女性の力を社会の隅々へ(公明新聞 2014年6月1日付)
「働きやすさ」知恵絞る自治体
これからの日本社会の発展は、女性の力の発揮が鍵を握ります。いま、全国の自治体でも、就業、子育て支援など、女性の活躍をサポートする取り組みに知恵を絞っています。こうした動きを後押しするため、公明党女性委員会がまとめた「女性の元気応援プラン」と、経済評論家・勝間和代さんの評価を紹介します。
男性の育休大幅アップの広島県
「女性の働きやすさ日本一」へ多彩な施策を展開する広島県。女性の就業と子育て支援で注目を集めています。
仕事と家庭の両立支援へ男性の育児休暇(育休)取得を促すために、2010年10月、知事自らが全国で初めて育休を取得。また、男性の育休取得者がいる中小企業に、1人当たり最大30万円を支給する「いきいきパパの育休奨励金」制度などを創設しました。09年度まで全国平均を下回っていた男性の育休取得率は、12年度には全国平均1.89%を大きく上回る7.2%まで上昇しました。
また、女性の再就職を応援するため、県は12年3月に就職相談から職業紹介までワンストップで支援する「しごとプラザ マザーズひろしま」を開設。全国初となる国と県の共同運営で、14年3月末までに252人が就職しました。14年度からは出張相談も実施しています。
このほか、待機児童の解消に向けて保育士確保をめざす「保育士人材バンク」の開所(12年7月)や、身近な商業施設に子どもの一時預かりや親子で遊べる場所を提供する子育てサポートステーションの開設(県内8カ所)など、子育て支援にも力を入れています。
県は施策の充実だけでなく、県組織の強化にも取り組んでいます。13年4月、女性・子育て施策の総合的な推進役を担う「働く女性・子育て支援部長」(健康福祉局)を任命し、女性の就業と子育て支援施策に関する部局を横断的に連携させる「働く女性応援プロジェクト・チーム」を新設しました。
今年3月には、男性の育休取得に積極的な経営者を集めた「イクメン企業同盟」を結成。4月には地元経済団体や行政など35団体からなる「働く女性応援隊ひろしま」を発足させ、先進的な企業の取り組みの普及へシンポジウムや研修会を計画しています。
働きながら子育てをする平光春奈さん(広島市在住)は「保育所が整備され、本当に助かっています」とニッコリ。県の施策を後押しする公明党広島県本部女性局の日下美香局長(県議)は「女性の視点を生かし、女性が活躍できる社会の実現へ全力を挙げていく」と語っています。
“なでしこブランド”の認定も
女性の活躍を応援する事業は他の自治体でも活発に展開されています【表参照】。
埼玉県は、女性の活躍で経済を活性化させる「ウーマノミクス」の具体化へ、担当課を設け企業内保育所整備などの施策を一元的に推進。神奈川県は、県内の企業などで女性が開発に貢献した商品を「なでしこブランド」に認定し、積極的にPRしています。
富山県は、再就職を望む女性を対象に連続セミナーを実施。兵庫県では、さまざまな分野で活躍する県内在住の女性が会議体を設け、啓発イベントを開催しています。
香川県は、県内の中小企業向けにワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の導入マニュアルと事例集を配布。北海道は、父親の子育て参加意識を高める出前講座を実施し、女性の活躍を後押ししています。
党女性委が「応援プラン」
公明党女性委員会は、あらゆる分野で女性の「現場力」を発揮していくことが日本再建を大きく前に進めるとの観点から、党所属議員の3割を占める約900人の女性議員が3カ月間かけて、各地で有識者や関係団体へのヒアリングや視察を実施。5月14日には「女性の元気応援プラン」として発表し、安倍晋三首相に直接手渡しました。
具体的には“2020年までに指導的地位にある女性が占める割合を30%に引き上げる”との政府目標の達成を加速化するため、政府に「女性の活躍加速化推進本部」(仮称)の設置を提案。
また、子育て・介護と仕事の両立、女性の健康の推進、ストーカー規制法の強化をはじめとする安全・安心の確保など、全44項目に及んでいます。
古屋範子・党女性委員長(衆院議員)は「女性の視点に立った取り組みが地域活性化につながっている事例を間近で見て、重要性を実感しました」と強調。「議員ネットワークの力を最大限に発揮し、国会や地方議会などの場で女性の活躍促進につながる施策の実現を訴えていきます」と語っています。
多様性生かす視点が重要
経済評論家 勝間 和代さん
「女性の元気応援プラン」は、総論や思い込みではなく、団体や有識者など300以上のヒアリングに基づき、約900人の女性議員が現場の声を施策として丁寧に、具体的にまとめられたという印象です。
女性の視点に立った取り組みは大切です。私の知人の女性でピアスの留め具のアイデアを基に、ヒット商品を生み出した人がいます。成功を支えたのは伝統的なものづくりの力でした。これまで生かされなかった、女性のきめ細かさと発想を社会に生かしていく。女性の視点を含めた「多様性」を大事にし、それが国家や企業の利益につながれば、日本の競争力もさらに上がるのではないでしょうか。
今後は、教育格差の是正といった課題にも目を向けるとともに、支援策だけではなく、女性の活躍を阻む要因を取り除く視点も重要です。税制面や労働分野の規制改革は政治の役割であり、中長期的に政府の決断を促す取り組みを期待します。