第166回国会  本会議 第38号

○古屋範子君 公明党の古屋範子です。

 私は、公明党を代表して、ただいま議題となっております内閣提出の日本年金機構法案及び国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案並びに石崎岳君外四名提出の厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律案に対して、賛成の立場から討論します。(拍手)

 我が国の年金制度は、二十歳以上のすべての国民を対象として世代間扶養を行う仕組みであり、国民生活を支える社会保障の中で中核をなすものであります。

 年金制度については、平成十六年に制度改正が行われました。しかし、その適正な運営を任務とする社会保険庁は、相次いで明らかとなった不祥事や業務運営に関するさまざまな問題により、残念ながら、国民の信頼を失ってしまいました。公的年金は、国民の信頼なくしては成り立ち得ません。制度の安定的な運営を図るために、社会保険庁については、根本的な見直しを行い、新たな組織として生まれ変わらせることが必要です。

 以下、政府提出の二法案に賛成する理由を申し上げます。

 賛成の理由の第一は、年金運営新組織を法人化、非公務員化することにより、社会保険庁の抱える構造的な問題に対応し、その組織体質を一掃できることにあります。

 今回の法律案では、かつての地方事務官制に由来する閉鎖的な組織体質を改めるため、地方組織を都道府県単位からブロック単位へと再編することとしています。また、非公務員とすることにより、身分保障のある公務員制度の制約を離れ、能力と実績に基づくめり張りのきいた人事及び給与体系を徹底することとしています。

 賛成理由の第二は、年金の財政責任、管理運営責任は国が担うという原理原則をしっかり堅持し、ガバナンスを強化していることです。

 日本年金機構は、これまでの独立行政法人や特殊法人とは異なり、厚生労働大臣の直接の監督権限を強化しております。年金事務費の予算も、しっかりと国が精査する仕組みとなっています。また、外部の専門家も参画した合議制の理事会を置き、保険料負担者や年金受給者等の意見を反映させるための運営評議会も置きます。さらに、監査法人による外部監査の導入など、ガバナンスを強化するための措置を盛り込んでいます。

 賛成の理由の第三は、今回の法律案により、早急な改善が求められる国民年金の業務改善が図られることにあります。

 住民基本台帳ネットワークの利用拡大による被保険者等の住所、氏名変更の届け出の廃止、あるいはクレジットカードによる保険料納付の導入等の保険料納付の促進策など、各般にわたる対策を盛り込んでおり、確実に業務の改善を図ることができます。

 次に、法案審議の際の論点について、考え方を申し述べます。

 まず、社会保険庁と国税庁を統合し、歳入庁を設置することについては、年金制度を立案する厚生労働省と、それを実施する組織とが別々の組織になったのでは、公的年金に対する国の責任の所在が不明確になり、問題があります。また、税と保険料では性質が異なるため、保険料の収納率の向上も期待できません。さらに、統合により国民の利便性が高まるのかについても、年金保険料は、口座振替や金融機関等での納付が約九八%と一般的であり、通常、保険料納付のためにわざわざ社会保険事務所を訪問していただく必要がありません。したがって、社会保険庁と国税庁を統合しても、国民の利便性の向上に資するとは考えにくいものであります。

 次に、与党提出の時効特例法案に賛成する理由を申し上げます。

 そもそも、年金の加入記録の問題については、基礎年金番号に統合されていない約五千万件の記録については、大部分は、これから年金の請求までに基礎年金番号に統合するか、あるいは、既にお亡くなりになられたなどにより統合の必要のない記録であり、政府・与党において、しっかりと対応していくための対応策パッケージを明らかにいたしました。これらは、消えた年金ではなく、社会保険庁に記録もあり、基礎年金番号にまだ統合されていない年金記録であり、国民がいたずらに不安に陥らないよう、正しいとらえ方が必要です。

 また、このほかに、ごくまれに、社会保険庁にも市町村にも納付記録がないケースが判明していますが、保険料を納付した領収書がなくても、しゃくし定規な対応をするのではなく、さまざまな関連資料の調査の中で、適切に納付の有無の判断に結びつけることができるよう、丁寧な対応を徹底することといたしました。

 この中では、既に年金を受給されている方々の中に請求漏れがあるケースに対する対応がとりわけ重要です。年金受給者への確認の呼びかけや社会保険庁における記録の突合などにより、早期に明らかにして、未統合の記録が統合されます。

 与党提出の時効特例法案においては、これらの突合などによる結果、年金記録を訂正することにより年金給付額がふえる方に対し、時効によって増額分を受けられないことのないよう法的手当てを行うこととしており、これによって、国民の年金支給を受ける権利をしっかりと保護することができます。

○古屋範子君(続) また、この法案においては、政府に対し、年金個人情報が正確な内容となるよう、被保険者などの方々の御協力をいただきつつ、万全の措置を講ずることとしており、これにより、年金記録の管理に対する国民の信頼確保をすることができるものであります。

 なお、法案の施行に要する経費としては、現時点で一定の条件のもとで試算した場合、約六十億と見込んでおりますが、法案が成立した場合には、義務的経費として、政府の責任において必要な満額が確保されるものと承知しております。

 政府提出の二法律案につきましては、本国会において十分な審議を行ってまいりました。また、与党提出の時効特例法案については、国民の不安を早急に解消させるため、迅速かつ的確に審議を行ってまいりました。

 改革の目的は、国民生活の基盤となる年金制度を守ることにあります。今後、さらに国民の目線に立った改革を推進していくことを強く表明し、政府案及び与党提出案に対する……

○古屋範子君(続) 賛成討論といたします。(拍手)

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