第180回国会 衆議院 予算委員会-16号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 参考人の皆様、きょうは、国会において貴重な御意見をいただきました。心から感謝を申し上げたいと思います。

 時間が短いですので、早速質問に入らせていただきます。

 前回の総選挙のとき、年金記録問題がございました。また、未納問題もあり、マスコミ等さまざまなところで、年金が破綻したとか平気でそういう言葉が毎日のように聞かれる、そういう中で、私たち、総選挙で政権が交代したとも言えるのではないかと感じております。

 そこで、そのようなマスコミも含めて、制度批判、そういうことは非常に簡単ではありますけれども、では、まず、先ほど細野さんおっしゃったんですけれども、現行制度をどう理解し、そしてその上で、どこが問題なのか、具体的にどう見直していくべきなのか、そこには冷静な議論が必要だろうと思っております。

 私たちは、この年金の持続可能性というものを考え、二〇〇四年改革を行ったわけでございます。先ほども御指摘ありましたように、基礎年金国庫負担の引き上げ、また、マクロ経済スライドの導入、上限を決めて保険料を一定程度引き上げ、年金の積立金を活用するという制度改革を行いました。

 将来世代にもある程度配慮をした制度改革を行ったと思っておりますけれども、細野参考人、現行制度の評価についてお伺いをしたいと思います。

○細野参考人 基本的に言えば、いろいろな批判はあったんですけれども、結局、現時点で、当初は、その二〇〇四年の改正で、絶対五年後には潰れているよという論が当時の野党から物すごくあったと思うんですけれども、ただ、実際問題、当時本当によく考えてつくられただけあって、やはり本当に考えられた制度というのは強いんだなというところを改めて感じます。

 ただ、問題は、先ほどのように派遣労働の問題があるので、とにかくまずちゃんと厚生年金の適用拡大をきちっと通してもらうというところをやっていただかなくちゃいけないことと、あと、マクロ経済スライドと名目、実質の話のところがやはり大きくひっかかっているところとして問題点としてはあると思います。

 マクロ経済スライドについては、ここまでデフレの状況が続くというところは想定していなかったので、ただ、そこに、想定したように、やはり世代間の調整を考えていったときに、きちっと機能させる必要はあるんだろう。それは西沢先生が先ほどおっしゃっていたのと同じ話です。

 もう一つが、あくまで年金というのは、これは教育の話なんですけれども、名目と実質というものをもうちょっときちんと国会の先生方が説明をされた方が私はいいと思っています。あくまで公的年金というのは実質的なお金、生活を保障するものなんだというところですね。だから、物価が下がれば、見た目の年金額が下がっていたとしても、それは生活には実質的には何の変化もないんだからということで、ちゃんとそういう説明をすればわかってくださると思うんですね。

 ところが、単純に年金が減る、だからちょっと冗談じゃないみたいな話というのは、まさに教育が機能していないところなので、そこら辺をちゃんと、名目と実質の違いというものをもうちょっとわかりやすく国民に説明して説得するという努力は、与野党ともに必要なのではないかなと思います。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 そこのところ、国民への丁寧なわかりやすい説明がもっと必要であるという御指摘だったかと思います。

 今、現行制度の補うべき点として、派遣労働者への厚生年金の拡大について言及されました。

 駒村参考人にお伺いしたいと思います。

 先生も、第一段階の改革としては当面の改革である、そしてその先に、長期的な課題については議論のルールづくりをし、新年金制度を議論すべきと先ほどおっしゃられました。

 実は、被用者年金の一元化にいたしましても、それから短時間労働者、パート労働者への厚生年金の拡大、これは自公政権当時に既に法律にして提出をいたしておりました。そこは、共済との話し合いが、最後なかなか合意ができずに、確かに未熟という面もあったかと思います。しかし、一歩前進ということで、そのとき法律をつくり、提出をいたしました。

 そういたしますと、二年半たち、さまざまな議論の末に、自公政権のときのこの被用者年金、厚生年金、共済年金の一元化と短時間労働への厚生年金の拡大、ここにある意味戻ってきたということが言えようかと思いますけれども、いかがでございましょうか。

○駒村参考人 御指摘のとおりでございます。

 先ほども資料の十四ページの図で説明しましたけれども、世界の大きな年金改革をやった国でも、全く新しい年金を短期間でつくる、あるいは移行できませんので、やはり、ある種の目標を立てて、そこに向かっての改革であり、当然、被用者年金の一元化とパートの適用拡大等はその一里塚というか通り道であるというわけでございますので、そういう認識で、私も同じだと思います。

○古屋(範)委員 結局、先ほど細野参考人からも御指摘がございました、二〇〇七年、私たちも被用者年金一元化、こういうことも考え、このときも、中小企業ですとか外食産業、スーパー等々、そこともさまざまなやりとりがあり、非常に難しいと感じながらも、一歩踏み出したわけでございます。二年半たって、結局、自公の二〇〇七年に提出をしたここに戻ってきた、こういうお答えだったかと存じます。

 そこで、細野参考人にお伺いいたします。民主党案を含めた抜本改革についてのお考えをお伺いしたいと思っております。

 民主党の年金案、政府の一体改革大綱では、抜本改革案の具体像というものは示されておりません。しかし、今回の国会でのさまざまな審議の過程で、民主党の年金案の問題点というものは明らかになってまいりました。多額の消費税が必要である、あるいは多くの世帯の給付が減ってしまう、あるいは自営業者の保険料負担がふえる、移行には非常に長期の年数がかかってしまう。岡田副総理も、バラ色の制度はないのだ、このようにおっしゃっていらっしゃいます。

 しかし、依然として、これはTBSの世論調査なんですが、年金、今の制度でよい、一五%、マニフェストどおり新しい年金制度に移行すべき、一二%、マニフェストとは別の新たな年金制度を検討すべきだ、七〇%。こういう、積立方式というような言葉もまた出てきたり、抜本改革、何しろ今のはだめで、新しいもの、このような空気というものはどうしてもあるんですけれども、こうした傾向をどうお考えになりますか。

○細野参考人 そうですね、本当に根深いなというのは、民主党案もそうだったんですけれども、何か本当に夢のようなものが、最低保障年金七万円というあのキャッチコピーは、多分、本当に、政権交代が行われたら、すぐにみんな七万円、まずもらえるように思い込んでいたりしていたんです。

 ただ、実際、組んでみれば、全くそんなことはないし、だから、本当に抜本改革なんというものがそもそも存在しないんだということをちゃんとわかってもらうためにも、とにかく民主党案というものを世の中に具体的にわかりやすく出していただきたい。それは本当に六月ぐらいというめどを切りながらやってほしいというのが大きく一点目。

 あと、もう一つ、積立方式というのが新たな論点として出てきたんですけれども、何か賦課方式だと無理だけれども積み立てだったらいいんじゃないかという、これもある種の幻想だというふうに私は考えます。

 象徴的な話でいえば、まさに積立方式の企業年金でいうと、AIJ投資顧問という問題が最近出てきているように、まさにああいう問題が起こるわけですし、もっと身近な個人の企業年金で、自分で積み立てでやっている四〇一kがあるわけですね。では、その四〇一kというのは、積立方式ですけれども、それの運用というのは実際どうなっているのかといったら、二〇一一年の九月末時点での話なんですけれども、実は、もう既に約六割の人が元本割れをしている状況なんですね。

 だから、積立方式に移れば何かもう全てがバラ色になるような幻想がいまだにあると思うんですけれども、そういう企業年金とかのいろいろな実態とかを見てみれば、本当に、今後のインフレのリスクとかいろいろなものを考えていったときに、相当危ない空気感にはあるなと、教育の重要性をすごく感じます。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 私たち公明党は、二〇一〇年の十二月に、新しい福祉社会ビジョン、社会保障全体のビジョンを発表いたしました。その中では、当然でありますけれども、年金制度だけで全て解決するわけではない、住宅政策の充実でありますとかあるいは所得再配分機能強化、総合的な取り組みが必要だということをそのとき掲げました。

 森信先生にお伺いいたします。

 年金制度のほかにも、安定運用していくために、経済対策、子育て支援、こうした総合的なものが必要だと思うんですが、それについての御意見をお伺いしたいと思います。

○森信参考人 今、年金以外の経済政策ということで御質問いただきました。

 私は、いろいろ合わせて経済成長を促進していく政策が必要だというふうに思っておりますが、それが果たしてどういうものか、非常に悩ましいところだと思います。

 ただ、私が考えますのは、例えば、民間の資本とかノウハウとか知恵とか、そういったものが、社会保障の医療とか介護とか、それからほかにも農業とか、そういった分野に入っていけるように、規制が緩和されると同時に、その辺の民間資本の移動の自由性ができるような施策が必要ではないかというふうに考えております。

○古屋(範)委員 先生のおっしゃった給付つき税額控除、私も、子育て支援とかあるいはワークフェアを進める意味でも、ぜひこれは取り入れたいと考えている一人でございます。

 最後の質問になろうかと思います。また細野参考人にお伺いしたいと思います。

 意見陳述の中でもおっしゃっていました、国民への理解、また、社会保障の教育が大事だということで、今回の政府の大綱は国民の理解を得られているかというと、私は、それは言いがたいと思っております。

 一方で、北欧諸国のように高負担・高福祉、これは、理解が得られている国もあるけれども、我が国においてここがなかなか進んでいかない。若い世代からも、給付と負担の明確化が必要だと、私も多く意見を伺っております。

 最後、ここについて、教育、若い世代に特にどのようなことを国として進めていくべきなのか、御意見を伺いたいと思います。

○細野参考人 非常に重たい質問だと思いますが、とにかく一言で言うなら、この国がなぜここまで年金不安が大きくなっているのかというと、やはり、政治の道具に使われてしまったという一言に多分尽きると思うんですね。

 今回政権交代が起こったことでそういうあおるものがなくなったので、あとは、幻想がある限り教育が機能しない面もあるので、できるだけ早く、とにかく民主党の方に、具体的な案を出して、皆さんで議論していって白黒きちっとつけていただきたいことが一つあります。

 ただ、教育の方の現場としても、社会保障の教育推進に関する検討会において、来年度中に、とりあえずモデル校で、実際に高校の現場とかで社会保障教育を具体的に行って、できるだけわかりやすく、安心してできるような仕組み等々を説明していきたいと思っていますので、本当に政治も民間もあわせて頑張っていくべき課題なんだと思います。

○古屋(範)委員 大変にありがとうございました。  以上で質問を終わらせていただきます。

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