第166回国会 厚生労働委員会 第22号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 参考人の皆様におかれましては、お忙しいところ国会においでいただきまして、貴重な御意見をいただきましたこと、心から感謝を申し上げる次第でございます。

 まず初めに、佐藤参考人にお伺いをいたします。

 先ほどの意見陳述の中でもおっしゃっていました。初め、政府有識者会議の一員として、このたびの社会保険庁改革に大変御尽力をされてきたということでございます。当初は国の組織としてという方向性だったものが、与党の提案によりまして、このたびの日本年金機構という組織、非公務員型という法案を今回提出したところでございます。

 そのメリットにつきましては、先ほどお述べいただきました。民間のよい面を採用していく、また、能力に応じた人材を採用していく、意識改革、サービスの向上、人事管理等々さまざまなメリットがある、このようにお述べいただきました。こうした民間的な人事評価、また給与体系を取り入れ、民間との人事交流の推進などで、これまでの社会保険庁のいわばぬるま湯的な体質を一掃して、緊張感を持って業務に当たることができ、組織の活性化につながると私自身も考えております。

 繰り返しになりますけれども、非公務員型の組織では、職員の採用、人事評価、処分などに関する裁量の幅が広がり、能力が低く勤務成績の悪い者は長期にわたって抱えておく必要がなくなる、このように考えます。公務員としての手厚い身分保障が、なれ合い的なものになり、不祥事を繰り返す原因になったということも考えますと、非公務員型のメリットは私も非常に大きいと考えております。

 実際に、この法案を私たちは早期に成立させていきたいと考えておりますが、看板のかけかえにならないよう、実効性、現実の上で国民の利便向上、安心、信頼につながるものでなければならないと思いますが、この点に関して御意見ございましたら、お願いいたします。

    〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕

○佐藤参考人 お答えいたします。

 一言だけ申し上げますと、今回の法案による改革は、内と外と両方あると思うんですね。内という話は、これまでの組織、行政組織でございますね、これはほとんど内向けなんですね、先ほども御意見ありましたように。顧客不在なんですよ。お客さんを扱ったことがないんですから、残念ながら公務員の皆さんは。そこで、これを開かれたスタイルにしよう、これが一つなんですね。外から見た場合。今回は、繰り返し問題が生じたものですから、抜本的に、国民の皆さんの目から見ても、本当に、本気で変えるんだな、そういう両面を国民の皆さんにお見せしないと。そういう意味で、看板のかけかえにはならないようにしたい、そういう改革だと存じます。

 以上でございます。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 次に、紀陸参考人にお伺いをいたします。経団連を代表しておいでいただいておりますので、少し年金制度全体についてお伺いをいたしたいと思います。

 このたびの社会保険庁職員の不祥事、また年金保険料の無駄遣い、また加入者情報ののぞき見等々、社会保険庁におきましては、運営上さまざまな問題が明らかとなりまして、国民から厳しい批判を受けております。こうした批判に対しまして、当時、坂口厚生労働大臣、平成十六年の夏から社会保険庁改革に着手をして、改革を主導してまいりました。今回は、与党がリーダーシップをとって取りまとめた法案であるというふうに考えております。不祥事を繰り返し、さまざま批判にさらされてきた社会保険庁、いよいよ解体をされて、新組織として生まれ変わるということでございます。

 一方で、少子高齢化が急速に進行する中で、老後の生活を支える公的年金に、まさに今、国民の関心は非常に高いということが言えると思います。私は、公的年金制度に対する国民の安心、信頼を確保していくために、制度自体が将来にわたって、少子高齢社会であっても、持続可能なものでなくてはならない、その制度を運営する組織が国民から信頼されることが大切であるというふうに考えております。

 公的年金制度、三年前になります。平成十六年度、給付と負担の両面から改革を行い、百年安心の制度に改革を行ったところでございます。私は、将来に向かって国民の信頼にこたえ得る持続可能な制度を構築したというふうに考えております。この年金制度改革について御意見ございましたら、お述べいただきたいと思います。

○紀陸参考人 古屋先生の御質問にお答えさせていただきたいと存じます。

 先生御指摘のとおり、年金の大きな道筋の方向性は、先般の改革によって、さまざまな立場の人たちにとっても見えてきているのではないか、そういうふうに思っております。

 基本的に、持続可能性ということが極めて大事なものでありまして、特に少子高齢化になってくると、支える人がどんどん減ってくる、まさに今まで経験したことのない状況にこれから入っていくわけでありまして、その中で、長期にわたる年金をどうやって維持できるようにしていくか、極めて難しい問題を、先般の改革の中では、その道筋を示した。この難しい問題を、まさに国民に向けてサービスを実現するのが社会保険庁ですから、この社会保険庁がどうやって大きな道筋の遺漏のないところを支えて運用していくか、極めて大事なことだというふうに思っております。

 先ほどのお話のように、坂口元大臣がいろいろと御苦労いただきまして、その後に村瀬長官が民からお見えになられた。相当に意識改革の面では手をつけられて、これからまさに、本当の意味の大改革を詰めるという段階でございまして、意識改革も相当に生じてきてはおりますけれども、さらにいろいろな御議論の中で、身分を変えてというようなことによって、いわば本当の意味の再出発をこれから果たしていこう、そういうような段階、状況にあるのではないかというふうに理解いたしております。

    〔伊藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕

○古屋(範)委員 私も、このたびの社会保険庁改革が、さらに国民の安心にこたえる年金制度を確立するためのものでなければならない、このように考えております。

 次に、井戸参考人にお伺いをいたします。

 社会保険労務士という立場で、国民の側に立ち、また国民の心情に沿った貴重な御意見をいただきました。ありがとうございました。その中で、すばらしい表現というふうにお伺いしたんですが、心地よく保険料を納めてもらう土壌づくりという御意見がございました。また、年金情報の共有化が何よりも大事であるというお話でございました。

 我が党も提案をし、また主張してまいりましたねんきん定期便なんですが、いよいよ実現の運びとなってまいります。このねんきん定期便、お一人お一人に、納付記録ですとかまた見込み額など、誕生日にお知らせが行くということで、井戸参考人がおっしゃいました年金情報の双方の共有化というものにこのねんきん定期便というものがどのような効果があるか。また、それがこのねんきん定期便でかなり達成できるのではないかというふうに考えますが、この点いかがでございましょうか。

○井戸参考人 ねんきん定期便の効果でございますけれども、先ほどお話しさせていただきましたように、すぐにはやはり難しいと思うんです。多分、来られると、私が払った保険料と、今幾ら受け取れるのかという比較をまずされると思うんです。年金は、もう先生方御存じのように賦課方式というものをベースに持っておりますので、本当は考え方がやはり違うんですけれども、損得だけじゃなくて、将来、自分たちが高齢になったときに、自分たちの子供とか孫に今度は支えてもらうんだという、みんなで支え合う社会というので百年安心プランというのも考えられたと思うんですけれども、そういうような効果が、やはり毎年毎年来ることによって、そして数字で実際に見ることによってじわじわと効果が上がってくるものだと思います。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 ねんきん定期便は、私も、その効果、もし時間が多少かかるにしても大変期待をしたいというふうに考えております。

 また、若年層の納付率が非常に低いということで、先ほども年金教育の大切さというお話がございました。実は、私も二十になる息子がおりまして、二十の誕生日には、ともかく年金というものをしっかりと意識させようというふうに私自身もしたところでございますけれども、実際、中学、高校、大学といいましても、こうしたものに触れる機会というものがそれほどないような気がいたしております。

 実際にどのような場で年金教育をしていったらよいか、もしよいアイデアがありましたらお教えいただきたいと思います。

○井戸参考人 中学、高校、大学の方だと、やはり言われている意味というのもはっきりわかられると思いますので、できれば、やはり学校がベースになると思うんですけれども、学校の、そういう教育の場の一環でまずはしていただくということですとか、あるいは、地域で自治会館みたいなものがあると思うんですけれども、そういうところで、私たち社会保険労務士などが行きまして、年金の大切さとか、実際に生活の場で勉強というか理解していただくという場を持っていただくことが非常に大切だと思います。

 これも非常に時間がかかることだと思いますけれども、学校だけでというよりも、地域で、あらゆるところでされたらいいんじゃないかというふうに思います。

○古屋(範)委員 大変参考になる御意見を聞かせていただきましてありがとうございました。

 済みません、続いて井戸参考人にお伺いしたいんですが、老後の生活は年金だけではやはり成り立たないというお話でございまして、それぞれの人生設計に応じた老後のプランというものが必要ではないかというようなことを先ほど言及されていました。私もそのように考えておりまして、国民年金基金というものがございまして、これはなかなかその存在自体も知っている方はまだまだ少なく、また、これを利用している方もまだ少ないという現状でございます。この活用をぜひ進めるべきというふうに考えますが、この点に関してはいかがでございましょうか。

○井戸参考人 今お話がございました国民年金基金ですけれども、国民年金にしか入れない第一号被保険者の上乗せの年金になるんですけれども、やはりまだちょっとPRが行き届いていないのかもしれませんけれども、実際のところ、自営業者等にとりましては、税金のメリットとかもございますし、御自身が決められた老後の設計を、プランをいろいろ練っていける、非常にすぐれたものでございます。そういうものをしっかりやはり理解していただいて、今後自分たちが年金をベースにどうやって生活していきたいのかというシミュレーションを組んでみるというのが非常に大事だと思います。

 こちらの方も、やはりPRに尽きるのではないかというふうに考えております。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 済みません、また佐藤参考人にお伺いをしてまいります。

 このたび、民主党からは、歳入庁法案というものが提出をされております。これも、社会保険庁と国税庁を統合して歳入庁を設置するという、この民主党案につきまして、単に組織が大きくなる、先ほども、その業務内容が非常に違うというようなお話もございましたけれども、かえってガバナンスがきかなくなるのではないか、このように考えております。

 国民年金は、第一号被保険者約二千二百万人のうち、所得税を申告納税している人は推計で約三百五十万人。国民年金と国税では徴収の対象が大きく異なります。また、国民年金は、未納額が最高でも二年分三十万円強という少額多数であり、国税の高額、また脱税、大口また悪質な滞納案件とは非常に質が異なるということが言えると思います。

 この歳入庁案は、社会保険庁職員を公務員のまま残すということにもなっているわけでございます。

 この民主党案につきましては、どのようにお考えになりますでしょうか。

○佐藤参考人 まず、私ども、ちょうど坂口厚生労働大臣が大臣でおありであったときに始まったんですが、それは、例えば、今回の民主党法案のお考えとか、そういういろいろなものを当然頭に置いておりますね、その中から、今の、既にある組織でございますから、白地にかくわけでもないものですから。それから、先ほど既に申し上げたように、少額で多数の債権、しかも長期にわたる管理、保存、これを分けないでということですね、今の状況では。それで一元化した場合、今度は、逆に今のような仕事の内容の実情にちょっと合わない。

 それから、今度は、逆に国税庁の方から見ますと、今、国際化その他で、課税問題も国を越えていろいろ対応しなければいけないもので、多様な専門的課題を抱えておられるんですよ。むしろそれに混乱を起こすかもしれない。それから、給付も入る、こういうことになりますと、なかなか実現が非常に難しいんですね、私どもの頭の中で考えてみましても。

 そういう点から、なかなか今直ちに賛成しかねるということでございます。

○古屋(範)委員 渡部参考人、同じ質問でございます。民主党の歳入庁法案についての御意見を伺いたいと思います。

○渡部参考人 渡部でございます。お答え申し上げます。

 まず、お手元に配りました資料の、先ほどの世界的な徴収体制でございますが、要するに、単なる空理空論じゃなくて、ほとんどの先進諸国はきちんと中央一元化制度を採用して、年金制度民営化国以外は徴収体制の民営化はないという点をよく御理解ください。

 ですから、今の御発言、確かに一理あるんですね。今の参考人も言われましたように、支給まで持っていく、それは、世界にもないことですし、やはり無理があると思います。しかし、徴収体制、これは、これだけ世界の先進諸国すべて、ほとんどの発展途上国も中央一元化しておるという世界の英知を認識する必要があると思うんですね。所得範囲が違うとか、人数が違う、そんなことはすべての国において発生しておることですよ。しかし、ほとんどの先進国はそれをきちんとやっておるということ。

 だから、いかに、根拠として言われた人数が違うとか対象が違う、それは実に無味乾燥でございまして、やはりこの表にある世界の英知をごらんください。もし民営化なんかしたら、さらに天下りのチャンスもふえますよ。

 以上です。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 紀陸参考人にお伺いいたします。

 この日本年金機構では、能力と実績に基づく職員人事の徹底とともに、民間企業へのアウトソーシングの推進などでサービス向上等に努めるということになっております。一年間にわたって行われました市場化テストでも、民間業者が官よりも安いコストで徴収実績を上げたというようなことが実績としては残されております。

 国民サービスの向上につながると思われるアウトソーシングについてのお考えをお伺いしたいと思います。

○紀陸参考人 ただいまの御質問に対してお答えをいたします。

 市場化テストにつきましては、まだ始まったばかりで、実施している場所的な範囲もまだ乏しいということで、これからいろいろな分野でこれをさらに実現していかなければ、チャレンジをしていかなければいけない問題だと思っております。

 基本的に、これからどういう領域で、どういう範囲で、いわゆる外部に向けてのアウトソースをするか、論議を詰めなければいけないことだというふうに思うのでございますが、基本のねらいは、やはり全体で効率をいかに上げられるか。

 どんどんどんどん外に出して、それによって負担が軽くなるかというと、そういう問題でもございませんし、これは民間でも同じですけれども、アウトソースをしたことによって、逆に発注元の方のノウハウがどんどん消えていってしまうというようなことも現実に起こっておりますので、ここの切り分けをどういうふうにするか。それは、どういう仕事をどういう人たちに、あるいはどういうコストでという問題も常に絡んでまいります。

 これは、繰り返しになりますけれども、全体の効率をいかに、お金の面と人の面、それから中におけるいろいろなノウハウの蓄積、そういうものを見ながら取り組んでいかなければならない問題だというふうに思っております。

 でも、そういう仕掛けがないと、やはり運営が沈殿してしまうことになりかねない、そういう危惧が片っ方にはあるというふうに考えております。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。
 時間でございますので、以上で終わります。

 皆様の御意見を参考に、さらに国会審議を進めてまいりたいと思います。ありがとうございました。

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