第166回国会 予算委員会第六分科会 第1号
○古屋(範)分科員 公明党の古屋範子でございます。
本日は、特定外来生物被害防止への取り組みにつきまして、若林大臣にお伺いしてまいります。
本来、日本には生息をしないカミツキガメ、またワニガメ、ワニ、オオトカゲ、大蛇のアナコンダやボア、また毒グモのタランチュラ、サソリなど、逃げたり捨てられたりしたと見られる外来生物の捕獲報道が後を絶たないわけであります。これら野生化した外来生物による、生態系また農業、漁業に及ぼす被害、また遺伝子汚染など、大変に深刻な社会問題となっております。
このような外来生物による問題は、国際的にも重視をされておりますが、生物資源の保護とその持続可能な利用を目的とする生物多様性条約の第八条では、「締約国は、可能な限り、かつ、適当な場合には、」「生態系、生息地若しくは種を脅かす外来種の導入を防止し又はそのような外来種を制御し若しくは撲滅すること。」と定められており、第六回締約国会議で決議されました生態系、生息地及び種を脅かす外来種の影響の予防、導入、影響緩和のための指針原則では、侵略的な外来種の進入の予防、早期発見・早期対応、定着したものの防除の三段階のアプローチが示され、各国が指針に沿った取り組みを行うことを求めております。
こうした世界的な流れに対し、我が国でも、平成十六年六月に、特定外来生物被害防止法、外来生物法が制定されました。
そこで、初めにお伺いいたしますが、その一年後の一昨年六月、特定外来生物被害防止法の施行により、指定された生物の駆除が各地で始まっておりますが、特定外来生物の規制と防除について、その現状を簡潔にお答えいただきたいと思います。
○冨岡政府参考人 平成十七年六月一日の外来生物法の施行後、これまでに、アライグマやオオクチバスなど八十三種類を特定外来生物に指定し、飼養等を規制しております。
また、こういった生物につきまして防除事業を行っておりまして、環境省におきましては、奄美大島及び沖縄島山原地域におけるジャワマングース、西表島のオオヒキガエルなど、環境省といたしまして希少生物等の保護を進める上で重要な地域における防除事業を実施しているケースがございます。このほか、地方公共団体、民間団体におきましても、アライグマやヌートリアなどについて、環境大臣等の確認、認定を受けまして、計画的な防除が行われております。平成十九年二月十九日現在で、合計二百四十件のこういった事業が確認、認定されております。
こういったことで、法に基づきまして防除が着実に進んでいるものと考えております。
以上でございます。
○古屋(範)分科員 マングースを初め、現在、二百四十の特定外来生物の駆除が始められているということでございます。
次に、アライグマ被害の現状についてお伺いをいたします。
北中米原産のアライグマの成獣、体長五十センチほど、三十年前に放映されたアニメ番組で人気を呼びまして、ペットとして輸入されたものが捨てられたり逃げたり、野生化をしております。夜行性で繁殖力も強く、昆虫、魚、鳥や農作物、生ごみを食べ、また物置のスライド扉もあけることができると言われております。
私は現在横須賀に住んでおりますが、近隣の鎌倉市におきまして、十年ほど前からアライグマ被害が報告をされ始めました。富裕層が多く、そのペットがこの地域で野生化したものと見られております。被害は、鎌倉から、温暖で自然豊かな三浦半島を中心に神奈川全域に急速に広がり、神奈川県の農業被害額は、平成十七年度で千六百万円を超えております。大変甚大な被害でございます。三浦半島におきましてもスイカや大根、私も、最近サツマイモを全部食べられたというような話も聞いております。農業被害が大変に深刻でございます。
このアライグマにつきまして、十六年度の農業被害が全国で一億を超えるとも伺っておりますが、全国的なアライグマ被害について農水省にお尋ねをいたします。
○吉田政府参考人 アライグマによる農作物の被害状況についてのお尋ねでございます。
アライグマによります農作物の被害金額でございますが、各都道府県からの報告に基づきまして集計した結果によりますと、平成十七年度でございますが、全国で約一億五千万円となってございます。これは平成十三年度と比べますと、平成十三年度が約三千六百万円でございますので、約四倍というふうに増加をしてございます。
この内訳を見ますと、果樹、野菜が主でございまして、野菜が九千三百万円、果樹が四千五百万円というふうになってございます。
それから、都道府県別を見ますと、一番多いのが北海道でございまして、四千七百万円、続きまして和歌山県が三千百万円、兵庫県が二千八百万円、そして、今委員がおっしゃられました神奈川がこれに次いでおりまして、一千七百万円というふうになってございます。
○古屋(範)分科員 平成十三年度で三千六百万、十七年度で一億五千万、この四年間で四倍、神奈川も多いと思いましたが、さらに多い県があるということでございます。非常に急速に被害が拡大をしているような感がございます。
また、このアライグマの駆除につきまして、横浜国立大学の小池助教授は、分布拡大のシミュレーションを作成しまして、二〇一三年には神奈川全域に分布が広がり、三〇年ごろは富士山、秩父、奥多摩に、百年で関東甲信越全体に広がると報告をされています。小池助教授は、今は被害がない地域でも駆除対策に力を注ぐべきだ、そうしないと分布拡大を食いとめられないと広域対策を訴えられております。
このように、アライグマなど、生息域の拡大が懸念される、全国的な対応が必要な種については、やはり、それぞれの自治体、個別に対応していてもなかなかできない。国が主体となりまして、特定外来生物に指定された鳥獣による生態系への影響や被害の評価方法、また防除手法等につきまして調査研究や技術開発を進めて、各種マニュアルの整備などによりまして地方自治体の取り組みへの積極的な支援を行うべきと考えます。
アライグマについては、これまで、神奈川県内の各市町村が個々に対策に取り組んできたところであります。昨年四月、神奈川県が外来生物法に基づき策定した防除計画が国の適合確認を受けたことから、今後、市町村にはさらに取り組みの強化が求められると思われます。
先ほども指摘いたしましたが、効率的な対策を進めるには、市町村間の連携による広域的な取り組みが必要です。こうした外来生物は、当然、市町村の境を越えてくるわけでございます。市町村間の取り組みに温度差があれば、アライグマを野外から排除できた市町村とできない市町村が生じることとなりまして、再び繁殖が繰り返されるということが容易に想像されます。また、積極的に取り組めば取り組むほど負担が増し、市町村の財政を圧迫するということも懸念されます。
そこで、効率的な取り組みを進めるために、市町村間また自治体間の連携に向けた調整とともに、手厚い財政支援をお願いしたいと思いますが、この点に関しまして大臣政務官にお伺いをいたします。
○北川(知)大臣政務官 ただいま古屋委員の方から御指摘がありましたアライグマによる被害でありますけれども、環境省の方といたしましても把握をしているところがあります。
今御指摘の市町村間の財政支援についてでありますが、国といたしましては、都道府県、市町村が行う外来生物の防除に対し、補助金や交付金等の財政支援措置は有していないところであります。
しかし、広域に分布をして被害を及ぼすおそれがあるアライグマなどに関しましては、効果的な防除方法や効率的な防除体制に係る情報を提供することが必要であるとも認識をいたしておりまして、先ほど局長の方からも話をさせていただきましたけれども、ジャワマングース、オオクチバス等の防除のために、環境省といたしましても、平成十七年度より、地方公共団体と連携をした外来生物の防除事業を実施いたしております。平成十九年度予算案においても三億五千万円を計上しているところであります。
具体的には、北海道、今御指摘の三浦半島を含む関東地域、関西地域でアライグマの防除事業を現在実施いたしております。十九年度におきましても、事業の成果をマニュアルとして取りまとめ、各地で都道府県や市町村が行う防除事業に活用していただくことといたしておりまして、情報やマニュアルの提供を積極的に行っていきたいと考えております。
いずれにいたしましても、効果的、効率的な防除が進むよう、今後ともこれらの取り組みを着実に実施していきたいと考えております。
○古屋(範)分科員 十九年度予算で三億五千万を計上し、さまざまなモデル事業を展開されているということでございます。ぜひとも、国が率先をして防除方法の確立などなど進めていただきたいというふうに考えております。
アライグマの次に、タイワンリスについての質問をしてまいります。
私たちの地元、神奈川県の三浦半島地区、各自治体、さまざまな被害が顕在化しているわけでございます。葉山町におきましては、樹林地帯でタイワンリスによる樹木への被害が深刻化をしております。今後、三浦半島全域にタイワンリスの生息が拡大した場合、農業被害また観光農園被害、地域全体に大きな被害を及ぼす可能性があります。近年、町中における、台風、強風による倒木については、タイワンリスが木の皮をかじり木が枯れてしまったこと、そこに強風があり倒れてしまったのではないかとの声も寄せられております。
私の家にもリスが徘回をしておりまして、かんきつ類があるんですが、全部食べてしまう。もちろん、販売をしているわけではありませんので、全部食べられてしまったねということで終わるんですが。初め一匹と思いましたら、現在、何か複数いるような感じがいたします。また、電話線をリスがかじったというような話もありまして、いろいろな被害が今発生をしております。
しかし、このタイワンリスの生息実態、またその効果的な捕獲方法につきまして、大変情報量も少なく、葉山町におきましても対応に苦慮しているのが現状でございます。
こうした実情にかんがみ、このタイワンリスの生息状況調査の実施、また情報の収集、提供など、必要な対策及び防除実施計画の策定に向けた取り組みをぜひ御検討いただきたいのですが、環境省のお考えをお伺いいたします。
○冨岡政府参考人 タイワンリスにつきましては、かつてペットとしてかなり流通いたしておりまして、それが捨てられたり逃げ出したりして、そういったものが自然の中で暮らすようになってしまったということでございまして、先生御指摘のように、樹木の皮はぎ等の生態系被害が認められることから、平成十七年に特定外来生物に指定しているところでございます。
なお、この実態、駆除方法については必ずしも明らかじゃない点がありますので、環境省におきましては、昨年、長崎県五島市及び壱岐市が行います箱わなによりますタイワンリスの防除事業につきまして、外来生物法に基づく確認を行ったところでございます。
環境省といたしましては、これらの防除事業の実績を初め、タイワンリスの生態や防除手法に係る情報を収集しまして、地方公共団体等に対しましてこれを提供し、ノウハウを広めてまいりたい、かように考えているところでございます。
○古屋(範)分科員 新たな防除方法の開発、ぜひともよろしくお願いいたします。
私の地元の自治体では捕獲のためのおりを貸し出しているようでありまして、私も忙しくて借りには行っていないんですが、そのおりを貸し出して、捕獲したらそれをとりに来るというような方法を今とっているようでありますけれども、このタイワンリスのそうした防除の新たな取り組みについても、ぜひ、何とぞよろしくお願いいたしたいと思います。
次に、環境教育という点につきまして、大臣にお伺いをいたします。
内閣府が外来生物法施行後一年たった昨年の六月から七月にかけて行いました自然の保護と利用に関する世論調査では、外来生物は駆除した方がよいと考えている人が全体の九〇・七%に上りまして、二〇〇一年の調査で駆除した方がよいと答えた人の七三・八%を大きく上回りました。この調査からも外来生物問題に関する国民の理解は進んでいると思いますが、ペットとして飼われていたと思われる外来生物の町中での発見事例が報道されることが依然として後を絶たないわけであります。
日本で広がり続けるこの外来種問題は、例えば、南の空港にはヤシの木が栽培され、どこの海辺であろうとハマナスが植えられ、公園の植物も外来種ばかり、私たちもそれほど違和感を覚えない、この日本人のおおような自然観というものがあるような気もいたします。また、生物の多様性を守るということは生物の種類が単に多い状態であると勘違いされたことにより、外来種の野生化が気にならなくなることすらあると思われます。
しかし、安易にペットを飼って、そして手に余ってそれを捨ててしまう。確かに、外来生物は自分で日本に入ってきたわけでは、飛行機に乗って飛んできたわけではないわけであります。それは、やはり日本人の責任、人間の側に原因があるわけであります。私たち国民一人一人がこの外来生物の問題をみずからの問題ととらえて、主体的に対応していくことが外来生物による問題解決に不可欠であると考えます。
そこで、子供から大人まで、すべての国民に対しまして、環境教育また自然保護教育を本気で再構築することが急がれていると思いますが、大臣のお考えをお伺いいたします。
○若林国務大臣 委員、熱心に事例を挙げながら、外来生物によります地域地域の生活への障害あるいは農業被害などについてお話をいただきました。大変参考にさせていただきたいと思います。
もう既に御説明申し上げていますけれども、この特定外来生物の被害防止法は一昨年の六月に施行になったということでございまして、ようやく今、施行後、各都道府県、市町村を通じまして法の執行管理体制が整いつつあるというような段階でございます。
にもかかわらず、先ほど委員がおっしゃられました、ワニ類だとかカメ類だとかその他の、ちょっとペットとしてどういう感覚かよくわからない、私などわかりませんけれども、非常な多様な珍しい動物がペットとして輸入されております。それらが成長をしていくにつれて管理が手に負えなくなって、これを遺棄するというようなことがあり、それが川や沼などに入っていくということが報じられました。
委員がおっしゃられました、そういう異様なものではなくて、タイワンリスについてもお話がございまして、うちの部局で調べさせていただきましたが、非常に広範に被害が及んでいるということでございますし、アライグマに至っては、お話しの神奈川県を中心にして、関東一円、かなり広くなっております。
そんな状況でございますので、一昨年、環境大臣が国民の皆さん方に、そういう外来生物への取り組みの姿勢として、注意を喚起いたしまして、外来生物の適正な飼育に関して環境大臣が談話を出し、これを周知させるというような努力はいたしました。一昨年九月の三十日でございます。また、局長の談話も昨年七月の二十日に、カミツキガメが野外で発見されるなど、逃げたり捨てたりしたものと思われる外来生物に関する報道が相次いでいることを受けまして、大変憂慮すべき事態だということで、その他の外国産のカブトムシやクワガタなどの甲虫類などにつきましても、これを飼育している方々は最後まで責任を持って飼育してもらいたい、こういうお願いをいたしました。
同時に、外来生物を販売している業者の人たちには、購入をする人たちに、捨てない、逃がさない、そういったマナーをきちっと伝えて、今言った遺棄などによりましてこれが自然界に出ないようにするということに努力をしているところでございますが、なかなかもう、一度広がったものを阻止することは難しい状態にあることは承知いたしております。
基本的には、委員もおっしゃられました環境教育の問題でありまして、家庭で一度飼育している動物は適正にきちっと管理して、最後まで責任を持つんだということを子供たちに家庭でしっかり教えてもらうということ、同時に、動物と親しむというのは大事なことですが、親しむと同時に、学校教育あるいは地域教育でそういうことを、教育を徹底しなきゃいけないというふうに思います。
私は、子供たちのそういう教育について、文部科学省と、自然と人間とのかかわり合いというジャンルの中で、ペット飼育につきましても責任を持たなきゃいけないんだ、そうでないとこれは非常に迷惑をかけることになるんだということを、教科書あるいは副読本などを通じて周知、教育上、教材などを通じて周知できるような、そんなことを協議したいというふうに思っております。
○古屋(範)分科員 大臣より、家庭教育また学校教育での自然環境に対する大切さというような御答弁をいただきまして、私も全く同感でございます。
最後の質問になります。
こうした特定外来生物、この対策というものを一層推進していくために、科学的知見の充実、またそれに基づく適正な種の選定や防除の推進、また法に基づく輸入や飼育等の規制の徹底、先ほどもございました国民全般の意識の向上に向けた普及啓発、それにかかわる関係機関の協力連携した体制整備、あらゆる分野からのさらなる取り組みが必要とされております。
最後に、大臣に外来生物対策推進への御決意をお伺いいたします。
○若林国務大臣 生物多様性の条約がございます。御承知のとおりでございます。
実は、来年五月にドイツのボンでCOP9というものが開催されることになっておりますが、ここで次期の開催地を決めることになっております。我が国は、ぜひ生物多様性の条約締結国の会議、COP10を日本で開きたい、日本で、積極的にこの問題、いろいろなところで取り組んでいただいていますが、手を挙げてこられ、そして内部でその要件をチェックして、名古屋市で開催するということを内々に決めまして、先般、一月十六日の閣議で了解をしまして、立候補をいたしました。国際事務局の方に申し出ているところでございます。
これは、生物多様性の保全というのは大変重要なことでございますし、またこのことを通じて国民一般の皆さん方にも、生物多様性、在来種も含めまして生物との人間の触れ合い方、そしてまた管理をしっかりとしていくということをしっかり決めて、徹底をしていきたいというふうに思っております。
日本は非常にその取り組みについては先進的だという評価を実は国際的に受けておりますので、そういう評価にこたえられるように、しっかりとした、行政面におきましても、普及の面におきましても、こういう国際会議を一応の焦点にしまして、それまで国内で徹底していきたい、こう思っております。
○古屋(範)分科員 では、以上で質問を終わります。どうもありがとうございました。