第166回国会 厚生労働委員会 第30号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 本日は、社会保障協定の実施に伴う包括特例法案について質問してまいりたいと思います。

 本法案の質問に入ります前に、昨日明らかになりました国民年金被保険者台帳のサンプル調査についてお伺いをしてまいります。

 社会保険庁は、国民年金の過去の手書きの納付記録から三千九十件を抽出いたしまして、コンピューターに正確に入力されているかどうかというサンプル調査を行い、その結果、四件、記録の食い違いがあるということが明らかとなりました。

 今回のサンプル調査は、国民年金の保険料に未納期間があったり、未払い分の保険料を後からまとめて納付するなど、納付記録が複雑になっている人を別枠で管理している特殊台帳約三千二百万件の記録でございます。この特殊台帳すべてをマイクロフィルム化して保存するなど、一般の台帳に比べて厳格に管理をされていると伺っております。

 今回、食い違いがあった四件、いずれも、保険料を支払った期間の不一致であったとのことでありますが、このサンプル調査の結果につきまして、大臣の御見解をお伺いいたします。

○柳澤国務大臣 私どものオンラインのシステム、基礎年金番号、それから五千万件に上る未統合の記号番号というものがございますけれども、特に、基礎年金番号のオンライン化の記録と、それから、もともとそれの、電子的な処理をしたもとの原稿ですね、その原資料、これとを突き合わせまして、ちゃんとインプットがされたかどうか、これを調べるということは、私ども、今回の取り組みの中で、本格的にこれに取り組むということを既に決めているわけでございますけれども、それに先立ちまして、対照する相手も非常に特定されていて、きちんと整理をされているという、今委員の御指摘の特例納付の台帳というものがございます。したがいまして、これと突き合わせるということは割と能率的にいくはずではないか、こういう御提案を委員会審議の中で受けまして、それをやってみることにしますということで今回やってみまして、その結果を御報告させていただいたわけでございます。

 対照記録の全件は三千九十件でございましたけれども、マイクロフィルムに対応するオンライン記録がない、つまり、もう頭から、記号番号やら、住所氏名とか生年月日とか性別とかというものがすぽんとすべてなかった、そういう事例は、当然のことながらありませんでした。それから、生年月日、住所、性別という、個人を特定する記載についても、まず、まあまあ食い違いというようなことはなかった、こういうことでございます。ただ、三千九十件のうち四件について、やはり、納付情報の一部につきまして食い違いがあったということを私ども発表させていただいている次第でございます。

 いずれにいたしましても、この特例納付というのは、先ほど委員もお触れになられたように、いわば特例的な納付をするということで、きちっきちっとレギュラーな納付をする記録とはちょっと違う記録でございますので、難しさもあるわけですけれども、しかし、そういうことを言いわけにするのではなくて、どんなものであってもきちっと一〇〇%オンライン記録にそれが移行しているということでなければならないということを考えますと、このことについても、私どもは遺憾である、このように考えます。

 これからもまた、全部のもと資料、台帳だとかマイクロフィルムとの照合というものをしっかりやっていく必要がある、このように考えております。

○古屋(範)委員 さまざまなものを照合して、一〇〇%照合を完了させていくというお答えでございました。

 今回、明らかになりました記録の食い違い、これは、昨年八月から年末まで行いました年金記録相談の特別強化月間の中で、約百万件の相談のうち、二十九件、不一致が見つかっております。こうしたサンプル調査、そしてこの二十九件、いずれにいたしましても、厳密に復元をされていかなければいけない、このように考えますが、この具体的手順についてお伺いをいたします。

○青柳政府参考人 ただいま、オンラインの記録と実際の納付実績が食い違っている場合についての、どのようにこれを復元していくかということについてのお尋ねがございました。

 社会保険庁におきましては、既に新対応策として公表させていただいておりますけれども、社会保険庁のマイクロフィルム、それから市町村がお持ちであるところの被保険者名簿等の記録、これを、社会保険庁のオンライン記録と突き合わせを計画的に行う。ただ、それについては、現時点でいつまでにどのようなということをお示しできないものですから、その進捗状況を半年ごとに公表させていただくというふうに既に公表させていただいているところでございます。

 いずれにいたしましても、これは相当膨大な記録にもなりますし、また、その記録の存在場所が、私ども社会保険庁の中でも、本庁にあるもの、それから、各県の社会保険事務所にあるもの、さらに、市町村にそれぞれあるものというふうな形で散在をしております。したがいまして、この全体像を一日も早く整理いたしまして、この全体像を前提に、最も効率的な突き合わせの方法というものを早急に組み立ててまいりたいというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、そういうふうにいたしまして突き合わせをいたしました結果、食い違いが生じております場合には、記録を確認の上、私ども、順次オンライン記録の方にこれを収録してまいりたいと考えております。

○古屋(範)委員 この年金記録につきましては、市町村が保有する台帳の記録、また社保庁のオンライン記録など、チェックを速やかに行われて、その進捗状況、今おっしゃいましたように逐次公表しながら、計画的かつ徹底的に調査をしていただきたい、このことを強く要望いたしておきます。

 また、社会保険庁、十一日に開設をいたしました記録照会専用フリーダイヤル、ねんきんあんしんダイヤルに相談、問い合わせが殺到しているということでございます。電話がかからないという苦情が起きております。国民の年金に対する不安解消のためにも、この相談業務、ぜひとも拡充をさせ、国民の申し出に応答できるよう、体制を強化させていただきたい、このこともあわせて要望しておきたいと思います。

 次に、市町村におけます被保険者名簿等の調査に対する回答、これが発表をされました。被保険者名簿の保管の有無につきまして、保管ありと回答する市町村千六百三十六、そして保管なしと回答するのが百九十一市町村であったということでございます。この点についての御説明をいただきたいと思います。

    〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕

○青柳政府参考人 ただいまお尋ねのございました、市町村にございます国民年金の被保険者名簿でございますが、これは、平成十四年まで市町村が国民年金の保険料の徴収業務を行っておられたということで、市町村の方でその徴収業務を行うために、いわば控えとしてその記録を残しておられたもの、これでございます。

 これにつきまして、ただいま委員からも御紹介がございましたように、現在どのような保管状態になっているのか、平成十四年から既に五年を過ぎようとしている段階で、みんな廃棄されていないであろうかということから調査をさせていただいたものでございます。

 保管の有無につきましては、保管ありとの回答が一千六百三十六市町村、保管なしとの回答が百九十一市町村でございました。また、その名簿の保管の方法、媒体としてどのような媒体で保管しているかにつきましては、紙の形で保管されているところが一千三百九十三市町村、それからマイクロフィルムで保管されているところが六十六市町村、そして磁気媒体で保管されているところが五百七十九市町村でございました。

 また、被保険者名簿以外にも、当時徴収業務を行っておられた市町村が各種の資料を保管しているだろうということで、あわせてお尋ねをいたしましたが、保険料の検認カードあるいは保険料の検認簿という形での保管をしているという御回答が七百五十の市町村からちょうだいできました。また、保険料の領収済み通知書、これは、領収書そのものは御本人の手元に残るわけでございますし、また、途中で、これを支払ったときの金融機関にもその控えが残るわけでございますが、最終的には保険料領収済み通知書というのが市町村に残るわけでございまして、これが三百五十五市町村で保管しているというふうに御回答いただきました。

 なお、この被保険者名簿については、そういうことで、既に廃棄をされている市町村も残念ながらおありになるということでございますけれども、私どもといたしましては、これは、被保険者名簿が廃棄をされていればもう調べるすべはないということではなく、私どもの方が逆に保管をしております国民年金の、先ほど話題に出ましたいわゆる特殊台帳等の記録もございます、こういったものをすべて突き合わせいたしまして、きちんと記録を復元していくということでございます。

 また、仮に、御本人も領収書がない、私どもの方にも台帳を含め何の記録もないというようなケースにつきましては、先日来御議論をいただいておりますけれども、いわゆる第三者委員会を今後総務省の方に設置していただくことになりましたので、ここで十分に御本人の申し立て等を丁寧にお聞き取りいただき、あるいは私どもも協力をいたしまして、関連資料を徹底的に調査、分析するというプロセスを経て、一つ一つ丁寧にこの記録の復元というものに取り組んでまいりたいと考えております。

    〔伊藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕

○古屋(範)委員 国民の側は、市町村での記録が廃棄をされた、そのことだけを聞きますと非常に不安になっているというふうに思います。ぜひとも丁寧な、正確な説明というものを行っていただきたいというふうに考えます。

 次に、この社会保障協定の実施に伴う包括特例法案についてお伺いをしてまいります。

 世界経済のグローバル化に伴い、企業活動が世界じゅうに広がっていく、我が国の企業が海外企業と競争していくため、より自由で柔軟な活動を可能にするビジネス環境の整備、これが急がれていると思います。このような中、これまでも社会保障協定が七カ国と締結をされまして、相互の経済交流も一段と活発化をしております。

 今回、社会保障協定にかかわる包括実施特例法案が制定されることにより、社会保障協定発効までの手続が迅速化をされると考えてよろしいのでしょうか。本法案制定の意義についてお伺いをいたします。

○渡辺政府参考人 お答え申し上げます。

 これまで社会保障協定の締結ごとに、協定と国内法制を各国ごとに整備してまいりましたが、ことしの二月まで含めまして、従来七カ国でありましたのが八カ国と協定または署名というところまでたどり着いております。それらの経験の中から、国内法制の対応が定型化され、各国ごとの法律の内容をすべて網羅することができるのではないかということで整理をさせていただきましたのが、今回御審議賜っております包括実施特例法でございます。

 これによりまして迅速かつ機動的な国内法制の整備が可能ということになりますので、協定の発効までの過程の迅速化、多数国との積極的な協定締結に向けた機動的な交渉が可能となるということで、本来の国際協定締結への加速化ということが私どもとして今まで以上に実現できるというふうにその意義を考えております。

○古屋(範)委員 本法案が社会保障制度における二重負担の解消また保険料の掛け捨て防止などを目的としている、そのことの関係団体、関係者への十分な理解が不可欠であると思います。今後ともぜひこの法案の内容の周知広報活動に取り組んでいただきたい、このことを要望しておきたいと思います。

 最後の質問に参ります。

 私もこれまで、海外から日本に働きに来られている方、特に中国の女性などとも交流がございまして、やはり年金問題は非常に関心のあるところでございます。特に、高学歴で、日本に来てからまた大学、大学院に行く、職業につくのが遅い方々に関しましては、それほど長くならず、十年足らずで帰国してしまう、そのような方々もいるわけでありまして、受給資格がある二十五年に満たないために掛け捨てになっている、このような実情もございます。

 人的交流が多く、また今後ともこうした交流が増加を予想されるアジア諸国を中心とした、社会保障制度が未成熟な国との社会保障協定についても今後進展を考えていかなければいけない、このように思うところでございます。これにつきまして、最後、柳澤大臣に御見解をお伺いいたしたいと思います。

○柳澤国務大臣 それぞれの国が、近代化を進める中で、国民の福祉の向上のために社会保障制度というものを逐次整備されていっております。今委員から御指摘のありました、アジアの近隣の国々においてもひとしくそういう動きが見られるところと言ってよろしかろうと思います。

 そうした中で、今回、私どもが社会保障協定の国内法制を包括法制とさせていただきました。このことによりまして、これまで、社会保障協定を結ぶごとに国内の法制度をまた個別の制度として整えてまいりましたけれども、今回この包括的な制度をぜひ成立させていただくことができますれば、これはもうそこに割かれていた力、マンパワーというものを社会保障協定そのものの締結のためのエネルギーにむしろ転換していくことができる、そういうようなことでございますので、私どもとしては、今委員が御指摘のような、アジアの国々との関係におきましても、その可能性をより広範に検討していくことができる体制ができると思います。
 ただ、なかなか、社会保障制度の成熟というのは少し時間がかかることでもございますので、それらの成熟の度合いというものをよく見ながら、そしてまた、現実のニーズ、経済界等からこれは上がってくるわけでございますが、そういう声に十分耳を傾けて、できるだけ前向きに、そして、人的な交流がさらに安心した形でできるように私ども努めてまいりたい、このように考えております。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 以上で質問を終わります。

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