームですが、老人福祉法に基づく届け出をしていない、いわゆる無届け施設でありました。このような無届け有料老人ホームあるいは住宅型の有料老人ホーム、この環境の劣悪さ、あるいは身体拘束、虐待など、問題事例もあるということを指摘されております。有料老人ホームの約一割に達する三百七十七施設もの無届け施設が存在をしているとの指摘もされております。
厚生労働省は、無認可あるいは無届け施設の数、そしてこの中にある虐待の数を把握して対応されているのかどうか。また、この無認可、無届けの施設は第二条二項「養護者」に含まれるものではないか、この点についてお伺いいたします。
○山井大臣政務官 古屋委員、御質問ありがとうございます。
有料老人ホームに該当し得る施設であって、老人福祉法に基づく届け出が行われていないものについて申し上げますと、昨年十月末現在で三百八十九施設であると認識しております。
そして、老人福祉法に定める有料老人ホームに該当するのであれば、高齢者虐待防止法では、届け出の有無にかかわらず、養介護施設従事者等による高齢者虐待に該当することになります。したがって、そこで生じた虐待について、通報義務が課せられます。また、当該施設について、高齢者虐待の防止を図るために措置を採用すべきと命ずるなど、都道府県知事が適切に指導監督を行っていくこととなります。
なお、仮に高齢者虐待防止法で定める施設に該当しないところで虐待が行われた場合であっても、委員御指摘の同法第二条第二項で規定する養護者による虐待事案に該当し得るものであり、通報義務などがかかることになります。
○古屋(範)委員 養護者に該当するというお答えでありました。
しかし、やはりその辺の周囲の認識といいますか、また当事者におきましても、私は、今後改正の中で、こうした無届け施設もこの中にはっきりと明示をしていかなければいけないのではないか、このように考えております。
現行法でも十分そこに対応できるというお答えであったと思いますので、ぜひ、こうした痛ましい事件が連続しておりますので、無届け施設、ここに対するこうした火災の再発防止には強く取り組んでいただきたい、このことを求めておきたいと思っております。
それから次に、医療機関における虐待についてお伺いしてまいります。
これは非常に、法律を最初につくるときにも議論になった点であります。盛り込んではいないわけでありますが、医療機関における高齢者虐待について、厚生労働省としては把握をしていらっしゃるのかどうか。この点についてお尋ねいたします。
○山井大臣政務官 古屋委員、御質問ありがとうございます。
現在の高齢者虐待防止法における高齢者虐待の定義には、医療機関のうち、介護療養型医療施設の業務に従事する者による高齢者虐待が含まれております。高齢者虐待防止法に基づく対応状況等に関する調査によると、介護療養型医療施設に関して高齢者虐待の事実が確認されたのは、平成十九年度は二件、平成二十年度はゼロ件であったという結果が出ております。
その他医療機関における高齢者虐待の状況について網羅的に把握しているものではありませんが、医療機関や医療従事者は、高齢者虐待防止法上、高齢者虐待を行う側ではなく、高齢者虐待を早期に発見する側として位置づけられてきたものと承知をしております。
○古屋(範)委員 介護療養型に関しては掌握をしていらっしゃる。そのほかに関しては、虐待が発生したかどうかというのは現実には把握はしていないというお答えなんだろうと思います。
先月なんですが、兵庫県の病院で女性の入院患者、八十五歳の方なんですが、肋骨を折られた。当時の担当看護師、二十六歳の方なんですが、逮捕されました。医療関係者による入院患者への暴行事件を改めてクローズアップさせた案件であると思います。病院内での高齢者虐待というものを印象づける事件であったと思います。それも、被害者は一人ではありませんでした。立て続けに六人も肋骨を折るということでありました。それでも働き続けるという信じられない事件が起きたわけであります。
また、報道によりますと、病院での被害、二〇〇七年、北九州市の病院で、女性看護師が認知症患者二人のつめをはがして傷害罪に問われた。これで一審で有罪判決を受けております。それから、群馬県太田市の病院でも、男性看護師が当時六十七歳の男性患者の頭をけるなどして死亡させた。傷害致死罪で一審有罪判決を受けております。そのほか、病院内での被害というものは恐らく表面化していないのではないか、このように予測をされます。
私のもとにも、病院での虐待と思われる事態に遭遇して、どうしたらいいかといったような相談が寄せられております。
例えば、同じ病室のおばあちゃんが、介護する職員によっておしりをたたかれたり、ひどいことを言われたりするのを何度か目撃した。私の母もこの病院にお世話になっている手前、何も言えずじまいでした。時々、母は水分を余りとろうとしない。なぜかといいますと、水を飲み過ぎると怒られてしまう。多分、おむつを交換するときにそんなことを言われるんだろうと思います。この病院の介護職員による行為について、一体どこに相談をしたらいいのかという問題であります。
介護療養型医療施設については、今おっしゃいましたように、高齢者虐待防止法第二条五項一号におきまして規定をされているわけです。しかし、その他の医療機関についての規定はございません。法律制定の過程で、医療施設を含めるかどうか、あのときも大きな議論になりました。やはりこれは、漏れなく高齢者の尊厳を守る趣旨から、除外すべきではないという意見が寄せられております。
もちろん、現行法においても、医療機関における高齢者虐待については、医療法の規定に基づいて、国、都道府県知事、保健所を設置する市の市長または特別区の区長による監督権限の行使が可能でありまして、医療法を中心とした制度の枠内で処理されるという原則は守られるべきと思っております。
しかし、医療機関による虐待を明確に規定することによりまして、通報の範囲が拡大されて、高齢者虐待の防止に資する、このように考えますけれども、この点についてどうお考えになりますでしょうか。
○山井大臣政務官 古屋委員、御質問ありがとうございます。
確かに、四年前の議論のときにも、医療機関を含めるかどうかが大きな論点になったり、また、高齢者虐待防止法は正式名称は高齢者虐待防止・養護者支援法、つまり、介護する人を支援することなくしては根本的には虐待は防止できない、そういう理念のセットの法案になっておりますが、そのこととともに、この医療機関を含めるかどうかが大きな論点になりまして、まずは含めずにスタートして、見直しのときに議論をしようという宿題になっていたというふうに承知をしております。
現在、仮に医療機関において医療従事者による高齢者虐待があった場合には、高齢者虐待防止法ではなくて、医療法の規定に基づき、医療機関の開設者、管理者が適正な管理を行っているか等について都道府県等が検査をし、不適正な場合には指導等を通じて改善を図ること、そして、各都道府県等に設置されている医療安全支援センターが、医療に関する患者、家族からの苦情、相談等に対応するとともに、医療機関等に対する助言等を実施することといったような対応などが考えられます。
高齢者虐待防止法においては、既に介護療養型医療施設が対象となっておりますけれども、それ以外の医療機関も対象とすることにした場合には、高齢者の入院の多少にかかわらず対象とするのか、お子さんがたくさん入院している病院はどうするのかとか、そして、治療に伴う必要最低限の自由の制限との関係の整理をどう考えるのかといった論点も考えられるところだというふうに思っております。
これは、もう委員御存じのように非常に大きな議論でありますので、政府としてもここは当然議論をせねばならないと思っておりますが、議員の議連の方々の中でも御議論をしていただければと思っております。
○古屋(範)委員 高齢者の入院患者が非常に多いということから、医療関係者の方々も非常に御苦労なさっていることと思います。そういうことも勘案しなければなりませんし、関係団体の御主張もあろうかと思います。そういうことも配慮しながら、しかし、何らかの形で前進をさせていきたいと思っておりますし、今後、私たちもしっかりここの議論を深めてまいりたいと思っております。
それから次に、市町村の体制整備についてお伺いをしてまいります。
高齢者虐待防止法が機能するためには、市町村の体制整備が不可欠であります。
さきの調査結果からもわかったことなんですが、法施行後、対応が進んでいる市町村とそうでないところ、非常に差が大きくなっております。マニュアルなど整備がないところが五三・八%、さらに、市民啓発なども進んでいないところも一四・八%あることがわかりました。こうしたところでは、仮に虐待があったとしても、虐待であると認識をされず、対応するところまでは結びついていない。家族の中の問題だろう、そのような考え方がいまだにあるのではないかというふうに思います。
私の住んでおります横須賀市では、全国に先駆けて、平成十三年から、高齢者虐待防止のために、地域の高齢者の介護にかかわる関係者によるネットワーク事業が開始をされました。保健所、社会福祉協議会、長寿社会課、医療機関、在宅介護支援センター、民生委員、老人福祉施設、介護保険サービス提供事業者、また警察、ケアマネジャー、地域の関係機関がそれぞれの役割を生かしまして、協力連携をとりながら支援していくネットワークができました。こうした中で、虐待のサインを見逃さないというようなきめ細やかな事業を行っております。
こうした横須賀市の取り組みのように、ネットワークの構築は非常に重要な課題であることが実感をされるんですが、一方で、調査結果から、全国の関係機関介入支援ネットワークの構築の取り組みを見ますと、五八・九%がまだ実施をされていないということがわかっております。関係機関が連携をして、高齢者と介護者の双方をきめ細やかに支えていく体制づくりが重要であると考えております。
また、この調査結果から、経済的虐待が三千八百二十八件と、前年度から一二%ふえております。全体の二五・七%を占めておりまして、現場の福祉関係者からは、やはり景気の悪化、こういうものが影響して経済的な虐待、年金を奪ってしまう等々、こうした虐待がますますふえるのではないか、懸念の声が発せられております。
引きこもりの子供に年金などを勝手に使われ自分の生活もままならない、あるいは実家で子育てをするというシングルマザー、あるいはうつ病で就労できない子供を高齢者が面倒を見ているケース、非常に、家族による経済的虐待、経済的依存、いわゆるパラサイトといいますが、家庭内の問題もありまして、第三者が立ち入りにくい問題であります。行政や地域社会が高齢者の困り事を吸い上げる工夫、あるいは失業や引きこもりなどの対策を講ずる関係機関の連携も必要だと思います。
そこで、厚労省は平成十九年から、高齢者の権利擁護等推進事業のメニューの一つとして、権利擁護相談支援事業の予算も盛り込んで、ネットワークの構築の支援の取り組みを進めていらっしゃいます。この取り組みが全国の市町村に展開できるよう、来年度もこの予算を確保あるいは増額してさらに推進していただきたい、このように考えております。この点、いかがでしょうか。
○山井大臣政務官 古屋委員、御質問ありがとうございます。
高齢者の権利擁護等推進事業は、都道府県における高齢者の権利擁護のための取り組みを推進する事業であり、具体的には、都道府県が、高齢者の権利擁護に関し、弁護士や社会福祉士等の専門職による相談窓口を設置したり、虐待者と被虐待者とを離して一時的に施設等において保護する際に市町村間の調整を行ったりする場合に、要した費用を補助するものであります。
この事業においては、全都道府県で展開するだけの予算を確保しているものでありますけれども、実施をするか否かは都道府県に任されております。今後とも、都道府県の意見を聞きながら、高齢者虐待の防止や対応に役立つ施策を展開してまいりたいと思いますし、必要な予算はしっかり確保してまいりたいと思います。
また、委員のおっしゃった横須賀は、高齢者虐待防止についても、そして権利擁護についても日本のモデル地域でありまして、私もヒアリングで勉強させていただいたことがあります。
○古屋(範)委員 経済的な虐待も増加をしていく、あるいは一定の資産というものがあれば弁護士等を雇うということも可能なんでしょうが、わずかな年金もそうした中で奪われてしまうというような案件もございます。やはりそこには、こうした高齢者の権利擁護、それは高齢者自身もそうした概念をしっかりと持っていくということも重要でありますけれども、周りでこうした意識啓蒙、あるいはこうした事業の推進ということがまずは重要かと思いますので、そうした予算の確保、事業仕分けにめげず確保していただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
次に、立入調査についてお伺いいたします。
防止法の制定で、最も注目をされましたのが立入調査であります。しかし、法の規定では、立入調査の要件を「高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じているおそれがあると認めるとき」と定めておりまして、強制的な権限行使が現場で非常に困難である、本当に対応できるのかどうかの判断に苦労していると伺っております。
早期に高齢者虐待を発見して、虐待を受けている高齢者を適切に保護するために、この立入調査の要件を児童虐待防止法と同様に、高齢者虐待が行われているおそれがあると認めるときとすべきではないかとの関係者の御意見をいただいているんですが、政務官、この点に関してはどのような御見解をお持ちでしょうか。
○山井大臣政務官 古屋委員、御質問ありがとうございます。
本当に、四年前の議論の積み残しの課題が今改めて議論になっていることを痛感しております。
高齢者虐待防止法では、家族などの虐待によって高齢者の命や体に重大な危険が生じているおそれがあるときに限り、市町村がその高齢者の住居に立ち入り、必要な調査または質問をすることができることとされております。
そして、このことについて当時も議論になりましたのは、委員御指摘のように、これは児童虐待防止法の立入調査のハードルよりも非常に高くしてあるわけですね。その理由は、子供の虐待のときにはいち早く家の中に入らないと命が危険だ、ところが、高齢者虐待防止の場合には高齢者と介護している大人同士の関係なので、少しハードルが高くてもいいんじゃないか。逆に、介護疲れの介護者が弱って近所で介護をちょっと放棄みたいにしていたら、急にほかの人が家の中に入ってきて、ちゃんと介護しなさいと言うようなことが起こっては問題になるのかどうかとか、そういう児童虐待防止とちょっと同列に議論できないところがあるのではないか、そんな議論を四年前にしたことを覚えております。
ですから、そういう意味ではかなりハードルを高くしてありますので、このハードルが高過ぎて結局発見がおくれているではないかという批判も当然あると思います。このようなことを、政府としてもそろそろ見直しの時期でありますので議論をしてまいりたいと思いますが、また超党派の議員間でも、私たち政府にまず実態を把握する責任があるわけですから、今までのこの三年間の取り組みの中でハードルが高過ぎたのかどうなのか、そういうことも把握しながら、また議員の先生方とも議論をしていきたいと思っております。
○古屋(範)委員 児童虐待防止法の方は、より多く通報されるようにそのような規定をされていながら、やはり死亡事件が後を絶たない、一方ではそういう問題も残されているわけであります。
高齢者の方は大人同士であるということもありましたし、当時は、例えば嫁しゅうとの争いをすべて通報されたらどうなるのかとかまじめに議論したこともございましたが、やはりそこのところを、大人同士とはいえ、時代も違い、家族状況も変化をしている中で、どうしても法律による介入というものが必要になってきた時代だというふうに思います。ですので、私たちも、今議論している最中ですが、やはり少しずつ強化をしていく必要があるのかな、このような考えを持っております。
次に、最も重要な点であります養護者への支援についてお伺いをしてまいりたいと思います。
家族介護者、養護者への支援が非常に重要であるというふうに思っております。
今回、公明党も介護総点検運動というのを行いまして、要介護御本人、また家族への調査も行いまして、やはり家族にとっては非常に介護の負担というものが重い、これはもう心身ともに、身体的にも精神的にも、あるいは経済的にも大きな負担である、このような調査結果が出てまいりました。
私たち、この介護総点検の中で、高齢者が介護を受けている場所、これは七割強が自宅であります。やはり自宅の方が多いわけなんですね。潜在的には、住みなれた我が家で介護を受けたいと願っている高齢者が多いのではないかと思っております。しかし、家族が介護する意思があっても、実際には疲労こんぱいしてしまう、精神的にも限界に達してしまって、結局は高齢者へ、暴力ですとか介護放棄など高齢者虐待がふえている、こういう現状がございます。
自宅で介護する四分の一にうつ状態が疑われる、いわゆる介護うつの問題がございます。また、七十代の高齢者を介護する家族の半分以上が七十歳以上ということでありまして、いわゆる老老介護、この実態も深刻であります。
そこで、虐待防止とともに重要なことは、先ほど政務官もおっしゃいましたように、高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援というこの法律の名称にもありますように、養護者への支援が非常に重要であります。
私たちが行ったアンケートで、自宅で介護を受けている人のうち、困っていることは、介護する家族の負担が大きい、これが三五・八%と最も多くありました。本人や家族のぐあいが悪くなったときに一時入所できる施設がない、これが一八・八%と続いておりました。これは非常に、介護する側もいつ病気になるかわからない、病気になっても高齢者を預ける先が全くない、あるいは冠婚葬祭においても同じようなことが言えるかと思います。そして、在宅介護は家族の負担が重い、緊急時に入所できる施設をふやしてもらいたい、これが切なる声でありました。
家族に休息をとってもらうために、ショートステイあるいはデイケアなど一時的に施設に預かってもらうこと、あるいは短期間病院で預かってもらうレスパイトケア事業、この大幅な拡充が必要であると思っております。また、いつでも、どこでも、すぐに対応してもらえる相談窓口の整備も必要であると思います。
虐待防止法には、養護者への支援として、市町村に、養護者負担軽減のため、養護者に対する相談や助言、さらに、緊急の必要がある場合、高齢者が短期間養護を受けるために必要となる居室の確保、この規定を設けております。これは、政務官が当時、強く最後まで主張された点でありました。
私は、この措置を拡充して、要介護者の人数に応じて各自治体が一定程度の緊急時の受け入れ空床を確保しておくこと、また、介護の悩みに答えるために二十四時間の相談窓口を整備すること、これが必要なのではないか、このように思いますが、いかがお考えでしょうか。
○山井大臣政務官 古屋委員、御質問ありがとうございます。
古屋委員まさに御指摘のとおりでありまして、要は、虐待を受けた高齢者をどう守るかということはある意味で次善の策であって、この法律の趣旨というのは、いかに虐待そのものを未然に防ぐかというのが最大の眼目でありまして、その意味でも、養護者そして介護者の支援というのは一番重要なポイントだと思っております。
このため、デイサービス、在宅サービスの充実や、コールセンターによる電話相談支援、権利擁護に関する専門相談窓口を設置する事業についても、都道府県への助成を実施しております。さらに、被虐待高齢者を保護するための居室の確保については、緊急ショートステイを活用する場合、宿泊可能な施設における一時的な保護など、さまざまな方法が考えられるということを思っております。
そして、やはり今の高齢者虐待に象徴される介護保険の問題というのは、介護施設が満杯であってなかなか入れないということとも絡んでくると思うんですが、介護施設が足りないということは、裏返せば、それだけ在宅福祉の充実が不十分だということも裏返して言えると思います。
その意味では、今までのサービスが使い勝手が悪かったのではないかということで、同居要件を緩めたり、あるいは余りにも現場の権限、ケアマネジャーさんやホームヘルパーの権限がやはり縮小され過ぎていたのではないか、また、公明党さんも御主張のように、書類が多過ぎて本当に高齢者のために使える時間が現場で減っているではないか、そういうことについても改善の取り組みをしてまいりたいと考えております。
○古屋(範)委員 家族への支援というのは非常に重要だと思っております。
施設の拡充ということももちろん重要なんですが、家族が介護をしたいという意思を持っている方もいらっしゃるでしょうし、北欧諸国の介護制度などを見てみますと、意外と、家族あるいは周辺の人々が介護にかかわっているという比率が思いのほか高いわけなんですね。ですので、そうした場合、やはりさまざまな側面から介護している家族を支援していくということが不可欠であろうというふうに思っております。二十四時間、また三百六十五日、あるいはいざというときに家族を支援していく体制づくり、これが急務であろうというふうに思っております。
また、養護者への支援、また虐待をしない環境づくりということが非常に重要だというふうに思っておりますが、行政としても、特に在宅介護をしている方々への支援、これをしっかり行っていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
また、施設で働いている介護職への支援も必要だというふうに思っております。
介護現場で、全国的に今深刻な介護従事者の不足ということが問題となっております。特に、若い介護者の、非常に志を持って介護職についたにもかかわらず、低賃金のために結婚ができない、家庭も持てない、悩んだあげくに離職をしてしまうというケースが後を絶ちません。
今回、私たちも、介護職についてみたいかという街角アンケートを行ってみまして、希望が持てましたのは、十代の方々の答えの中に五割は、介護職についてみたい、そう答えた方がいらっしゃいました。ですので、そういう芽を摘まないように、私たちも介護職の処遇改善というものを行っていかなければいけない、このように考えております。
介護現場のスタッフが心の課題を多く抱えている、これでは利用者に対するケアの質にも大きな影響が出てまいります。適切なケアを提供できないだけではなくて、逆に、やむを得ず虐待まで発展してしまう、このようなケースもあるわけです。
こうしたスタッフの介護現場におけるストレスの要因として、夜勤等の不安や仕事内容の割に賃金が低い、休息時間がとりにくい、人手が足りない、ケアに不安がある、利用者同士のトラブルに対応できない、非常に多様な理由が挙げられております。また、研修の重要性が指摘されながらも、スタッフ不足のために、結局は日常業務に追われてこうしたものにも参加ができない、そういうところまで追い込まれてしまうのが実情なんです。
介護現場において高齢者虐待が起きないようにするために、現場の介護職員が余裕を持って働くことができる環境の整備、また必要な知識、技術を計画的に習得できる研修への参加、そして、高い倫理性と介護技術を持った人材が求められ、力を持った人材が介護現場に入ってくるような制度設計も必要です。
介護現場における高齢者虐待への防止対策、介護従事者への支援について、お考えをお伺いいたします。
○山井大臣政務官 古屋委員、御質問ありがとうございます。
在宅での家族の介護者のみならず施設の介護者も、本当に肉体的な疲労、精神的な疲労に悩んでおられる方も多いと思っております。
介護施設従事者について、ストレスを適切にマネジメントし、入所者に対する虐待を未然に防止していくことが極めて重要であるため、この従事者に対しまして、単独で高齢者虐待の防止を図るための教育を行えるようにすることが効果的であるというふうに考えております。このため、平成二十年度には、認知症介護研究・研修仙台センターで、介護職員による高齢者への虐待防止を図るため、ストレスマネジメントの教育システムなどを開発いたしました。
また同時に、やはり根本的な問題ですが、今やっておりますように、賃金を引き上げていって、それで一生の仕事として誇りを持って働いていけるようにしていくということも必要であると考えております。
○古屋(範)委員 介護現場では非常に御苦労されていると思います。私の身近にいらっしゃる方も、認知症の高齢者に介護をしようとしたら、いきなり非常に大きな力で何発も殴られたという方もいらっしゃいまして、非常に御苦労されている。そうした方々への支援、これは不可欠であると思います。ぜひ、さまざまな事業の推進をよろしくお願いいたします。
また、都道府県の役割強化についてお伺いしてまいります。
市町村が大変に苦労している、この中で、短期養護を受けるために必要な居室の確保、病床の確保、あるいは、狭い行政区内では、せっかく病床を確保してもすぐ見つかってしまうという可能性もありまして、高齢者のシェルターとして秘密性をどう確保するかという問題もあります。
都道府県の役割、これは助言、援助にとどまらず、市町村では対応できないこうしたシェルターの確保など、具体的な責任を都道府県に義務として課すべきではないかと思いますが、この点はいかがでしょうか。
○山井大臣政務官 古屋委員、御質問ありがとうございます。
高齢者虐待防止法においては、虐待の通報があった際の対応は基本的には市町村となっております。しかし、市町村が行う措置は広域に及ぶことも考えられ、都道府県は、市町村相互間の連絡調整、市町村に対する情報の提供などを行うとされております。
緊急ショートステイのベッドなどに関しましても、あいているところ、あいていないところあるわけでありまして、こういうふうなことに関しましても、高齢者の権利擁護等推進事業において、虐待を受けた方を施設に入所させる際に市町村間の調整を行ったりする場合など、都道府県に対して補助を行っております。
また、認知症の方に介護を行う従事者を対象として都道府県が研修を行う場合に、高齢者の権利擁護に関する講義を開催するよう、標準カリキュラムを示しております。
今、高齢者の虐待防止に関しましては、各市町村などが、高齢者虐待防止、同時に養護者支援窓口をつくっておりますので、ぜひとも、虐待が起こってからではなく、虐待が起こる前に養護者が気軽にそういう相談窓口に来られるような、そんな体制をつくってまいりたいと考えております。
○古屋(範)委員 時間が残り少なくなりましたので、最後の質問に参ります。
今回の法案の後期高齢者支援金につきまして、被用者保険グループでの総報酬割の導入についてお伺いをしてまいります。
今回の改正によりまして、健保組合等の後期高齢者支援金の支出が増加をすることとなります。景気の悪化によりまして厳しい財政運営が続いているのは、健保組合においても同じであります。協会けんぽの国庫補助を削減してその負担をサラリーマンに肩がわりさせる本法案は、国が果たすべき責任を放棄している、このように考えます。
健保組合は、二十一年度に六千百五十億円もの赤字が見込まれております。不況のために、この赤字額はさらに膨らむと予測をされております。これ以上の負担に耐えられるのか。前期高齢者納付金の負担が重くのしかかって、解散に追い込まれている組合もあります。組合制度の存続にかかわる問題であります。保険者間の財政調整については、保険者機能を低下させないために、必要最小限度にとどめるべきと考えます。
今回、後期高齢者支援金の算定方法に総報酬割を導入した見直しは、結果的には単なる国庫補助のつけかえと言わざるを得ません。さらに、新たな高齢者医療制度の検討段階にあるにもかかわらず、今回の改正で後期高齢者支援金の算定方法を見直す、これは理由が明確になっていないわけであります。
公明党では、この被用者保険の後期高齢者支援金への総報酬割の導入を取りやめて、これに伴う協会けんぽの負担金は従来どおり国庫から補助すべき、このように考えております。大臣、この点、いかがでございましょう。
○長妻国務大臣 まず、これは昨年の年末にかける予算編成の中で非常に、財政当局も含め政府内でもぎりぎりの判断をしたわけであります。
協会けんぽの財政が急速に悪化する中で、ほっておけばかなりの保険料の急上昇があるというような中で、まずは国庫補助率を三年間に限り本則にあります一六・四%に引き上げる、こういう措置は当然だということで、させていただいた。それでも保険料の上昇というのがかなり極度にありますので、それを抑えるということで、総報酬割導入によって、これは健保連の皆様とも、何度も足を運び、御理解を得るべくお話を申し上げたということでございます。
これは、満年度、平年度ではトータルで一千八百億円の支援措置でございまして、国庫では九百二十億円、総報酬割導入による捻出では九百十億円ということで、そういう意味では、協会けんぽの支援という目的の中で、国あるいは総報酬割というような仕組みの中で財政的な支えをさせていただきたいということで、我々、ぎりぎりの判断をさせていただいたところであります。
○古屋(範)委員 後期高齢者医療制度の廃止をマニフェストで掲げたにもかかわらず、それをそのまま温存し、まして、今回、国庫補助の分を肩がわりさせる、こうした本法案の改正に関しましては反対である、このことを再度申し上げ、質問を終わります。
ありがとうございました。