第179回国会 衆議院 予算委員会 4号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 きょうは、医療分野における諸課題、特にみずからの政策テーマを中心に質問をさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。特に、安住大臣、初めての質疑になりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず初めに、公明党がこれまで取り組んでまいりました脳脊髄液減少症についてお尋ねをしてまいります。

 この脳脊髄液減少症といいますのは、交通事故あるいはスポーツなどによりまして、頭部あるいは全身を強打することで脳脊髄液が漏れ、頭痛あるいは倦怠感に悩まされる、それからさまざまな症状を起こす病気でございます。これまで医学界では、何らかの衝撃で髄液漏れが起きることはないと否定的な見解を述べておりました。事故による同症の発症を訴える被害者と保険会社との間で、補償をめぐる訴訟が各地で相次いで起こされております。

 私は、二〇〇三年十一月に初当選をいたしまして、すぐに患者会、また専門医とも会いました。その四カ月後なんですが、平成十六年三月に脳脊髄液減少症、国会で初めて質問主意書を提出いたしました。そこで治療法の研究あるいは保険適用を求めました。さらに、公明党では、その二年後、十八年に、他党に先駆けまして、党内にこの問題のワーキングチームを設置いたしました。これまで、脳脊髄液減少症の治療法の確立、あるいはこの治療法でございますブラッドパッチ療法という療法への保険適用など、対策強化を繰り返し述べてまいりました。

 こうした取り組みが実を結びまして、厚生労働省の研究班が、平成十九年、統一した診断や治療の指針づくりに着手をいたしました。そして、先月、十月十四日になりますけれども、画像による初めての診断基準が発表されました。初めての統一基準ができて、患者救済への大きな一歩が期待をされているわけであります。

 私が質問主意書を提出したその答弁には、「合理的に疑わせるに足るデータ等にこれまで接したことはなく、」というような非常に冷たい答弁書がそのときは返ってまいりまして、以来、七年以上たって、ようやくここまでこぎつけることができたと感慨深いものがございます。

 そこで、今後は、効果的な治療法が確立をされていくべきだということが新たな課題となってまいります。

 治療では、自分の体液を採取して、腰や脊髄の硬膜の外側に注入をして、脳脊髄液が漏れる穴をふさぐ、これがブラッドパッチ療法という療法です。日本医大の調査によりますと、症状を訴えた患者の八割以上で症状が改善をされているという報告もございます。厚労省の報告にも効果ありと明記をされておりますこの治療費には、まだ保険適用となっておりませんので、一回の入院で三十万円前後がかかってしまうというわけであります。

 十月七日、脳脊髄液減少症患者支援の会の皆様と、厚生労働省にブラッドパッチ療法の保険適用を求める要望書、二十三万七千八百四十六人の署名簿を添えて提出をいたしました。一日も早い保険適用が待たれております。

 昨年四月なんですが、当時の長妻大臣、平成二十四年度の診療報酬改定で保険適用する方針を明らかにされていたと聞いておりますけれども、来年度、診療報酬改定の際に、これに関しましてはぜひ保険適用していただきたいと思います。厚労大臣、いかがでございましょうか。

○小宮山国務大臣 ずっと委員が取り組んでこられました脳脊髄液減少症、これについては、今御紹介がありましたように、診断基準が関係学会で了解をされまして、これから、今これもお話のあったブラッドパッチ療法など治療法の有効性を確認するなど、引き続き治療法の確立に向けて研究を実施していく予定だと研究班の方からは聞いています。

 こうした研究を経まして、これから脳脊髄液減少症の診断、治療法が確立されて、安全性、有効性が確認された場合に保険適用ということで、なるべく早くそれができるように、研究班の方からも意見を聞きながら検討していきたいというふうに思っております。

○古屋(範)委員 ということは、次期診療報酬改定にはこれは間に合わないという解釈でよろしいんですね。待っていらっしゃる患者数も非常に多いわけであります。もし来年度の診療報酬改定でこれが入らないとすれば、まず、ではその手前で先進医療として位置づけていただきたい、このように思います。

 先進医療が認められますと、認可をされた医療機関では、ブラッドパッチ療法に必要な検査あるいは入院費用に保険適用がなされます。ですので、前後に非常に高額にかかっていた部分に保険が適用されるとなると、非常に患者負担が軽減をされます。

 大臣、もし保険適用が来年間に合わないとするのであれば、その前に、先進医療の申請にはぜひとも速やかに対応していただきたいと思います。いかがですか。

○小宮山国務大臣 おっしゃいますように、先進医療として保険診療と併用を認めるということに向けて、これは積極的にやりたいと思っております。

 このブラッドパッチ療法については、患者の負担軽減、研究推進のために、今研究を行っております医療機関が先進医療の申請に向けた準備を今行っているというふうに聞いています。この申請が行われた場合には、専門家の意見を聞きながらですけれども、保険診療との併用の可否、これについて速やかに、こちらの方は本当に急いで速やかに検討して、できるようにしていきたいというふうに思っております。

○古屋(範)委員 患者の方は、立っていることが非常につらい、あるいは、もちろん仕事もできないとか、お子さんに至っては学校でなかなか普通の生活ができない等、非常に悩んでいらっしゃいます。ですので、まずは保険適用、これは強力に進めていきたいと思っておりますが、その手前の先進医療、これに関しましてはぜひ速やかに対応していただきたいと思っておりますので、どうかよろしくお願いしたいと思います。

 次に、再生医療の問題について質問してまいりたいと思います。

 二〇〇六年ですけれども、iPS細胞などを使った、京都大学山中教授の、人の皮膚から同じような赤ちゃん細胞をつくることに成功したということで大きな話題となりました。そのとき、世界じゅうの研究者が熾烈な競争をしておりましたので、このニュースが発表されて、これが世界を駆けめぐったということであります。今では世界のだれもが知っている細胞、このiPS細胞などを使った再生医療が非常に注目をされております。科学においても、これは大きく促進をしていかなければいけない分野だと考えております。

 私は、この再生医療をぜひ自分の目で確かめておきたいと思いまして、三年前なんですが、東京女子医大と早稲田大学の工学部でまさに医工連携をしております先端生命医科学研究教育施設、TWInsを訪問いたしました。

 ここでは、女子医大の医師、白衣も着ていなくて、まさに医工連携で、医学部も工学部の方も一緒になって、こういうものが必要だと言われれば工学部の方はすぐにそうした機器を開発していくということで、非常にすばらしい施設であります。

 ここでは、岡野光夫教授が中心となりまして、再生医療、目覚ましい発展をしているその最先端の現場を見せていただきました。ここでは、自分の細胞を培養して、薄いシートをつくってまいります。これを重ねて積層化して、成形をしまして、中にはそれに動きを加えて、訓練をするというんですか、そのようなこともして、それで角膜とかそれから心臓、食道などにこの細胞シートで治療をして、既に有効性が示されておりました。岡野教授からは、国際連携しながら世界の患者を治療したいという、非常に大きな目標を掲げていらっしゃいます。

 今、日本が世界の再生医療に大きく貢献していくためには、この治験を円滑に進めて実用化できるよう、さまざまな障害を取り払い、研究の支援を急ぐべきだと非常にそのとき感じました。

 先日、今度は札幌市にあります札幌医科大学を訪れました。ここでは脳梗塞治療の最先端技術である細胞再生治療の研究開発を行っております。島本学長からは、世界的にも注目をされている研究であり、本格的な治療が始まれば多くの国民に貢献する、そうおっしゃっていらっしゃいました。

 きょうは、皆様のお手元に資料を配付させていただいております。ここでは自分の、脳梗塞患者の腸骨というところから局所麻酔下で骨髄液を採取していく、これを細胞調製施設で目的の細胞を分離して、約二週間で約一万倍に培養していく。この約一億個の細胞を五十ミリリットルのバッグに封入して、そしてこの細胞製剤を三十分から一時間かけて静脈から投与をしていく。非常にシンプルな形の、自分からとって増殖をしてまた自分に投与するという方法であります。

 骨髄液の採取、非常に短い時間で患者の負担が少ない。また、脳梗塞は脳の病気であるにもかかわらず、静脈投与ということで効果が出るということであります。

 治療前治療後、こうした効果が出ておりまして、今、十二症例、既になされておりまして、この一覧にもございますように、例えば三番なんですが、この方も介護度が五だったものが自立をしている、運動麻痺が著明に改善をしている、職場復帰をしている。あるいは六番の方にしても、介護度四から自立をしている、運動麻痺は全快、失語症も著明に解消しているということで、映像も見せていただきましたけれども、全く動かなくなっていた手が上がるようになる、会話が戻ってくる、そのような効果がございます。

 その他の疾患へも適用できるのではないかと言われております。脊髄損傷、脳腫瘍、プリオン病に対して有効性を示唆する結果が出、特に脊髄損傷疾患でも好結果が出ている、このような研究を今行っております。

 脳梗塞というのは四十万人が発症する非常に多い病気でありまして、その後遺症に悩む方も非常に多いわけでありまして、その結果、介護に要する家族の負担であるとか、あるいは国の負担、医療費、こういうことを考えますと、非常に注目すべき研究ではないかと思っております。

 この再生医療、医療製品として一刻も早い実用化が望まれています。日本では、薬事法という法律に基づいて承認を得る必要があります。ですので、ここに至るまでさまざまな障害、安全性の基準や手続が明確でないため審査に時間がかかるなど、コストも労力も諸外国に比べて格段にかかっております。

 これは十月二十六日の読売新聞にも出ておりますけれども、再生医療では既に、培養した皮膚、軟骨の細胞が製品化をされ、やけど、けがなどの患者に移植をされている。岡野教授によると、このような再生医療製品は世界で約五十件がもう既に承認をされております。実用化を目指した治験中のものも三百件以上あります。しかし、日本で承認されたのは皮膚製品一つのみ、治験中のものは一つもないということで、この原因は、医療製品を審査する医薬品医療機器総合機構、PMDAの審査に時間が大変かかる、かかり過ぎるということであります。

 再生医療の製品は、これまでのものと違って、新しい安全性の基準、手続が必要なわけですけれども、その研究開発にこうした法整備、体制が全く追いついていないということが言えるかと思います。こんな治験も必要だ、こんなデータも要るということを求められたりして、再生医療を製品化するメーカー側が治験に消極的になってしまう。

 日本で唯一承認をされましたTEC社の皮膚の場合、日本では治験まで四年かかったものが、ヨーロッパでは申請して四カ月後には治験が認められた。諸外国に比べて日本が非常におくれをとっていることが言えるかと思います。

 医療に限らないんですが、日本では非常にすばらしい研究開発あるいは技術革新というものがあるんですが、実際、これが実用化して製品として売り出され、ましてやこれが日本の売りとして海外に出ていく、ここの部分が非常にまだ脆弱であると言わざるを得ないと思っております。日本で開発されたものが逆に海外でもう治療が始まり、日本が海外に行って日本発の治療を受けてくる、このようなことが起きかねないわけであります。

 再生医療の実情に合った整備が求められていると思います。この再生医療につきまして、文部科学大臣そして厚労大臣、両大臣に御見解をお伺いしたいと思います。

○中川国務大臣 御指摘のように、再生医療というのは、恐らく、人類の医療技術というのを一つ高いステージに持っていく、その最先端を行っているものだというふうに私も思っております。

 さらに言えば、日本の今の技術というのが世界でトップクラスを歩んでいるということもありまして、文科省としても戦略的にこれに投資をしていくということにしてきております。

 さっき御指摘のありましたように、山中教授を中心にするプロジェクトが一つありまして、これは再生医療の実現化プロジェクトということで、二期に今入ってきております。これに参加しているのが、このiPS細胞の樹立を受けて、それを、拠点をつくって、その拠点の中でさらに実用化していくということですが、京都大学、慶応大学、東大、それから理研がこのプロジェクトの中でやっていただくということです。

 それからもう一つは、再生医療の実現化ハイウェイという事業、これは二十三年度から始まるわけでありますが、この基礎研究の成果をもとにしまして、関係各省、これは厚生労働省と経済産業省ですが、これが協力をして、プロジェクトを組んで、基礎から応用へ向いて引っ張り上げていくというプロセスをつくり上げていきたいということであります。これには、iPSだけではなくて、体性幹細胞それからES細胞、これも含めた形のプロジェクトがこの中に入っております。

 さらに、橋渡し研究加速ネットワークというのがあるんですが、先生御指摘の、北海道の大学でこの事業を使ってやっているプロジェクトがこれであります。

 いずれにしても、私たちとしても、基礎から臨床、それから実用化に持っていく過程の中で、世界のスピードに負けてはならないというふうに思っています。いろいろな改革が必要だという意識を持ちながら考えていきたいというふうに思っています。

○小宮山国務大臣 御指摘のとおり、日本ではどうしても認可がおくれるというドラッグラグ、デバイスラグの問題に取り組むために、認証する機関のPMDAの人員をふやしたり、いろいろなことをしているところです。

 それで、おっしゃったものにつきましては、ヒトiPS細胞などを用いた、人を対象とした研究を可能にするための環境を整えるために、ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針という指針を改正しまして、やりやすくしているというのが一つ。それからまた、相談にも応じるということで、ことしの七月から、医薬品医療機器総合機構で、開発早期の段階から大学やベンチャー企業などの相談に応じるような薬事戦略相談、こうしたことも開始をしています。

 そのような環境を整えながら、何とか認可ができる、認証できることを早めるように努力していきたいというふうに思っています。

○古屋(範)委員 ぜひ、各省連携をして、この分野、体制整備を急いでいただくよう心からお願いしておきます。

 文科大臣、御退席いただいて結構でございます。ありがとうございました。

 次に、被災地での心のケアの体制についてお伺いをしてまいります。

 三月十一日に大震災が発生をし、今、うつ病あるいは心的外傷後ストレス症候群、PTSDなど、いろいろな面で心の不調を訴える方が急増しております。石巻市の被災者を対象に行った厚労省の調査によりますと、四割以上の人に睡眠障害の疑いがあるということが判明をしました。

 この数カ月間、現場の切実な声を聞く中で感じましたのは、やはりスピードが必要だということです。そして、現場の声を聞く。そして、私たちも理念に掲げております人間の復興。インフラの復興、あるいは企業の再生、産業の再生、その基盤となるのが人間の復興、やはり心の復興であると考えております。

 宮城県の女川町というところでは、住民の悩みを聞く町民ボランティアの養成、また、医療、保健などの専門職の方への心のケアの人材育成の講習事業、こころのケアスタッフ育成事業に取り組んでおります。七月に開始をして、八月に私も現地に行ってまいりました。

 傾聴ボランティアの育成に関しては、傾聴という言葉が非常にわかりにくいということで、聴き上手ボランティア養成事業というふうに言いかえてやっておりました。非常に温かな雰囲気の中で、ここには、国立精神・神経センターの認知行動療法センター長大野教授が現地に通い、そして鹿児島の精神科医のチームも一緒になって、今この事業を進めております。被災地でのアウトリーチシステム、また認知行動療法を活用したプログラムをここでモデル的に立ち上げよう、そしてこれを被災地に広げ、あるいは全国に広げていこうという取り組みが始まっております。

 この聴き上手ボランティアさん養成研修会、最初は十四人の方がいらっしゃいまして、東北弁で、中心となる保健師さんが非常に情熱を持って取り組んでいらっしゃいます。皆さん、話し相手が欲しいとか、少しでも高齢者のお話を聞いてあげたい等々、さまざまな理由で来ていらっしゃいました。こういう方々に大野先生から、悩みを理解する、うつ病に対しての基本的な講義というものも直接されております。ロールプレーで、本当に非常に充実した研修をしております。また、看護師、保健師、ケアマネジャーなどの専門家のためのこころのケアスタッフ研修会、こういうものも行っております。

 被災地で、津波で流され、町内会とかそういうものはもうコミュニティーが壊れてしまっているんですが、それぞれ移動した先で、ここを八つに分けて、心のケアのカバーをしていこうという新たな取り組みをしております。

 そこで、第三次補正予算案で、被災者の方々に対しての心のケアを行う財政支援、二十八億円を計上されていますね。こうした取り組みを全国に広げていくために、予算の拡充がさらに必要なのではないかと思いますが、厚労大臣の御見解を伺います。

○小宮山国務大臣 委員がおっしゃるように、これから心のケアは、本当に長期にわたって非常に必要なものだと思っていますので、今、被災県からも御意見を伺って、専門家をどれだけ派遣したらいいか、そのような調整も進めているところです。

 今、御紹介いただいた二十八億円の予算は、活動拠点となる心のケアセンターを、それぞれのところの精神保健福祉センターですとか保健所あるいは市町村の保健センターなど、今ある既存の設備を使ってソフト的にそこをやっていこうという形で取り組んでいまして、心のケアに当たる専門職の人材確保をしながら、訪問支援、おっしゃったようなアウトリーチ型の手法も活用して、仮設で話を聞いたり、あるいは医療活動を行ったり、そういうことができるようにというふうに思っています。

 この二十八億円は、被災県に基金として積みますので、今お話にあった女川の話を聞くようなボランティア、そうしたことにも使えるというふうに思っております。

 心のケアについては、御党からの御提言も承っておりますので、しっかり取り組んでいきたいというふうに思っています。

○古屋(範)委員 同趣旨の質問を財務大臣にもさせていただきたいと思います。

 こうした心のケア、私たち公明党では、女性の視点から防災を見直そうということで、女性防災会議を立ち上げました。そこで、阪神・淡路大震災を経験された兵庫県の清原理事をお招きして、先日、講演を行っていただきました。現地で体験をして、その復興に携わってきた体験をもとに、この期間、半年くらいたつとだんだんと沈んでくる、この時期、特に気持ちがなえてきてしまうので、次々と復興に対する手をスピーディーに打っていくことが大事だとおっしゃっていました。

 特に、家族と地域の大切さ、それから広い意味での仕事、要するに生きる意欲をつくっていかなければいけないと清原理事がおっしゃっていたんですが、私も、その観点から、仮設住宅の介護等のサポート拠点というものをつくって、仮設住宅で生活の支援、あるいは健康の支援、また心のケア、介護支援等々、そういうもの、訪問したりあるいは相談に来られたりなど、全面的に支えていく拠点が必要だということを主張してまいりました。

 ここも徐々にできつつあるようなんですが、同じ質問になりますけれども、心のケアの体制の強化に対して財務大臣の御所見があればお伺いしたいと思います。

○安住国務大臣 財務大臣というよりも、行っていただいたところは私の郷里でございますので、ちょっとお話をさせていただきたいと思うんです。

 私も、財務大臣になる前は毎週帰っておりましたし、なってからも二、三度、現に、私の家族も小学校にずっと、二カ月ほど避難しておりましたものですから、よくわかっているつもりでおります。

 ただ、こういう例がございました。確かにお金の問題もあるんですけれども、例えば女川町なんですけれども、先生、最初に発災したときに、自衛隊の部隊が三日から一週間おきに交代したんですね。そうすると、被災者の方々から、せっかく親しくなりかけたのに、またいなくなって新しい人が来られると困ると。そこで、自衛隊の皆さんが工夫なさって、一カ月近く同じ部隊が、四国のたしか善通寺の部隊だったと思いますが、一カ所に長くいてくれたんですね。

 そうすると、女川町民の、ほとんどの方は体育館に避難なさっていたんですけれども、自衛隊の方々と大変心の触れ合いができて、そこからやはりいろいろな、心の中に持っているストレスを自衛隊の皆さんに話してくれた。自衛隊の皆さんも、遺体の捜索とか、本当に、夜になると若い隊員はなおさらストレスが物すごくたまって、そういう中で、やはり人間というのは助け合っていかなきゃいけないというか、私はそういうことをケースとして非常に見ております。

 もう一方、例えば心のケアというのは、被害に遭った方々の程度にやはり物すごくよるんですよ。私の知っている人でも、お母さんだけ助かって、子供さん三人それからおじいちゃん、おばあちゃん、だんなさんまで亡くなった人の精神と、家だけなくなった方とでは全然違いますから。

 私、そういう方々と会っていますと、確かに先生がおっしゃるように、こういう方々に来ていただいてチームをつくっていただく、何回か来てもらうのはありがたい、しかし、そこで何かやっているというふうに思われたくないという人も結構いたんです。ですから、施設をつくってやるということも大事ですけれども、私は、やはりコミュニティーをきちっとつくって、その中でしっかりと、専門家の皆さんに長くいてもらってサポートする仕組みづくり、これがやはり大事だというふうに思っております。

○古屋(範)委員 私は、施設の必要性を求めているわけではございません。派遣チームも、もうこれからは地元の方々が担っていかなければいけないので、地元が担う体制づくりを手助けしてほしいということを申し上げております。中長期にわたる心のケアの支援、ぜひお願いしたいと思っております。

 次の質問は、被災地だけではなく全体の問題に移ってまいります。

 今、うつ病患者は全国で約百万人を超えると言われております。毎年の自殺者も三万人を超えております。

 そこで、私たち公明党は、うつ対策に力を入れてまいりました。そこで認知行動療法という療法に注目をいたしまして、さまざま、この拡充を求めてきました。

 昨年の四月にこの認知行動療法は保険適用となりました。しかし、なかなか人材が全国的にこの療法を行うほどいないということで、では一体どこに行って治療を受けたらいいんだという指摘がございます。今、国としてもこの認知行動療法の普及に力を入れていらっしゃると思うんですが、やはり保険適用のさらなる拡充が必要になってまいります。

 この認知行動療法は、今うつだけなんですが、うつ病だけではなく、パニック障害とかアルコール依存症、それから不眠症などにも効果が実証されていまして、ITを活用した認知行動療法というもの、応用の可能性も広がっております。ですので、他の症状への拡大を求めていきたいというふうに思っております。

 それからもう一つ、チーム医療への保険適用も拡大していただきたいと思っております。

 大野先生から、うつ病に対する認知行動療法の効果を検討した結果、医師だけで行った場合それからチームで行った場合、両者ともうつ症状の改善を認めることができたという結果が出ております。この認知行動療法を普及させていくためには、医師だけではなく、やはりチームで行う体制整備がぜひとも必要となってまいります。

 来年度の診療報酬改定で必ず認知行動療法の保険適用の拡大をしていただきたいと考えております。いかがですか。

○小宮山国務大臣 今おっしゃいましたように、うつ病などの患者に対する認知行動療法について、平成二十二年度の診療報酬改定で、医師が実施するものを新たに評価をいたしました。

 今おっしゃったような、看護師とか心理職などがチームとして行うものにつきましては、医師と同様の効果があるかどうか今検証しているところで、また、チーム医療を診療報酬上評価することにつきましては、こういう研究の成果ですとか、それから、医師が実施した、前回の改定に基づいた成果なども検討をしながら、さらに検討を進めていきたい、そのように思っています。

○古屋(範)委員 ことしの六月なんですが、国立精神・神経医療研究センターに認知行動療法センターというものが設置をされました。ナショナルセンターとして多くの機能を担っていくことが期待をされております。

 このセンターは、年間百人程度の専門家を育成するということを目標につくられました。大変専門家が不足をしております。先日、山口代表ともここに行ってまいりまして、大野センター長あるいは堀越先生等と意見交換をしてまいりました。

 ここに、来年度の予算要求で九千八百万円要求をされておりますけれども、だんだんと研修も進んでまいりまして、確かに震災で執行が若干おくれたんですが、目標の百五十人には少し届かないかもしれませんが、八十人から百人ぐらいの育成はできるということであります。今年度の指導者数の三倍から四倍、三十人から四十人の指導者ができると見込まれていまして、その指導者たちが全国に育っていって、育成をされる専門家も二百人から三百人、ネズミ算状態でこれが広がっていくことが予想されます。ですので、この九千八百万円という、非常に少ない予算額だと思っております。

 イギリスでは、これに対して三百億以上の金額を投じまして、すべての精神疾患で悩む国民がこうした精神治療にアクセスできるような、その体制をブレア政権のときにつくって、今それが着々と進行しております。

 自殺、うつで失われるもの、この経済損失でありますけれども、約二兆七千億と言われております。また、二〇一〇年まで、自殺やうつ病がなくなった場合のGDP引き上げ効果は約一兆七千億とも言われておりまして、ここに力を入れていくということが、もちろん本人にとっても非常に大きなことでありますけれども、我が国にとって非常に大きな効果をもたらすと思っております。

 九千八百万円というのは余りにも少ない金額だと思うんですが、まず厚労大臣、いかがでしょうか。

○小宮山国務大臣 認知行動療法を実施できる人材養成のために、平成二十三年度から研修事業を行っておりまして、来年度も、今九千八百万円が少ないというおしかりをいただいているところなんですが、具体的には、医師を対象に百五十名、それから看護師、心理職対象に七百名、これで研修をしたいと思っています。今おっしゃったように、研修を受けた人の中からまた優秀な指導者を生み出すということが大事だと思うんですが、そうたくさん一度には指導者が生まれないということもございまして、来年度は今年度と同じという形にさせていただきました。

 ただ、力を入れなきゃいけないということはよく承知をしておりますので、しっかりやっていきたいと思っています。

○古屋(範)委員 国立の精神・神経センター、小平という非常に不便なところにありまして、工夫をされて高田馬場にサテライトをつくられようとしております。ここもなかなか常勤職員も雇うことができず、苦労してやりくりをしながら何とかこのサテライトをつくろうとされているんですが、ここにはやはり何らかの予算をつけるべきじゃないか、そう思うんですけれども、小宮山大臣、いかがですか。

○小宮山国務大臣 高田馬場にできましたサテライトセンターにつきましては、引き続き、国立精神・神経医療研究センター、この運営に必要な交付金の確保に全力を尽くしたいと思います。

○古屋(範)委員 安住大臣、ただいま議論してまいりましたうつ対策につきまして、何か御所見があれば最後にお伺いしたいと思います。

○安住国務大臣 知らないことばかりでしたので、本当に教えていただきましてありがとうございました。

 先生とはヨーロッパに研修旅行で一緒に行かせていただいたり、大変親しくさせていただいておりますけれども……(古屋(範)委員「IPU、IPU。研修旅行じゃない」と呼ぶ)いや、プライベートじゃなくて議員派遣でございます。認知行動療法の人材育成をしっかりやっていきたいというふうに思っておりますので、厚労省とよく相談しながらやっていきたいと思います。

○古屋(範)委員 誤解がないように。IPUでジュネーブに行って、WHOの訪問を私が要望して、安住大臣がついてこられただけのことですので、そこは誤解のないように最後に申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

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