第175回国会 衆議院 厚生労働委員会 1号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 初めに、全国五十二の社会保険病院また十の厚生年金病院を運営する独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構、RFOについてお伺いをしてまいります。

 さきの通常国会におきまして、来年四月に新設予定でありました地域医療機能推進機構に社会保険また厚生年金病院を移管する、公的病院として存続をさせるという法案が提出をされ、審議をされ、衆議院を通過いたしました。公明党では、既に独自の運営委託先を持っており、現在の病院の機能、体制を維持したまま機構へ移行するということが困難になっておりました例えば東京北社会保険病院など、地域医療に重要な役割を担っておりますこうした各地の社会保険病院が存続できるよう、修正案も提案をしたところでございます。

 特に、この北区にあります東京北社会保険病院、私も現地に太田前代表とともに参りましたけれども、北区のみならず、板橋区、それから出産に関しましては埼玉県までカバーをしている。地域医療の非常に重要な役割を担っている病院でございます。

 その結果、各党の賛同も得て、この東京北社会保険病院等の四病院など厚労大臣が定める病院につきましては、同機構からの委託を受けて従来の委託先のもとで病院が存続できるよう改められました修正案が衆議院では可決をした経緯がございます。

 しかし、御存じのように、突然の首相交代ということ、それから、参議院では委員会の開催が中止をされまして、採決をめぐり紛糾したということでありまして、結局、最終的には参議院では本会議が開かれないままに国会を閉会したという前代未聞の事態が起きました。その結果、関係者が一日も早い成立を望んでおりましたこの法案が、たなざらしにされたまま廃案となってしまったわけであります。

 現在運営をしている独立行政法人は九月末には解散をしてしまう、新たな受け皿組織の設立を決めなければ病院の運営母体がなくなりかねない、そういう事態となってまいりました。こうした先行きの不安から医師や看護師がやめてしまう、こういう混乱を起こす懸念もあるわけです。

 閣法が廃案となった時点、その後選挙に突入をしたわけなんですが、公明党としても非常にこうした事態を憂慮いたしまして、しびれを切らしてと申しますか、自民党国対にも御相談をし、また民主党にもこちらから御相談、提案をするという形で、今回、RFOを二年間延長するという議員立法の提出となったわけであります。

 ただし、これはあくまでも緊急避難的な法案であります。RFOを二年延命させても、暫定的な運営主体であることに変わりはないわけです。職員がさらに流出しかねない、モチベーションもさらにもっと下がっていってしまうという懸念がございます。安定した公的病院として存続をさせるとの政府方針は担保されたとはこれだけでは言えない、現状を放置するだけにすぎないという見方もございます。

 報道によりますと、さきの法案が廃案になったときに、長妻大臣は各病院に対しまして、臨時国会に法案を再度提出して速やかに成立を図る、地域住民に安心してもらえるよう、また医療の現場に不安や混乱が生じないよう最大限に努力をするという文書を送られたそうであります。

 この短期間の臨時国会が決まってから、これはあくまでも短期間ですので、閣法を提出するのは無理だという御判断、先ほども答弁にございました。秋の本格的な国会に関しましても、ではいつスタートするのか、そういう中でどういう枠組みで議論ができるのか、さまざま不透明な要素がたくさんあります。

 こうした中で、閣法が廃案になった時点で、まず本来であれば政府・与党が、この後どうしていくのか、それに対して汗をかき、動いていくのが筋ではないか、私はそのように思っております。無責任ではないかと思っております。

 私の住んでおります神奈川にも、川崎社会保険病院等がございます。早急なる社会保険病院、厚生年金病院等の公的存続法案の成立を求める陳情書、これも私のもとに届いております。関係者がみんな求めておりますのは、公的施設として明確な存続法案の成立であります。

 そこで大臣、今後、政府・与党として、社会保険病院、厚生年金病院の公的存続を明確にする法案を、二年間先延ばしするのではなくて、私たちも提案をいたしました修正案も入れた形で閣法を速やかに提出すべき、このように考えますけれども、御決意はいかがでしょうか。

○長妻国務大臣 まず、今回の件で本当に全国の社会保険病院、厚生年金病院で働いておられる方々が御不安を持つということがあってはならないわけでありまして、先ほども御答弁申し上げましたけれども、いずれにしても、売却努力をするにしても、地域医療の機能は維持をする、これを前提としてそういう売却努力、そして地域医療の機能はきちっと維持をした上で地元の方、地方自治体、この方々も納得する、こういう前提があるということで、何かそれをもう全部なくしてしまう、土地を、更地を売却するとかそういう発想はもちろん全くないわけであります。そこを誤解なきようにまずきちっと伝えていくということが一点。

 その後、今後そういう病院の機能が、日々地域に貢献する病院として、どういう形態であれそれは続いていくわけでありますので、その中身がさらに改善できないのか、あるいはそれぞれの病院の有機的なネットワークというものがさらに強化できないのか、あるいはいわゆるガバナンス、その病院のきちっとした一体的運営がなされているのかどうかということについては検証をしていくということで、そして我々は検討をして、必要性があれば何らかの法案なり枠組みを考えていくということになると思います。

○古屋(範)委員 大臣、何度も地域医療を守るということをおっしゃっておりますけれども、ぜひ、重要な地域の医療を守るためにも、こうした通常国会に提出をされた閣法、修正案も含めまして、早急な提出、成立に向けて最大限努力をされていくよう、このことを再度要望しておきたいというふうに思っております。

 きょうは、次に医療制度について質問してまいります。

 報道によりますと、高齢者の医療制度につきましては中間取りまとめの案が出たとも伺っております。こうした高齢者の医療制度は非常に大きな問題でもあり、この議論はまた次の機会にしてまいりたいと思っております。きょうは、高額療養費制度の見直しについてお伺いをしてまいります。

 がんあるいは難病、重い慢性疾患の患者また家族にとりまして、高額療養費制度は、医療費負担が少しでも和らぐということ、セーフティーネットとして非常に重要な役割を果たしております。医学の進歩とともに医療費の自己負担というものは非常に伸びております。こうした現在の高額療養費制度を使いやすくしようと改定をするたびに、逆に複雑化をしているという側面があります。使い勝手が悪くなっているとの指摘もございます。

 この制度の問題につきましては、私たちも参議院選挙の重要政策課題に掲げて戦ってまいりました。これまでの予算委員会でも山口代表あるいは井上幹事長も取り上げておりますし、本委員会においても坂口元大臣から何度か提案があった問題であります。私も、たくさんの家族また患者御本人からも、長期にわたる医療費の支払いが大変だという相談を伺っております。医療費の負担に耐え切れない患者、家族、よくない言葉かもしれませんが、お金の切れ目が命の切れ目、こうなりかねない、そうした悲鳴が伝わってまいります。高額療養費制度を、経済的負担から治療をあきらめる患者たちを救うための制度にしていただきたいとの要望もございます。

 先日、日本リザルツ、これは飢餓とか貧困に対して取り組んでいる団体でありますけれども、結核対策も非常に熱心に取り組んでいる団体、白須紀子さんという事務局長の御紹介で、若い女性にお会いをいたしました。日本は結核の中蔓延国と言われていて、年間二万人以上が新規の結核を発病しているということなんですが、この女性は、二〇〇六年五月から半年間の結核による入院生活をした。

 完治はしていらっしゃるんですけれども、その後、さまざまな体の不調があって幾つもの診療科にかからなければいけない、そのために、診療科ごとの医療費というのは高額療養費の上限額にはぎりぎり届かないんだけれども、総合すると相当な医療費の支払いになってしまう、仕事もなかなかできない、両親の老後の蓄えをすべて使い果たしてしまった、自分がこうした病気でいること自体非常に心苦しい、そういうふうにおっしゃっていました。就職もしたいし結婚もしたいんだけれども、結局は経済的な負担を相手にかけてしまうかもしれないということで、非常に涙ぐみながら制度の拡充を訴えていらっしゃいました。

 高額療養費の診療科ごとの算定方式につきまして、政令改正をされて、ことし四月以降、病院単位で診療報酬明細書を作成する取り扱いとなることから、高額療養費の算定についても今度は病院単位で行うことになったということで、これは一つの前進であると思っております。しかし、病院が別であれば別計算になるという問題が残されております。まず、この政令改正について御説明をいただきたいと思っております。

 また、高額療養費制度それ自体も知らないという方々も多くいらっしゃいます。ということで、今回の高額療養費の算定が病院単位となったことについても患者に周知されなければ意味がないということになってしまいます。この算定方法の変更を国民に知らせていく方法、これについてもお伺いしたいと思います。

○足立大臣政務官 私も、海外で暮らしたことのある人たちからよく言われることですが、日本の国民皆保険制度はすばらしい、その中でも高額療養費制度というのはやはり極めてすぐれているということをよく言われます。しかし、今委員がおっしゃるように、なかなか認知度が高くなっていないという問題もございます。

 そんな中で、この四月から政令の改正があった事柄についてまずは申し上げます。

 これは、旧総合病院といいますが、百床以上の収容施設を持って、内科、外科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科等を有している、もう少し条件がありますけれども、そういったところが診療科ごとにレセプトをまとめていたという実態です。それを病院単位にするということで、これで、入院施設を持つ医科のところはほぼ全部、病院単位で見るということになったわけでございます。

 しかし、このことがなかなか知られていないということも今御指摘があったとおりでございますけれども、この政令改正は、この内容を各保険者、そして都道府県、地方厚生局に周知しております。

 高額療養費制度そのものについてもまたわかりにくいという指摘も今ございました。これは私は、やはり保険者機能の一つの重要な要素に、この高額療養費制度をしっかり周知するということも入っていると思いますので、一義的には、保険者から被保険者に対して申請手続とかあるいは情報提供をしっかりやるということが大事だと思います。

 厚生労働省としましても、七月二十三日に、ホームページに高額療養費制度に関する手引というものを掲載させていただきまして、さらに国民の皆さんがよりわかりやすくなるようにしていきたい、そのように思っております。

○古屋(範)委員 保険者等、周知徹底をしているということでございますけれども、これは朝日新聞五月十八日付の記事でございますけれども、やはり高額療養費制度は非常に複雑であるという記事であります。

 この中にも、関東に住むCMLの男性患者なんですが、九年前からグリベックを飲んでいるそうなんですけれども、三カ月に一回、二十万円の治療費を払っている、しかし、高額療養費制度のことは一昨年、患者団体の会報で初めて知ったということでありまして、この家族からも、親類から二百五十万円の借金をしたこともある、どうして病院で何も教えてくれなかったのかという記事が載っております。

 ですので、ぜひもう少し積極的な周知徹底、今、がん患者も非常に多いことでもあります。高額の治療を受けていらっしゃる方が非常に多い中でもありますので、政府としても厚労省としても、もう一歩積極的な周知徹底を行っていただきたい、このように思っております。

 次に、自己負担限度額の引き下げについてお伺いをしてまいります。

 公明党は、高額療養費の自己負担限度額の引き下げを強く訴えてまいりました。がん対策、また難病対策、私も今取り組んでおりまして、こうした患者の方々の大変さ、治療の大変さ、やはりそれもありますけれども、経済的負担、生活の困難さ、これは本当に厳しいものがあります。特に治療費におきまして、慢性疾患の患者の方々もそうなんですが、高額療養費の毎月約八万円の限度額を生涯ずっと払わなければいけない、こういう方々がいらっしゃるわけなんです。

 ここで問題なのは、年収二百万くらいの、低所得者よりも少し多い所得層で、これが一般所得の区分に入ってしまうということであります。この点については、一月の予算委員会でも公明党の井上幹事長から、また坂口元大臣からも指摘があった点であります。

 公明党では、医療費の窓口負担が一定額を超えた場合に払い戻される高額療養費制度を見直し、七十歳未満の年間所得が三百万円以下世帯、住民税非課税世帯を除く、この負担上限額を現行の月額約八万円から月額約四万円に引き下げる、このことを掲げております。

 景気の低迷で、やはり年収二百万あるいは三百万の人たちがふえております。限度額がきついという人も多いはずなんです。こうした低所得者の区分を少しでも超えてしまう方々、これが一般区分となってしまうわけです。そうなりますと、自己負担限度額が二倍以上にはね上がってしまうというわけなんです。この負担を軽くするため、一般区分をもう少し細分化して、所得の低い方の負担限度額を引き下げるよう求めてきたわけであります。

 この点につきましては、社会保障審議会の中で議論が始まっているというふうに承知をしております。速やかにその具体案を取りまとめて、早急に実現をしていただきたいと思いますけれども、この議論、どのような状況なのか、お伺いいたします。

○足立大臣政務官 社会保障審議会の医療保険部会、これはまだ七月十四日が第一回目でございます。どの程度進んだかということに対しては、まだ一回ですのでなかなか申し上げにくいんですが、これはもう委員、また坂口委員を初め公明党の諸先生方も何度も質問されたことでもございますし、まさに七月十四日にスタートしたのは、高額療養費制度のその負担の部分をどうするかということと、出産育児一時金、今年度いっぱいで終わってしまう制度をどうしていくかということを主に話し合っていただくために設けたことでございます。

 そんな中で、どんな議論があったかということは、その審議会の中で申し上げたのは、通常国会で質問や要望のあった事項、後で議員がさらに御質問されると思いますから、そのこと以外のことを申し上げますと、患者負担の実情を踏まえて自己負担限度額を引き下げてほしいということ、その場合の財政影響を示してほしい、あるいは、自助自律の考えを阻害しないように議論する必要があるというような意見が出されておりました。

 まさにおっしゃるように、住民税非課税世帯と高額な上位所得者の間が余りに広過ぎるということはおっしゃるとおりでございますので、まさにこのことを二十二年度中に議論するという方針で臨んでおります。

○古屋(範)委員 第一回目が開かれたということでございますけれども、その中でも出たかと思いますけれども、外来における現物給付についてお伺いをしてまいります。

 通院治療の場合、高額療養費制度を使っても、還付されるまでの三カ月程度、高額な立てかえというものが非常に負担が大きいわけです。患者にとって非常に大きな負担となっております。がん治療でも、入院治療よりも、今さまざま治療方法も進歩して、外来治療がふえております。特に高額な抗がん剤治療、外来が多く、立てかえ総額が百万に上るケースもあると伺っております。こうしたがんあるいは慢性疾患の治療は終わりなく、三カ月待つことなく、超過分を支払わなくてよい制度があれば、患者、家族がどんなに安心して治療を受けられるかということであります。

 この通院の医療についても、入院と同様に立てかえなしで済む方策がないかどうか、これについて大臣にお伺いしたいと思います。

○長妻国務大臣 これは先ほど足立政務官からも、高額療養費は世界的に見ても非常にすぐれた制度だという話がありましたが、やはり何点か御指摘をいただいた論点の一つが今のお話でございます。

 入院の場合などは、これは立てかえないでも済むわけでありますが、特に窓口、外来の場合は、一たん立てかえていただいて、その後お金をお戻しするということで、これについても、事務の問題も含めいろいろな障害があるわけでありますが、これも同じように、先月の十四日から社会保障審議会、これは患者さんも入っておりますし、医療関係者もおられますし、保険者もおられるということで、その皆さんで、この現物給付化についても見直しの中の一つの論点として今議論を始めているところでございますので、これについても一定の期間、議論をしていきたいと思います。

○古屋(範)委員 もう時間が残り少ないので、二問まとめてお伺いをいたします。

 七十歳未満では、二万一千円を超えないと世帯で合算できないという制度になっております。この二万一千円という制限をぜひ撤廃していただきたい。なぜ二万一千円なのかというふうにも思いますし、そのことをお伺いしたいというふうに思っております。これが一点です。

 それから、最後になりますけれども、高額療養費の高額長期疾病、これにつきまして、対象となる疾患が現在三疾患となっております。経済的負担によって治療を中断せざるを得ないという患者を生まないために、長期にわたって継続して治療を続ける患者へ医療負担の軽減策の一つとして、高額療養費における高額長期疾病、特定疾病の特例の対象を三疾病から広げていくべきである、このように考えております。

 この二点について、大臣のお考えをお伺いいたします。

○長妻国務大臣 これも、七十歳未満に限ると、自己負担が一カ月二万一千円以上のレセプトでないと、御家族がいる場合、合算できないということがあります。もう一点は、高額長期疾病ということで、今は確かに三疾病しかございません。

 これについて、両方についてお答えをいたしますけれども、双方ともなかなか直ちに実行するというのは非常に難しいというふうに感じております。ただ、中長期的な課題として今後検討課題とさせていただきたいというような答弁にとどめさせていただければと思っております。

○古屋(範)委員 医療が高度化することによってふえてくるこういった医療費の負担、こういうものに対しまして、高額療養費制度が国民にとって使いやすい制度となるよう、ぜひ前向きな御議論をこれからも進めていただきたいと思っております。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

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