第189回国会 本会議 15号

○古屋範子君 公明党の古屋範子でございます。

 ただいま議題となりました持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律案、医療保険制度改革法案について、政府の見解を伺います。(拍手)

 日本の医療保険制度は、昭和三十六年に、お互いに医療費を支え合う国民皆保険制度を実現しました。世界に誇るべき制度であります。

 しかし、高齢化等に伴い、日本の国民医療費の総額は年間一兆円程度ふえ続けています。

 今後もこの日本の医療保険制度を持続可能なものとし、全国民に効率的で質の高い医療を提供していくことが何よりも重要と考えます。

 国民皆保険制度を維持していくためには、まず、財政基盤が非常に脆弱な国民健康保険、国保改革による制度の安定化が喫緊の課題です。

 市町村国保は、国民皆保険の基盤として重要な役割を果たしていますが、医療を必要とする高齢者の加入が多く、所得水準が低いなど、構造的な問題を抱えています。また、厚生労働省の調査によりますと、財政運営が不安定になるリスクの高い小規模保険者が全体の四分の一を占めています。

 そこで、本法案では、平成三十年度から、国保の財政運営の主体を、現在の市町村から都道府県に担ってもらうこととしています。都道府県が財政運営の中心的な役割を担い、安定化を図ることが大きな柱です。この点は、昭和三十六年の国民皆保険制度が実現して以来の大きな改革と言っても過言ではないと思います。

 持続可能な国民皆保険に向けた国保改革を何としても成功させなくてはなりません。都道府県が財政運営の主体を担う意義について、塩崎厚生労働大臣にお伺いします。

 国保の財政運営の主体を都道府県に担ってもらうことになりますが、各市町村は、保険料の賦課徴収、保険給付の決定などを引き続き行うこととなります。

 その際、都道府県と市町村がしっかり協議して、明確な国保の運営方針を決めることが大事だと思います。これにより、業務の効率化、コスト削減などが求められています。

 国としても、都道府県と市町村任せにするのではなく、都道府県と市町村の役割分担がスムーズに進むよう後押しをするべきと考えます。

 また、財政運営の都道府県移行に伴い、公費拡充で国保の財政基盤の強化を図ることも、法案の大きなポイントです。

 具体的には、平成二十七年度から公費拡充を順次実施し、平成二十九年度以降は、毎年約三千四百億円の財政支援を行うことになります。国保全体の保険料の総額が三兆円超ですから、一割以上の規模に当たります。

 三千四百億円の財政支援の効果について、塩崎厚生労働大臣の御所見を伺います。

 次に、負担の公平化等に関してお伺いします。

 今回の国保改革で、三千四百億円の財源を投入し、財政基盤の強化を図ります。これにより、懸案だった国保が安定し、赤字解消や保険料の伸び幅の抑制が期待されます。安心の医療実現への大きな一歩です。

 しかし、一方で、負担の公平化の推進などが法案に盛り込まれました。

 これらについては、お互いに医療費を支え合う国民皆保険を今後も堅持し、持続可能な制度としていくためにもやむを得ないと考えますが、国民の皆様に対する丁寧な説明が今政府に求められています。

 例えば、健康保険組合等による後期高齢者支援金の全面総報酬割の導入です。これにより、中小企業で構成される協会けんぽや報酬水準が低い健保組合の負担は軽減されますが、報酬水準が高い健保組合は負担増になるとされています。

 入院時の食事代の見直しもその一つです。

 現在、入院時の食事代は、食材費相当額を負担額として、一食二百六十円としています。これに対し、在宅で療養する人は、食材費のほか、調理にかかる費用も負担しています。そこで、入院と在宅療養との公平を図るという観点から、入院時の食事代も調理費相当額の負担も求めることとし、平成二十八年度から一食三百六十円、平成三十年度から四百六十円へと段階的に引き上げることとしています。

 また、外来の機能分化を進めるという観点から、紹介状なしで大病院を受診する場合、定額負担を患者に求める選定療養が平成二十八年度から導入されるとしています。

 こうした負担の公平化について、今なぜ必要なのか、塩崎厚生労働大臣に丁寧な説明を求めます。

 新たな患者申し出療養の創設についてお伺いします。

 患者申し出療養は、国内未承認薬などを迅速に保険外併用療養として使用したいという患者の切実な思いに応えるため、患者の申し出を起点とする新たな保険外併用療養の仕組みとして、平成二十八年度から実施されます。主に抗がん剤などが想定されると思われます。

 この制度により、安全性や有効性の審査期間は、前例のない場合は原則六週間、過去に例がある場合は原則二週間とします。従来、前者の場合は六カ月程度、後者で約一カ月を要していたので、迅速な審査で患者に医療を提供できることとしています。

 患者申し出療養は、所得の高い人ほどよい医療が受けられる、医療格差を広げるという批判もありますが、その狙いについて、塩崎厚生労働大臣の答弁を求めます。

 最後に、個人や保険者による予防、健康づくりの促進についてお伺いします。

 本法案では、予防、健康づくりのインセンティブの強化が掲げられています。個人の健康維持、増進はもちろんですが、ふえ続ける医療費を抑制するという観点からも大変に重要な取り組みだと思います。

 例えば、歩数、体重管理などに自主的に取り組む人には、健保組合がヘルスケアポイントを付与します。

 また、七十五歳以上の高齢者については、低栄養や、高齢になるに伴い筋肉の量が減少していく老化現象であるサルコペニアといった問題にどう対処するかが課題です。そのため、栄養指導や口腔ケア等の充実を掲げています。

 現在、栄養指導については、専門家によるモデル事業の実施を検討していると伺っています。

 予防、健康づくりの促進について、どのように取り組むのか、塩崎厚生労働大臣の御見解を伺います。

 今回の改革は、国民健康保険制度が導入されて以来の大改革であります。今後も、国民健康保険が医療のセーフティーネットとしての機能を維持できるよう、財政基盤安定化のための改革とともに、低所得者対策など構造的課題を軽減するための思い切った公費投入を強く要望し、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

○国務大臣(塩崎恭久君) 古屋範子議員から、五点にわたってお尋ねを頂戴いたしました。

 まず、国保改革の意義についてのお尋ねでございます。

 今回の国保改革によりまして、平成三十年度から、都道府県が国保の財政運営の責任主体となり、多様なリスクが都道府県全体で分散をされることになります。また、効率的な事業運営の確保等、国保の運営面でも都道府県が中心的な役割を担い、国保制度の安定化が実現することとなると思っております。

 国民皆保険を支える国保の安定的な運営を堅持するため、今回の国保改革を確実に実現させていきたいと考えてございます。

 国保に対する財政支援の効果についてのお尋ねがございました。

 国保は、さまざまな構造的な課題を抱え、厳しい財政状況にあることから、今回の改革において、毎年三千四百億円の追加的な財政支援を行うこととしております。これは、被保険者一人当たり約一万円に相当する規模となっております。

 自治体の実情を踏まえた財政支援を行うことにより、国保の財政基盤の強化を図り、国民皆保険を支える国保を安定化させるとともに、保険料の伸びの抑制などの負担軽減につながるものと考えております。

 負担の公平化の必要性についてのお尋ねがございました。

 高齢化が進展する中、国民皆保険を堅持していくため、負担の公平を図り、医療保険制度の持続可能性を高める必要がございます。

 このため、後期高齢者支援金に全面総報酬割を導入し、負担能力に応じた負担とすることにより、公平な保険料負担の実現を図ります。

 また、入院と在宅療養の公平を図るため、入院時の食事代の見直しを行うこととしております。低所得の方や、難病や小児慢性特定疾病の患者の負担は据え置いて、必要な配慮を行います。

 また、紹介状なしで大病院を受診する方に一定の負担をお願いすることで、かかりつけ医と大病院に係る外来の機能分化をさらに進めてまいります。

 これらを含め、今回の改革の内容について御理解いただけるよう、国民の皆様方に丁寧に説明をしてまいりたいと思っております。

 患者申し出療養についてのお尋ねがございました。

 患者申し出療養は、困難な病気と闘う患者の思いに応えるために、先進的な医療について、患者の申し出を起点として、安全性、有効性を確認しつつ、身近な医療機関で迅速に受けられるようにするものでございます。

 新しい医療技術が保険収載されずに保険外併用療養にとどまり続け、医療格差を広げるのではないかといった御懸念の声があることも承知をしておりますが、患者申し出療養においては、保険収載に向けた実施計画の作成等を医療機関に求め、安全性、有効性等の確認を経た上で、将来的な保険適用につなげていくことにしています。

 予防、健康づくりの取り組みについてのお尋ねがございました。

 今後とも医療費の増大が見込まれる中、予防、健康づくりを推進し、医療費の適正化につなげることは極めて重要でございます。

 このため、今回の医療保険制度改革においては、ヘルスケアポイントの導入など、個人に予防、健康づくりのインセンティブを提供する取り組みを推進するとともに、国保の保険者努力支援制度を創設するなど、予防、健康づくりを含め、医療費適正化に積極的に取り組む保険者、自治体を支援することとしております。

 また、後期高齢者医療において、栄養指導など、高齢者の特性に応じた保健事業を実施することを推進してまいります。(拍手)

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