第180回国会 衆議院 本会議-10号
○古屋範子君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました児童手当法の一部を改正する法律案の修正案について、賛成の立場から討論を行います。(拍手)
子供に対する手当の制度のあり方については、昨年八月四日の自民党、公明党、民主党の三党合意によって、平成二十三年度末までの暫定措置及び平成二十四年度以降の恒久的な制度のあり方が明確になっています。
これに基づき、平成二十三年十月分から平成二十四年三月分の支給額等の暫定措置を定めた特別措置法が可決され、今年度末までの手当の支給が可能となったことに加え、平成二十四年度以降については、児童手当法に所要の改正を行うことを基本とすることが同特措法に明記されました。
このことは、まさしく、民主党が、中学生までの子供一人につき二万六千円を全額国庫負担で支給するという子ども手当を断念し、現実路線へと転換したことを意味するものであります。私たちは、この民主党の決断を歓迎し、平成二十四年度以降の対応については、三党合意を踏まえた恒久的な制度設計が政府から提案されるものと期待をしておりました。
今般政府が提出した法案の中身は、昨年八月の特措法の内容を踏襲するものであり、おおむね了承できるものの、以下二点については修正が必要と判断をしました。
一点目の名称については、児童手当法の改正案であるにもかかわらず、「子どものための手当」という名称を用い、子ども手当があたかも継続するかのような表現を残したことは看過できません。
子供に対する現金給付は、政権交代以来この二年半余り、民主党政権の迷走によって、暫定的な法制上の措置が続いてきました。それは、児童手当法に基づく給付をベースとしつつ、それ以外の足らざる部分を子ども手当法で補うというものです。すなわち、名前こそ子ども手当法でしたが、その内容は、実質的に、公明党が昭和四十七年の制度発足以来一貫して推進してきた児童手当法の拡充そのものでありました。
この間、公明党は、子育て世帯の安心につながるような持続可能な制度づくりや現物給付とのバランスを含めた財源確保などを求めてきましたが、民主党政権は一度も恒久的な子ども手当法案を提出することができませんでした。財源確保をめぐり毎年のように繰り返される綱渡りのような財政運営を見ても、子ども手当の実現が困難であることは明白です。
いわば子ども手当は、民主党の数々のマニフェスト違反の象徴であり、国民への謝罪と説明もなくこれ以上その名称を使うことなど、到底許されるものではありません。
子ども手当と完全に決別することを改めて明確にすべきであります。そして、政権交代後も廃止できなかった児童手当法に戻した上で、恒久的な制度づくりを行うことが当然の帰結であると断言いたします。
二点目は、昨年八月の三党合意でも今後の検討課題となっていた所得制限世帯への給付です。
そもそも民主党は、子ども手当創設のために、所得税の配偶者控除、扶養控除を廃止する考えを明らかにしていました。結局、配偶者控除を廃止せず、所得税の年少扶養控除の廃止に加え、予定していなかった住民税の年少扶養控除の廃止に踏み切りました。
このため、扶養控除の廃止による影響を踏まえた実質的な手取り額について再検討が必要となり、昨年八月に成立した特措法では、三歳未満は一万五千円、三歳以上小学校修了前の第一子、第二子は一万円、三歳以上小学校修了前の第三子以降は一万五千円、中学生は一万円という支給月額に改められました。
同様に、所得制限世帯についても、税制上または財政上の措置を含めた検討が必要であったにもかかわらず、十分な協議を行うことなく月額五千円の支給を決めた政府の対応には問題があります。
以上の二点について、修正案では、手当の名称について「児童手当」とし、法律の名称も「児童手当法」に戻すことになりました。これは、当然の結論です。
所得制限世帯への給付については、本則上の給付とはせず、当面の間の特例給付に位置づけ、今般の法改正後の児童手当の支給並びに所得税並びに道府県民税及び市町村民税に係る扶養控除廃止による影響を踏まえつつ、そのあり方を含め検討を行い、その結果に基づき必要な措置を講ずることが附則の検討規定に盛り込まれることとなりました。
さらには、依然として、昨年八月の特措法に基づく手当の未申請者がいることについて、その第一義的な責任は、制度改正の周知徹底が不十分であった政府にあり、未申請者に帰すべきものではないという公明党の主張を踏まえ、平成二十四年三月三十一日までとされていた遡及支給の特例措置等を平成二十四年九月三十日まで延長することが盛り込まれたことは、必要な措置と考えます。政府においては、引き続き、周知徹底に万全を期すべきです。
以上が、児童手当法改正案の修正案に対する主な賛成理由です。
今般の法案成立は、子育て世帯への安定した現金給付制度を継続するために必要な措置と考えますが、一方で、年少扶養控除廃止の影響を含めた実質的な手取り額については、さらなる検討が必要です。
また、おくれている保育所整備等の現物給付について、政府は、子ども・子育て新システムの導入で対応する方針ですが、待機児童の解消策や財源確保の見通しなど不明な点も多く、その効果は未知数です。
そのほか、依然として、第一子の出産を機に女性の約六割が退職されている現状を踏まえ、ワーク・ライフ・バランスの確保にも本腰を上げて取り組まなければなりません。
本修正案の成立が、子育て世帯を取り巻くこうした課題をいま一度直視し、与野党が、安心して子供を産み育てられる環境整備に最優先で取り組む契機となることを念願して、私の討論を終わります。(拍手)