第211回国会 衆議院 厚生労働委員会-12号

○古屋(範)委員 おはようございます。公明党の古屋範子でございます。

 今日はアレルギー疾患について質問してまいりますので、よろしくお願いいたします。

 本年は、過去十年で最大限の杉花粉が飛散をしているということでございます。多くの国民が花粉症に悩まされている中で、先般、岸田総理は、我が国の社会問題とおっしゃられて、国を挙げて花粉症対策に取り組む意欲を示されまして、花粉症への関心や意識が高まりました。十四日、花粉症対策に関する関係閣僚会議が開催をされました。総理の方から、六月までに、来年の飛散期や今後十年を視野に入れた対策の全体像をまとめるように指示が出されたところでございます。発生源となっている杉の伐採、植え替え、スーパーコンピューター、AIを活用した花粉の飛散予測の改善、治療法の開発などの対策が検討されることとなっております。

 私も、今回、林野庁の方から、杉花粉についてお伺いをしてみました。現在、我が国の杉人工林は全国で約四百四十万ヘクタールであるということで、植えてからだんだんと花粉が飛散をしてくる。伐採対象となるのは五十年を超えたものということでございます。これが五〇%以上となっている状況だそうでございます。花粉の少ない苗木というものの生産量は五割に達したんですけれども、この花粉の飛散が少ない苗木の植え替えというのは、全体の今一%未満ということなんですね。ですので、これを本当に全部植え替えるというのも、気が遠くなるような話であります。

 厚労省の方からも、花粉症の有病率は、二〇一九年時点では、花粉症全体で四二・五%で、杉花粉症で三八%ということで、十年間で一〇%以上増加をしているということでございます。花粉症を含むアレルギー性鼻炎の医療費というのは、最近のデータで、保険診療で約三千六百億円かかっているということなんですね。市販薬では約四百億円でございます。

 杉花粉の方は、今、花粉量の少ない杉に植え替えが始まっているということなんですが、杉以外の花粉症というのも多くありまして、これはまだ、そういう品種は品種改良している最中ということで、やはり植え替えということからアプローチをしていくというのはかなり長期間かかるということが分かります。やはり医療の面でこの対策を講じていくというのが当面一番重要だというふうに考えます。

 公明党におきましても、一九九九年に党内にアレルギー疾患の対策プロジェクトチームを設置をいたしました。私も、二〇〇三年初当選なんですが、その前に、地元の神奈川におきまして、アレルギー疾患に関する約十四万人に対する調査を行いまして、それを持って国会に参りました。学校で対応しましたガイドラインを策定したり、また、アナフィラキシーを起こしたときに注射をするエピペン、この保険適用も進めてまいりました。基本法が必要だと考えまして、二〇〇八年に法案作成に着手をいたしまして、その後、提出、廃案、修正、再提出ということで、苦節六年かかりまして、当時のこの厚生労働委員会の各党の皆様に御理解をいただきまして、二〇一四年に全会一致でこの法律を成立させることができました。

 最近では、花粉症になって果物アレルギーが発症をする、ぜんそくと合併症を生ずる、注意力が低下するなど、たかが花粉症と言えない状況なんですね。アレルギー疾患の標準の治療の徹底、よりよい治療の研究、ガイドラインの普及など、日本アレルギー学会などと連携をして、効果的な意味のある予算の使い方を考えていただきたいということを強く申し上げたいと思っております。

 加藤大臣に、まず、このアレルギー疾患対策全般の取組について御所見をお伺いいたします。

○加藤国務大臣 今、古屋委員からもお話がありました、我が国において、花粉症、本当に多くの方がそれに悩まれ、あるいは大変御苦労いただいている、ある意味では社会的な課題だと言ってもいいんだろうと思います。

 それは、ある意味ではアレルギー疾患ということになるわけでありますが、アレルギー疾患を有する方々が安心して生活できる社会を構築していくことも必要だと考えており、厚労省では、平成二十六年に制定されたアレルギー疾患対策基本法に基づき、アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針を策定をさせていただきました。

 その中では、例えば、関係学会と連携した診療ガイドラインの策定、治療法に関する研究の推進、アレルギーポータルというウェブサイトを通じた治療法や医療機関情報等の情報発信、アレルギー疾患に対する医療提供体制の整備、医療従事者等に対する研修会の実施等に取り組んでいるところでございます。

 さらに、本年度からは、患者やその家族が安心して仕事の継続や復職に臨めるよう、都道府県アレルギー疾患医療拠点病院に両立支援コーディネーターを配置をし、治療と仕事の両立を支援するためのモデル事業を開始する予定としております。

 厚労省が中心となりまして、関係省庁、自治体、関係学会とも連携し、アレルギー対策の充実に努めてまいります。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 いわば国民病とも言われる花粉症を含むアレルギー疾患に対しまして、是非、大臣のリーダーシップで強力な対策を進めていただくようにお願いをしたいと思っております。

 次に、成人のアレルギー患者増加の現状についてお伺いをしてまいりたいと思っております。

 今、成人のアレルギー患者の増加が注目をされておりまして、昨年の三月なんですが、今大臣も触れられましたアレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針が改正をされました。ここにも、国は、アレルギー疾患を有する者が、居住する地域や年代にかかわらず、適切なアレルギー疾患医療や相談体制を受けられるよう、小児期のみならず移行期、成人期のアレルギー診療についても実態調査を行うよう努めるとともに、アレルギー疾患医療提供体制の在り方に関する検討会における検討結果に基づいた体制を整備するということが盛り込まれました。

 そこで、まず、成人のアレルギー患者増加の現状についてお伺いをしたいと思います。

○佐原政府参考人 お答えいたします。

 国が実施する患者調査によりますと、例えば、アレルギー性鼻炎、ぜんそく、アトピー性鼻炎の二十歳以上の推計患者数の合計は、平成二十年は百三・七万人である一方、これは調査方法の変更に留意する必要がありますけれども、令和二年は三百五・五万人となっておりまして、成人のアレルギー患者の総数は増加傾向にあると認識しております。

○古屋(範)委員 平成二十年から令和二年を比較しますと約三倍に増えているということでありまして、成人のアレルギー疾患対策というものが今重要なのではないかというふうに思っております。

 そこで、今、成人から発症する大人の食物アレルギーなんですけれども、成人の十人に一人に症状があるというふうにも言われております。

 食物アレルギーというのは、子供の頃に発症するというイメージがございます。実は私の孫も、生まれてからすぐ卵のアレルギーがありまして、私もこういう政策をやっているものですから、アレルギー学会の認定医、専門医の治療を受けた方がいいんじゃないかということをアドバイスしまして、その専門医の指示の下に少しずつ卵を食べる治療を行ってまいりまして、小学生ですけれども、今ではもう本当にオムライスとかを平気で食べるくらい卵のアレルギーがなくなりました。

 この大人になって初めて発症するケースなんですけれども、まれに深刻なアナフィラキシーを起こすこともあって注意が必要です。子供は卵、牛乳、小麦などが多いんですが、大人は、果物、野菜、小麦、エビ、カニ、肉、納豆などでも、発症の原因となる食べ物が多種多様であります。花粉症の人は注意が必要で、花粉の種類によって交差反応を起こすとも言われております。

 今日、皆様に資料を配付させていただいておりますが、一の1なんですけれども、アレルギー疾患に関する検査の実施状況を見ますと、成人の食物経口負荷試験を実施できない、できるが実施していない医療機関が、外来では五五%、また入院では五一%ありまして、小児の半分しか実施をされていないということが見て取れます。

 その大きな理由の一つとして考えられるのが、やはり診療報酬がついていないということなんですね。小児の方に関しましては、私からも厚生労働省に令和四年度診療報酬改定に向けて要望を出させていただきまして、九歳未満、年二回だったのが、今、十六歳未満、年三回まで保険適用となりました。感謝をしております。ただ、年齢制限が撤廃をされておりません。

 そこで、成人の食物アレルギー、先ほども、増加している、また、小児期から有する食物アレルギー患者が成人となっている、全年齢で木の実アレルギーが急増していることなどを考えますと、是非、全国の医療機関が成人に関しても進んで食物負荷試験を行うことができるよう、年齢制限を撤廃すべきだというふうに思います。厚労省の考えをお伺いいたします。

○伊原政府参考人 お答えいたします。

 小児に対する食物負荷試験につきましては、小児食物アレルギー負荷検査としまして診療報酬上の評価を行ってまいりました。先ほど先生から御指摘いただきましたように、昨年の診療報酬改定におきまして、関係学会からの御提案も踏まえまして、対象患者を九歳未満から十六歳未満に拡大したところでございます。

 この検査につきましては、小児患者へ実施する臨床的意義に加えまして、検査実施に当たっての医療従事者の業務負荷、それから、検査前後のケア、重篤なアレルギー反応に対する対応、こうしたことを評価しているところでございます。

 それを成人症例に対する食物負荷試験についても新たに評価すべきという御指摘でございますが、まさに、今後、関係学会から御提案があった場合には、臨床的有用性や安全性等に関するデータに基づきまして中央社会保険医療協議会において検討していくことになると考えてございます。

○古屋(範)委員 是非、次期診療報酬改定、この成人における食物経口負荷試験、診療報酬に加えていただきたいことを改めて要望しておきたいと思います。

 それから、医療機関と拠点病院との連携体制についてお伺いをしてまいります。

 私も、四十七都道府県にアレルギー疾患の拠点病院を整備するということを取り組んでまいりまして、やっと四十七都道府県でこれが整備をされました。

 成人のアレルギー疾患に関しましては、移行期、成人期のアレルギー診療の現状、医療提供体制が十分ではないということが指摘をされております。地域によってはアレルギー専門医が非常に少ない、専門医にかかれない患者が多くいます。成人アレルギーを専門に診る医師がいないため、今後どうすればいいのか全く分からない、実際、このような声が届いてまいります。

 そこで、資料をお配りしておりますけれども、一の2、二〇二二年アレルギー疾患に関する地域医療現状調査によりますと、内科、小児科、皮膚科、耳鼻咽喉科、眼科を有する病院にもかかわらず、アレルギー疾患患者の診察状況というのは、成人のアレルギー疾患を原則診療していないという割合が小児より高く、成人に対する診療が充足していないことがうかがえます。

 また、拠点病院との連携を問うたときにも、都道府県拠点病院に患者を紹介しているかということに対しては、成人患者の半数以上が紹介をされていないわけであります。

 拠点病院は分かるけれども、どの医師が何の治療をしているのか分からないから紹介できない、専門家に送るケースが明確でないため意識していない、紹介するタイミングが分からないなどとの声が聞こえてまいります。

 そこで、成人期に対する診療連携が進むように、地域医療機関と、それから診療連携時の患者紹介、逆紹介の基準を明確にすべきなど、更にこの連携を密にしていく必要があるのではないかと思っております。また、どこに住んでいても、内科、小児科、皮膚科、耳鼻科、眼科、この五科を基本領域とした専門医を一人でも多く養成していくべきというふうに考えます。これについての対応を伺いたいと思います。

○佐原政府参考人 お答えいたします。

 拠点病院と地域の医療機関の連携について御質問がありました。

 アレルギー疾患医療提供体制につきましては、国で二つの中心拠点病院、それから全都道府県で七十八の都道府県拠点病院を整備しておりまして、委員御指摘のとおり、これらの医療機関が地域の医療機関と連携していくことは重要であると認識をしております。

 具体的な連携としては、これらのアレルギー専門の医療機関が地域の医療機関と連携して、診断が困難な症例や、あるいは標準的治療では病状が安定しない重症及び難治性アレルギー疾患の患者の診断や、それから相談支援に当たるとともに、研修会の実施等を通じまして地域の医療機関における医療の質の向上を図ることで、患者が居住する地域にかかわらず、適切な医療や相談支援を受けられる体制を整備しているところでございます。

 また、御指摘のアレルギーの専門医につきましては、これは国の指針で、アレルギー疾患医療は、診療科が内科、皮膚科、耳鼻咽喉科、眼科、小児科等、多岐にわたるとされております。厚生労働省としても、アレルギー疾患対策を推進する上で、これらの診療科における人材育成や相互の連携が重要と認識していることから、関係学会とも連携しつつ、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

○古屋(範)委員 せっかく都道府県拠点病院ができましたので、身近な医療機関でなかなか治らない、こういう患者を是非とも紹介をしていく、こういう体制をつくっていただきたいと思っております。

 最後の質問になろうかと思います。自治体への支援についてお伺いしてまいります。

 資料裏側、二の1なんですが、こうした意見交換の場で聞こえてきた声ということで、県のアレルギー疾患医療連絡協議会を開催していないという県が四県もありました。また、核となるアレルギー専門医がいないので協議会を開催できない。あるいは、ほとんどの県で一人の担当者がアレルギー疾患対策を担っていて他業務との兼務をしていた。全く異なる分野から異動し、ゼロからスタートという方もいたということでございます。

 改正された指針でも、自主的、主体的にその地域の特性に応じた施策を策定するということが強調されております。アレルギーを考える母の会が、昨年、十三県で調査をして、このような結果が出てまいりました。ですので、国としては、情報提供だけではなくて、各自治体、担当者同士の意見交換などの場を通じて、高い意識と豊富な知識を持てるよう、担当者の交流などの機会をつくって、施策を立案、推進できる、こうした仕組みを構築していただきたいと思っております。

 この自治体への支援について、最後、お伺いをしたいと思います。

○佐原政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、各自治体の担当者がアレルギー疾患について十分な知識を習得しまして様々な対策を推進していくことは極めて重要であると考えております。

 このため、厚生労働省においては、平成三十年度より、毎年、全国拠点病院の連絡会議を開催しまして、中心拠点病院や都道府県拠点病院での取組について情報共有を行っておりますが、この際に、各都道府県における行政としての取組を推進するためにも、令和三年度からは、都道府県のアレルギー疾患対策担当者にも連絡会議に出席をしていただいているところであります。

 また、令和四年度から、都道府県のアレルギー疾患対策の担当者が他の自治体の取組に関する情報等に容易にアクセスできるように、日本アレルギー学会と連携して運用しておりますウェブサイトであるアレルギーポータルの中で、各都道府県のアレルギー疾患に関するサイトをまとめたページを公表しております。

 さらに、同じく令和四年度から、自治体におけるアレルギー疾患対策の中心的な役割を担う人材を育成するために、国立保健医療科学院において保健師等を対象とする従事者研修を開始したところであります。

 これらの取組によりまして、引き続き、自治体のニーズを踏まえつつ支援を行ってまいりたいと考えております。

○古屋(範)委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

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