第190国会 衆議院 厚生労働委員会 15号
○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。
きょうは、参考人の皆様、朝早くから国会においでいただきまして、貴重な御意見をいただきました。心から感謝を申し上げたいと思います。
私たちも、平成十七年成立の障害者自立支援法施行後から今回の総合支援法の改正まで、利用者の方々、また事業者、当事者の方々から一つ一つお声を伺いながら進んでまいりました。特に、利用者負担の大幅な軽減ですとか、また事業者の激変緩和措置など、特別対策、緊急措置も実施をしてきたところでございます。
総合支援法施行後三年の見直しということで、今回、障害者へのさまざまな支援が盛り込まれた改正案が提出をされました。
まず、竹中参考人にお伺いをしたいと思っております。
意見陳述の中でも述べてくださいました、チャレンジドがタックスペイヤーに、納税者にということで、二十五年、これまで続けてこられたということで、私も心から敬意を表したいと思っております。
ICTを使った働き方、テレワークに関しましては、私も、障害者のみならず、子育てをしている親の世代、あるいは家族に介護を抱えている、また地域で活動する、また自己研さん、勉強する、さまざまな人にとって、通勤をしないで済むこの働き方というものが非常に有効であるということで、これまでも普及に努めてきたところでございます。
特に、意見陳述の中で述べられていらっしゃいましたので、まず、法定雇用率、ここのところを改善していく必要がある、そしてまたさらに、クラウドを活用したシステムの基盤整備、ここが重要である、そして、企業においては、こうした障害を持った方々に発注をしていく、ここへのインセンティブをつけていく支援が大事だ、このような御意見だったかと思いますが、そこのところをもう一回確認させていただきたいと思います。
○竹中参考人 御質問ありがとうございます。
まさに今まとめていただいたとおりのことをお話しさせていただきました。
法定雇用率は、そもそも、出発が、ともに働くことが難しい人たちなんだけれども何ポイントは雇ってあげましょうよというような、そういう発想からやはり来ているように思えてしまうんですね。ですから、いろいろな企業の方から御相談があるときも、どんな仕事でもいいんやけれども、ポイントがうちは足りませんねんみたいな御相談みたいな、本当に、その人を、人としてというよりポイント数に換算してしまう結果に、そういう意図の法律ではないんだけれども、結果としてそのようになっている部分があるのが私はとても残念だと思います。
でも、さはさりながら、その法律によってたくさんのチャレンジドの方が雇用されてきたわけですから、これは非常に重要な法律であった。
ただ、今の時代、こういった情報通信を活用することで、通勤が無理であっても、あるいは一日短時間であっても、自分のパフォーマンスの出せるときだけでも働けるというような時代が来た今になって、今のままの法定雇用率の制度でよいのかというところは、ぜひ、きょうお集まりの皆さん方に御一緒に考えていただければうれしいし、そういった法律、制度の中身を変えていくということは、私たち民間、現場で頑張っている人間がなかなかできない、こういうふうに要望を述べたり意見を述べるということしかできませんので、ぜひ皆さんのお力で何とかかなえていただければと思います。
○古屋(範)委員 ありがとうございました。
まずは企業によって法定雇用率を何とか達成しなければというところから出発していると思うんですが、またさらにその先、柔軟な働き方ができるような制度づくりが必要だということを理解いたしました。
続けて竹中参考人にお伺いをしてまいりたいと思います。
今回の改正案の中で、就労定着支援というところが創設をされました。障害を持って働いている方が、仕事を続けていく上でいろいろな課題に直面するんだというふうに思います。そこで、相談、そして課題の把握ですとか、企業等の関係機関の連絡調整、ここで必要な支援が行われるということになりました。
二十五年間、テレワークという在宅の就労ではありますけれども、障害を持った方が働くことについて支援をされてきた中で、就労を定着させていく、この支援についてお考えがあれば伺いたいと思います。
○竹中参考人 在宅で働くことだけを推進しているのではなくて、在宅ででも働けるようにということですので、プロップ・ステーションの組織自身には、通ってきているチャレンジドのスタッフがたくさんいます。先ほども言ったように、二十五年、そういったチャレンジドのみんなと一緒にこのグループをつくったので、精神の障害の方、知的の障害の方、あるいは身体の障害、さまざまなチャレンジドの皆さんと一緒にこの組織自身を運営しているのですね。そうしたときにわかることは、家族が、まず、この子を働かせてやりたいとか、この子が働けると信じることができるかとか、そこのところがすごく大事やなというのを物すごく感じるんですね。
やはり、養護学校の先生方に車椅子で連れられてきて、この子も何かお仕事をと先生一生懸命おっしゃっていただいたんだけれども、お母さんが、横で、いや、この子は無理ですと言われるような経験はすごくたくさんしているんです。でも、現実に、その子が、ゆっくり動く指で、何かかわいい絵を描くのがお好きやったら、それをペンタブレットに持ちかえた途端に、そのイラストデータを使ってすてきなのを描かれた。それがきちっとカレンダー会社なんかで採用していただいて、ペイが入った。その瞬間にお母さん、次の仕事はいつですかと言われたりするぐらい、やはり親御さんもまだまだ夢が見れない時代かなというふうに思うんですね。
ですので、一人一人の人が家族とともに意識を変えて働いていけるようになるという、システムとしても私はこのコンピューターのネットワークというのはすばらしい。それは、通える人も通えない人も、あるいはどんな種類のハンディの方もということで、お考えいただけたらいいかなと思います。
それから、先ほどのクラウドというのは、ちょっとまだまだ御存じのない方も多いかもわからないんですけれども、そういったコンピューターネットワークを集約させて、そこに置いてある情報で全部つながり合いができるというような形で、それをぜひ国家的に、いわゆる職安のシステムとまた別に在宅のお仕事のために構築をしていただく、そしてそれをしっかりと経験のある者たちで運営させていただければなと思っています。
よろしくお願いいたします。
○古屋(範)委員 家族、親も含めた就労定着支援というものが必要だという御意見であったと思います。
次に、大原参考人、竹中参考人、お二人にお伺いしたいと思います。
今回、障害者がひとり暮らしを継続するに当たって、自立生活援助というものが創設をされました。特に、大原参考人も意見陳述の中で、グループホームで生活しなければならない方々もいるけれども、一人で生活したい、自立したい、オーダーメードの支援が必要だ、選択肢をぜひふやしていくことが大事だという意見陳述をなさいました。
そこで、今回の改正案では、グループホームを出てひとり暮らしを希望している障害者の方々に、グループホームのスタッフが定期的に自宅を訪問して支援をする、また相談に応じてサービスを提供していくということを盛り込んでおります。
その自立をして生活をしていく、ここに対してどのような支援がさらに必要か、お二人の参考人にお伺いしたいと思います。
○大原参考人 御質問ありがとうございます。
先生がおっしゃっていただいたように、障害のある方が、共同生活ではない、一人での暮らしというものを実現させていくための今回創設される事業というものは、私ども大変歓迎しておるところです。
この従事者についてですけれども、これはヘルパーに似ている要素もございます。ただ、ヘルパーというのは、家事の援助でしたり、食事の介助でしたり、さまざま、生活上その方が必要とされるものについてヘルパーが提供するものですが、この自立生活援助については、その方が一人で暮らしていくための、例えば調理をどのようにその人が一人でしていくのか、はたまた、その方が一人で暮らしていく上での対外的な関係性をどのように築いていくのか、そういったところで、やはりその人の暮らしを、ある意味、積み立て、組み立てていく立場になりますので、一定の経験や研修期間は必要なのかなというふうに思っております。
そうした観点からも、この方々のひとり暮らしというものを実現する上で、従事者の専門性については今後協議していただきたいというふうに考えております。
以上です。
○竹中参考人 実は、私が仲間たちとプロップ・ステーションを始めた二十数年前というときが、ちょうどアメリカからIL運動、自立運動が入って、全国的にチャレンジドの皆さんの自立活動が大いに広まった。そして、家族と離れて独立をして生活をされ、そこにさまざまなサポートを得ていくというような、介助者の逆にアテンダントのシステムだとかも生み出した側に私もその当時はいたわけですけれども、そうしたことをする中で、アメリカでは、やはり人をちゃんと雇って、自分の介助する人を雇えるという状況がチャレンジドにはあるんだけれども、日本にはそもそもそれがないなということで、全て公的資金だけに頼らなければならなくなるんですね。
だから、そうではなくて、きちっとその人自身が仕事もできるという状況をつくることによって、負担もできるけれども、ちゃんと公的資金と公的システムとあわせてそれがやれる。それもアメリカは先行してやっているわけですけれども、そういう発想法が、今、税金がないから何もできないではなくて、税金が大変なんだけれども、そういう組み合わせをすることによって自立生活を支える方法を真剣に考えていくということは、私は絶対可能だというふうに思っています。
○古屋(範)委員 ありがとうございました。
最後に、加藤参考人にお伺いをしたいと思います。
先ほどの意見陳述の中で、障害を持った子供たちの存在が希薄に位置づけられてはいけない、そうおっしゃいました。私もそのとおりだというふうに思います。多くの選択肢を持っていただき、そして、それも短期で、ショートタームで実行していくということが大事なんだろうと私も思います。
その中で、保育所等訪問支援事業、今回、発達支援を提供するこの保育所等訪問支援事業というものが行われることになっておりますが、ここが拡大、充実をしない、伸びないという課題を御指摘になりました。ここを今後さらに拡大させて、充実させ、より多くの子供たちにこうした支援を行き渡らせるためには何が必要かということをお伺いしたいと思います。
○加藤参考人 ありがとうございます。
先ほど申し上げましたように、この事業というのは、本当に我が国のこれからの障害児施策、障害者施策の基本をなす考え方だと思います。そういう意味で、この事業が一層充実、拡大をしてほしいと願うものです。
そのときに、問題になっているのは、これが契約制度の中で個別給付になっているという問題です。つまり、例えば、幼稚園とか保育所で育ちが気になるというようなことを周りのスタッフ、関係者が気づいたとしても、当事者の親御さんがオーケーを出さない限り、我々は基本的には手が出せない、そういう仕組みになっております。
ですから、ここを何とかしないとということで、今、障害児等療育支援事業という別の事業がありまして、これは、施設給付といいますか、必ずしも個別給付になっていませんので、それと両輪のように組み合わせながらカバーするということが今現在行われていますけれども、ただ、これも各自治体、県によっていろいろです。あったりなかったり、非常に充実していたり、非常に希薄になったりというようなばらつきがあります。そういう意味では、全国津々浦々、どこにいても必要な支援サービスが必要なだけ必要なときに得られる、そういう仕組みをぜひ構築していかないといけないだろうというふうに思います。
それから、やはり一人一人の彼らの育ちの場、生活の場に出向いてということになりますと、移動ロスという問題がどうしても出てくるんですね。その効率の悪さ、ある意味ではコストパフォーマンスの悪さというようなことがどうしても出てきますので、やはりそのことも十分、その給付額に加算するなり見合う単価を出していただくなりしないと、とにかく頑張っても頑張ってもなかなか、頑張れば頑張るほど、赤字と言うとあれですけれども、見合わないという事業になってしまって、現場では本当にじだんだを踏んでいるというのが実情でございます。
それからもう一つは、スタッフですね。先ほども申し上げましたように、やはりそうやって地域に出向いていって、まさにあらゆる子供の育ち状況、あるいはあらゆる子供の生活環境をしっかり受けとめて、本人、あるいは御家族、あるいはその場に生活している機関のスタッフの方たちにも適切な助言なりアドバイスなりをしなければいけない。それがまた重要な役割になるわけですけれども、そのためには、それなりのレベル、パワーを持った人材がどうしても必要になります。そういう意味では、やはりそれに見合う単価が出てこないと、極端な場合、ビギナーのスタッフではこの任は到底務まりませんので、その辺の対策が必要かと思います。
○古屋(範)委員 本日の皆様の貴重な御意見、改正案の議論にさらに生かしてまいります。
ありがとうございました。