第181回国会 衆議院 厚生労働委員会-3号
○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。
きょうは、年金二法案について質問してまいります。
基礎年金国庫負担、これは高齢期の生活の基礎となる年金制度の持続可能性を高めること、また、保険料納付が困難な者に対する給付保障の役割を果たすこと、さらに、年金保険料水準を抑制する等、その意義は非常に大きいと考えます。今後、少子高齢化が一層進行する我が国において、国庫負担の意義はさらに高まっていくと考えられます。
国庫負担二分の一とすることにつきましては、平成十六年度改革におきまして規定されておりますとおり、安定財源を確保してこれを維持すること、これが重要課題でございました。
当初、この基礎年金の財源、約二兆六千億円、これを将来の消費税増税で穴埋めをするために、いわば粉飾まがいと申しますか、年金交付国債の発行を政府が断念されまして、これにかわる財源として年金特例公債の発行により確保される財源を活用することとなり、消費税の引き上げ分という安定財源を前提に、基礎年金二分の一に相当する国庫負担分が確保される見通しとなったわけでございます。
前国会で成立をいたしました年金機能強化法によりまして、特定年度とされる平成二十六年四月から基礎年金国庫負担二分の一が恒久化をされることとなりました。これは、年金制度の安定運営、また国民の年金制度に対する信頼の確保という上で、非常に大きな意義があると評価をいたしております。
本法案では、年金特例公債によって、平成二十四年度及び二十五年度の基礎年金国庫負担割合二分の一が維持されることとなりました。
大臣、この意義について、まずお伺いをしたいと思います。
○三井国務大臣 今先生からも御質問のあったとおりでございまして、まさに、基礎年金国庫負担につきましては、自公政権時代、平成十六年の年金制度改正で、安定財源を確保して、平成二十一年度までに二分の一まで引き上げることとしていました。しかしながら、平成二十一年度以降は、その都度、臨時の財源で賄われてきたところでもございます。
この法案と年金機能強化法によりまして、国庫負担二分の一の実現に必要な安定財源を確保し、その恒久化を図ることであります。
将来にわたりまして持続的で安心できる制度の構築に向けまして、欠くことのできない大きな課題の前進が図られたと考えております。
○古屋(範)委員 この十六年度改正におきまして、年金の財源の安定的な運営に関しまして、国庫負担割合二分の一への引き上げ、これは最重要の要素でございました。この年金制度改革に携わってこられた坂口元大臣、これには大変腐心をしてこられたと思います。私たち自公政権におきましても、年々これに関しては苦労してきたということも言えようかと思います。
このたび、これにより、年金の国庫負担割合二分の一が確保された、これは非常に意義が大きいというふうに考えます。
次に、過去の国庫負担繰り延べの未返済についてお伺いをしてまいりたいと思います。
基礎年金の国庫負担につきましては、財政が厳しい状況にあるということから、過去に繰り延べ措置がとられてまいりました。これにつきましては、平成六年度から十年度に行われた繰り延べの予算額合計、現在も、国民年金と厚生年金を合わせまして、元本で約三兆円が年金特別会計に繰り入れられないままの状態でございます。このまま放置をされますと、年金積立金が取り崩されることともなり、将来の年金財政に大きな影響を与えかねません。
これは、元本及び運用収入相当額が返済されることとなっています。この約束はいつ果たされるのでしょうか。
平成二十五年度予算概算要求では、「過去の年金国庫負担繰り延べの返済、年金保険料の事務費への充当の解消については、予算編成過程で検討する。」となっております。年金財政の安定のために、基礎年金国庫負担二分の一とするための安定財源の確保とともに、この国庫負担繰り延べ分を返済する道筋を明確にしていくことが重要ではないかと考えます。
この点について、大臣、いかがお考えでしょうか。
○三井国務大臣 まさに先生のおっしゃるとおりでございまして、厚生年金やあるいは国民年金につきましては、過去、国庫負担の一部を繰り入れられない、そういう運用収入相当額とともに、後日、予算の定めるところによりまして、年金の特別会計に繰り入れることといたしました。
しかしながら、この年金国庫負担繰り延べ分の返済のためには、大きな、今三兆円というお話もございました、確保する必要があります。実現に至っていないのは、そのとおりでございます。
また、昨年末でありますけれども、財務大臣、それと厚生労働大臣の合意や、本年二月に閣議決定されました一体改革大綱で、返済に必要となる財源の確保について引き続き検討するということとされたところでございます。
年金財政の観点からも、過去の年金国庫負担繰り延べ分については、できるだけ速やかに返済されるよう、引き続き検討してまいりたいと考えております。
○古屋(範)委員 解散も近いかもしれませんので、次年度の予算編成をどこが担うのかというのはわかりませんけれども、ぜひ、大臣、財務省に対して頑張っていただきたい、御努力をいただきたいと思います。よろしくお願いをいたします。
次に、特例水準についてお伺いをしてまいります。
平成十六年度の年金改正におきまして、将来にわたり年金制度を持続可能にするために、給付と負担の両面から見直しを行いました。上限を固定した上で保険料を引き上げ、それとともに、負担の範囲内で給付水準を自動調整する仕組みとしてマクロ経済スライドが導入をされたわけでございます。このマクロ経済スライドは、現役人口の減少あるいは平均余命の延びを年金額に反映させていく、その分だけ賃金、物価による年金額の上昇を抑えていくというものでございます。
私は、この今の年金財政に必要なのは、こうした少子高齢化に合わせたマクロ経済スライドの仕組みがやはりこれは欠かせない、このように考えております。
このマクロ経済スライドが発動されない第一の理由として、特例水準が解消されていないという指摘があり、この発動がおくれると、その分、自動調整の期間が延びていって、将来世代の給付水準が低下、あるいは世代間格差が広がってしまう。こうした世代間の公平の観点、また年金財政の早期安定化を図る観点から、一刻も早い特例水準の解消が必要である、これは私も十分承知をしているつもりでございます。
しかし、これ以上の健全化のおくれを食いとめるために、特例水準を解消しよう、いわば手動スイッチでマクロ経済スライド発動条件を整えることが本当に必要かどうか。特例水準の解消は現在の全ての受給者に影響を与えてきます。年金財政の健全化を通じて将来世代にも影響する重要な政策であり、公的年金の運営には長期的な視野も必要でございます。
こうした影響範囲が大きい特例水準の解消については、国会での十分な審議が必要です。また、国民の理解を得るためにも、丁寧な説明が必要かと思います。大臣、この点についていかがお考えでしょうか。
○三井国務大臣 現行の特例水準による年金額は、本来の給付水準と比較いたしまして、毎年約一兆円の給付増となっております。これは、将来世代の給付を削って今の世代に回していることにほかなりません。
また、この特例水準が解消するまでの間は、長期的に年金財政のバランスを確保するためのマクロ経済スライドを発動しません。年金財政を安定化し、若い世代の将来の年金額確保につなげるためにも、一刻も早く解消が必要だと思っております。
社会保障・税一体改革の中では、若い世代を含めまして、全ての世代が安心を確保することを目指しております。この国会での御審議を通じまして、こうした点について高齢者の方々にもぜひ御理解をお願いしたいと思います。
また、特例水準の解消に当たりましては、丁寧な周知を図りたいと考えております。
○古屋(範)委員 高齢者にとりましては、年金財政に関して、特例水準の解消というその意義、やはりそうしたものを考えるよりも、どうしても自分の手元に届く年金額、これに着目をするしかない、そういう方々がほとんどかと思います。ぜひこれに関しましては説明責任をきちんと果たしていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
平成十六年度改正におきまして、特例水準の解消措置は設けられておりました。すなわち、物価、賃金の上昇局面において特例水準の年金額を据え置くこととして、本来水準の年金額が特例水準を上回れば、本来水準の年金額を給付することで特例水準を解消することとの規定でございます。物価が上がった段階での年金水準の引き上げをとどめるのが本来想定していたやり方ではないかと思います。
それができなかったからといって強制的に特例水準を解消される、これに対してはやはり私自身も疑問がございます。経済状況を改善すれば自然に特例水準というのは解消していく。景気回復が先決だと思います。
特例水準の発端となった平成十二年から十四年、当時の厳しい景気情勢、また高齢者の生活への影響を考えて、高齢者の生活を支える上で適切な措置であったと私は思っております。その当時と比較をして、現在、増税あるいは社会保険料の引き上げ等で、高齢者を取り巻く環境というのは依然として厳しい状況にあると言わざるを得ません。
こうした中で、特例水準の解消を行って年金額が削減される。高齢者の生活不安を増大させるだけではなく、消費はさらに冷え込む、デフレからの脱却を一層困難にするとの懸念もあるわけです。そして、年金収入が占める割合の高い農村地域の財政に及ぼす影響も大きいと言えるのではないかと思います。
年金を必要としない高所得の高齢者の方々はいいのかもしれません。しかし、ぎりぎりで生活をしている高齢者は、物価が下落をしたといっても、耐久消費財、電気製品など、なかなか買えません。衣料品も買わない。本当に必要最低限度の食料品など、身近な雑貨品を買うだけで生活をしていらっしゃる。こういう方々のぎりぎりの生活、こういうことを勘案していかなければならないと思います。
制度の安定的な維持、世代間の格差、先ほども答弁いただきましたけれども、これは非常に大事な点であります。しかし、これは景気回復、賃金の引き上げ、雇用情勢の改善なしにはあり得ないというふうに思います。
経済状況を改善すれば自然に特例水準は解消する。高齢者の生活状況を考えると、現下のデフレ経済下で、物価スライド以上の年金額の引き下げは行わず、景気回復を優先すべきではないか。これは厚労大臣の御自身のお考えを伺いたいと思います。
○櫻井副大臣 済みません。今先生からるるお話がありましたが、本当にそのとおりなんだとも思っています。でも、どちらが先なのかと申し上げると、これは両方並行してやらざるを得ないものなんだと思っているんです。
そのことをちょっと申し上げたいのは、デフレからの脱却というのは、これはもう年金制度だけではなくて、社会全体の問題だと思っています。給与にもはね返ってまいりますし、それから国家財政も悪化させてくるという点で、これはもう与野党を超えて、まず第一に取り組まなければいけない問題だと思っているんです。
先生おっしゃるとおり、ここを解消すれば、物価が上がってまいりますから、今のような形で年金の給付を減額しなくて済むんだ、これはそのとおりだと思います。
しかし、一方で、その物価が上昇するまでの間、ここに手当てをしないと、平成十六年に坂口先生がこれをおつくりになりまして、百年安心の年金プラン、この制度がやはり、先生先ほど年金財政に穴があくことについて問題がある、そして、その穴があくことに対して国庫で早く補填しろというお話もございました。そうしてくると、年金の財政のことを今度は別なものとしてもう一つ考えれば、結果的には、済みませんが、給付の水準を減額しなければ、この年金財政も悪化するということはこれまたしかりなんだと思っております。
ですから、そういう点でいうと、二つの観点から、これは同時並行として行っていって、我々が行うべきことは何なのかというと、一日も早くデフレから脱却して、この水準をもとの水準に引き上げられるような努力をしていくことなのではないのかというふうに思っております。
○古屋(範)委員 景気回復あるいはデフレからの脱却、政権交代をして、ここに対する的確な対応がとられてこなかった、これはやはり指摘をしておかなければいけないと思います。
菅前総理のときに新成長戦略を掲げられました。四百項目のうち約九割は功を奏していない、そのような結果も伺っております。やはり、この局面を打開していく、打ち破っていくためには、一刻も早く解散・総選挙を行って、政権交代をするしかない、このように考えます。
次に、各種手当の給付水準についてお伺いをしてまいりたいと思います。
本法案では、これまでの年金と同じスライド措置がとられてまいりました児童扶養手当それから障害者関係手当等、各種手当につきましても、今回の年金の特例水準に合わせて解消を行うこととされております。
しかし、世代間の公平の観点あるいは年金財政の安定化の観点とは、明らかに各種手当は異なっているのではないかと思います。この各種手当は、給付と負担の対応関係がない、制度内での財政の安定化を図る性質のものではないはずであります。
そして、平成十七年に、特例水準の解消のための措置を定める児童扶養手当法による児童扶養手当の額等の改定の特例に関する法律が制定されておりまして、経済情勢が改善をされ、物価が上昇すれば、特例水準は自然に解消されることとなっております。
そこで、本法案にある、社会的に弱い立場にある方々に対するこうした手当について、今回の特例水準の解消を行う必要が本当にあるのかどうか、これについて明確に御説明をいただきたいと思います。
○西村副大臣 お答えいたします。
児童扶養手当でございますけれども、年金の措置と同様に、平成十一年から十三年の間に物価が下落したにもかかわらず、手当額を特例的に据え置いてまいりました。
例えば母子家庭の場合ですけれども、例えという話ではないんですが、死別による場合には遺族年金が支給されて、離婚による場合には児童扶養手当が支給されております。今回、遺族年金がスライドで改定されますと、児童扶養手当がスライドされないということは、これは均衡を欠くのではないかということでございまして、同じ母子家庭の中でも均衡を失するおそれありということで判断をさせていただいております。
今回のスライドの特例分の解消についても、年金の特例水準の解消にあわせて対応する必要があるというふうに考えて、このように対応させていただいております。
○古屋(範)委員 児童扶養手当を初め、御苦労されている方々、社会的に弱い立場にある方々のこうした特例水準の解消については、いま一度、ぜひ再考いただきたい、このように指摘をしておきたいと思います。
次に、年金生活者支援給付金の支給に関する法律案についてお伺いをしたいと思います。
公明党は、かねてから低年金者への年金の加算制度の創設ということを訴えてまいりました。低所得高齢者に対する追加的な給付の実施につきましては、税と社会保障一体改革の三党合意後の修正によりまして、当初案よりも改善をされていると思います。
当初案では、低所得者である老齢基礎年金受給者に対して月額六千円を加算する、保険料免除期間がある者にはその期間に応じて加算されるという、保険料の未納期間があっても年金の受給権があれば月額六千円満額が加算されるという仕組みがつくられておりました。それが、修正によりまして、保険料納付期間に応じた額が給付をされるということで、未納期間があればその期間に応じて給付額が減額をされる、反映をされることとなっております。
低所得高齢者に対する加算であっても、未納期間があるかないかで加算額が同じでは、保険料の納付率が低下をしている昨今の状況では、保険料を納付しようという意欲の低下を招く懸念がございました。これが、私たち公明党からの修正によって公平な制度になったというふうに考えます。
このように、本法案は、私たちが主張してまいりました加算年金を実質的に創設する内容に沿っており、三党合意を踏まえて立案された法律でございます。国民に消費税増税をお願いする一方で、社会保障の機能強化の一環として実施されるものでありますので、早期成立をすべきと考えております。
今、国民の皆様が一番知りたいことは、この支給対象となる低所得者の範囲についてであります。これは政令で定めるとされておりますけれども、どのようにお考えか、あわせて、補足的給付金の支給対象者についても御説明をいただきたい。また、この給付金については、私たちは、さらなる加算が必要だ、拡充が必要だと考えます。これについてお答えをお願いいたします。
○香取政府参考人 お答え申し上げます。
老齢年金生活者支援給付金の支給要件でございますが、先生お話しのように、これは政令をもって定めるといたしております。
具体的な所得基準額につきましては、施行時の、これは平成二十七年になりますが、年金額を踏まえて定めるということになっておりまして、前年の公的年金等の収入金額と所得金額との合計額が、老齢基礎年金の満額、その時点の満額、特例水準解消後ということで七十七万円を想定しておりますが、これに相当する金額以下であるということと、住民税が家族全員、世帯全体が非課税であるということを予定しております。
それから、補足的老齢年金生活者支援給付金につきましては、前年の公的年金等の収入金額と所得金額との合計額が、先ほど申し上げた老齢基礎年金の満額からおおむね十万円程度上回る範囲内ということで、同様に、住民税が家族全員非課税であるということを定めることを予定しております。
なお、こういった内容につきましては、法律案の附則に、各種低所得者対策の実施状況や老齢基礎年金の額等を勘案し、総合的に検討が加えられ、その結果に応じて所要の見直しを行うという検討規定が置かれてございます。この規定に基づきまして将来適切に対応していくということが必要であろうかというふうに考えてございます。
以上です。
○古屋(範)委員 この福祉的給付、低年金者への年金加算制度の第一歩が開かれると考えております。現行の年金制度をベースとして、さらなる拡充を図るべき、そのことを申し上げておきたいと思います。
最後の質問に移ります。
前国会で、受給資格期間が二十五年から十年に短縮をされることとなりました。これも公明党が主張してきた点でございます。また、追納制度、保険料を十年までさかのぼって納める後納制度が十月一日から三年間に限りスタートいたしました。
八月より順次お知らせ等を行い、周知されているということでございますけれども、三年という期限がございますので、さらなる国民への周知徹底をお願いしたいと思います。これについてお答えをお願いいたします。
○高倉政府参考人 お答え申し上げます。
ただいま御指摘いただきましたとおり、後納制度、十月一日からの施行の分につきましては既にさまざまな周知の努力は進めておりますけれども、これもあわせて御指摘いただきましたとおりでございますが、本年八月にはさらに年金機能強化法が成立しまして、施行は、これは二十七年十月からでございますが、受給資格期間を十年に短縮ということになっておるわけでございます。
したがいまして、後納制度の方を活用して保険料を納付いただくことによりまして、新たに年金の受給資格が得られる方々がおられると考えられる、御指摘のとおりでございます。
こういったことを踏まえまして、両方の制度につきまして、一般的な広報、そしてまた対象となる方々への個別のお知らせを行うなどによりまして、一層の周知に努めてまいりたいと考えております。
○古屋(範)委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。