第183回国会 衆議院 本会議-21号

○古屋範子君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案に関して、安倍総理並びに関係大臣に質問いたします。(拍手)

 世界に類を見ない高齢化が進展する我が国において、持続可能な安定した社会保障制度をどのように構築していくのかという待ったなしの課題に対して、公明党はこれまで、懸命に取り組んでまいりました。

 特に、昨年の社会保障と税の一体改革においては、当時の政権党である民主党、そして自民党と協議を積み重ね、この重要な課題を前に進めてきました。

 公明党は、今後も、社会保障は国民にとって重要なインフラであり、政局には利用しない、国民にとって欠かすことのできないセーフティーネットである社会保障を盤石なものにする、この視点に立って、改革に力を注ぐ決意であります。

 さて、その一体改革ですが、昨年八月に施行された社会保障制度改革推進法の中で、年金、医療、介護、子育ての課題は、社会保障制度改革国民会議を設置し、その議論を経て、施行後一年以内に、必要な法制上の措置を講ずるものとしております。逆に言えば、このことが担保されることが、消費税引き上げの前提になっています。

 法律に基づく国民会議の期限は、八月二十一日まで、残り三カ月余りとなりました。

 消費税の引き上げという新たな負担を国民にお願いする以上、社会保障の充実あるいは機能強化の具体像を明確に示す必要があります。

 そこで、まず初めに、安倍総理に質問いたします。

 国民会議での議論も大詰めですが、社会保障に関する国民の期待に対しどのように応えるのか、また、必要な法制上の措置は、どのような形で対応しようとしているのか、御見解をお伺いいたします。

 その国民会議においては、昨年の一体改革の議論では具体的な改革内容が明らかになっていない医療・介護分野を、まずは優先的に議論すべきと考えます。

 国民会議における議論を見守る必要がありますが、医療、介護については、地域の実情を踏まえ、地域に根差した効果的、効率的なサービス提供体制の整備、医療と介護の連携システムの確立といった視点が重要であると考えます。総理の認識を伺います。

 年金制度に関して、何点か確認をさせていただきます。

 改めて申し上げるまでもありませんが、現行の年金制度については、平成十六年改正において、基礎年金国庫負担割合二分の一やマクロ経済スライドなど、制度の持続可能性を高める仕組みが導入されました。特に、昨年の一体改革において、二分の一の安定財源が確保されるなど、いわゆる平成十六年財政フレームが完成し、この結果、長期的に給付と負担の均衡を図りながら持続的に運営をしていくことのできる仕組みになったと認識しております。

 この点については、昨年の一体改革の質疑で、当時の野田総理も同様の認識を示されており、自民、公明、民主の三党間で共有された認識となっていると考えますが、安倍総理に、この点を再度確認させていただきたいと思います。

 また、社会保障制度改革推進法では、年金、医療及び介護においては、社会保険制度を基本とするとしており、公明党としても、この趣旨に沿って、制度改革を積極的に進めていくべきであると認識をしております。安倍総理の認識をお聞かせください。

 このように、年金制度は、制度上は安定的な仕組みになりました。しかし、他方で、財政検証上の積立金の見積もりと実績において乖離があり、年金財政は悪化をしているのではないか、あるいは、国民年金の保険料の納付率はなお低下し、年金制度は破綻をするのではないかという不安があることも事実であります。田村厚生労働大臣に、これらの現状をどう認識し、どのように対応しているのか、答弁を求めます。

 特に、保険料徴収対策として、いわゆる歳入庁を設置するという議論がありますが、私は実務的にも極めて難しいのではないかと考えますが、歳入庁設置についてどのようにお考えか、政府内での議論の経過も含め、甘利社会保障・税一体改革担当大臣並びに田村厚生労働大臣の答弁を求めます。

 厚生年金基金制度の見直しについて、質問いたします。

 今般の法律案の大きな柱の一つは、昭和四十一年に始まった厚生年金基金を抜本的に改革しようとするものでありますが、その大きなきっかけは、昨年二月に発覚したAIJ投資顧問による詐欺事件、すなわち、同業同種の中小企業が集まって設立した総合型を中心とした多くの厚生年金基金が、同社に資金の運用委託をしていたものの、詐欺により多大な損失をこうむったという事件であると認識しております。

 AIJ事件に関し、運用受託サイド、運用委託サイドの問題がございましたが、もう一つ重要な点は、制度設計をし、また監督する立場にある厚生労働省に問題がなかったのかどうかであります。

 そもそも、厚生年金基金は企業年金の一つでありますが、本来は国が運用を担うべき厚生年金などの公的年金の一部を、基金が代行して管理し、独自の企業年金部分と組み合わせて運用する仕組みであります。

 こうした国際的にも類を見ない我が国独自の代行制度が、設立当時の昭和四十年ごろの企業にとって、運用規模を拡大でき、さらに、利回りが高ければ運用益が膨らみ、結果、退職者への年金給付をふやせるというメリットになっており、一定の役割を果たしてきました。

 しかし、バブルの崩壊、そして低金利の時代を迎え、予定利率である五・五%を下回ることとなり、大企業を中心とする厚生年金基金の大半は、相次いで代行返上し、代行部分を持たない確定給付企業年金などへの移行を加速化させました。

 他方で、残った基金は、代行割れの常態化、上乗せ給付の積み立て不足を生じさせ、また、解散しようにもできないという基金も総合型を中心に少なからず見られます。こうした事態が続くことは、結果として、公的年金の財政や厚生年金基金に加入する中小企業の経営に影響を与えかねないものであり、早急な対応が必要となったわけであります。

 そこで、厚生労働大臣にお伺いいたします。

 少なくとも十年前くらいから、総合型を含め基金の制度的な限界が見え始めてきたわけであり、もっと早く抜本的な対策を講じることができなかったのか、厚生労働省はこうした課題を把握していながら見て見ぬふりをしてきたのではないかという指摘があります。この指摘についてどう認識をされているのか、年金行政のトップとしての明快な答弁を求めます。

 今般の法案では、既に代行割れが生じている基金を法律施行後から五年以内に解散させること、また、代行割れではないものの積み立て状況が一定の基準に該当しない基金、いわゆる代行割れ予備軍である基金を、同じく五年以内に、他の企業年金等へ移行させる、もしくは解散させることとしております。

 また、施行後五年以降に存続する厚生年金基金については、積み立て状況が一定の基準に該当しなくなった場合には、厚生労働大臣が第三者委員会の意見を聞いて解散命令を発動できることとなっております。

 その一方で、それ以外の健全な基金については、存続が可能な仕組みとなっております。

 そこで、お伺いいたします。

 前民主党政権下で検討された案では、厚生年金基金は一定の期間をかけて廃止するというものであったと承知しておりますが、今般、健全な基金は存続を可能とすることとした理由について、田村厚生労働大臣にお伺いいたします。

 また、健全な基金であっても、将来的な代行割れリスクは常につきまとうものであり、そうしたリスクを遮断し、厚生年金本体に影響を及ぼさないようにすることが重要であると考えますが、どのような対策を講じようとしているのか、あわせてお伺いいたします。

 代行割れ問題については、代行割れを放置したままで基金を解散し、厚生年金本体に救済を求めるようなことになれば、基金に加入していない厚生年金の被保険者との不公平を招くこととなり、早急な措置が必要であると考えます。

 今般、いわゆる代行割れ基金が早期に解散できるよう、施行後五年に限り事業所間の連帯債務を外すことなど、特例解散制度の見直し措置を講じておりますが、これまで実施された二回の制度と比べ、どのような点が改善されているのか、厚生労働大臣の答弁を求めます。

 また、事業所間の連帯債務を外す措置については、既に特例解散制度を利用して解散した基金の扱いはどうなるのか、あわせて答弁を求めます。

 いずれにしても、今般の厚生年金基金の見直しは極めて重要な改革であり、公的年金を守りつつ、いわゆる企業年金や個人年金などの私的年金との関係、役割分担をどうするのかという大きな制度設計の見直しという課題が突きつけられたのではないかと考えます。この点について、総理の答弁を求めます。

 次に、第三号被保険者の記録不整合問題への対応について質問いたします。

 第三号被保険者の年金記録不整合問題は、第三号から第一号への変更の届け出を行わなかったために、年金記録上、その間は第三号のままで、例えば、受給者の中には不整合記録に基づく本来より高い年金額を受給している方が出てしまっているという問題であります。

 この問題に関しては、二年前の三月に、当時の民主党政権が、突如、運用三号取り扱いの方針を決定し、同年十二月に課長通知を発出、翌一月に実施に移したものの、こうした重要な課題に対して、その方針内容もさることながら、課長通知によって済ませようとした手法に大きな批判が集まり、国会はもちろん、国民からも大きな反発が起き、最終的に、三月に通知が廃止されたのであります。

 このような混乱の結果、制度に対する不信が生じたものと考えますが、その原因についてどのように整理をしているのか、厚生労働大臣の答弁を求めます。

 他方、不整合記録問題の解決を図るに当たっては、真面目に保険料を納めてきた人などとの公平の観点が最も重視すべき点であります。年金は信頼性が必要不可欠であるからであります。

 とともに、不整合記録がまだ訂正されていない受給者が、現在受けている年金を生活の貴重な糧として暮らしているという実情も踏まえた生活への配慮も、一方では欠かせないものと考えます。

 このように、ある意味では矛盾ともとれるこれらの要請に、法案ではどのように対応しているのか、厚生労働大臣の答弁を求めます。

 いずれにしても、今後は二度とこのような記録不整合が起きないようにしなければなりません。改めて、記録不整合が生じた原因をどのように分析し、今後、同じような問題が発生しないようにどのような対策を講じようとしているのか、厚生労働大臣にお伺いいたします。

 関連して、最近、年金記録訂正に関して、日本年金機構内部における業務処理の不統一などによって、一部の方の時効特例給付の支給が漏れていたことが明らかになっています。

 年金記録問題の解決は極めて困難な作業でありますが、年金受給者から見て不公平な処理は決して許されません。今後、機構における処理の基準の整備、明確化など、再発防止に努めるとともに、厚生労働省との連携のあり方を含め、責任の所在を明らかにすべきです。厚生労働大臣の答弁を求めます。

 社会保障制度は、国民にとっての最重要のインフラであります。その制度を生かすのも殺すのも、全ては国民の、制度に対する信頼と理解にかかわってくるものと考えます。

 そうした観点から、私は、年金に限らず、社会保障制度について、給付と負担の構造がどうなっているのか、特に、教育現場において、将来を担う子供たちが理解できるわかりやすいパンフレットを作成するなど、社会保障に関する教育の推進を含め、社会保障制度の意義を広く国民に十分に理解してもらうための取り組みを強化すべきであると考えます。

 この点、総理の認識、決意をお伺いし、私の代表質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 古屋範子議員にお答えをいたします。

 社会保障改革に関する国民の期待と、必要な法制上の措置についてお尋ねがありました。

 社会保障・税一体改革は、社会保障の安定財源確保と財政健全化の同時達成を目指す観点から取り組む改革です。受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度を構築し、暮らしの安心を取り戻すことで国民の期待に応えたいと考えております。

 このため、八月二十一日の設置期限に向けて国民会議で議論を深めるなど、社会保障改革のさらなる具体化に向け、取り組んでいきます。

 また、法制上の措置については、改革推進法の趣旨に沿うよう、国民会議における審議結果に加え、三党協議の状況など、さまざまな状況を踏まえて検討してまいります。

 医療、介護の制度改革についてお尋ねがありました。

 医療、介護の制度改革については、先月二十二日の国民会議において、これまでの議論を一定程度整理した上で、今後、八月の取りまとめに向けてさらに議論することとされたと承知をしています。

 いずれにせよ、地域の実情を踏まえたサービス提供体制の確立が必要と考えています。

 このため、都道府県や市町村がそれぞれの地域のあるべき医療・介護サービスの提供体制の姿を計画として描くとともに、それに応じた入院医療の機能分化、強化や、医療、介護の連携等を図ることができるよう、国民会議における議論等を踏まえ、改革を具体化してまいります。

 現行の年金制度に対する認識についてのお尋ねがありました。

 社会保障・税一体改革の過程においては、これまでの累次の改革により、年金制度が長期的に持続して運営できる仕組みとなっているとの認識を、自民、公明、民主の三党で共有しております。そのことは、当時の国会審議の中で、当時の民主党代表でもある野田総理大臣、岡田副総理からも明確に答弁をいただいております。

 さきの国会では、三党でこの認識を共有した上で、現行の年金制度が抱える課題について三党間での具体的な改革案がまとめられており、年金制度の議論は、この到達点を踏まえて行うべきものと考えています。

 社会保障改革についてお尋ねがありました。

 社会保険方式は、負担の見返りとして受給権を保障することにより、国民の参加意識や権利意識を確保できる仕組みです。

 社会保障制度は、国民が病気や老後といった人生のリスクに対するセーフティーネットであり、社会保障制度改革を進めるに当たっては、改革推進法の規定も踏まえ、社会保障制度の中核として国民の生活を支えてきたこの社会保険制度を基本として、改革を進めてまいります。

 今後の公的年金と私的年金の役割分担等についてお尋ねがありました。

 少子高齢化が進展する中で、国民の老後の所得保障を充実していくためには、公的年金に加え、企業や個人の自助努力による私的年金を充実させていくことは、重要な課題と認識しています。

 このため、企業年金制度については、柔軟で多様な設計ができるよう規制緩和を行うとともに、公的年金と私的年金の役割分担のあり方についても、厚生労働省を中心に検討を行うなど、取り組みを進めていきたいと考えています。

 社会保障に関する教育の推進等についてお尋ねがありました。

 社会保険料や税を負担し、社会保障制度を支え、守っていくのは、全て国民です。その意味で、将来の社会を担う子供たちに制度の意義を教育することは、大変重要であると考えています。

 このため、厚生労働省の有識者検討会において、教育現場で活用する教材のあり方など、社会保障教育の推進について議論を行っております。

 こうした議論の成果を含め、さまざまな形で社会保障制度の意義について国民的理解が深まるよう、引き続き努めてまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣甘利明君登壇〕

○国務大臣(甘利明君) お答えをさせていただきます。

 歳入庁の設置についてのお尋ねであります。

 歳入庁につきましては、昨年成立をしました税制抜本改革法におきまして、自民、公明、民主の三党合意に基づき、「年金保険料の徴収体制強化等について、歳入庁その他の方策の有効性、課題等を幅広い観点から検討し、実施すること」とされておりまして、政府といたしましては、内閣官房副長官を座長とする関係省庁政務官による検討チームにおきまして、税制抜本改革法の規定に基づきまして、幅広い観点から検討しているところであります。

 なお、議員御指摘のとおり、歳入庁の設置につきましては、国税の徴収対象と年金保険料の徴収対象が異なっている上に、社会保険料と税とでは、負担と給付の連動の有無という基本的な性格の違いはもとより、消滅時効や優先徴収権等の制度上の違いがあり、職員に求められる専門性も異なっているといった実務面の課題が指摘をされていることも踏まえつつ、検討しなければならないというふうに考えております。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣田村憲久君登壇〕

○国務大臣(田村憲久君) 古屋議員からは、九問御質問をいただきました。

 年金積立金の乖離と国民年金の保険料納付率についてのお尋ねがございました。

 平成二十三年度末の年金積立金の状況は、百五十一・九兆円と見込んでいたものが、実績では百四十八・八兆円と、見込みより約三兆円下回っております。これは、物価や賃金が見通しよりも低迷するなど厳しい経済状況が続いていることなどによるものですが、その後の株価の回復もあり、現時点で年金財政が悪化しているとは考えておりません。

 国民年金保険料の納付率の低下は、未納者の将来の年金給付の減少につながることから、長期的に見れば、年金財政の持続性に大きな影響を与えることはありません。

 しかしながら、保険料の未納は、本人の老後の所得保障を失わせるものであり、また、制度に対する信頼性を失うことにつながることから、国民年金の収納対策の一層の徹底、強化に取り組んでまいりたいと思います。

 続きまして、歳入庁の設置についてお尋ねがございました。

 税制抜本改革法では、「年金保険料の徴収体制強化等について、歳入庁その他の方策の有効性、課題等を幅広い観点から検討し、実施すること」とされています。

 これを踏まえ、政府として、内閣官房副長官を座長とする関係省庁政務官による検討チームを立ち上げ、幅広い観点から検討をいただいているところであり、厚生労働省としても、検討チームでの議論を踏まえつつ、年金保険料の徴収体制の強化等を図ってまいります。

 次に、厚生年金基金の監督省庁としての厚生労働省の責任についてのお尋ねがございました。

 厚生労働省としては、二〇〇〇年代初頭から、財政悪化基金の指定制度の導入や特例解散制度の創設など、さまざまな見直しを行ってまいりました。

 今回の改正も、こうした過去の制度改正の延長線上に立って制度の改善を行うものであり、その施行を着実に行っていくことにより、行政としての責任を果たしてまいりたいというふうに考えております。

 次に、厚生年金基金の一部存続の理由と、将来の制度のあり方についてのお尋ねがございました。

 厚生年金基金は国がつくった制度であり、十分な積立金を持って適切に運用している基金まで強制的に廃止することは、問題が大きいものと考えております。このため、これらの基金については、自主的な移行を促しつつ、存続という選択肢を残したものであります。

 一方、今回の法案により、基金の新設は停止する、施行日より五年以降は、代行資産の保全の観点から、十分な積立金を持たない基金には解散命令を出すこととするなど、厚生年金基金制度は、全体としては縮小させ、他の企業年金への移行を促していくこととしております。

 続きまして、厚生年金基金の特例的な解散制度の見直しについてのお尋ねがございました。

 今回の法案では、特例解散において、分割納付につき、事業所間の連帯債務を外すこと、利息を固定金利とすること、最長納付期間を従来の十五年から三十年に延長することなどの改正を行うことといたしております。

 また、既に現行の特例解散により解散し、分割納付を行っている基金から施行日より一年以内に申請があった場合に、厚生労働大臣が第三者委員会の意見を聞いて、こうした特例を遡及適用できる仕組みも盛り込んでおります。

 運用三号が問題となった原因についてのお尋ねがございました。

 年金は、現役期に保険料を納付する義務を果たしていただき、その納付実績に対応する金額を権利として受け取ることを基本に組み立てられている制度であります。このルールが貫徹されていることが、年金制度の信頼の基礎であるというふうに考えております。

 課長通知に基づくいわゆる運用三号は、このルールに反して、納付実績がないにもかかわらず給付を行うという内容であったことから、御批判を受けたものと考えております。

 続きまして、三号不整合問題への対応についてのお尋ねがございました。

 この問題の解決に当たっては、保険料納付実績に応じて年金を給付するという社会保険の原則に従って対応することが重要であります。

 この趣旨にのっとって、不整合期間が未訂正で本来より高い年金額となっている受給者については、記録を訂正した上で追納をする機会を与え、保険料が追納されればその分を納付済みとして年金を給付し、納付されなければ本来の年金額に訂正することで、納付実績に応じた年金額を実現し、公平性を確保することといたしております。

 他方で、受給者の生活にも配慮して、過去にさかのぼっての年金額の返還は求めない、不整合期間のために無年金とならないようにする、年金額の減額は訂正前年金額の一〇%を上限とするなどの措置を講じております。

 次に、第三号被保険者の不整合記録問題が生じた原因や、今後の対策についてのお尋ねがございました。

 この問題が生じた理由については、届け出勧奨を行う範囲が限定的であったこと、職権適用の導入が遅く、統一手順が示されていなかったことなど、必要な届け出がなかった場合における行政の対応が十分でなかった等に起因していると考えられます。

 今回の法案では、第三号被保険者でなくなった旨の情報を、配偶者の事業主を経由して届け出ることを義務づけております。また、不整合記録を持つ者を特定するためのシステム開発を行い、今後、届け出勧奨や職権適用をさらに進めていくことといたしております。

 最後に、時効特例給付の問題についてのお尋ねがございました。

 時効特例法に基づく支給業務の処理の一部に不統一があったことについては、大変遺憾なことと考えており、深くおわびを申し上げます。

 既に、年金機構に対し、不統一な処理の是正や今後の再発防止に速やかに取り組むとともに、機構の業務全般について、緊張感を持って国民の方々の目線で取り組むように指示したところでございます。

 現在、今回の事案について検証を進めているところであり、その結果も踏まえ、機構と厚生労働省との連携のあり方を含め、責任の所在を明らかにするとともに、年金事業運営の適正化にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

 以上でございます。(拍手)

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