第171回国会 衆議院 青少年問題に関する特別委員会-3号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 本日は、小中高校生に対する適切ながん教育の取り組み、また、健康教育の取り組みについてお伺いをしてまいります。

 本題に入ります前に、小渕大臣に、少子社会対策の一つといたしまして、育児・介護休業法の改正についてお考えをお尋ねいたします。

 平成十九年度の雇用均等基本調査によりますと、女性の育児休業取得率は八九・七%でございます。二年間で一七・四ポイントも上昇しています。一方で、男性は一・五六%と、まだまだ低い取得率ではございますけれども、二年間で約三倍になっております。

 この未曾有の経済危機の中で、育児休業やワーク・ライフ・バランスどころではない、そういう意見もございます。私は、こうしたときこそ、逆に、社会の価値観を大きく転換させる好機ではないか、このように考えております。

 実際、先進企業の一部では、ワーク・ライフ・バランスの推進により、これが組織変革のチャンスだと、不況を追い風ととらえて、これまでの非効率な業務体制にメスを入れることで、残業がゼロに近づき、休暇取得日数がふえる、また、従業員はリフレッシュしてさらに業務効率が上がるという、正の連鎖が生まれているという例もございます。

 仕事と家庭の両立を可能とする職場環境を整備すること、これは、出産、育児を行う女性が退職することなく働き続けられる、そういう希望をかなえることともなります。

 昨年九月の仕事と生活の調和に関する意識調査では、理想とする生活と現実の生活が一致している人は約一五%にとどまっております。厳しい現状であります。

 こうした中、小渕大臣は、経済団体等を訪問されまして、仕事と生活の調和を初め、少子化対策、男女共同参画などに一体的に取り組むことを直接経営幹部に要請するなど、取り組みを積極的にされていらっしゃいます。世界がこれまで経験したことのない少子高齢社会を迎える日本の取り組みは、世界各国からも注目をされているというふうに思います。

 そこで、仕事と生活の調和につながるこの育児・介護休業法改正案ですが、一刻も早く提出をし、成立をさせたいという強い希望を私は持っておりますけれども、大臣のお考えをお伺いいたします。

○小渕国務大臣 私も、委員と同じように、強い思いを持っております。

 女性が働きながら出産や子育てができ、また、男性も育児をすることができる環境を整える、これは少子化対策を考える上で大変大事なことだと思っております。

 今回の育介法の改正の内容は、これまで任意であった子育て期の労働者への短時間勤務制度の提供を企業に義務化する、また、父親の育休取得を促進するいわゆるパパ・ママ育休プラスなどを考えておりますので、これによりまして、子育て期のニーズに合わせた柔軟な働き方が可能になるということとともに、いまだに一・五六%という低調な男性の育休取得率を大幅にアップするきっかけにもなると思います。少子化対策の観点からも本当に重要なことであると思っております。

 あわせて、こうした法律改正を行うということによりまして、一般の方々あるいは労働者、経営者の方々に対して強いメッセージをお伝えすることになるという効果も期待できますので、速やかに法案の形にまとめまして国会に提出し、成立させていただきたいと考えております。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 私自身も、自分のできる努力を尽くして、成立に向けて頑張ってまいりたいと思います。大臣、またよろしくお願いいたします。

 次に、がん検診の受診率アップへの取り組み、また、がん教育充実に向けての検討状況について厚労省にお伺いをしてまいります。

 平成十九年六月に閣議決定をされましたがん対策推進基本計画の基本方針の中に、がん患者、国民の視点に立った対策の実施が掲げられております。

 さらに、厚労省のがん対策推進本部が取りまとめた「今後の厚生労働省のがん対策の取り組み」の中で、がんの早期発見を一層推進するためには、がんの病態、治療法に対する正しい理解の普及啓発が重要とされております。

 政府は、このがん対策推進基本計画において、五年以内に検診の受診率を五〇%以上とすることを目標に掲げておりますけれども、日本人のがん検診の受診率は、八〇%前後の欧米と比べますと、特に、女性特有のがんである子宮がん二一・三%、乳がん二〇・三%と非常に低迷をいたしております。そこで、まず厚労省に、受診率アップへの取り組みについてお伺いいたします。

 また、さらに、検診率の低迷は、がんに対する正しい理解が十分にされていないということが考えられます。今後、さらに、正しい理解の普及啓発、受診への環境整備とともに、がん教育の充実が非常に重要である、このように考えます。

 こうした現状に対して、厚生労働省は、昨年十月、がんに対する正しい理解を促進させるため、識者によるがんに関する普及啓発懇談会を発足させました。このメンバーの中には教育の専門家も参加されておりまして、子供たちへの適切ながん教育の充実について検討されているものと存じますが、この検討状況についてお伺いいたします。

○中尾政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、がん対策推進基本計画におきましては、がん検診の受診率を五年以内に五〇%にしようという個別目標を掲げております。

 このため、各地域の実情に応じたがん検診の受診率向上に係るモデル的な取り組みに対する支援を行い、受診率の向上に努めてまいりました。また、本年度からは、全国共通のキャッチフレーズによる集中キャンペーンを実施するなど、国、地方自治体、企業、関係団体等が一体となって全国規模の受診勧奨事業を積極的に展開することとしております。

 次に、がんについての教育でございますけれども、御指摘のとおり、昨年、がんに関する普及啓発懇談会を設置いたしました。この中で、がん検診の重要性や学校教育におけるがんに関する正しい知識の普及などの先駆的な事例を収集して御意見を伺っているところでございます。

 第二回の懇談会におきましては、座長をやっていただいております中川恵一東京大学医学部附属病院放射線科准教授から、東京都国立市立の国立第一中学校の生徒を対象に中学生向けの冊子を活用した授業を行った事例が紹介されまして、子供たちは非常によくわかってくれたというような報告が行われたところでございます。

 厚生労働省といたしましては、これらの先進的な事例をもとに、がんに関する正しい知識の教育、普及啓発のための方策についても検討を行うとともに、必要に応じて文部科学省など関係省庁とも連携を図ってまいりたいと考えております。

○古屋(範)委員 厚労省においてもさまざまな取り組みはされていると存じますが、この検診率の現状を見ますと、やはり、もっともっと総力を挙げて、危機感を持って行っていかなければならないのではないか、そのような気がいたします。

 次に、特に小中高校生に対するがん教育の実施は、我が国にとって急務の課題ではないかと考えております。

 日本において、国民の二人に一人ががんに罹患をしている、三人に一人ががんで亡くなっているこの現状を見ますと、日本は世界一のがん大国である、そう言っても過言ではないと思います。しかしながら、受診率の停滞が示しますように、国民のがんに対する知識は著しく欠如している、そう言わざるを得ません。

 実際、小中学校、高校の保健の教科書にはがんに関する記述はわずかしかない、学校教育の現場では、がん教育が非常に少ない、不足をしている、こういう現状ではないかと思います。将来を担う子供たちにとって、がん教育は大変重要なものであると考えます。

 がんの主な原因として、喫煙、また日常の生活習慣、これが密接な関係があると言われております。喫煙、食事、運動などに気をつけることにより、がんへの危険性を低下させることが可能であるとも言われております。

 しかし、一度身につけた生活習慣を直すことはなかなか難しいかと思います。学校教育の現場では、適切な生活習慣、がんに関する正しい知識を身につける機会をふやすというような、健康増進の基礎となるがん教育を進めることが必要だと考えます。

 例えば、私たち公明党が現在力を入れて推進しております子宮頸がんの予防ですけれども、ワクチン接種と早期発見のための検診の普及により、ほぼ封じ込めることができるがんだと言われております。ワクチン接種など子宮がん予防の重要性の啓発は、学校教育の現場で行われることが一番理解が進むのではないかと考えております。

 また、学校教員のがんに関する知識も必ずしも十分ではない、学校教育においてがんに関する教育が欠如している現状を改める必要があるとの指摘もございまして、がんの知識についての教育研修の実施が求められると思います。

 そこで、文部科学省に、小中高校の現場におけるがん教育充実への取り組みと、また、教職員に対する知識の普及啓発、教育研修についてお伺いをいたします。

○尾崎政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、小中高等学校のがん教育が重要であることは言うまでもないわけでございますけれども、その重要性を踏まえまして、学校では、小学校であれば体育、中学、高等学校であれば保健体育の時間を中心に、がんを含む健康に関する指導が行われているところでございます。

 具体的なその指導の中身は、学習指導要領を踏まえまして、小中高を通じまして、生活習慣病の予防のためには望ましい生活習慣を身につける必要があること、また小中学校では、常習的な喫煙により肺がんなどの病気を起こしやすくなること、それから高等学校では、悪性新生物などの生活習慣病の予防を適宜取り上げまして、健康に関する適切な意思決定と行動選択が重要であること、こういった内容を指導することとしております。

 これを踏まえまして、それぞれの教科書では、例えば最も多く使われております中学校の保健体育の教科書を見ますと、国立がんセンターから示されております、がんを防ぐための十二カ条を具体的にイラスト入りでわかりやすく説明するなど、がんの予防などにつきましての記述が盛り込まれているところでもございます。

 さらに、文部科学省といたしまして、がんの予防の大切さを含んだ健康に関するパンフレットをつくりまして、小五、中一、高一の各段階で全児童生徒に行き渡るような配付もしているところでもございます。

 それから、御指摘ありました教職員に対する普及啓発でございますけれども、これも重要でございまして、飲酒、喫煙とがんの関連などを盛り込みました教師用の指導資料を作成いたしまして、全小中高等学校に配付をいたしております。

 また、具体的な研修ということで、教育委員会の指導主事ですとか、それから研修の成果を各県でまた広めていただくための指導的な立場の教員を集めまして、健康教育指導者養成研修というものを直轄で開催しているところでもございます。

 今後とも、教職員の資質向上ですとか、いろいろな啓発資料の作成、こういった充実を通じまして、がん教育がさらに充実されるように努めてまいりたいと考えております。

○古屋(範)委員 さらにがん教育の深化、また普及というものをお願いしたいというふうに思っております。

 先ほども紹介がありましたけれども、私も、中川恵一准教授が行われた、国立市の第一中学校のがん教育のその現場、公開講座に参加をしてまいりました。

 このとき、中川准教授は、やはり長生きをするほどがんになりやすい、ということは、世界一の長寿国である日本ではがんは特別な病気ではないということを説明していらっしゃいました。食生活を初めとする生活習慣に気をつけて予防する、また定期的に検診を受ける、また早期発見できれば治る病気だということも強調されまして、特にたばこの悪影響について、十五歳でたばこを吸うようになると将来がんになる確率が三十倍になるということを指摘され、非常にわかりやすい授業でもございました。生徒からも、がんを理解することの大切さを学んだ、これから役に立てたいという声が聞かれまして、非常に真剣に聞いている様子でありました。

 私は、こうした小中学生のころからがんについて学ぶということ、これががん検診の受診率の向上につながると思っております。がんに関する正しい知識を学校教育の中で徹底していくことの大切さ、これを痛感した次第でございます。

 そこで、学校教育の現場では、小中学生、高校生のうちから適切な生活習慣やがんに関する正しい知識を身につける機会をふやして、できれば副読本なども活用して健康増進の基礎となるがん教育を進める必要があるのではないかと考えます。

 小渕大臣も所信の中で、「青少年が心身ともに健康で社会的に自立できるよう育成することは、我が国の将来を左右する、政府の最重要課題の一つ」と述べられております。

 学校現場でのがん教育をさらに充実させ、推進していかなければならない、このように考えますけれども、政務官に御所見をお伺いしたいと思います。

○並木大臣政務官 古屋先生も、小児医療・アレルギー対策とか、そうした面で大変御活躍で、専門家でいらっしゃいます。

 先ほど来のお話のとおり、日本人男性の二分の一、女性の三分の一ががんにかかって、死因の三分の一ががんだということで、医療費についても二兆五千億、一割ぐらいががん関係ということですから、大変重要な課題であります。

 予防あるいは早期発見ということが非常にその後の治癒率にもつながってまいりますから、そういった点で、まさに小中学校の成長過程に応じて正しい知識を教えていくということが大変重要であるかと考えております。

 食育等でも、早寝早起き朝御飯なんということで、小学生ぐらいでそういう習慣を身につけて、さらに、喫煙、飲酒、そういった問題、あるいは、高度になってきますと、今先生おっしゃったように、ワクチン等で子宮頸がん等が防げる、こういうことも教えていくということが大変必要であるかなと思います。

 文部科学省、厚生省もさまざまな取り組みをされておりまして、特に厚生省は、がんに関する普及啓発懇談会、教育専門家も含めてこうした取り組みをされていますので、連携してさらに充実した対策を図っていければというふうに考えております。

○古屋(範)委員 並木政務官、ありがとうございました。

 女性の社会進出、これは非常に大きな流れでございます。多分、小渕大臣が一番実感されているのではないかと思うんですが、出産にしても子育てにしても仕事にしても、基本となるのは健康だと思います。女性の健康を守ること、この環境整備は急務であると考えます。

 先月の半ば、私は、花の集い・健康づくり女性の会という会の方々と懇談する機会を得ました。

 この会は、女性の健康問題、特に、結婚して子供が欲しい、また、既に子供を抱えている女性にとっては切実なことである、少しでも世の中に貢献したいと、食それから運動、いやしを柱に活動している方々の集まりでありまして、女性のライフステージに応じた健康増進、予防の啓発教育による健康づくりなど、さまざまな企画を考えていらっしゃいます。

 この事務局長でいらっしゃる実践女子短期大学の山本初子先生から、女性の一生涯にわたる健康づくりの大切さ、食育、健康教育、介護予防、生活習慣などについても、大変重要な御示唆をそのときにいただきました。

 平成十九年度、日本人の死亡者約百十万人、このうち、がんによる死亡者が約三十四万人であります。三人に一人ががんで亡くなっているこの現状を何としても変えていかなければならない、このように考えます。

 私は、高校生までは、子供に対して十分に計画された健康カリキュラム、健康教育は、子供たちを有意義な学習体験に引き込み、関与させるための豊かな機会を提供するものと思います。そして、子供たちに、生涯を通じて健康への積極的な態度や行動へと導く知識を与えるものであると考えます。

 小渕大臣に、子供のころからの学校現場での健康教育の重要性について最後にお伺いいたします。

○小渕国務大臣 お答えいたします。

 私自身も日々健康の大切さというものを痛感しておりますけれども、やはり、これまでのことを振り返ってみますと、自分の体のことですとか、健康に対する正しい知識ですとか、なかなかそうしたものを学んでくる機会というものが少なかったかなということを考えております。

 昨年の十二月に策定した新大綱におきまして、心の健康に関する指導、あるいは発達段階に応じた性に関する指導、感染症対策などについての健康教育の推進を図ることといたしておりますけれども、何よりも、青少年が心身ともに健康で健やかに成長していくためには、やはり健康教育の推進、大変大事なことだと思いますので、しっかりと、関係省庁とも連携いたしまして、この推進に努めてまいりたいと考えております。

○古屋(範)委員 子供たちへの健康教育の推進を求めまして、時間でございますので、質問を終わりにいたします。

 ありがとうございました。

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