第204回国会 衆議院 内閣委員会-30号
○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。
今日は、銃刀法改正案について質問をしてまいりますので、よろしくお願いいたします。
ただいまの議論と重なる部分もございますけれども、基本的な質問をさせていただきたいと思います。
クロスボウをめぐりましては、兵庫県の宝塚市で、昨年六月四日、ちょうど一年前でありますけれども、家族ら四人が殺傷される事件が発生をいたしました。三人死亡、一人が重傷という、大変凶悪な事件でありました。
この十五年間で、クロスボウによる殺傷事件や、猫とか鹿、鳥など動物に対する虐待という形での事件が起きております。
警察庁によりますと、二〇一〇年一月から昨年六月までの間で、クロスボウが使用された刑法犯事件の検挙件数は二十三件であります。そのうち、殺人、殺人未遂など故意に人の生命身体を害する事件は十三件でありまして、半数を占めております。さらに、昨年七月以降も、クロスボウが使用された殺人未遂事件、暴行事件、器物破損事件等が相次いで発生をしております。クロスボウに関する相談は百三十五件に上りました。
都道府県の条例によって青少年への販売などを規制するなど、各自治体の裁量で一定の規制をしくにとどまっているのが現状です。必ずしも十分な規制とは言えないと考えます。事件が起きた兵庫県の井戸知事は、銃刀法など国の法整備でクロスボウの規制を訴えていらっしゃいます。
人の生命に危険を及ぼすクロスボウにつきまして早急な対応が必要であると考えます。一刻も早い本法律案の成立、施行が求められております。本法案は、クロスボウの所持等について初めて規制をするものでありまして、私は、その意義は大きいと思います。実効性のある対策を早急に講じていただきたいと思います。
まず初めに、クロスボウが犯罪に使用される背景、規制の必要について、大臣にお伺いいたします。
○小此木国務大臣 警察庁が調査したところによれば、平成二十二年一月から令和二年六月までの間に検挙したクロスボウ使用事件について見ますと、射程距離が長い、威力が強い、発射時の音が静か、操作が簡単、入手が容易といった特徴、実態が被疑者に認識されており、こうしたことがクロスボウが犯罪に使用される背景として考えられるところでございます。
また、被疑者のクロスボウの入手動機としては、犯行目的、興味本位、鑑賞目的等、様々でありますが、現在はクロスボウの所持等について規制する法律がありませんので、どのような目的であっても入手できるのが現状であります。
このような実態も踏まえ、クロスボウによる危害を防ぐため、クロスボウを原則所持禁止とした上で所持許可制を導入し、適正な取扱いを期待できない者には所持させないこととしつつ、標的射撃等の一定の用途に供するため適正な取扱いを期待できる者にのみ所持許可を与えることとしたものであります。
○古屋(範)委員 ありがとうございました。
このクロスボウ、大変殺傷能力が高いものである。様々な事件を背景として本改正案が提出をされたということだと思います。この改正案の中では、クロスボウを所持禁止の対象としていく、また、クロスボウの所持許可制に関する規定を整備していく、罰則規定も整備をしていく、このような銃刀法の改正案が提出された立法の趣旨を今理解をいたしました。
次に、銃砲刀剣類の利用目的というのは多様だと思うんですが、狩猟とか有害鳥獣駆除など、こうした社会生活上有用に使われている面がございます。しかしながら、いずれも殺傷の機能がありまして、犯罪に利用される危険性も有しているということです。
本法律案におきまして、改正後の第三条では、所持の規制の対象となるクロスボウについては、「内閣府令で定めるところにより測定した矢の運動エネルギーの値が、人の生命に危険を及ぼし得るものとして内閣府令で定める値以上となるもの」とされております。この内閣府令で定める値については、どのように決定をされるのか、規制対象とするクロスボウの要件についてお伺いをいたします。
加えまして、本法案では、過去十年余り、洋弓とか和弓により人の生命身体を害する事件が確認をされていない、このことから、これは規制対象となっていません。今回の改正で、クロスボウは規制の対象となったわけです。
今後、科学技術の進展に伴って、レーザーガンなどの強力な威力のあるものが開発されるなど、犯罪に利用される危険性の高い器具が出てきた場合に、都度都度法改正をするのではなく、即時規制できる体制をつくっておくべきではないかと考えますが、この辺についての見解を求めます。
○小田部政府参考人 お答えいたします。
まず、一点目のお尋ねの関係でございますけれども、クロスボウにつきましては、改正法におきまして、先ほどもお話がございましたが、引いた弦を固定し、これを解放することによって矢を発射する機構を有する弓のうち、内閣府令で定めるところにより測定した矢の運動エネルギーの値が、人の生命に危険を及ぼし得るものとして内閣府令で定める値以上のものと定義しているところでございます。
そして、内閣府令で定めるもののうち、まず、矢の運動エネルギーの測定方法、これにつきまして、内容の詳細は検討中でございますけれども、空気銃の場合と同様、発射する矢の先端から〇・七五メートルの点と一・二五メートルの点との間を移動する矢の速さと質量からその運動エネルギーを測定することを想定しているところであります。
次に、人の生命に危険を及ぼし得る程度の矢の運動エネルギーにつきましても、これもやはり詳細は検討中でございますけれども、空気銃における人の生命に危険を及ぼし得る威力の下限値、これが平方センチメートル当たり二十ジュールでございます。この下限値で弾丸を発射した場合の侵徹量、例えば弾丸等をゼラチンに対して発射した場合に、そのゼラチンに貫通した距離、これと同等の侵徹量となる場合の矢の運動エネルギーを定めることを予定しているところでございます。
それから、二点目の、犯罪に利用される危険性の高い器具が出てきた場合に即時規制できる体制をというお尋ねの点でございますけれども、御指摘のように、今後、犯罪に利用される危険性の高い、人の殺傷に使用される器具が出てくること、こういったことが想定されるわけでございます。
銃刀法におきましては、新たに規制対象とする場合には、一般に、規制の必要性、凶悪犯罪の発生等、殺傷能力、社会的有用性、規制対象の明確性、銃砲刀剣類との類似性を総合的に判断することとしておりますけれども、銃刀法におきまして新たに規制対象とするに当たっては、こういった点を踏まえて、個別具体的に検討する必要があるわけですけれども、御指摘のとおり、科学技術の進展に伴い新たな器具が出現して、それが犯罪に悪用される危険性、こういった危険性等も注視しながら、迅速かつ適切な対応が取れるようにしてまいりたいと考えております。
○古屋(範)委員 理解をいたしました。
しかし、どうしてもこういう規制というものは後追いになってくると思います。どんどんとこうした武器に関する威力が高まってくる中で、即時規制、機動的に対応できる体制を検討していただきたいということを申し上げておきたいと思います。
続きまして、本法律案におきまして、クロスボウの販売、また引渡しの際に、販売事業者、運送事業者に購入者の所持許可証等の確認が義務づけられております。
この所持許可証につきましては、偽造をされるということも考えられます。こうした不正を見抜くことができるように、厳格な審査、的確な判断で不適格者を排除していくということが重要であります。特に、クロスボウはインターネットで購入するということが大半でありまして、この場合、所持許可証等の確認が困難ではないかと思います。そこで、この所持許可証が本物であるのか、本人確認の実効性の担保が必要になってまいります。
このクロスボウの所持許可について、厳格な審査、的確な行政処分により不適格者を排除していく、このことが確実に行われるためにどのような対応を考えているのか、クロスボウの購入時における所持許可証等の確認について、その真正性や本人確認の実効性を担保するための取組について伺います。
さらに、インターネット上の違法な個人間の売買を防ぐために、監視と取締りを一層強化する必要があると考えますけれども、これについての御見解を伺います。
○小田部政府参考人 お答えいたします。
まず一点目の厳格な審査、的確な行政処分により不適格者を排除していくという点でございますけれども、クロスボウによる犯罪防止のためには、改正法で定められた欠格事由に関する調査、審査を厳正に実施して、不適格者を確実に排除することが重要であると認識してございます。
そこで、警察におきましては、銃刀法に定める欠格事由があるかどうかについて申請者本人への面接調査や周辺調査等を実施した上で審査を行い、欠格事由に該当する場合には不許可、取消し等を行うこととしてございます。今後、各都道府県警察におきまして所持許可に関する的確な判断が行われるよう、指導をしっかり行ってまいりたいと考えてございます。
続きまして、クロスボウの購入時における所持許可証の真正性、本人確認の実効性担保の取組といった点でございます。
銃砲の所持許可証につきましては、内閣府令におきましてその様式が定められているところでございますけれども、例えば、標的射撃等の用途に供するための銃砲の所持許可証、これにつきましては、当該許可証、許可を受けた写真に押し出しスタンプで割り印を押す形式としておりまして、また、表紙については、青色の皮、レザー、ビニール製とし、金文字入りとすることとしているなど、容易な偽造が困難なものとするべく努めているところでございます。
また、所持許可証につきましては手帳の形式になってございまして、検査欄等が設けられております。毎年実施している銃砲の一斉検査におきまして、確認の上押印するなど、警察におきまして恒常的に所持許可証を確認することとしている上、販売事業者におきましても、譲渡しの際に所持許可証等の確認を行い、偽造等の疑義がある場合には、県警察に対しまして許可番号等による照会を受けることも可能になってございます。
クロスボウの所持許可証につきましてもこういったものと同様の様式とすることを検討してございまして、今後、所持許可者に対する譲渡しや販売事業者における確認が適切に行われるよう、業界団体等を通じて販売事業者に周知するとともに、販売事業者から都道府県公安委員会への届出の機会、こういった機会も活用して周知を図ってまいりたいと思います。
それから、三点目のインターネット上の売買の監視、取締りについてでございます。
改正法におきましては、クロスボウを譲り渡す場合には、相手方からその者の所持許可証の提示を受けた場合でなければクロスボウを譲り渡してはならないとされておりまして、その具体的な方法は内閣府令で定めることとしているところでありますが、これらはインターネット上の個人間売買にも適用されるところでございます。
この内閣府令におきましては、現行の銃砲のインターネット販売時の手続同様、適法に所持できる者以外の者に譲り渡されることを防止するため、販売者はクロスボウを購入しようとする者の所持許可証の原本を確認した上で配送し、引渡時には運送事業者に運転免許証等による本人確認を確実に行わせなければならないこととすることを予定してございます。
インターネット上の違法な個人間売買を防ぐためには、警察による取締りのほか、関係方面と協力した対策が必要と認識しておりまして、今後、インターネットオークションやフリーマーケットアプリの運営事業者に対しまして、改正法の内容を周知の上、出品の禁止についても協力を働きかける、あるいはサイバーパトロール等を通じまして、インターネット上で違法な取引が行われないか状況把握を行うなどして、違法な取引の防止に努めてまいりたいと考えております。
○古屋(範)委員 時間ですので、最後の質問になります。
このクロスボウの所持禁止、許可制の導入につきまして、販売・輸入事業者また国民に対しても広報、啓蒙が必要であると考えます。本法案におきましては、クロスボウを既に所持している者について、施行期日から六か月間は所持禁止の規定を適用しないこととしています。この期間中に許可申請や譲渡し、廃棄手続が適正に行われるよう経過措置の周知徹底を行う必要があると思います。
この十分な周知、広報を行うためにどのような措置を講じられるのか、お伺いをいたします。
○小田部政府参考人 お答えいたします。
まず、改正法につきましては、国民への十分な周知等に要する期間として、公布の日から起算して九月を超えない範囲内で政令で定める日から施行することとしております。
その上で、改正法の施行時に現にクロスボウを所持している方につきましては、施行日から六か月の経過措置期間は例外的に所持を認めまして、その間に所持許可を申請するか、適法に所持することができる者に譲り渡すか、廃棄するかの措置を取っていただくこととしております。
そこで、改正法が可決、成立されれば、警察におきましては、公布後速やかに、国民に広く、ホームページ、SNS、ポスター等によりまして、今回の法改正によってクロスボウの所持が原則禁止となり許可制となることを周知するとともに、現にクロスボウを所持している方に対しましては、業界団体等からも協力を得まして、この経過措置期間に許可の申請や廃棄等の処分をすることについて呼びかけることにつきまして、取り組んでまいりたいと考えております。
また、クロスボウの廃棄に当たっては、警察に持ち込んでいただければ無償で廃棄を行うことにつきましても、周知を図ってまいりたいと考えております。
○古屋(範)委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。