第180回国会 衆議院 社会保障と税の一体改革に関する特別委員会-22号

○古屋(範)議員 おはようございます。公明党の古屋範子でございます。

 これまで、修正協議、三党の間で努力をし、合意に至られた実務者の皆様に、心から敬意を表したいと思っております。

 修正協議では、年金の受給資格期間の短縮、あるいは事実上の加算年金などの低年金対策、あるいは認定こども園の拡充など、公明党が従来から主張してまいりましたさまざまな観点を盛り込むことができたと考えます。この合意は現実的な内容で、社会保障の安定に大きく貢献できるものと考えます。

 今後、社会保障の全体像を明確にすること、あるいは消費税の前に低所得者対策や景気対策を具体化するなど、残された課題に真摯に取り組んでまいりたいと考えております。

 まず初めに、先般、公明党が、景気経済対策として防災・減災ニューディールを発表いたしました。これにつきまして、特に情報通信分野、ICTの利活用、ソフト面の充実について、一問お伺いをしたいと思っております。

 消費税増税については、法案が成立をしても自動的に上がるわけではない、この景気が悪いときに、経済の好転が期待できない今、消費税増税を決めるべきではない、このような意見も多く私も伺ってきました。

 法案に、税率を上げる前の条件として、経済状況の好転として、一一年度から十年間の平均で名目経済成長率三%、実質成長率二%程度の成長を目指し、必要な措置を講ずる、このことが明記をされております。

 また、公明党が主張してきました防災・減災ニューディールの実施を求めまして、成長戦略や防災、減災に資する分野に資金を重点的に配分するとの規定を挿入いたしました。防災、減災対策などを軸にした成長戦略の実施の検討も明記された、この意義は大変に大きいと考えます。

 公明党が国民の生命と生活を守る防災・減災ニューディールを掲げました。これは、インフラの再構築を目指しております。この中で、さらに、私は、情報通信分野での重点投資が必要であるということも考えました。全国レベルでこの分野に重点投資をすることによって、新たな内需も喚起できる、経済の成長が見込めるものと期待をしております。

 そこで、私も、ことし一月からプロジェクトチームを立ち上げまして、半年にわたり活動してきて、生命と生活を守るICT利活用の推進に向けた緊急提言を取りまとめ、先日、国家戦略担当大臣に申し入れも行いました。

 東日本大震災のときも、固定・移動通信、大きな損傷を受けました。あのときに、大津波が来る、あるいはすぐに逃げる、このような情報が行き渡っていれば、さらに多くの命が救えたと思います。情報は命を守ります。あのときも、新しいソーシャル・ネットワーク・サービスが救命、被災者支援に大きな力を発揮した、このようなこともございました。やはり、情報通信メディアは災害時に命を守る重要なライフラインと考えます。

 そこで、公明党の提言に盛り込みました、防災・減災のための多様な情報流通環境の整備あるいは災害に強い情報通信システムの構築、これについて、まず総理にお考えを伺いたいと思います。

○野田内閣総理大臣 東日本大震災の経験に鑑みても、災害時においての避難活動あるいは救助支援活動、安否確認などが迅速的確に実施されるためには、情報の迅速な伝達が不可欠でございます。

 委員御指摘のとおり、平時から多様な手段による情報流通の環境を整えるとともに、災害に強い情報通信ネットワークや情報システムを整備することが極めて重要であると認識をしています。

 こうした観点から、政府のIT戦略本部におきまして、IT防災ライフライン推進協議会を設置し、東日本大震災の経験も踏まえまして、情報通信技術、ITを活用した防災ライフラインについての検討を進めているところでございます。

 その中で、御党が防災や減災対策に熱心に取り組んでいることは承知をしておりますが、政府としても、今回の御提言も踏まえまして、引き続き、災害に強い情報通信基盤の構築に向けまして努力をしてまいりたいと考えております。

○古屋(範)議員 菅前総理の時代に、新成長戦略、四百ほど掲げられたそうでありますが、その検証結果は、九割成果が出ていないというような報道もございます。

 確かに、全て成功するとは限らないわけであります。多くの種をまいておくということは非常に必要なことでありますけれども、今度こそ、成長戦略、これが実を上げるように、これを組み立てていただきたい、このことを要望しておきたいと思います。

 それから、今回、社会保障の議論の中で、民主党政権が後期高齢者医療の廃止にこだわり、今国会、法案を提出するといいながらも、結果としていまだに提出ができていないということもあり、法案がなかったということもあり、医療分野においての議論が多少置き去りにされたのではないか、このように感じております。

 きょう、総括質疑になりますけれども、医療分野、特に高額療養費制度の見直しについてお伺いをしたいと思っております。

 公明党は、これまでも高額療養費制度の改善、自己負担限度額の引き下げというものを求めてまいりました。この高額療養費制度、がん、難病、重い慢性疾患に苦しむ方々にとって、命を守るセーフティーネットとして重要な役割を果たしております。

 ここで問題なのが、年収二百十万円から七百九十万円未満という広範囲の世帯の自己負担限度額が一律に八万円余りであるという点であります。年収がこんな五百万円も違っているのに自己負担限度額が同じである、これは絶対に改善をしなければならない点であると考えております。

 そこで、この年収区分を細分化して低中所得世帯の負担を軽減するよう、これは何度も政府にも求めてまいりました。質疑も行ってまいりました。そこで、今回、消費税、そして社会保障の充実財源があるわけです。ですので、高額療養費制度の改善への財源も何とかそこで確保できるのではないかと考えております。

 先日、坂口元大臣から質問をいたしまして、財務大臣からも前向きな答弁をそのときいただいております。きょうは、野田総理、さらに前向きな答弁をいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。

○野田内閣総理大臣 高額療養費につきましては、一般所得者の所得区分の年収の幅が大きいため、政府でも、例えば年収三百万円以下の方々の負担上限額を軽減するなどの制度の改善とその財源について検討してまいりました。したがって、高額療養費の改善について、目指す方向については、これは御党と考え方を共有していると認識をしております。

 他方、財務大臣がどういう答弁をしたのかちょっとわかりませんけれども、高額療養費の改善には、公費だけではなくて保険料にも財政影響が生じます。厳しい財政状況の中で保険料の引き上げを行うことや、財源として受診時定額の患者負担を導入することのいずれも関係者の理解が得られなかった、事実としてそういうことがございました。

 高額療養費の改善は重要な課題でありますので、引き続き、一体改革大綱を踏まえ、高額療養費の改善に必要な財源と方策を検討させていただきたいというふうに考えております。

○古屋(範)議員 社会保障審議会医療保険部会では、昨年、収入区分を現行の三段階から五段階に分けた、低中所得層の負担を軽減する見直し案が示されております。

 結局、高額療養費の改善によって長期にわたって療養される方の負担を軽減することは喫緊の課題であり、財源の確保とあわせて、さらに検討を進める必要があるとして、結論は出されておりません。

 しかし、消費税増税の中で、今回、年金改革あるいは子育て、こういうところに消費税を充当していくという全体の案がこれから決まっていくわけでありますけれども、医療の分野は、社会保障の中でも非常に伸び率が高い分野であります。特にこの高額療養費制度の見直し、これは喫緊の課題でありますので、さらに前向きに検討していただきますよう、お願いを申し上げます。

 次に、修正案提出者にお伺いをしたいと思います。

 低所得者に対する年金額加算については、政府原案では定額加算となっておりました。公明党は定率加算の導入を主張してきました。

 政府原案、一律六千円の定額加算では、きちんと保険料を納めてきた人との間に不公平感が生まれてしまう。そこで、三党協議の結果を見ますと、政府案に盛り込まれている年金額加算の規定を削除して、かわりに福祉的給付として新たな制度を創設することとなっております。

 これは、公明党提案の基礎年金に定率加算をする方法を参考に福祉的給付で対応することになったのではないかと考えますけれども、定額加算から、このような過去の保険料納付期間に比例した給付となった理由について、まず提案者にお伺いをしたいと思います。

○西議員 古屋議員にお答えいたします。

 その前に、三党協議、社会保障分野、年金、子育て、さまざまな分野において、公明党のスタッフの一人として御協力いただきましたことに御礼を申し上げたいと思います。

 さて、今回の年金の分野で大きく議論になった一つに、今御指摘の低所得者に対する加算制度、これがございます。

 さまざまな議論がありましたけれども、協議の結果、保険料の納付に基づかない給付を社会保険方式のもとで行う、このことについては不適切だという御意見がございました。そんなさまざまな意見がありまして、最終的には、年金制度の枠外で行う福祉的な給付、ちょっとややこしいですけれども、こういう仕切りで今回の合意に至ったわけでございます。

 ただし、これは低年金の皆さんに対応するために、年金受給者を対象とするとか日本年金機構を通じて各月に支払うとか、あくまでも年金の形がベースになっている、こういう理解でございます。

 先ほど御指摘のように、もともと公明党は定率加算ということを提案してきておりました。それで、協議の中では、支給額を過去の保険料の納付期間に応じて支払うべきだ、こういうことでございます。この点について三党で協議した結果、この福祉的な給付については、一律に定額ということではなくて、先ほど申し上げましたとおり、納付期間に応じた額ということで、三党で最終合意した次第でございます。

○古屋(範)議員 ありがとうございました。

 引き続き、提出者に質問してまいります。

 政府原案では、厚生年金の加入者が産前産後休業を取得した場合に育児休業期間中と同様に保険料を免除する措置が盛り込まれております。年金制度の長期的な安定を図るためにも、経済の活性化、そして、将来の年金制度を支える次世代を育てていくことが何よりも重要だと考えます。この措置は次世代育成対策として大きな意義があると思っております。

 しかし、これは、国民年金に加入している人に対しては保険料免除措置が設けられておりません。そこで、公明党はかねてから、国民年金も同様の措置を設けるよう主張してきました。

 三党協議の結果、国民年金についても産前産後休業中の保険料免除の検討規定が法案に盛り込まれたことは、非常に大きく評価できると考えております。これは早急に検討を行うべきと思います。提案者、これを盛り込んだ意義についてお伺いをしたいと思います。

○西議員 お答えを申し上げます。

 その前に一点、正確には定率加算に加えてもう一点ございますので、追加をさせていただきます。

 と申しますのは、過去の保険料の免除期間に応じた加算というのがそれに加わるということでございます。保険料免除期間がある低所得高齢者に対しては、これはもともと政府案にも提案されておりましたが、老齢基礎年金満額の六分の一を基本として給付を行う、これはそのまま残っているわけでございます。

 したがいまして、先ほどの定率加算とこの二つが支給される、こういうことになっております。

 それから、今お尋ねの件でございますが、今回の三党協議におきまして、公明党として、被用者である厚生年金の被保険者、これは今回、免除ということになりましたが、自営業者などの国民年金の第一号被保険者の皆さんについても、次世代育成の観点から、産前産後の保険料免除を実施すべきではないか、こういうふうに主張をさせていただきました。

 その結果、この点については、今直ちに結論を出すという時間的な余裕はないということでございますが、先ほど申し上げました次世代育成支援の観点、また、自営業者の方も、サラリーマンの方も、また公務員の方も、そういう働き方に差があってはいけない、こういう観点から、検討が必要だということに三党で合意をいたしました。

 このことにつきましては、法案に規定を盛り込み、今後また三党でしっかりと議論をしてまいりたいと思っております。

○古屋(範)議員 ありがとうございました。

 時間も残り少なくなってまいりました。

 最後に、年金改革について総理にお伺いをしていきたいと思います。

 今回、被用者年金一元化法案、この実現に向かって見通しがつきました。政府原案、自公政権が平成十九年に提出した被用者年金一元化法案と実質的には同じものが今回提出をされております。そこから年月を経て、やっと今回これが成立をする見通しがつきました。

 遅きに失したとはいえ、この一元化に向けての評価、そして最後に、このたび、年金の国庫負担二分の一恒久化、この実現への道筋もつきました。これは、長年懸案となっておりました基礎年金負担二分の一への恒久化が実現をするものであります。この国庫負担二分の一の恒久化についての評価、この二点について、総理の御見解をお伺い申し上げます。

○野田内閣総理大臣 まず最初に、被用者年金一元化についてでございますが、できるだけ働き方に中立的な制度を実現するため、政府として今国会に法案として提出をいたしました。

 今回の三党合意におきましても、この法案については各党の御理解をいただき、原案のままで速やかに衆議院で採決し、今国会で成立を図ることとするとされております。この法案が成立をすれば、民間サラリーマン、公務員を通じた保険料負担、給付の公平性が実現できると考えておりますので、大変意義があるというふうに考えております。

 それから、基礎年金の国庫負担二分の一の恒久化の問題でございますが、これは平成二十一年度以降、ずっと臨時財源によって賄ってまいりました。今回、消費税の引き上げにより、安定財源を確保し、恒久化することによって三党合意ができました。このことは、年金制度の財政基盤を安定させ持続可能なものとするため避けて通れない課題に道筋をつけたものであり、これも大きな前進と考えております。

○古屋(範)議員 今回の修正協議によりまして、年金については、国庫負担二分の一の恒久化、そして公明党が主張してきました実質的な加算年金の実現、そして、二十五年間保険料を支払わなければならない年金の受給資格、これも十年に短縮をされました。こうしたものは大きく評価できると考えております。

 私たちも、これからも、子育て支援の拡充ですとか、さらに社会保障の改革に向けまして力を尽くしてまいることを決意いたしまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

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