第174回国会 衆議院 厚生労働委員会 13号
○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。
きょうは、私がこれまで取り組んでまいりましたうつ対策を中心に質問をしてまいります。
その前に二問、ほかのテーマで質問をしてまいります。
まず、がん対策の推進についてお伺いをしてまいります。
公明党が精力的に取り組んでまいりました、がん対策基本法に基づきますがん対策推進基本計画は、五年が一つの目標となっております。この目標達成への取り組みを確実に進めるためには、五年間何もしないで、五年たつのを待ってしまうという姿勢ではなく、どこまで進んでいるのかということを確認するために中間報告を行うべきと考えております。
そこで、平成二十年十月二日の本会議におきまして、前代表が、がん対策推進基本計画ではがん死亡を二〇%減らす目標を掲げており、その着実な実行が不可欠である、特にがん検診の受診率五〇%への取り組みは重要であり、国民の生命を守るがん対策を確実なものとするために、できるだけ早期の計画の中間報告を義務づけ、進捗状況を確認することを提案する、このように述べております。
当時、舛添厚生労働大臣は、厚生労働省といたしましては、平成十九年六月に閣議決定されましたがん対策推進基本計画に定める目標等を確実に達成するため、本基本計画の進捗状況を把握することが極めて重要であると考えております、基本計画の進捗状況につきましては、来年度末を目途に中間報告を行いたいと思う、このようにお約束をいただいております。
新政権になりましたけれども、この方針は引き継がれているというふうに考えております。
そこで、長妻大臣、がん対策推進基本計画の中間報告は、いつ、どのような形で出されるのか、これについてまずお伺いいたします。
○長妻国務大臣 今おっしゃられた、がん対策推進基本計画の中間報告をすることになっているところでございますけれども、これについて、ことしの三月十一日にがん対策推進協議会がございまして、その中で、中間報告というのが、もう少し議論が必要ではないかというような提起がなされました。
ただ、中間報告ですから、余り延ばすこともいけないということで、ことしの五月から六月ごろ、議論をまとめて、その中間報告というのを公表したいというふうに考えております。
○古屋(範)委員 もう少しかかるということでございますが、ぜひ早急に中間報告をお出しいただきまして、それに基づいてさらに、その後半の、五カ年のうちの残りの期間についての対策をしっかりと講じていただきたい、このように思いますので、何とぞよろしくお願いいたします。
それからもう一つ、訪問看護事業における人員基準の見直しについてお伺いいたします。
高齢化が進む中で、在宅医療のかなめであります訪問看護、介護の役割がますます重要になってきていると思います。
私も、何年か前ですが、東京都内で訪問医療を行っていらっしゃる川越先生と、半日往診に同行させていただいたことがございます。やはり病院ではなく在宅で医療を受けたい、あるいは末期がんの方も、最期を迎えたいという方もいらっしゃいまして、病院ではない、さまざまな患者あるいは家族との深いきずなもつくりながら、在宅医療の必要性を非常に感じてまいりました。
私も、当選当初から在宅ケアに励む家族のサポートに取り組み、全国に活動を広げる訪問ボランティアナースの会、キャンナスの菅原代表から、訪問ボランティアについて何度もお話を伺ってまいりました。
看護師が自分でできる範囲で家族介護者に一時的な休息を提供する有償ボランティア団体でありまして、利用者本位で相談に応じており、規則の谷間を埋めていく、介護現場のニーズにしっかりとこたえているというのがこのキャンナスの活動であります。
菅原代表は、一般市民の方やナースの方からの賛同やSOSの声を聞きながら、日本じゅうに星降るほどの訪問看護ステーションをということを掲げまして、平成二十年十一月に開業看護師を育てる会を設立し、今日まで活動されています。
特定看護師に医業の一部を解禁する話、あるいはヘルパーに医療行為を許可する話、そしてナースプラクティショナーの話題など、ナースの仕事そのものの見直しが大きな話題となっておりまして、特定看護師に関しては大きな進歩と考えております。しかし、課題はたくさん残されておると考えております。
看護師不足が叫ばれておりますけれども、子育てで一たん家庭に入ったナースも、子供が保育所、幼稚園から戻るまでの時間を利用して訪問看護に従事をしよう、こういう方もいらっしゃるかと思います。こうした資格を持ちながら看護現場で業務できない、いわゆる潜在ナースを有効な在宅看護の担い手として、その活用と再教育のあり方を早急に検討すべきと考えております。
また、高齢者も障害者も子供も安心して地域社会で過ごしていくためには、訪問看護事業所の普及が必要不可欠であります。看護師も一人で開業できる、この一人開業というのが認められますと、例えば小学校区に一つ程度の看護ステーションが整えば、看護師同士の看護連携ができるので、一人でも何とか対応が可能なのではないか、このように考えております。
訪問看護事業所数が充足するための施策として、ぜひ訪問看護の人員配置基準である二・五人を見直しして、一人でも事業所が開設できるように、このことをお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
○長妻国務大臣 今、古屋委員が言われたお気持ちというのは同感でありまして、訪問介護だけじゃなくて、やはり、看護師さんが夜も訪問できるような体制というので初めて安心して在宅介護ということができるのではないかと思います。
ただ、今現状を見ますと、小規模な事業所ほど訪問看護ステーションは経営状態が悪くて、やはり、夜間、緊急時の対応ができないというふうなときもあって、サービスを安定的に供給できているとはなかなか言いがたい。ただ、数が足りないというのもよくわかるところでございます。
そして、今おっしゃられた常勤換算で二・五人の看護職員の配置についてもという話でありますけれども、やはり一定のレベル、最低限のレベルは確保した上で、できる限り今後とも、地域包括ケアシステム、二十四時間、三百六十五日が最終目標でございますけれども、その構築を目指している途中でございますので、今よりも小規模化を推進するというのは、サービスの安定的供給という面から非常に難しいと考えております。この地域包括ケアシステムを充実するという観点から取り組んでいきたいと思います。
○古屋(範)委員 公明党で昨年行いました介護総点検で、七万七千人の方々に街頭でアンケート調査を行いましたけれども、その中で、自分が高齢になって介護が必要になったとき、どこで受けたいかという質問をいたしました。そうしましたら、介護施設、それから在宅、これがほぼ同数でありまして、病院というのは非常に少なかったわけなんですね。
在宅における介護は当然でありますけれども、やはりそこに看護、医療、そしてリハビリ、こうしたものまで含めて、在宅での二十四時間、三百六十五日のそうしたケアが受けられるような体制が必要なのではないか、このように考えております。そのために、この二・五人の配置基準は工夫をしていけばできるのではないか、私はそのように思っておりますので、ぜひ今後も前向きな検討をお願いしたいということを再度要望しておきたいと思います。
次に、きょうのテーマであります、うつ病対策について伺ってまいります。
抑うつなどの症状が続く、これは躁うつ病も含めまして、うつ病患者数が初めて百万人を超えたということが、昨年十二月の厚労省が実施している患者調査でわかりました。また、きょうの新聞でありますけれども、内閣府が初めて統合調査を行ったそうであります。厚生労働省が人口動態統計、あるいは警察庁が自殺統計をそれぞれ集計しているんですが、初めて両省庁のデータを集約、分析したということであります。自殺者は三月の月曜日が一番多い、危険であるというような記事も出ております。こうした自殺の原因も、うつであることが非常に多いということも指摘をされております。
この患者調査によりますと、うつ病が大半を占める気分障害の患者数は、平成八年に四十三万三千人、平成十一年には四十四万一千人、ほぼ横ばいでしたけれども、十四年から七十一万一千人と急増いたしました。今回の平成二十年調査では百四万一千人に達しております。この十年足らずで二・四倍に急増したというわけです。
このうつ病で最も懸念されますのが、先ほど申しました自殺との関係であります。自殺の動機として最も多いのが健康問題であり、このうち、うつ病を理由とするのが最も多いことが問題となっております。
こうした国民の生命を守るために、私たち公明党では、平成二十年四月、党内にうつ対策のワーキングチームを設置いたしました。そこで、関係団体、また専門家とも意見交換を重ねまして、同年七月、うつ対策の具体案を政府に提言いたしました。
提言では、うつ病の早期発見、早期治療の推進へ医師の診断能力の向上、また、患者の専門医受診率を五割以上に引き上げる。現在、二五%という低い率になっております。治療における精神療法の拡充強化、労災の休業補償など安心して治療に専念できる社会づくり、患者の社会復帰のプログラムを整備し、社会復帰を実現する。こうしたものを骨子といたします十七項目の対策を、子供のうつ対策もあわせまして、うつ対策を提言いたしまして積極的に推進をしてまいりました。
このうつ病対策を考える上で大事なことは、第一に、うつ病の早期発見、早期治療であります。治療がおくれればおくれるほど回復率も低くなる。そのためには、かかりつけ医が的確にうつ病を診断して、専門医につなげていくということが重要だと思います。やはり、最初に行くのは内科医であったりするわけです。
厚労省は、うつ病の早期対応の中心的役割を果たす人材を育成する、かかりつけの医師等のうつ病等の精神疾患の診断技術の向上を目指して、平成二十年度から、かかりつけ医うつ病対応力向上研修というものを実施されております。自治体によっては研修を実施されていないところもあると聞いております。まずこの現状についてお伺いいたします。
また、どこに行っても的確な診断が受けられるよう、自治体間の格差を生まないためにも、こうした自治体へは厚労省から研修実施をしっかり働きかけていただきたい、このように思います。これについてお伺いいたします。
○山井大臣政務官 古屋委員、御質問ありがとうございます。
公明党のうつ対策ワーキングチームの座長としてうつ対策に御尽力されておられます古屋委員に敬意を表したいと思っております。
厚生労働省でも、現在、自殺対策、そしてうつ病対策の検討会をつくりまして、とにかく自殺の大きな原因となっているこのうつ病対策に取り組ませていただいております。
今御質問をいただきました、かかりつけ医うつ病対応力向上研修についてでありますが、古屋委員御指摘のように、早期に発見して適切な治療を受けるということが一番重要であるにもかかわらず、かかりつけ医の方の中にまだまだうつ病に対する理解が不十分ということがございます。そこで、平成二十年度には、四十の都道府県と指定都市がこのうつ病対応力向上研修を行いました。平成二十一年度には、六十五の都道府県・指定都市というふうにふえております。
ただ、古屋委員御指摘のように、まだまだ未実施なところがありますので、格差がつくとこれは問題ですので、今後とも全国の会議等を通じて働きかけを図ってまいりたいと思います。
○古屋(範)委員 二十一年度で六十五都道府県・政令市ということであります。今後、自治体間で、熱心なところ、そうでないところ、開きがあると思いますので、ぜひ、未実施のところは当然早急に実施をするよう働きかけていただきたいというふうに思っております。
このうつ病でありますけれども、これは無作為に選んだ四千人余りを対象として面接調査を行った調査がございます。これはWHO国際共同研究の日本での調査によりますと、うつ病の生涯有病率、一生のうちに一度治療が必要な状態になる人の割合が六・三%ということで、十五、六人に一人くらいの割合でうつ病が発生するということでありまして、いわば国民病というふうに言えるのではないかと思っております。
それから、うつ病の患者さんは女性の方が多いんですね。二対一の割合で女性の方が多い。経済界の方とも意見交換した折には、非常に女性は元気だと、この事実は余り御認識がなかったのですが、産後であるとか更年期とかそういった要因もあると思いますし、こうした国民にとって非常に大きな問題、これがうつ病であります。ぜひ、国としても総力を挙げて対策に取り組んでいただきたい、このように思っているわけです。
次に、子供のうつ対策についてお伺いしてまいります。
かつては、子供はうつ病がないというふうに言われていた時代もあるそうです。まだ知能も未発達だし、そういう子供はうつにはならないという学説があったそうなんですが、そんなことはなくて、世界的に見ましても、約五%の子供が治療が必要なうつ病にかかっているそうであります。十八歳までの子供は二〇%が、いずれかの時期で治療が必要なうつ状態になっていると言われております。
私たちも、日本医科大学精神医学教室の斉藤卓弥先生に、子供のうつについていろいろ伺いました。子供のうつはなぜ深刻なのかというふうに言いますと、大人でしたら、自分で病院に行こう、そう思えるかもしれないのですが、子供の場合にはみずからそういうこともしにくいということもありますし、また、大人の場合には、もとの水準に戻れば、復職、仕事に復帰するということになるんでしょうが、子供は、失った時間と場所の両方を取り戻してやっとほかの子供と同じようになるということでして、その点、大人の回復よりもはるかに難しいと言われております。
特に、学校に行けなかったというようなことになりますと、その影響が生涯残ってしまうということでありまして、また、子供のうつは、大人と出方も症状も違うというふうに言われておりますし、また、治療方法も大人とは違う面がある、このようにおっしゃっています。しかし、こうした子供のうつを的確に診断できる専門医というのは非常に少ないわけであります。早急な育成が求められております。
厚労省は、平成十八年三月に、子どもの心の診療医の養成に関する検討会平成十七年度報告書を発表しまして、子供の心の診療医の養成確保に向けた取り組みが進むことが期待されております。そこで、この子供の心の診療に専門的に携わる医師の育成、これに関しての御意見を伺いたいと思います。
○山井大臣政務官 古屋委員、御質問ありがとうございます。
子供の心の問題に対応できる医師の養成は非常に急務だというふうに思っております。実際、生活保護の母子家庭には、お子さんにうつ症状の方が多い、お母さんにもうつ症状の方が多いという結果も出ておりますし、またDV被害、また児童虐待の被害のお母さん、お子さんにもやはりうつ症状が出ている。大人のうつももちろん深刻でありますが、お子さんの場合はそれが不登校につながる、そして人生設計が立たなくなってしまうということで、まさにこれは大人の責任として取り組む必要があると思っております。
今御指摘の思春期精神保健対策専門研修事業を今実施しておりますが、平成二十一年度までに千人を超える医師がこの研修を受講しているところであります。
また、うつ病に関しては、これまで内科医等に行ってまいりました、先ほど答弁しましたかかりつけ医うつ病対応力向上研修事業についても、平成二十二年度からは小児科医なども対象に追加しておりますので、かかりつけ医の方々のみならず、小児科医の方々にもこのような心の問題への対応をこれから取り組んでいただきたいと思っております。
○古屋(範)委員 今、政務官から御答弁いただきましたけれども、この平成二十年から実施しておりましたかかりつけ医うつ病対応力向上研修、来年度からは小児科医も含めてくださるということでございます。これは非常にありがたいというふうに思っております。
やはり、子供の様子がおかしい、学校に行きたがらないなどなどありましたら、まず最初に行くのは小児科医であると思います。ですので、この小児科医が、そうした専門医につなげる必要がある、そのように判断できるかどうかということがその先への大きな治療のステップになると思いますので、この小児科医の研修もぜひ、地域格差が出ませんよう、全国での実施をしていただきたいと思っております。
今後は、この子供のうつ対策に対する啓蒙と教育が重要になってくるのではないかと思っております。ぜひ厚生労働省は文部科学省と連携をして、こうした子供の心の問題への対応についての研修を養護教諭も含めてやっていくべきだ、このように思いますが、この点はいかがでしょうか。
○山井大臣政務官 古屋委員、御質問ありがとうございます。
先日、文部科学委員会でも、公明党の池坊保子先生から御指摘をいただきました。本当にこの心の苦しみを負っているお子さんたちに対しては、これは医療のみならず学校現場での対応も非常に重要だと思っておりますので、これからも連携をして取り組んでまいりたいと思います。
○古屋(範)委員 ぜひ省庁の壁を越えて、子供のためにここのところは文科省と連携して、養護教諭もこの研修に含められるようよろしくお願いいたします。そのことを強く要望しておきたいと思います。
それから、認知行動療法についてお伺いしてまいります。
私たちのワーキングチームで沖縄に参りまして、沖縄県にあります認知行動療法を実践している、そして画期的な成果を上げております総合精神保健福祉センターに参りました。また、精神医療の現場で注目される認知行動療法の日本における第一人者であると言われております慶応大学の大野先生からもヒアリングを行いました。
そこで、私たちの提言でも、治療における精神療法の拡充強化というものを訴えてまいりました。今回の診療報酬改定におきまして、認知行動療法の評価が新設されたということでありまして、この意義は非常に大きいというふうに評価をいたしております。
しかしながら、診療報酬では評価が今回新設をされたんですが、実際、この認知行動療法を行える専門家が非常に少ないというのが現実であります。この認知行動療法を受けたいという方がたくさんいらっしゃいまして、こちらにもいろいろと連絡を下さるんですが、一体どこの機関でどんな専門的な治療が行われているのかというような情報が余りないというのが現状であります。そこで、視察をした沖縄に、関東の方がわざわざ行って、それで治療をしたい、こういう方もいらっしゃいました。
沖縄では、デイケアというプログラムをつくっていまして、週一回、精神保健センターに参ります。そこで認知行動療法を受けて、あとは、ホームワークといって、自宅に帰るなり、あるいはお仕事をしている方もいるかもしれませんが、あとはホームワークをやって、それを身につけていくというプログラムで、実際、このプログラムを修了して仕事に復帰されているという方が非常に多くいらっしゃるんですね。効果があるというふうに伺っております。
この認知行動療法を行う専門医の育成が急がれます。専門医の育成について御所見をお伺いしたいと思います。
○山井大臣政務官 古屋委員、御質問ありがとうございます。
今御指摘のように、この認知行動療法というのは非常に効果も上がっております。古屋委員からの御要望も受けまして、平成二十二年度の診療報酬改定では、初めて、診療報酬上四百二十点という報酬を新設させていただきました。そして、厚生労働省では、平成二十一年度に専門家向けのマニュアルを作成したほか、平成二十二年度には、認知行動療法を普及させるために、国立精神・神経医療研究センターにおいて、認知行動療法を積極的に行う医師の養成のための研修を初めて実施する予定であります。
これからも、これらの取り組みを通じて、認知行動療法を行うことのできる専門家の養成を図ってまいりたいと思っております。
さらに加えまして、先ほど御質問をいただきました、養護教諭等が思春期精神保健対策専門研修事業を受けられるようにということについても、現在でも、医療従事者だけではなく養護教諭等の学校関係者の参加も可能となっていますが、さらにこれから、養護教諭の参加について都道府県等に呼びかけてまいりたいと思っております。
最後にちょっと一点だけ、答弁の訂正があります。
先ほど、最初、かかりつけ医うつ病対応力向上研修、二十年度が四十カ所で、二十一年度が六十五カ所と言いましたが、申しわけありません、五十一カ所の間違いでございました。訂正させていただきます。
○古屋(範)委員 ありがとうございました。
こうした専門医の育成は非常に急務であると思っております。
そこで、先ほども触れましたけれども、問題なのが、日本の中では二五%の方しか医療機関を受診していない。
これは、いろいろな理由があるかと思います。いろいろ調査をしてみますと、何とか自力で治るのではないかと思ったとか、あるいは、自然に治ると思った、このように答えていらっしゃる方も多いですし、また、職場の中でほかの人に知られてはまずい、いろいろな理由があるとは思いますが、ともかく受診をしている方の比率が非常に低いというのが我が国の特徴であります。早期診断と適切な治療が欠かせないというわけで、受診率の向上が非常に大きな課題であると思っております。
そこで、イギリスにおきましては、軽症を含めれば六人に一人がうつ病とか不安障害に悩んでいると言われております。ここでは、国を挙げて心の病に悩む人を一人でも減らそうという取り組みが行われているそうです。
これも慶応の大野先生から伺ったものなんですが、イギリスの精神療法家養成計画に関して、これは新聞にも掲載をされているんですが、一部を紹介させていただきたいというふうに思っております。
これは、うつ病や不安障害で苦しんでいる患者さんの治療の中で、エビデンスの出ている精神療法を受けられるかどうかに関して、イギリス内に存在する地域格差を解消する目的で、ブレア政権時代に計画をされたということです。それが、国家的なプロジェクトとして現在のブラウン政権にも引き継がれて、実際に今、動き始めているそうなんです。
二〇〇八年から、心理療法を希望するすべてのうつ病と不安障害患者に国が治療を提供する心理療法アクセス改善、IAPTプログラムを導入いたしました。現場での治療は無料だそうです。一回五十分、不安を感じる原因やその対処法などを心理士と話し合っている。
従来は、うつ病や不安障害の患者のうち、治療を受けているのは四分の一にとどまっていたそうです。臨床心理士の不足が理由で、治療を受けるために平均一年半も待たなければいけなかった。これがイギリスの現状だったそうです。
そこで、イギリス保健省の計画では、三年間で約三百四十六億円を投じまして、心理士三千六百人を養成する、新たに九十万人が治療を受け、半数が回復すると試算をしているそうです。新聞のこの金額とはちょっと違うんですが、イギリス保健省の出しているペーパーを見ますと、この金額だというふうに思います。四回から二十回の心理療法と、それから栄養指導などの生活支援も組み合わせまして、抗うつ薬などの薬は原則使用しないそうです。
心理士の養成費用と、治療によりうつ病患者が回復をして就労不能給付金の支出が減った場合の費用対効果が、イギリスにおいて心の病による損失は約一兆八千億円、非常に多額であります。日本では恐らく、人口比からいっても、これより多いと推計されます。生産性の向上なども考えれば、いわゆるおつりが来るというわけであります。
そこで、政府の自殺対策強化月間も本日で最終となりました。厚労省の自殺・うつ対策プロジェクトチームでは、近く今後の対応の方向性が提示される予定とのことですので、腰を据えた政策立案が期待をされております。国家レベルで、メンタルヘルス対策に予算を投じて、国民が心身ともに健康な状態を確保できるよう努めるべきである。これは、本人にとっても、家族にとってもそうですし、国にとっても、こうした費用対効果の面でもそうであるべきだと思います。
うつ病に伴う経済的損失が一兆円とも言われる我が国において、イギリスのIAPTの成果を確認した上で、薬を原則使わないこの心理療法、認知行動療法を希望するすべてのうつ病の患者の方々に提供するために、治療体制を考えるべきだと思いますけれども、これについての御所見をお伺いいたします。
○長妻国務大臣 今、古屋委員御指摘のように、私も、イギリスについては非常に注目をしております。
まず一つは、今もお触れになりましたけれども、うつ病は、患者さん、家族が大変御苦労をされておられますが、これは不謹慎かどうかはわかりませんけれども、経済的損失の金額というのをイギリスは公表したということで、国民的に、ああ、これだけの損失があれば、やはり一定の財政措置をしてそれに対応する必要がある、こういう意識醸成をしたというふうに承知しております。今、厚生労働省内でも、日本国におけるうつ病についての経済的損失額を算出するようにしております。
そして、今おっしゃられたように、やはり抗うつ剤などの薬だけではなくて、今言われた認知行動療法、簡単に言うと、コンサルタントというか、面接をして言葉のやりとりで治療するという方が再発率が低いというのはイギリスでも言われておりまして、やはり日本国も、薬中心の治療から今言われた認知行動療法に転換しなきゃいけないというふうに考えております。
そこで、あしたからの新しい診療報酬でも、四百二十点、一点十円でありますから一日につき四千二百円ということでありまして、これについてはもっとふやすべきだという御意見もありますが、今までついていない認知行動療法について新しく診療報酬をつけさせていただいたということであります。
今、毎日毎日、一日平均九十人の方が自殺をされておられて、先進七カ国では人口当たりの自殺率は一番多いということになっておりますので、ソーシャルワーカー等も含めて、認知行動療法の充実について、今後、何らかの目標を定められないかということを検討していきたいと思います。
○古屋(範)委員 この損失額を厚労省としてこれから試算されるということでもありますが、一人一人の国民の心の健康、そして家族のために、ぜひこうした認知行動療法、専門家の育成、そして推進をお願いしたいというふうに思います。ありがとうございました。
次に、相談、カウンセリング等の資格を持った方々の人材活用についてお伺いをしてまいります。
こうした心の病、また自殺、過労死に関係する専門家の資格というのは非常に多くの種類があります。私も、今回調べてみて、知らなかったものもありました。
認知行動療法にはその専門家が必要ですけれども、どうしても医師、看護師など絶対数が不足をしておりまして、その対応ができないというのが現状ではないかと思っております。私は、うつ病や精神疾患に至るその前段階で、治療が必要だと精神科に行くその前段階で、これを見きわめた上で、心理士などの医療心理技術者等の資格を持った方々の活用をもっと考えてもよいのではないかと考えております。
例えば、心の問題や悩みに関して話を聞いて寄り添う、こうすることによって心のケアができる。やはり対話が重要であると考えております。だれもがつらいことがあったときに心のうちを話せる相手、以前は地域にそういう世話をやいてくれる人がいたんでしょうが、この時代にはなかなかそういうわけにもまいりません。例えば民間資格の精神対話士、この存在が注目をされております。
きょうの天声人語にも少しその関連のことが出ております。これは、池田小の殺傷事件がありまして、そのときに娘さんを亡くされた方なんですが、この方が、精神対話士に出会うことによって笑顔が戻ってきた、心が持ち直した、このようなことがきょうちょっと記事に出ておりました。精神対話士というのは、メンタルケアの養成講座を修了して、厳正な選考を経て、メンタルケア協会に登録をされている心のケアの専門職であります。
また、福井市の教育委員会では、小学校のカウンセラー配置事業を独自に立ち上げまして、精神対話士をスクールカウンセラーに採用して、広く生徒のストレス、悩みに対応して、気軽に相談できる環境をつくっているそうです。いじめや不登校などの重大な問題につながる芽を事前に摘み取っていくということで、実際、精神対話士が派遣されている学校では確実に不登校増加に歯どめがかかっているという報告をいただいております。
また、ハローワーク金沢にも、昨年十二月、職業、住宅、生活支援の総合窓口、ワンストップサービスデーに初めてブースを設けるなど、失業者の心を支える役割を担っていたそうです。
さらに、石川県では、精神対話士を活用して、これはお寺で行ったようなんですが、本年二月から三月にかけて三回、悩みを抱える人たちの相談に無料で応じております。これは県の自殺防止対策の補助金認定事業で行われております。
こうした取り組みが全国に広がってほしい、このように期待しております。
いじめに遭ったり引きこもっている子供や青年、肉体的な重い病気にかかって精神的に参っている病人、虚脱感、孤独感を強く感じてふさぎ込んでいる高齢者、病人やお年寄りを介護、看病し続けている家族、精神的に疲れ切っている人など、心の健康の維持というのは非常に大きな課題でありまして、依頼に応じて出向いてくれる、対話を通じて心の病をいやして生きる希望と勇気を持ってもらう、こうした精神対話士の重要性は非常に強まっていると思われます。
そこで、国としても、臨床心理士あるいは精神対話士など、メンタルヘルスに関連する資格を持った人材の活用をもっと図るべきと思いますが、この点についてお伺いをいたします。
○長妻国務大臣 あした、四月一日、厚生労働省の入省式ということで、新人の心理職の職員も厚生労働省は採用しているところでありまして、そういう心理職の知恵も出して、チームで今のうつ対策に取り組むということが重要だと思います。
まず、二十二年度からは、その研修を強化していこうということで、国立精神・神経医療研究センターにおいて、二十二年度、来月から、臨床心理技術者、精神保健福祉士などを対象として、順次研修を実施していこうというふうに考えております。
あとは、今おっしゃられたような精神対話士という方も、これはメンタルケア協会で今八百人おられるし、臨床心理士は一万九千八百三十人がおられますので、そういう方々が先ほどの療法にどれだけ従事していただけるのか、あるいはこれからどれだけの人員が不足するのか、そういう現状把握もした上で、先ほどの研修強化も含めたチームの対応というのも検討していきたいと思います。
○古屋(範)委員 厚労省にもそうした専門家が入省してこられるということでありますので、ぜひそういう方々の御意見も生かして、こうした分野の方々の活躍できる場を広げていただきたいと思っております。
最後の質問になります。
私も、今回こうしたさまざまな厚労省での取り組みを伺うにつけ、非常に多部局にまたがっているということを感じました。精神衛生、医療のみならず、労働安全とか職業安定、非常に多くの部局にまたがっている問題だということを再認識いたしました。
そこで、私たちの総合うつ対策の提言におきまして、健康保険の傷病手当の活用拡大、あるいは安心して治療ができるような労災保険の休業補償、障害者手帳取得の促進などを訴えてまいりました。
うつ病患者にとっては、生活していける経済力があるうち、この傷病手当が支払われている間は何とか自殺を思いとどまることができる傾向があるとも伺いました。ですから、経済的な支援は本当に重要でありまして、自己負担一割で自立支援医療にかかれる対象であるということも周知をしていくことが大事ですし、精神障害者保健福祉手帳を取得できれば税金の軽減等も設けられているということで、こうしたことを知らない方々も非常に多いわけであります。経済的支援として活用できるものは現行法でもいろいろありますし、それを使っていただきたいというふうに思っております。
そこで、患者が安心して治療に専念できるよう、うつ病になったときは、このようにたくさんの支援が既にあるのだということを皆さんに知っていただく必要があるというふうに思っております。
そこで、それぞれの部局ではいろいろなものをつくっていらっしゃるようなんですが、各部局にわたる多くの支援策を一つにまとめたものが欲しいと思っておりまして、これを見れば一目瞭然、うつ病患者さんの支援策がわかるというようなパンフレットをぜひ作成していただきたいと思うのですが、この点、いかがでしょうか。
○長妻国務大臣 厚生労働省のホームページに「心の健康」というコーナーをつくりまして、それを、今ホームページ全体の見直しをしておりますので、さらに見やすくする。そして、今のパンフレットについては、我々検討していきたいと思います。
恐らく、そのうつ病の方の中で一定の要件があれば障害年金というのが受給できるということを多くの方が御存じないのではないかということ、あと、今おっしゃられた障害者自立支援法に基づく医療なども恐らく多くの方が御存じないのではないかというふうに懸念を持っておりますので、これについては、これだけ多くの方々が今うつということになっておりますので、広報をさらに強化していきたいというふうに考え、そういう方々がいらっしゃる場所なども見定めて、効果的な広報に取り組んでいきたいと思います。
○古屋(範)委員 こうしたパンフレットの作成も前向きに御検討をいただけるということですので、さらなるうつ対策を求めまして、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。