第174回国会 衆議院 厚生労働委員会-1号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 本日は、雇用保険法改正案、そして雇用対策についてお伺いをしてまいります。

 平成二十年秋の世界的な金融危機以降、雇用情勢は、昨年の七月、過去最高五・七%を記録いたしまして、その後も五%台ということで、予断を許さない状況、いわば高どまりになっている状況であります。

 鳩山内閣は、昨年の政権交代以降、切れ目ない景気対策が求められたにもかかわらず、第一次補正予算の一部執行停止を強行いたしました。結局は、景気回復にブレーキをかけた、雇用の維持や改善に大きな影響を及ぼしたと言わざるを得ません。凍結となりました約二兆九千億円、今回の第二次補正予算案で活用されることになっておりますけれども、昨年十月に実施できたはずの対策が四カ月以上もおくれたというわけであります。特に、心理的なマイナス影響というものも大きいというふうに思います。

 また、さらに気がかりなのは、バブル崩壊後の就職氷河期の再来を思わせるような局面を迎えているということであります。一九九〇年代半ばから二〇〇五年ごろの就職氷河期に社会に出た世代、その多くは今でも非正規社員である、不安定な働き方を余儀なくされているという現状を見ますと、現在の就職していく世代、この将来というもの、非常にこれも不安であるということが言えるかと思います。

 総務省が昨年末に公表した労働力調査で、十一月の完全失業率、特に若年層、十五から二十四歳の若者、これが八・四%、二十五から三十四歳、ここが六・三%と、非常に高い比率となっております。全体の失業率五・二%を大幅に上回っているというわけであります。

 さらに、就職戦線も非常に厳しい。十四日に発表されました昨年十二月一日現在の就職内定率は七三・一%、一九九六年の調査以降、過去最低となっております。前年からの下げ幅も、過去最大だった昨年の十月時点の七・四ポイントとなっております。

 こうした数値が示す若者の厳しい雇用情勢、一刻も早く改善をしなければならないというふうに思います。将来を担う若者の生活基盤、この経済基盤が確立しない限り、結局、日本の活力もないというわけであります。

 そこで、若者の生活基盤の安定、雇用対策に万全を期さなければいけない。中長期の視点からも、若者が希望を持って社会に出ていけるような状況をつくっていかなければいけない。そのためにも、政府が全力を挙げて雇用対策、また雇用創出に取り組んでいかなければいけないと思いますが、大臣、この点に関しまして御所見をお伺いいたします。

    〔委員長退席、中根委員長代理着席〕

○長妻国務大臣 今、古屋委員の御指摘のとおり、大学卒業見込みの方の内定率が、これはもう史上最悪の数字だということで、あの就職氷河期よりも大変な数字になった。そして、高卒の方の内定率の低さはもとよりでありますが、私は、本当にこれは政府として頑張らなければいけない事態だと思います。

 その中で、私どもとしては、一つ重要なのは、やはり雇用のパイを広げる。厚生労働省がいろいろ雇用対策をやりますが、下支えというのが非常に中心の政策でありますが、内閣全体としては、雇用のパイを広げるということで、成長戦略を年末に打ち出し、この詳細な工程表をことし六月をめどに、厚生労働省分野でも、医療、介護などの成長分野について、今詳細な工程表を詰めているということで、パイを大きくする。

 そしてもう一つは、下支えという意味で、ハローワークに、新卒者専用のジョブサポーターという方を、これまでの人数から倍増して九百二十八人、全国のハローワークに配備をして、そのジョブサポーターは、就職先企業を訪問して、新卒者を何とか採用してほしいというお願いに回る。そして、就職面接会を全国でことし三月までに百五十回、厚生労働省が音頭をとって開催をしていく。あるいは、新卒者を体験雇用する事業主について、月八万円支給するという新卒者体験雇用事業というのを新たに創設するということにも取り組み、そして、新卒者の方も、就職がない場合、これは大変厳しい話ではありますけれども、新卒した後に就職訓練に直ちに入っていただいて、そのときに一定の要件であれば生活する資金も支給をしていく、こういう措置も我々新たに設けていこうということで、万全の下支え策をとらせていただこうということであります。

○古屋(範)委員 当然、雇用と経済対策、これは表裏一体でありまして、雇用のパイをふやしていく、これも当然のことだというふうに思います。九十二兆という二十二年度の本予算を組まれた後に成長戦略を出してこられた。そしてその工程表は六月であるという、非常にこれは本末転倒、後先逆なのではないか、このように思わざるを得ないわけであります。

 私たちも、こうした雇用の厳しい現状を見まして、公明党の青年委員会が中心となりまして、介護の方も行ったんですが、雇用総点検というものを行いました。特に、公明党が進めてまいりました若者の就労支援ということで、ジョブカフェあるいは若者自立塾、こうしたところを中心に全国の総点検運動を行いました。

 ジョブカフェは今四十六の都道府県に八十七カ所設置をされておりまして、若者の就労支援に役立ってはおりますが、今現状、こういう雇用の中でどうなっているのかということであります。

 私たちは、そのうち十七都道府県、二十四カ所の調査を行いました。ジョブカフェそのものは非常に立地がよく、駅から平均約四分のところにあるということですので、立地条件は非常にいい、若者にとっても行きやすいところに設置をされているということになります。

 この調査をいたしましたジョブカフェの利用者数分の就職決定者数の割合なんですが、就職率が約七・六%、一番高いところでも一四%ということでありまして、これをどう見るかということなんですが、非常に厳しい数字であるというふうに私は思っております。

 また、ここを利用する人の割合に関しましても、若年無業者が全体の三割以上を占めると答えた施設が十七カ所で、最多であったわけなんですね。フリーター対策ということもあったんですが、実際には無業者が非常に多いというわけなんです。また、学生生徒が全体の三割以上を占めると答えたところが八カ所、フリーターが全体の三割以上と答えたところがわずか三カ所でありまして、やはり無業者がジョブカフェに頼って就職の活動に来ているということになろうかというふうに思います。

 また、昨年の秋以降の経済悪化の影響につきまして、求人枠が減少していると答えたところが十七カ所、次いで若年離職者の増加が十六カ所ということで、経済悪化が若者の雇用にも非常に大きな影響を与えているというような調査結果が出てまいりました。

 そこで、私たちは、それをもとに提言を発表いたしました。若者が夢と希望を持てる社会を目指す政策提言を発表いたしました。その中にも、具体的な提案といたしまして、訓練・生活支援給付制度の恒久化ということを掲げております。

 平成二十一年度から、新たな雇用のセーフティーネットとして、訓練期間中の生活保障を行う緊急人材育成支援事業を実施しております。平成二十二年度末に終了することとなっております。しかし、この事業は、雇用保険を受給できない者に対する第二のセーフティーネットである、また、雇用保険と生活保護の中間に位置する必要な施策であると考えます。

 そこで、運用開始後の実情を検証し、真に使いやすく役に立つ訓練・生活支援給付金制度として平成二十三年度以降恒久化すべき、このように考えますが、これについて御見解をお伺いいたします。

    〔中根委員長代理退席、委員長着席〕

○長妻国務大臣 今言われた制度、今はいわゆる基金訓練というようなことで、これは我々も野党時代、与党に申し上げ、そして前の政府が採用して、今も引き続き実施をしているというものであります。

 我々は、求職者支援というようなことを申し上げ、第二のセーフティーネット的な位置づけ、つまり、雇用保険も切れてしまったり、あるいは自営業の人は初めから雇用保険に入っていない、生活保護の要件にも満たない、そのはざまの方々が職業訓練を受けながら生活費を支給するという制度でございまして、これは二十二年度は暫定的な基金ということで措置をされておりますけれども、私どもといたしましては、二十三年度からも、これを恒久的な措置として、きちっと予算、法案を提出して継続をしていこうというふうに考えております。

 ぜひ、委員の皆様方におかれましても、御地元で、無料で就職訓練を受けて、かつ、雇用保険が切れた方は一定の要件であれば月十万円、そして扶養者がいれば月十二万円の生活費も支給して職業訓練を受ける、こういう制度が今あるということもぜひ広めていただければ、ハローワークが受け付けているところでありますので、我々もその周知を図っていきたいと考えております。

○古屋(範)委員 前政権におきまして、累次の経済対策、生活支援の中でこの訓練・生活給付制度をつくってきたわけでありますけれども、今、二十三年度から恒久的な措置にするというふうに明言をされましたので、ぜひともそのとおり実行していただきたい、このように思います。

 次に、介護職員の処遇改善ということについてお尋ねしてまいります。

 この雇用を創出するということ、現在、有効求人倍率は過去最低の〇・四二倍。若干は改善をしておりますけれども、〇・四倍台で推移をしているということであります。

 政府は、緊急経済対策で、緊急雇用創造の充実ということで、今大臣もおっしゃいましたけれども、介護、医療、農林、環境等の分野で新たな雇用機会を創出するための事業、今回の第二次補正で一千五百億円を計上されております。

 特に、私は、雇用の大きな受け皿として期待されている介護分野ということに注目をしていきたいと思っております。特に、介護現場で人手不足が慢性化している一方、介護福祉士などの養成学校は訓練生であふれているが就職には結びつかない、こういう現状もございます。

 公明党は、介護の充実こそ最重要課題ということで、昨年十一月から十二月にかけまして、介護総点検運動を全国の三千名を超える議員で行ってまいりました。私も、介護施設に何度も足を運びまして、職員の方々からさまざまな意見を伺ってまいりましたし、また、街角にも立ち、アンケート活動にも立ってまいりました。国民に直接話しかけ、そしてお答えいただくということで、プライベートな質問であるのでなかなか答えていただけないかなとは思ったんですが、道行く人々、結構私たちの介護アンケートに答えてくださいました。

 その中で、七十二歳の女性は、夫の介護をしているけれども老老介護だ、また、施設への入所、経済的な負担などが不安だということも切々と語ってくださいました。また、介護現場で苦労していらっしゃる方々の声も伺ってまいりました。

 今、党としては、新介護ゴールドプランの策定をしている真っ最中でもございます。

 今回の総点検運動の中で、介護職員として働いている方々へのアンケートで、働ける限り介護の仕事をしたい、続けたいと答えた方が七割いらっしゃいました。仕事にやりがいを感じているということもよく伝わってまいりました。しかし同時に、心身の負担が大きい、業務内容に対して収入が低いと答えた方も八割に上っております。介護を敬遠する理由として、全産業の平均の六割から七割程度という低い給与水準が問題となっているわけであります。

 大臣は、予算委員会の井上幹事長の質問に答えて、この介護職員の処遇改善ということで、月四万円程度アップしたいという答弁をなされていたと思うんですが、私たちも、約四千億近い基金を積んで、月一万五千円程度のアップということを予算計上してまいりまして、月四万ということになりますと相当な財政規模ということになろうと思いますが、大臣、この具体的な制度設計なり全体の財源の確保、これについてのお考えをお伺いしたいと思います。

○山井大臣政務官 この四万円、介護職員の賃金を引き上げるというのは、民主党のマニフェストに書いていることでございます。そして、古屋議員御指摘のように、この不況の中で介護職員が非常に人手不足に陥っている、そのためには介護職員の賃金引き上げは急務だというふうに思っております。

 御存じのように、旧政権下で二年半に限ってつくられました介護職員の処遇改善の交付金、二年半で切れます。その意味では、残された一年半のうちにさらに引き上げまして、四万円に達するように、四年以内には、マニフェストで約束したことですから、やっていきたいというふうに考えております。

 さらに、この処遇改善交付金に関しましては、公明党さんも御指摘のように、介護職員だけの賃金引き上げにしかならない、もっと広げるべきではないかという御主張がございます。

 このことについては、私たちもそのような御批判はいただいているわけですけれども、介護職員以外の方に広げますと、一・五倍に人がふえますもので、今の交付金四千億円でしたら、それを介護職員以外の人に広げますと六千億円になってしまいます。

 そういう意味では、本当に現場では、介護職員のみならずケアマネの方や事務職員、給食の担当の方々、みんなチームでケアをしているわけで、非常に心苦しいわけでありますけれども、ここは財源に限りがあるために、最も今人手不足が深刻な介護職員の方の賃金引き上げをまず優先するというふうに考えております。

○古屋(範)委員 具体的な財源についての御答弁はなかったというふうに思います。

 介護の問題につきましては、引き続き、重要な問題でもありますので、次の機会にさらに議論を深めてまいりたい、このように思います。

 そこで、今回の法案に入ってまいります。

 先ほど二人の委員からも質問があった点でもございますが、私の方からも確認をさせていただきたいと思います。平成二十一年度において、現行の国庫負担金のほかに三千五百億円、一般会計から労働保険特別会計へ繰り入れるというふうになっておりますけれども、この理由として、雇用保険制度の当面の安定的運営を確保するとなっております。

 そこで、失業等給付関係収支状況を見ますと、第一次補正後、差し引き余剰金七千九百五十二億円の赤字ということであります。しかし、積立金残高は四兆七千八百六十八億円となっております。この状況を見ますと、赤字が発生したとしても、失業給付に係る安定的な財政運営を確保するためには積立金を取り崩せばよいのではないかと考えられるわけであります。

 今回、積立金を活用せず、法律改正までして新たに三千五百億円の一般財源を投入することにしたこの理由について、お伺いいたします。

○細川副大臣 先ほども議論がありまして、大臣の方からお答えをいたしました。重複するかと思いますけれども、お許しいただきたいと思います。

 本来、失業給付の国庫負担については四分の一、こういうことになっておりましたけれども、平成十九年度からこれを四分の一の百分の五十五という、国庫負担の割合が低くなってきたところであります。そこで、私たちはこれを本来の四分の一にまずは戻すべきではないか、これが私どもマニフェストなどでもお約束をしていたところでございます。

 そしてもう一つは、やはり、今度の雇用失業状況が大変厳しい状況になっておりまして、二十一年度単年度で約八千億円の赤字、来年度も七千億円程度の赤字になるのではないかというふうに見込まれております。過去にも、四、五兆円の積立金がありましたけれども、大変経済が悪くなりまして失業がたくさんふえまして、その失業率も五・五というそんな事態になりまして、そのときには、平成十四年にはわずか四千億円程度の積立金しか残らないような、そんな大変な事態になりまして、そこで保険料を上げたりとかあるいは給付金も削減をするような、そんな事態になったこともございます。

 史上最高の失業率五・七%というようなことも昨今経験もいたしまして、非常に悪い状況でありますから、まずは雇用保険の財政的なものを安定的に運用するということで、まずは国民の皆さんに安心をしてもらうということで、この際、三千五百億円のお金を一般会計から投入させていただく、こういうことを決めたところでございます。御理解をいただきたいと思います。

○古屋(範)委員 今、るる御説明をいただきましたけれども、今回の改正案については、平成二十二年度予算の総額を抑制したいという財務省、そして必要な財源を確保したいという厚労省の利害が一致をしたのではないか、そういうことが類推をされるわけであります。

 そして、失業等給付費を除く支出、これについて資料要求をいたしましたけれども、全体で約二千億のお金が使われております。業務取扱費、施設整備費、また他勘定への繰り入れ、予備費ということで全体二千億ということでありまして、その業務取扱費の内訳もいただいておりますけれども、ぜひ、こうした失業給付等に係る以外の支出について、こここそ事業仕分けをしっかりしていただきたい、このように思いますけれども、もしこれについて御所見があればお伺いいたします。

○長妻国務大臣 これについては、雇用保険特別会計二事業の勘定と本体の勘定、それぞれ、さらに厳しく、無駄のなきように、怠りなきよう、我々取り組んでまいるつもりであります。

○古屋(範)委員 もう時間でございます。

 今くしくも大臣おっしゃいましたけれども、今回、総務省の方からもこうした雇用保険二事業に対しまして勧告がなされております。ぜひ、こうしたところ、見直し、精査を徹底して行っていただきたい、このように思います。

 以上で質問を終わります。

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