第177回国会 衆議院 厚生労働委員会 6号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 このたびの東北地方太平洋沖地震による被害、これは今、国民に対して大きな困難をもたらしております。被災された皆様に心からお見舞いを申し上げますとともに、今こそ復興に立ち上がるとき、このように私自身も決意をいたしております。

 公明党としましても、対策本部を設置いたしまして、被害状況を今全力を挙げて調査しております。被災者が多い上に被害も広範囲に及んでおり、避難生活の長期化を見据えた対応、そして生活再建支援対策が今後重要になってまいります。

 壊滅的な打撃を受けた自治体が非常に多い。国や都道府県による支援、また、市町村の財政力に配慮した対応が求められているわけであります。さらに、膨大な量の災害廃棄物の処理の問題もございましょう。また、農地の壊滅的な被害、農水産業の甚大な被害、これも想定をはるかに超えております。加えて、いまだ福島の原発の様相というのは予断を許さない状況下にございます。避難また屋内退避が長期間に及ぶこととともに、食品や水道等への広域的な放射能汚染への懸念が広がっております。

 政府においては、国民の復旧復興活動のサポートに全力を挙げるとともに、一日も早い復興に向け、万全を期していただきたいと思っております。特に、今回の被災地の復旧復興と被災者支援には、十分な予算措置、これが肝要であることは言うに及ばないことでございます。拡大する一方の被害状況を見ますと、現在、与えられた二〇一〇年度の予備費、二千三十八億ということですが、これもあっという間に底をつくことでしょう。

 政府は二十三日、今回の大震災による住宅あるいは道路などの直接的な被害額が十六兆から二十五兆に及ぶということを試算されました。自然災害では最大規模のものであると思います。この試算には福島の原発事故、また放射性物質による汚染の影響は織り込まれていないわけですので、当然、これを上回る額になるということが予想されます。

 こうした震災の復旧復興に必要な財源について、当面、補正予算の編成が急務であります。さらに、国債の新規起債あるいは臨時増税案まで浮上してきている。その前に、やはり思い切ってこれまで掲げていらっしゃった民主党のマニフェストは見直すべきである、子ども手当についても抜本的にこれは見直さなければいけない、私はこのように考えております。

 私たちも、国会議員の歳費三割を復興に充てよう、このことを提案申し上げ、自民、民主ともに合意をいただいたということでございます。日本全体でこの復興に、皆が一丸となって進んでいかなければいけないときであります。子ども手当の優先度は高いとは言えないと思います。高速道路の無料化も、農家の戸別補償に関しましても、同じであります。災害の復旧より優先する施策とはとても思えません。

 いずれも、確かに民主党の看板施策でありました。しかし、ここはもうメンツにこだわっている場合ではないと思います。震災復旧の財源にこれを大胆に切りかえていく必要がある。そうでなければ、国民は納得いたしません。例えば、子ども手当を返上して、親を亡くした子供たちのために使う、農家の戸別補償は農地の復興に充てていく、あるいは高速道路の無料化も、今甚大な被害をこうむったインフラ整備に充てていく、こうしたことがなければ、幾ら国民全体で御負担をといっても、これは到底、国民は納得いたしません。

 不要不急の施策は来年度予算から削る、凍結をする、組み替える、こうした修正を行って震災対策に回すべき、このように思いますが、大臣、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、藤田(一)委員長代理着席〕

○細川国務大臣 かつてないような大災害でございまして、この災害を受けました皆さんをまず救済、支援していくこと、そして復旧復興に向けて、これは国を挙げてやっていくということが今喫緊の最も大きな課題だというふうに思っております。そのためには、また膨大なお金もかかるわけでございまして、そのお金をどのように調達していくか、こういうことになっていくわけでございます。

 そこで、委員いろいろと御提案をいただいております。その資金をどのようにして調達し、使っていくかということについては、これはまた、優先的にどうやっていくか、どこから優先的にお金を持ってくるか、いろいろあるかと思います。ただ、委員は、子ども手当について、このお金をこの災害の復旧復興に使うべきだ、こういうふうにおっしゃられておりますけれども、次世代を担う子供に対する支援、これもまた一方で大変重要だと私は思っております。

 したがって、二十三年度の子ども手当法案について、これをすべて、これをぜひ通させていただきたいというふうには当然私は考えておりません。ここはやはり、子ども手当法案を提案しましたけれども、このつなぎ法案を通していただいて、そして、与野党お互いに議論をしていただいて、そこで子ども手当の内容を決めていくことも大事かというふうに思っておりまして、子ども手当法案に考えておりましたそのお金を一部復旧復興の方に出すということも、これもまた私は大事なことかと思っております。

○古屋(範)委員 大臣も、二十三年度の子ども手当法案、これをすべて成立させ、それを実行するとは限らないという御答弁であったかと思います。であるならば、なぜ取り下げないのか、ここが非常に理解できない点でございます。単年度の法案、六カ月のつなぎを出してこられて、それで、その中から財源を回す、これでは筋が通らない、このように思います。

 生活基盤を失った被災者、これはまさに、今回は津波でございますから、もう土地もない、家もない、家族も失った、そこからどうやって復興をなし遂げていくのか。これはもう、中途半端な対応ではとても乗り切れるような災害ではございません。未曾有の震災への対応には、民主党マニフェストの凍結あるいは抜本的な見直しにより生じた財源を支援に充てるべき、こうした覚悟、大胆な決断が課せられております。大臣、それでも二十三年度法案をなぜ取り下げないのか。

 改めて、子ども手当二万六千円を全額国費で支給するというこの二〇〇九年マニフェストについてお伺いをしてまいります。

 子ども手当は、民主党が二〇〇九年の衆院選挙で掲げた看板施策。そのマニフェストに基づいて考えるならば、二十三年度法案は、平成二十三年度から中学生まですべての子供を対象に月額二万六千円全額国費で支給をする、こういう法案になっていなければいけないわけであります。

 私の本会議の質問に対して菅総理は、マニフェストは国民との約束であり、引き続きその実現に向けて取り組んでいくのが基本であると考えている、このように答弁されました。マニフェスト実現に向かっていく、二万六千円に向かっていくと答弁されています。

 その一方で、民主党の岡田幹事長が子ども手当の見直しに言及し、その中で、児童手当法の改正であっても新法でも問題は中身だ、各党と胸襟を開いて話し合うべきだ、このようにおっしゃっていまして、二月二十八日午前の衆院予算委員会で菅直人総理は、与野党協議の中での可能性として発言されたと語っています。理解を示したわけです。さらに岡田幹事長は、この一カ月後の先週二十六日、子ども手当の本体について取り下げてもよいと発言したと報じられております。このように、非常にさまざまな発言が飛び出している。

 被災地域の子供たちは、経済的支援に加えて精神的なケアも必要、これまで以上に手厚い支援が必要となります。さらに、今回の震災は全国の産業にも大きな打撃を与えています。御存じのように、部品が一個、東北でつくっていたものが届かなければ、西日本にある会社だって生産がストップしているんです。計画停電で、大きく今、経済的な打撃を受けております。

 家を失い、また水も食料もない、寒い、親族を失った、親を失った、こういう子供たちの支援、これが優先じゃないですか。子育て支援、これは重要だとおっしゃいました。私たちだって同感です。子ども手当の前の児童手当、これは公明党が四十年間やってきた施策であります。私たちも子供への支援は大事だということは重々わかっております。しかし、このような状況で何が優先か、これは再考が必要であります。

 その上で、きょう記者会見で山口代表は、公明党としてこのような案でいくということを発表いたしました。我が党といたしましては、対象を中学三年生まで、月額一律一万円に引き下げる、所得制限は従来の児童手当法に沿った形とする。ただし、被災地においては配慮が必要、所得制限を設けないでいくべきだ。そうしますと、全体で一・九兆円の財源が必要となります。二十三年度の子ども手当法案、そのまま実行されますと二・九兆円の財源が必要。そうしますと、一兆円程度震災復興にこれを充てるべき、これが公明党案であります。

 大臣、今回が非常によいチャンスであるとも思っております。潔くマニフェストを変更して、子ども手当の抜本的な見直しを行って、二十三年度法案を取り下げるべき、こう申し上げたい。そして、直接的な被害額が十六兆から二十五兆と言われるこの災害の復興に充てるべきです。子ども手当二・九兆、今回のつなぎ法案でも二・二兆という巨額な財源が必要となります。この点についていかがでしょうか。

    〔藤田(一)委員長代理退席、委員長着席〕

○小宮山副大臣 古屋委員もよく御承知のとおり、日本ではとにかくこれまでGDPの中の〇・八%しか子供にお金を使ってこなかった、そうした中で子供政策が必要だということは重々おわかりなことだというふうに思います。

 今回、私ども、二万六千円を目指してはまいりましたけれども、こういう状況の中で、つないでいただいた後で、皆様方から、今おっしゃったような公明党さんの案もいただきながら、何が必要なのかということをきちんと議論して、それがまとまった際には私どもの二十三年度の法案は取り下げさせていただくと言っておりますので、これはちゃんと論理的には合っていることだと思います。つなぎ法案は半年分ですから、その先の半年をどうするかということもございますので、ただ、この後は真摯に皆さんの御意見も伺いながらやっていきたい。

 ただ、その際に、先ほど城島提出者もおっしゃいましたように、子供の世帯だけにいわゆる増税になるような形、もう控除を外しておりますので、そこで子供の家庭だけ増税になるのはおかしいので、これは国民にちゃんと平等に負担をいただく中で、この子ども手当をどういう形にすれば、今のような非常事態になった中で、しかも子供の世帯にしっかりとした手当てもしながら御負担も公平にいただく、そういう方法をぜひ胸襟を開いて各党で御論議をいただきたい、そのように私どもも思っております。

○古屋(範)委員 つないだ後、皆さんで考えましょう、そういうお答えだったかと思いますけれども、じゃ、そのつなぎ法案の後、子ども手当をどうするか、その質問に入ってまいります。

 まず、この二万六千円の支給額の根拠、これについて私が昨年長妻大臣に質問したときは、「第一に、子供の育ちに必要な基礎的な費用の相当部分をカバーする、第二に、諸外国の手当制度と比較しても遜色ない水準とするといった点を総合的に勘案して、」というお答えであった。先日の本会議で細川大臣は、子供の育ちに必要な基礎的な費用の相当部分をカバーすること、次に、諸外国の手当制度と比較して遜色ない水準とする、そのようなお話でありました。これは長妻大臣と全く同じ、官僚の書いたものでありましょう。

 そして、菅総理は本会議で、この質問に対して、当時、一瞬ちょっとびっくりしたことを覚えているという発言をされました。私、非常に驚きました。全国民も驚いたことと思います。

 さらに、このびっくり発言の前、二月初めの予算委員会では、我が党の竹内議員が、もともとの子ども手当は一万六千円であった、この積算根拠はとの質問に対して、櫻井財務副大臣は、支給額を議論した会合に出席していないので根拠については存じ上げない、あるいは野田財務大臣は、突然一万円上げた根拠について背景は存じ上げていない、非常に無責任な答弁をされています。

 総額二兆九千億の巨額の財源を充てる子ども手当、これに対して、財務大臣、副大臣、一体この二万六千円、これは本当に子育て世代にとっても、この子ども手当を一年間、単年度で昨年支給して、ことしがわからない、それだけでも子育て世代にとっては迷惑をかけているということも言えるわけです。にもかかわらず、二万六千円の根拠がわからない。

 菅総理を初め、こうした現閣僚のあいまいな答弁。この根拠を欠くマニフェストに巨額な財源を投じる必要が一体あるのか。子ども手当法案の成立に対する真摯な姿勢、何としてもマニフェストを実現しようとか、二十三年度の子ども手当法案を実現させる、そういう情熱のかけらも感じられません。ですから、本法案の審議が本格的に始まる直前につなぎの話が出てきたんだと思います。本気で二十三年度法案を成立させるおつもりがあるのか。今回の不測の事態に便乗したつなぎ法案、これは問題の先送りにすぎません。この際、児童手当の原点に戻った上で考え直すべきだというふうに私は考えます。

 この二十三年度子ども手当法案、既に審議に入っている状態でつなぎ法案、なぜ、六カ月で切れるつなぎを出してきて、そして今この場でそれよりも先に審議をしなければならないのか。そして、この二万六千円の根拠、再度これについてもお伺いをいたします。

○小宮山副大臣 二万六千円の根拠は、別に官僚が書いたものではございません。これはもともと民主党の子供政策の中でつくったもので、子供たちの育ちにかかる経費はいろいろな計算がありますけれども、二万六千円のもとになっているのは、子供たちの最低限の生活費と教育費、これはゼロ歳から中学生までさまざま違いますけれども、それを平均するとおよそ二万六千円に近い二万五千幾らかになるということで編み出したものでありまして、これは民主党が子供政策の中でしっかりと根拠を持ってつくった数字ですから、官僚が書いたものではございません。

 それで、いろいろなことをおっしゃったので、どこにお答えをしていいかわからないんですが、二万六千円はきちんと根拠があるということ。

 そして、そもそもは年少扶養控除と配偶者控除を廃止して子供の数で割った一万六千円からスタートした、それが一万円積んだ二万六千円になったというところで、そこの根拠のところ、それの出てき方について、菅さんや岡田さんは、そのときは一瞬びっくりしたということを多分正直に言われたんだと思いますが、その後、議論の中で、やはりその二万六千円の必要な経費を出していこうということで積み上げたものでございますので、それはきちんと根拠を持ってやってきたものだと思っています。

 そして、先ほどから申し上げているように、さはさりながら、やはりこういう事態の中でもあり、ただ、もとへ戻ってしまいますけれども、この緊急なときにつなぎ法案を出さないと、さまざまな自治体や国民の皆様にも御迷惑をかけるということで、与党の方でこういうつなぎ法案を出されましたので、別にここでごまかそうとかいうつもりはなく、私どもがつくりました政府案は、これはぜひその趣旨は生かしていきたいと思っているものです。

 ただ、金額やそのほかのやり方については、これは各党で、こういう事態の中で御議論をいただいて、建設的な議論をしていただきたいということを申し上げているので、それは私どもの本当に子供たちのためを思う政策の真意でございますので、ここは掛け値も何もなしに、ぜひそういう形でお願いをしたいと思っております。

○古屋(範)委員 二十二年度単年度で出してきて、二十三年度も単年度、そしてつなぎ。これは非常に場当たり的と言わざるを得ません。

 もう時間ですので、最後の質問に移ります。総合的な子育て支援について伺ってまいります。

 保育所利用の仕事と子育ての両立支援、この認識について、読売新聞の調査におきましても、首長アンケートで重視する子育て支援策として挙げられたのは、まず学童保育の充実、六五%、また保育所の拡充、六一%、これが目立っております。これに対して、子ども手当の維持拡充は一二%でありました。非常に低い。この結果からも、全国の知事、市町村長は、保育所整備をするための地方への財源を望んでいるわけであります。

 実際、保育所待機児童数は昨年十月一日時点で四万八千三百五十六人、前年度から二千二百九十八人ふえました。そして、この中には、潜在的待機児童、あるいは東京都の認証保育所などの自治体独自の保育所、あるいは認可外保育施設を利用している児童数は含まれておりません。

 他方、女性の育児休業の取得を見ると、平成二十一年度で八五・六%まで増加をしております。この数値は育児休業を取得する以前に職場をやめた方は含まれず、いまだに女性の六割以上が結婚や出産を機に退職している現状があるということであります。御存じのように、働きたい、あるいは働かねばならない、しかし保育所に入れない、認可外保育所に入れれば高い、自分が稼いだ給料もそこで消えてしまう。この現状を御存じでしょう。

 そこで伺います。

 政府は、認可保育所を希望しながら入所できず、やむを得ない理由で認可外保育施設を利用している数がどのくらいいるか把握をしていらっしゃるのか、また同様に、認可保育所の基準を満たしていながら自治体の財政事情等により認可されていない認可外施設がどのくらいあるのか、あわせてお答えいただきたいと思います。

 また、こうした現状を打開するために、仕事と子育て、この両立を可能とするために、ぜひ今回、住民税の年少扶養控除の廃止分、この増収分に関しましては、子ども手当ではなく、それぞれの自治体の地域の実情に応じた子育て支援、保育サービス、現物給付に回していただきたい。この記事の中にも、横浜市の市長はそうおっしゃっています。この点に関して御見解を伺います。

○小宮山副大臣 保育所の待機児童の数は、先ほど委員がおっしゃいましたのは秋の数で、秋は春よりも多くなるので、昨年の四月一日現在は二万六千人ということでございましたが、それに対して認可外保育所を利用している人は十八万人。ただ、このうちのどれだけの割合の方が本当は認可に入りたかったとおっしゃっているのかという、その正確な数字はありません。

 また、都の認証保育を初め、認可外保育所でも基準を満たしているところがあるということは認識をしておりますが、正確な数字はつかんでおりません。

 そして、おっしゃいますように、確かに保育所が必要だということは、私も体験もし、身近でもよくわかっておりますし、そういう意味では、子ども・子育てビジョンの中で、毎年五万人分保育サービスをふやすということを考えておりますし、この震災がありましてちょっと今ストップをしておりますが、幼保一体化などの新しい子ども・子育てビジョンの中で、しっかりとそういう子供の居場所については対応していきたいというふうに考えているところです。

 そして、最初におっしゃった、市長さんたち、各地方の皆さんとも協議の場を持って、そこのやり方については、なるべく自治体がニーズに応じてそうした子育てサービスができるようにということもやっていきたいと思います。

 長くなって済みません、もう一点だけ。

 先ほどいろいろ希望のお話がありましたけれども、今でも、子育てをしている方たちが一番望んでいらっしゃるのは、経済的負担にこたえてほしいということであることを一言つけ加えさせていただきます。

○古屋(範)委員 その数を把握されていないということ自体、問題であるということを指摘しておきます。

 この大震災の中で、不要不急なものは震災復興に回すべき、そのお覚悟をお示しいただきたい。そのことを申し上げ、質問を終わります。

 ありがとうございました。

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