第162回国会 衆議院 厚生労働委員会 第2号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。
 本日は、先ほどからの質問にもございましたけれども、現在の政治の最重要課題であります少子社会の問題についてお尋ねをしてまいります。

 国立社会保障・人口問題研究所によりますと、日本の人口は二〇〇六年にピークに達し、その後、二〇〇七年からは減少に転ずると推計されております。出生数が死亡数を下回り、人口減少がいよいよ現実となり、かつて経験したことがない人口減少・高齢社会に突入をしていくわけでございます。

 この少子化対策については、御承知のように、公明党は結党以来、教科書無償配布、また児童手当の拡充、保育所の整備、育児休業法の拡充、奨学金の拡充等々、希望と喜びを持って子育てできる環境整備の推進に全力で取り組んでまいりました。昨今の雨後のタケノコのようにわき上がった少子化対策ブームとはちょっとわけが違う、公明党はいわば少子化対策の元祖であると自負をしております。

 しかしながら、予想していたとはいえ、二十一世紀に入りまして加速度的に訪れた高齢社会に、根本的かつ効果的な対策が打てずにいるというのが現状ではないかと思っております。この問題の深刻さは、大げさではなく、有史以来の危機であります。

 そこで、公明党は、その真価を発揮すべく、少子化対策を政治に取り組む際の重要課題であると位置づけ、この一月、少子社会総合対策本部を立ち上げました。この二月より、総合的な支援策としてのトータルプラン策定に向け、党内論議を開始いたしました。三月中にはグランドデザインとなる骨格をまとめ、それをもとに一年程度をかけ幅広く調査し、また、子供の視点また女性の声を多く取り入れながら、共感を得られるプランをまとめたいと考えております。

 そのために、女性や若者の意見を初め、関係する各種団体、労働界、経済界、有識者からのヒアリング、そして同時に、各地域で直接住民の方々からの声を伺うタウンミーティングなども開きまして、意見を政策に反映していきたいと考え、今、国会議員全五十八名、そして地方議員三千四百四十四名、総力を挙げてこの問題に取り組んでおります。

 厚生労働省初め政府としても、現在まで鋭意少子化対策に取り組んできたわけでありますが、予想をはるかに超える少子化のスピードの前に、なかなか実効性が上がらないのも事実であります。子は国の宝であるとよく言われますが、有名な山上憶良の歌に、
  銀も金も玉も何せむにまされる宝子にしかめやも
という歌がございます。尾辻大臣、少子化対策の重要性にかんがみ、この歌の感想も含めて御所見をお伺いいたします。

○尾辻国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、私どもも、子供は社会の宝だ、そういうふうに考えております。

 そうした中で、平成十五年の合計特殊出生率が過去最低の一・二九になりますなど、急速な少子化の進行は、年金等の社会保障制度のみならず、我が国の経済社会全般に深刻な影響を与えるものでございまして、少子化対策の推進は極めて重要な課題であると認識をいたしております。このため、これまでも厳しい認識を持ってさまざまな角度から取り組みを進めてまいりましたけれども、残念ながら少子化の流れをとめるに至っていないところでございます。

 こうした状況を生み出しておる要因は何だろうということになりますと、これが難しいんですけれども、一つには、長時間労働の風潮が根強いなど、働き方の見直しに関する取り組みが進んでいないこと、これもきょうも御指摘もいただいたことでございます。あるいはまた、多数の待機児童や家庭内で孤立して育児をしている母親が存在するなど、子育て支援サービスがどこでも十分に行き渡っている状況にはなっていないこと。これは、きょうも再三申し上げておりますように、エンゼルプラン以来、ずっと保育の充実ということを言ってきましたけれども、まだ待機児童もいるといったようなことがございます。それから、若年失業者の増大等、若者が自立して家庭を築くことが難しい状況になっておること。

 こうしたことなど、いろいろな問題が挙げられると考えておりまして、昨年末に策定いたしました新しい子ども・子育て応援プランに基づいて、若者の自立から働き方の見直し、地域のきめ細かな子育て支援など、幅の広い各般にわたる施策を着実に実施して、少子化の流れを変えられるように、申し上げておりますように、社会全体で子供の育ちや子育てをしっかり応援してまいりたいと考えております。

○古屋(範)委員 大臣の深い思い、また多角的、総合的な角度からの御見識があるということは今お伺いすることができましたけれども、やはり、少子化へのそうした大臣の思い、また国のトップのそうした強力なメッセージが、まだまだ実感として国民に届いていないのではないかという気がしております。

 今、公明党で全国九百人以上の地方議員がおりますけれども、女性議員、またその周辺にいる人々の意見を今回全部吸い上げてみました。その中でも、一人の子供にお金がかかり過ぎる、子供にかかわる行事も多い、続けて二人目を産むのが大変であるとか、やはり大企業に勤めている人は少ない、ほとんどの子育て中のお母さんは中小に勤務をし、妊娠するたびにパートをやめ、収入を断たれ、大変苦労しているとか、あるいは、これは中学生の意見を聞いてみたものですが、中学生が家庭や子育てにどんなイメージを持っているか。家事をするのが大変そう、子育てをするのが大変そう、時間やお金が自由に使えなくなる、このような意見も寄せられております。

 やはり、子育てに対する負担というものが、若い世代、子供にとってもそれが目に映るといいますか、正直な親たちの世代の実感、負担感というものが若い世代へも伝わってしまう、このような感がするわけでございます。このような観点からも、子供を持つことの負担を軽減していかなければいけないと思うわけでございます。

 今後、さらに少子化対策を抜本的に強化するためには、財源の拡充が欠かせません。現在は、GDPに占める家族給付の割合で見ますと、ヨーロッパ諸国では、イギリス二・二%、フランス二・八%、スウェーデン三・五%と比較して、日本は〇・五%しかありません。また、これも周知の事実でありますが、国内的に見ても、社会保障費全体に占める高齢者関係予算と子育てにかかわる予算を比較しますと、約七〇%対四%という信じられないほどの大きな差があるわけであります。

 政府は、いわゆる子育て応援プランを決定し、総合的な次世代育成支援策を幅広く検討されておりますけれども、この予算措置ができなければ、結局は、先ほどお伺いしました大臣の思いも、子育て応援プランも、絵にかいたもちになってしまうのではないか。大臣はこの現状をどうお考えになるか、少子化対策予算増額の確保についてお伺いをいたします。

○尾辻国務大臣 社会保障給付費で見ますと、これは確かに、老人の方は年金や何かが入りますから、極めて大きな数字になるということは確かなのでありますが、それにしても、今お話しになったような数字で比較すると、やはり子供の方に対する予算をもう少しふやさなきゃいかぬのかなというふうには私も感じております。

 そのことを申し上げて申し上げるんですけれども、平成十四年度の社会保障給付費においては、少子高齢化が進む中で、保育所運営費、児童手当などの児童・家族関係給付費が全体の三・八%となっている一方で、年金保険給付、老人保健給付などの高齢者関係給付費は六九・九%となっております。数字をまず申し上げました。

 こうした中で、昨年末に策定いたしました子ども・子育て応援プランにおいては、少子化の流れを社会全体で変えるべく、働き方の見直し等の企業の取り組みや、地域の自主的な活動なども含めた総合的な施策を盛り込んだところであり、まずはこのプランを着実に推進していくことが重要と考えております。

 さらに、子ども・子育て応援プランでは、社会保障給付については、大きな比重を占める高齢者関係給付を見直すことに加えまして、社会全体で次世代の育成を効果的に支援していくため、地域や家族の多様な子育て支援や、児童手当等の経済的支援などの次世代育成支援施策について、総合的かつ効率的な視点に立ってそのあり方を幅広く検討することとしておりまして、現在進められております社会保障制度全般についての一体的な見直し、検討の中で、こうした課題について検討を進めることが重要と考えております。

○古屋(範)委員 今、団塊の世代の子供たちが出産年齢に差しかかっている。これを逸しますと、少子化が大きく進んでしまうと思います。やはり、この五年間が勝負の年であると思います。この認識のもとに、効果的に支援していくための予算の確保をぜひともお願いしたいと考えております。

 その中で、出産費用についてお伺いをしてまいります。
 公明党は、出産一時金を二十四万円から三十万円に引き上げることを実現させるなど、粘り強い活動を今続けております。先ほどの全国の女性議員からの声の中にも、例えば、二十歳代のお母さんが子供を五歳まで子育てに専念できるくらいのものを支給する。早い出産を促すため、年齢に応じて支給額を変えてほしい。これは、スウェーデンなどでもスピードプレミアムというような制度もございますけれども、また、出産一時金を、第一子百万、第二子二百万、第三子三百万円を支給してはどうかなど、思い切った提案も寄せられておりますけれども、その中で一番多かったのが、出産費用に対する保険適用をお願いしたいという要望でございました。現在、出産に当たっては、異常分娩しか保険が適用されず、正常分娩のほとんどのお母さんは大変な負担を強いられているわけでございます。

 そこで、出産費用に対する保険適用等、出産に対する支援についてお考えをお伺いいたします。

○西副大臣 お答え申し上げます。
 委員御承知のように、出産費用の負担の軽減を図るために、現在も医療保険から、医療機関における分娩料の状況を踏まえて、三十万円の出産一時金を支給しているということは御存じのとおりだと思います。ちなみに、三十万円という設定は、今はもう組織が変わっておりますが、旧国立病院の分娩費のほぼ平均値ということで、平成十四年度のデータでございますが、三十万円ということに設定をしております。

 医療保険制度そのものの性格からして、疾病それからけが等の保険事故に対して給付をするという基本的な性格がございます。そんな中で、正常な出産自体がこの疾病それから負傷等とは異なるということから、保険適用には現在なっていない、こういうことでございます。

 しかし、今お話をいただきましたように、少子高齢化において、大変な課題でもあるということは私自身も認識をしているつもりでございます。この保険適用につきましては、こういった医療保険制度の基本的な性格、それから厳しい保険財政の状況、それから分娩料の状況等を踏まえつつ、平成十八年度に向けた医療制度改革の中で検討をすることといたしております。

○古屋(範)委員 ぜひ前向きな御検討をお願い申し上げます。

 次に、内閣府の若年層の意識調査、二〇〇三年度によりますと、理想の子供数を持てない第一の理由は子育てコストの増大であります。国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査でも、理想の子供の数を持とうとしない理由として、「子育てや教育にお金がかかりすぎる」がトップになっております。やはり現場のお母さん方からも、塾の費用が非常にかかるとか、もちろん高校、大学の授業料もそうでありますけれども、教育費にお金がかかり過ぎる、この結果からも経済的支援のニーズが最も高いと言うことができます。昔は二人産むのも三人産むのも同じだと言われたようなこともありますけれども、現在は一人ふえるたびに人数分だけ子育て費用が増大していく、これが現実であります。

 子供の健全な成長には社会全体がかかわるため、子供を持つ家庭も持たない家庭も、すべて子供の養育にかかわっていくべきではないかと思います。すなわち子育てを社会全体で支援していく、これによって、育児の負担を軽減する子育ての社会化を大胆に進めていく必要があると考えます。核家族でも三人以上の子供を無理なく育てられる社会の支援を具体的なシステムとして構築できれば、出産意欲回復の力にもなると思います。

 これまで公明党は、一貫して児童手当や奨学金の拡充に取り組んでまいりましたが、子育て家庭への経済的支援の一つとして、この児童手当、奨学金など飛躍的な支給額の拡充が不可欠であると思いますが、これについての御所見をお伺いいたします。

○衛藤副大臣 御指摘のとおりでございまして、先ほどからお話がございましたけれども、まさに子供は宝と言われたわけでございますけれども、子供が宝のような社会をどうつくるのかということを物心ともに実現しない限り、極めてやはり難しいのではないか。

 先ほど大村委員からも、総花的で何がポイントですかという御質問がありましたけれども、まさに私は、今このままでは、この五年間が大変重要な時期でございまして、そういう意味で、プランの中には五年間の検討規定も入れているところでありますけれども、これだけで足るのかということをやはりいつも繰り返し問い直して、何とか少子化対策をやり遂げなければいけないと思っております。そういう中で、物心ともに子供は宝という状況をどうつくるのかということは、政治として、政府としてやらなきゃいけないことだというぐあいに思っております。

 そういう中で、子育てや教育に大変お金がかかるということでございまして、御承知のとおり、与党、自公の協議の中で、やっと、この平成十六年度からは児童手当の支給対象を小学校の三年生までに引き上げたところでございます。大変なお金を要したわけでございますけれども、これをやっとやり遂げたところでございまして、今後は、昨年末に策定いたしました子ども・子育て応援プランの中にのっとりまして、もっと社会保障の枠にとらわれることのないように、次世代育成支援の推進を図らなければいけないというふうに思っております。

 このプランの中におきましても、地域や家庭の多様な子育て支援、あるいは児童手当等の経済的支援など、多岐にわたる次世代の育成支援施策について、総合的かつ効率的な視点に立ってあり方を深く検討するというぐあいにしているところでございまして、今委員御指摘のような形での、もっと前向きにお金を投入する形での検討を進めていかなければいけないというぐあいに強く感じているところでございます。どうぞよろしく御協力のほどお願い申し上げます。

○古屋(範)委員 ぜひとも児童手当の拡充を実現させてまいりたいというふうに私も考えております。

 私も子供を持つ母親の一人でありますけれども、やはり今の日本は、子を持つ働く者にとって冷たい社会であると言うことができると思います。また、子供を持つ親は損をしてしまう社会、ここから、子供を産み育てることが得をする社会への転換が必要ではないかというふうに考えております。

 このように、現代女性の多様なニーズを反映した子育て社会の体制、仕組みが急務でありますけれども、これに関しまして、最後、大臣に一言御決意をお伺いしたいと思います。

○尾辻国務大臣 家庭を築くということがまさに夢であり希望であるような社会にしなきゃいかぬ、そういうふうに考えます。そして、安心と喜びを持って子育てに当たっていけるような、そういう社会にぜひしたいと考えます。

○古屋(範)委員 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

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