第171回国会 衆議院 厚生労働委員会-7号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 きょうは、法案の質疑の前に、この四月から行われた介護認定方法の見直しについてお伺いをしたいと思っております。

 この四月から、介護保険の要介護認定の調査方法が見直されることとなりました。要介護認定は、お年寄りの心身の生活の状態を調査して、介護の必要な度合いを判定する、判定結果によって介護保険で受けられるサービスの上限額が決まるという、当事者にとって非常に大事なものでございます。

 厚労省が昨年十二月に示した新しい判定方法につきましては、利用者から、多くの人が実態より軽く判定されるおそれがあると強く反発を受けまして、一部を修正し、三月二十四日に全国の自治体に通知が出されております。初めに、この要介護認定方法の見直しを行った理由、また判定方法が一部修正となった経緯についてお伺いをいたします。

 また、利用者の不安が生じないよう、この新認定方法については十分な説明を行うことが重要であると考えます。新たな通知が出されてから四月一日まで、大変に短い期間で、今回の見直しの内容や趣旨について関係者への周知など対応ができたかどうか、これについてもお伺いをいたします。

○宮島政府参考人 お答えいたします。

 今回の要介護認定の見直し、これは二点あります。

 第一は、認定調査員のテキストの見直しに係るものですが、これについて、身体状況が変わらないのに、認定の結果、要介護度が軽度に判定されて、その認定にばらつきがあるのではないかという批判があったものにこたえるものです。

 これまでの認定調査で、実際に介助が行われていない場合について調査結果にばらつきがあったということですが、これは例えば、ある方について、移動とか移乗、食堂に行くとかあるいは車いすに移乗するということが行われていないと、これは認定調査員が、仮に移動、移乗が行われたとしたら、この人の状態から見ると、これは一部介助で済んじゃうんじゃないかとか、いや、これはどうも全介助なんだろうなということで、想定して記載してしていたものですから、そこにばらつきが生じていたということです。

 これからは、そういった場合に、その移動、移乗が、行為自体が行われていないということは通常考えられない、むしろ、不適切ではないかというようなことなので、むしろ介助されていないという選択をしてもらって、特記事項の方で、介護の不足あるいはネグレクトの疑いがあるというようなことを書いていただいて、二次判定の方できちんと判定してもらうというようなことに改めたというのが第一点目の見直しでございます。

 第二の点は、最新のケアを踏まえて介護の手間をきちんと反映するというものです。

 介護の手間のコンピューター判定というのは、これはタイムスタディー調査というものに基づいて行っています。これまでの介護の判定は、平成十三年のタイムスタディー調査に基づいて介護の手間をはかっております。このタイムスタディーを平成十九年に再度行いまして、十九年ベースのものに置きかえるということです。

 なぜこういうことをするかというと、例えばおむつの着用ということについて言うと、昔は、おむつの着用をして寝ていればいいというかそういう考え方でしたけれども、今は、おむつはむしろ排せつ誘導介助ということで、尿意を聞いたりトイレに付き添うということで、トイレに行ってやってもらうというようなことに変わってきています。そうすると、ケアの量が増加しますから、そのケアを反映しなきゃいけないということで、十九年にタイムスタディー調査を最新の介護状況を踏まえるということで行った、こういう二点の見直しを行ったということでございます。

 それで、先ほど、三月下旬に直したところがあるという御指摘がございましたが、これは認定調査員のテキストに係るもので、これを、パブリックコメントとか関係団体から御意見をいただいた中で、認定調査項目の選択肢の選び方の明確化に係るものです。

 例えば、買い物のところで、認知症の方が一応買い物はできるというと、それはできるについてしまうんじゃないか。だけれども、実際は、買い物ができるといっても、買い物で確かに買ってくるけれども、ジャガイモばかりいっぱい買ってきているというふうになると家族が返しに行かなきゃいけない、そういうのはやはりできるじゃなくて一部介助なんじゃないかというようなことの指摘を受けました。

 あるいは、文言の見直しで、先ほど介助されていないケース、移動、移乗で言いましたけれども、そこの選択肢が、「介助されていない」じゃなくて、これまでの文言で「自立(介助なし)」というようなことで、非常に誤解を与えるというようなことで、ここはやはり「介助されていない」に変更をするというようなことを三月下旬の変更で行いました。

 これらの対応の周知徹底ということでございますが、これは、認定調査員と認定審査会委員のテキスト、それから主治医の意見書記載の記入手引、三月中には市町村に送付しております。また、都道府県の認定調査員、認定審査会の委員及び主治医に対する研修で、より適切な記載や判定をしていただけるように、これも事務連絡を発出しておるところでございます。

 いずれにしても、利用者に対して十分説明を丁寧に行うということとか、認定方法の切りかえ時期に生じる利用者からのさまざまな御意見、これは以前にも増して迅速かつ丁寧に対応することを関係自治体に対して依頼するなど、十分な取り組みを行っていきたいと思っております。

○古屋(範)委員 よりばらつきがなく公平な認定を行う、また、寝たきりにさせないための介護認定の見直しであるという御趣旨のお答えであったかと思います。

 今回の見直しによりまして、これまでの要介護度と比べて新基準では軽度に判定されやすいのではないか、全体として要介護度が低くなってしまうのではないか、こうした不安が一部広がっております。

 判定結果が軽くなってしまうと連日の新聞やテレビの特集などでも報道されておりますが、利用者の不安というものはさらに膨らんでしまうというふうに思います。軽度へ判定を誘導しているとしか思えない基準の見直しも不透明で、見切り発車だと批判を強めている団体も中にはございます。

 また、厚労省が行った判定の新基準を当てはめたサンプル調査では、要介護度が低くなった方が二〇%、高くなった方が一七%、全体としては変わらないとされております。しかし、新基準でサービスが低下する高齢者には影響があり、個々の生活者への目配りを忘れてはならない、このように思います。

 さらに、要介護認定は、一次判定だけでなく、コンピューターで判定できない詳細をチェックする専門家から成る審査会の役割が非常に重要でございます。この審査会で総合的に判断できるものとされておりますが、二次判定にかける時間は十分ではなく、認定調査の特記事項や主治医の意見書をしっかりと見て的確に判断することは難しいとの意見が現場からも出ております。

 介護認定の変更は、利用者に大きな影響をもたらすわけでございます。今回の要介護認定見直しによる利用者の不安を払拭するような取り組みをしっかりと行っていただきたいと思いますけれども、大臣、この点、いかがでございましょうか。

○舛添国務大臣 新しい介護認定基準について、今委員がおっしゃったようにさまざまな批判が寄せられています。真摯に、謙虚に耳を傾けて、改善すべきはするということで取り組んでいきたいと思いますし、周知徹底していないところは、これはパンフレットをいろいろな市町村その他の窓口に置くなどして徹底をさせていきたいというふうに思います。

 しかし、介護認定基準を、例えば要介護三を二にされて困るじゃないかということで不服があれば、不服の審査請求ができますし、それとともに、市町村に対してそれより前に、とにかく区分変更、これは不満であるから変えてくれ、それで、例えば、きょう申請して、よく判定すると、特にこれはコンピューターソフトで一次は出るわけですから、二次判定でよく見ると、いや、確かにやはり三であるべきだという判定が下れば、申請したその日から効力を発しますから、戻すことはできます。

 ただ、ある制度を変えるときに、全部悪くするために変えるようなばかなことはするつもりはありません。さまざまな問題点は指摘されていますけれども、こういう意図でこういうことのためにやっているということは先ほど局長が説明したとおりであります。低くなられる方も二割おられれば、逆に重く見られる方も二割ほどおられる、六、七割が大体変わらないだろうということなので、そういうことについて、これは十分な説明をしますけれども、事後検証をちゃんとやる。しかも、公開の場でやる。それで必要ならば変えていく。

 そして、この四月の終わりにも検証のための検討委員会を立ち上げたいと思っております。その中には、介護の問題に取り組んでおります樋口恵子さんとか高見さんとか、こういう方々にも入っていただく。どうしても役所仕事というのは、何もかも大臣の直属で全部やるわけにいかないものですから、そうすると、局内でやるときには、自治体の関係者を集めれば住民の声を持ってくるだろうからそれでいいだろうという、そこが間違っている。やはり、利用者を最初から入れて、いろいろな団体の方も入れて、謙虚に声を聞いてやるということが必要なので、そういうことはきちんと指示をし、正すべきは正して、新しい検証委員会では、それでみんなで悪ければすぐ直していく、そういう形で少しでもいい介護の制度に持っていきたいと思っております。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 やはり、利用者にとって、また家族にとっては、どのような変更があったのかわからない、理解されていないというところが大きな原因だろうかと思います。今回の変更の意義、また目指す方向性、そして、大臣がおっしゃったように、市町村の区分変更申請などもできるんだ、このようなこともしっかり周知徹底を行っていただき、そして今回の見直しの検証を行い、さらに次へのよりよい改善に向けて取り組んでいただきたい、このように思っております。よろしくお願い申し上げます。

 では、法案の質疑に入ってまいります。

 先ほどのお二人の委員の質問とも重なる部分もございますけれども、基本的な事項を質問してまいります。

 基礎年金国庫負担二分の一への引き上げ、これはぜひとも実現をしなければならないことでございます。今回の法案の基礎年金国庫負担二分の一への引き上げ、これは年金財政の長期的な安定性を確保するための重要な柱の一つでございます。

 年金制度につきましては、平成十六年度改正におきまして、将来にわたり持続的で安心できる年金制度を構築するために、平成二十九年度以降、厚生年金一八・三%。国民年金一万六千九百円という保険料の上限を固定する、また、負担の範囲内で給付水準を自動調整する仕組み、マクロ経済スライドの導入、また、積立金の活用、そして今回、法案で実現を目指しております基礎年金国庫負担二分の一への引き上げと、給付と負担の両面にわたる見直しを行い、新たな年金財政のフレームワークが構築をされたわけでございます。持続可能な年金制度の構築のためには、これらすべてが実行されることが不可欠であります。

 現在の厳しい財政状況の中で、さらに経済状況が悪化をしている。平成二十一年度及び二十二年度の二年度につきましては、財政投融資特別会計の積立金等を活用して基礎年金国庫負担二分の一への引き上げを行うことは極めて大きな意義があり、二十一年度当初からの実現が図れることは大いに評価したいと思っております。

 与野党が対立する国会情勢ではございますが、本法案の成立が困難になれば、平成十六年度改正に規定をされている特定年度が定まらず、二十一年度以降の国庫負担率の明確な法律上の規定を欠き、国庫負担率がどうなるのかあいまいなままとなります。さらに、財源の手当てができず、さらなる年金積立金の取り崩しがふえることとなれば、年金財政に与える影響は大きいと言わざるを得ません。今回、何としても基礎年金国庫負担二分の一への引き上げを実現しなければ、安心の年金制度の構築はできない、このように思います。

 そこで、改めて実現への御決意を大臣にお伺いいたします。

○舛添国務大臣 今、委員の方から、平成十六年の年金制度改正の四つの柱について丁寧に御説明いただきましたけれども、まさにそのとおりで、とにかくわかりやすく言えば、これは、どんどん保険料が上がるというのはたまりませんよ、それはそうですねと。それから、給付もどんどん減らされるというのでは、それは老後の生活は成り立ちません。だから、そのときの現役サラリーマンの平均の二分の一は維持しましょうということである、そういうことのために、十六年改正では国庫負担を三分の一から二分の一にということですから。

 先ほども申し上げましたけれども、やはり世代間の公平、現役世代がもう保険料を払うのは嫌だよということであっては世代間の連帯も保てませんので、そういう意味では、ぜひ二分の一のこの法案を実現させていただいて、将来に向かって安定的でより持続可能な制度の構築ということをやりたいと思います。ぜひ一日も早い成立をお願いしたいと思います。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。大臣の御決意を伺うことができました。

 次に、国民年金の保険料免除制度についてお伺いをしてまいります。

 近年、テレビまたマスコミ等で連日のように報じられてまいりました年金問題の大半は社会保険庁の失態などばかりで、実は、肝心な年金制度の根幹の仕組みを報じたものというのはほとんどなかったと記憶をしております。こうしたネガティブキャンペーンのような報道が続けば、多くの国民は年金制度そのものに不信感を抱いてしまうわけです。どうせ掛けてももらえない、先のことなどどうなるかわからない。より多くの未納者がふえているというのが現状であります。

 しかし、だれにでも老後は訪れるわけです。私もここを声を大にして申し上げたいのですが、民間の個人年金保険と比べても、公的年金である国民年金の優位性というものは不動であると思います。

 民間の個人年金は、その募集から運用に当たって多くの人件費もかかります。また、コマーシャルなども当然行っているわけで、すべて保険料から賄われ、その上に利益も出さなければならない。

 これに対しまして、公的年金は、これを運用する人間の人件費は基本的には税金で賄われ、さらにその上、三分の一の国庫補助がございます。また、掛けた保険料の全額が、税法上、所得控除される仕組みにもなっております。さらに、国民年金制度においては、経済的な理由等で国民年金保険料を納付することが困難な場合、本人の申請により保険料の納付が免除、猶予となる保険料免除制度や若年者納付猶予制度などの救済制度もあるわけです。

 そこで、こうした免除制度にはどのようなものがあるのか、また、今回の改正で免除期間がある方々が受け取る年金の額は満額二分の一になるのかどうか、わかりやすく御説明をいただきたいと思います。

○渡辺政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御承知のとおり、老齢基礎年金について申しますと、二十から六十歳までの四十年間、四百八十月加入することにより、満額の年金、二十一年度ベースで月額六万六千八円でございますが、これが支給される仕組みというのが基本でございます。

 御指摘の免除というのは、低所得等の理由により、通常の保険料、今でいいますと月額一万四千六百六十円を納付できない場合に、所得に応じて、きめ細かな多段階の保険料免除の仕組みをとっているというのが免除制度でございます。例えば、全額免除を受けた期間については国庫負担相当分を支給するということになっております。

 現行法でございますが、国庫負担二分の一という道筋をつけているわけでございますけれども、二分の一のための恒久財源が確保されるまでの間は三分の一とするという計算の仕方をしておるものですから、今回の法律案におきましてそこを改め、残念ながら恒久財源確保という状態ではない二分の一でございますが、この二十一年四月から、モデル的に四十年間免除で計算いたしますと、全額免除の場合でいうと、従来でいえば税部分だけの月額二万二千円の年金給付水準であるものを三万三千円に引き上げるという効果が発生する、この仕組みを直ちに実施するということを盛り込んでおるわけでございます。

 詳しい御説明をということでございましたが、そのほか、四分の一免除、半額免除、四分の三免除、それぞれ四十年計算でいきますと、五万五千円、四万四千円、三万三千円というものが、今度の改正案でいうと、五万八千円、四万四千円が五万円、三万三千円が四万一千円というふうに保障水準を引き上げるということが内容となっておるものでございます。

○古屋(範)委員 詳しい説明をありがとうございました。二十一年四月から、二分の一への引き上げに伴っていくという理解でよろしいかと思います。

 今御説明をいただきました保険料免除制度、収入が厳しく、現在、支払いたくても支払えない状況にある方々にとっては大変にありがたい制度でございます。そして、今回の改正によって、国庫負担の割合が二分の一に引き上げられることにあわせて、保険料免除期間の額についても二分の一と算定される、基礎年金の最低保障機能が改善されることとなるわけでございます。保険料未納の方々をそのままほうっておくようなことはせず、せめて、こうした免除制度、猶予制度を大いに利用すべき、情報を広く発信して、国民の皆様の周知徹底を図っていただきたいというふうに考えます。

 この免除制度でございますが、現在、本人の申請以外では認めておりません。そのために、保険料を納付していない方が免除手続をしていなければ、万が一事故や病気等で障害者になったとしても、障害年金はもらうことはできません。また、この期間は未納扱いとなり、保険料未納のまま長い間放置しておきますと、国民年金の保険料納付期間の二十五年という要件が物理的に満たせなくなる。老齢年金も受け取れなくなるおそれがございます。

 しかしながら、この免除制度について理解している国民はそれほど多くないのではないか、そのような気がいたします。十九年度の保険料納付率が六三・九%ということからも、これ以外の免除該当者の方々は、情報を入手して必要な手続をとることが苦手という人が少なくないのではないかと推測されます。

 平成十六年の年金制度改革によりまして、社会保険事務所が個人の所得情報を把握できるようになったわけです。本人に断りなしに免除手続をするのではなくて、社会保険事務所から該当者本人にきちんと制度を説明し、同意を得ることができたら、手続を代行するなどの支援が必要ではないかと考えております。昨年十一月の社会保障国民会議の最終報告にも、未納問題への対応として、低所得者についての免除制度の積極的活用がうたわれています。

 この際、免除手続代行について積極的に検討していただきたいと思うんですが、厚労省の御見解を伺います。

○石井政府参考人 お答え申し上げます。

 国民年金制度、先ほど来御議論ございますように、これは、所得に関係なく、二十から六十歳までの方々が加入する制度ということで、負担能力が乏しい方々については、免除制度を的確に適用していくことを通じて受給権を確保していくということが重要と思っております。

 そこで、これも今し方お話があったわけでございますけれども、十六年の制度改正によりまして、私どもの方に市町村より所得情報を提供していただくということが可能になりました。したがって、個別の対応としては、これが一つの大切な手段ということになっているわけでございまして、未納者の方々の中で、市町村からお受けした所得情報を見て、これは免除等に該当するのではないかと思われる方々に対しましては、文書あるいは電話、戸別訪問、そういうような方法で届け出の勧奨を実施しております。

 それから、そういう個別の取り組みと並行いたしまして、毎年発送しております納付書に免除制度を含む制度全体の周知用のチラシを入れるとか、それから、免除制度について詳しく記載させていただいたパンフレットを事務所等の窓口に設置するとか、社会保険庁のホームページに掲載するといった周知も図っているわけでございます。

 こういうような取り組みと必ずしも同列ではございませんけれども、一つの取り組みとして、免除等の申請については毎年行うこととされておるわけでございますけれども、全額免除あるいは若年者納付猶予の承認を受けた方については、平成十八年の七月から、あらかじめお申し出をいただける場合には、翌年度以降も、所得要件を満たす場合には申請書を提出することなく承認を受けられる、そういう仕組みの導入が図られてございます。

 申請手続の簡素化ということでございますけれども、こういう簡素化の方法もあるんだということもあわせて周知をしていきたいというふうに思っております。そういうようなことで、免除手続の勧奨を徹底してまいりたいというふうに思っております。

 代行ということに関してでございますけれども、これも、先生御承知のように、私ども社会保険庁の非常に大きな反省をしなければいけない出来事が、十八年の夏でございますけれども、報告書という形で各方面に御報告させていただきました。

 その過程でわかりましたのは、私ども組織におけるコンプライアンスが必ずしも十分ではなかったということが原因でございますけれども、代行ということを職員が少し広く解釈してしまって、それで、例えば本来委任状をちょうだいすべきところをはしょってしまった。

 そういうことで、現在は、代理ということでお受けする場合にも、御本人の委任状というものをきちんと添付なさっているかどうか、お持ちなさっているかどうか、そういうような確認行為をきちっとさせるようにしてございますけれども、そういうような日ごろにおける事務の作業の中で、きちんと定着をし、そして、代行ということについて、皆様方のコンセンサスといいましょうか、そういうものが整った段階で、改めて考えてみたいというふうに思う次第でございます。

○古屋(範)委員 これまでのそうした反省の上に立って、本当の意味で国民の側に立ったこうした免除手続の勧奨、そして、これも不断に、手続がしやすくなりますよう見直しをよろしくお願いしたいというふうに思っております。

 次に、特定年度が平成二十三年度以降となった場合についてお伺いをしてまいります。

 基礎年金の国庫負担二分の一を恒久化することとなる特定年度につきましては、本法案において、所得税法等改正案の附則に規定された税制の抜本改革を前提として定めることとなっております。しかし、今般の国会の情勢において、税制の抜本改革の実施時期がもしかしたらおくれるという可能性は否定できないわけであります。

 特定年度が平成二十三年度以降になった場合、法律上の手当てがなければ現行の負担割合を戻すというふうな事態が生じかねず、また、保険料免除期間を有する者の老齢年金の算定や年金財政に大きな影響があると考えられます。

 そこで、特定年度が二十三年度以降になった場合、どのような措置を考えていらっしゃるのか、お伺いをいたします。

○渡辺政府参考人 今御指摘の点につきましても、さまざまな議論があり、今回の法律案の中にこうしたルールが書かれております。そのもとになりましたのは、年末、与党におきまして、政府と中期プログラムの御議論をいただきましたときに、非常に大きな論点の一つとして今の御指摘の点があったように承知しております。

 御提案申し上げておりますのは、ちょっと厳密に言うと、特定年度の前年度が平成二十三年度以降になる場合ということでございまして、大変恐縮でございますが、要は、税制の抜本改革の年度が、平成二十三年度とならず、二十四年度以降になった場合ということでございます。

 その場合にも、それまでの各年度におきまして、国庫負担二分の一と、既に財源措置されている、これまでも財源措置されてきた三六・五%との間の差額については国庫が負担するようにするため、臨時の法制上、財政上の措置を講ずるもの、中期プログラムの閣議決定においても、そしてこの法律案の中でも、そうしたことがはっきりと明記されている。

 こうした経緯も踏まえまして、二度とまた三分の一に戻るというようなことがあってはならないというふうに考えておりますので、そのように臨ませていただきたいと考えております。

○古屋(範)委員 二分の一という国庫負担をしっかりと堅持していくということであろうかと思います。

 次に、年金制度の課題についてお伺いをしてまいります。

 昨年十一月に取りまとめられました社会保障国民会議の最終報告では、毎年二千二百億円の社会保障費削減という方向を転換して、社会保障の機能強化に重点を置いた改革の必要性があると明記をされております。これを受けまして、昨年十二月に出された社会保障の機能強化の工程表では、年金制度について、基礎年金の国庫負担二分の一の実現のほか、基礎年金の最低保障機能の強化と社会の構造変化への対応を掲げて、低年金、無年金者対策の推進、在職老齢年金の見直し等を明記し、制度設計、検討を経て、法改正、そして実施に移すことが示されたわけでございます。

 今後の年金制度の課題は、低年金、無年金の方の所得保障をどのように行っていくのか、また、生活保護に比べて明らかに低い老齢基礎年金の給付水準、これをどう見直していくかであると思います。

 高齢者世帯の年間の所得分布を見てみますと、百万円未満が一五・七%。六世帯に一世帯が百万円未満であります。また、百万円から二百万円未満、これが二七・一%。特に、高齢の女性単独世帯の所得の低さは際立っております。三世帯に一世帯は年間所得が百万円未満。五十万円未満という世帯も三十五万世帯ございます。

 所得が十分でないために生活保護を受ける高齢者がふえております。平成十七年調査で、全保護世帯の三八・七%となっております。日本の年金制度が、高齢者の貧困を防ぐという意味において、十分に機能していないのではないかと思われます。

 昨年九月、公明党は、年収二百万円未満の低所得者に対する老齢基礎年金の加算制度の創設、また、年金の受給資格期間十年への短縮など、新たな年金改革の政策を打ち出しました。

 昨年十一月に取りまとめた社会保障審議会年金部会の中間整理におきまして、基礎年金加算制度の創設に通じる低年金、低所得者に対する年金給付の見直しを初め、基礎年金の受給資格期間現行二十五年の短縮、また、二年の時効を超えて保険料を納めることのできる事後納付の仕組みの導入など、私たちが年金制度の一層の改善に向けて取り組んできた内容が盛り込まれたと思っております。

 高齢期の所得保障を充実させる、この観点から、一定の所得水準以下の方に対して税財源で基礎年金に一定の給付を上乗せする加算年金制度の創設をするのが現実性が非常に高いのではないか、このように考えますけれども、いかがでございましょうか。

○舛添国務大臣 今後の年金制度改革の方向についての御議論ですけれども、これはさまざまなポイントについて議論する必要があると思います。

 基礎年金の最低保障機能をもう少し高める、六万六千円でやっていけるんですかと。それを一気に引き上げて八万とか十万とかになれば、それは安心です。ただ、財源をどうするかという問題がありますから、ここは、財源議論をきちんとして、安定的な財源を得るということを前提に、その問題もやはり重要な検討項目としていきたいというふうに思っていますので、今おっしゃった加算制度を創設することによって基礎年金の最低保障機能を強化するというのも一つの方法であろうと思っております。

○古屋(範)委員 やはりそこはしっかり、生活保護に陥らない、その手前での年金の機能強化ということを行っていかなければいけない、このように考えております。

 先ほども議論がございましたけれども、我が国は、二十五年分の保険料を支払わないと年金がもらえない、諸外国に比べても非常に長いということがございます。これを十年に短縮して、年金の受給資格が確実に発生するようにしなくてはならない、このように考えます。

 六十五歳以上で、今後七十歳まで任意加入しても無年金になってしまう方が四十二万人もおります。

 公明党としても、無年金者を出さないよう、追納期間の延長、また受給資格期間の短縮を早期に実施すべき、このように考えております。今回の改正案におきましても、附則第二条に基礎年金の最低保障機能強化等についての検討規定が盛り込まれたことは、今後の政府の取り組み姿勢を示すものとしてその実現が期待をされます。

 この受給資格期間の短縮、また追納期間の延長について、ぜひ取り急ぎ検討を行っていただきたいと思いますけれども、この点はいかがでしょうか。

○舛添国務大臣 先ほど来の議論でもありましたように、受給資格期間の短縮、それから追納期間の延長、それぞれプラスはあると思います。ただ、幾つかの問題点を先ほど私も指摘しましたので、その問題点も踏まえた上で、これは重要な検討課題なので、政府としましてもまた皆さん方と検討していきたいと思っております。

○古屋(範)委員 最後の質問になります。

 厚生年金保険の適用基準を、通常の就労者の所定労働時間、所定労働日数をおおむね四分の三以上としている点につきまして、これは昭和五十五年以来、通常の就労者の所定労働時間及び所定労働日数のおおむね四分の三以上の就労者については、原則として健康保険及び厚生年金保険の被保険者として取り扱うべきものであることとされております。この適用基準が通常の就労者の四分の三ということは、すなわち正規労働者を対象としていることがわかります。

 現在、派遣切りが大きな問題となっておりますけれども、日本経済が第二次産業から第三次産業へと産業構造が変化をしている、非正規労働者の増大など労働市場の構造も大きく変化をしている、こういうことから考えますと、この昭和五十五年以来続いている厚生年金の適用基準も考え直すときに来ているのではないか、そのように思います。このように厚生年金への加入条件が現在の雇用実態から乖離した結果、雇用者でありながら国民年金に加入せざるを得ない、こういう働く人々が多くいる現状は変えていかなければならないのではないか、このように考えます。

 普通に働いている人が老後の安心を確保するために本来の厚生年金制度に加入できるよう、またその適用基準を雇用者の労働条件に適合する必要があると考えますけれども、この点につきまして御見解をお伺いいたします。

○渡辺政府参考人 御指摘の点につきまして、私どもの社会保障審議会の報告におきましても、まず基本的に「賃金により生計を営む被用者については、パート労働者や非適用事業所の被用者等を含め、できる限り厚生年金を適用し、報酬比例部分を含めた年金権の確保を図り、その老後の生活の安定を図ることが求められている。」という認識、私ども政府も共有しているところでございます。

 他方、この問題につきましては既に被用者年金一元化法案で一定程度の改善を御提案申し上げておりますが、その背景には、ある基準点をつくって御提案申し上げておりますけれども、国民年金の自営業者等第一号被保険者の方々の保険料負担との乖離というものが大きく発生することのないような配慮という点も必要なことから、社会保障審議会では、先ほど来御議論いただいております全体としての基礎年金の最低保障機能強化、こういう底上げの議論の中で、そうしたボトルネックというものを少し改善していく可能性を検討すべきじゃないか、こういうふうにも指摘されておりますので、今提案している法案のほかにも、さらにそうした検討を深めてまいりたいと考えております。

○古屋(範)委員 国民が安心できる年金制度の構築を求めまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

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