第185回国会 衆議院 本会議-6号

○古屋範子君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました、持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律案について質問いたします。(拍手)

 社会保障と税の一体改革は、当時与党であった民主党、そして自民党、公明党の三党がその必要性を共有し、修正協議を経て、昨年、税制抜本改革法、年金改革関連法、子ども・子育て改革関連法が成立し、改革が動き出しました。

 あわせて、議員立法として、社会保障制度改革推進法が成立。同法に基づいて設置された社会保障制度改革国民会議における精力的な議論の結果、本年八月に、社会保障改革の道筋としての報告書が取りまとめられました。議題となっているプログラム法案は、同報告書をベースにしつつ、今後進めるべき改革の方向性と実施時期等を明確にしたものであり、着実に改革を前に進める上で極めて重要な法律であります。

 逆に言えば、本法案の成立とそれに基づく改革が実行に移されなければ、社会保障と税の一体改革は完結しません。

 本プログラム法案の意義について、甘利一体改革担当大臣の答弁を求めます。

 消費税の財源は、税制抜本改革法において、現行地方消費税分を除き、年金、医療、介護、子育て支援等の社会保障に全て充てられることとなっています。また、引き上げ分のうち、消費税一%相当分は社会保障の充実に、残り四%は基礎年金国庫負担割合二分の一への恒久的な引き上げなどを含めた社会保障の安定化に充てられることが確認されています。

 社会保障の充実については、政府によれば、満年度ベースで、合計二・八兆円程度となっています。

 うち、子ども・子育て支援で〇・七兆円程度、年金で〇・六兆円程度が充当されることが、関連法の成立等で確定しています。

 また、医療・介護分野は一・五兆円程度ですが、どのような施策の充実を検討しているのか、厚生労働大臣、わかりやすく説明をしてください。

 以下、法案に基づき、ポイントを絞って質問します。

 法案では、自助自立という視点が明文化され、そのための環境整備に努める旨が規定されています。

 みずからが働いてみずからを支える自助はもちろん基本として重要ですが、自助自立を強調することで共助、公助が相対的に縮小するのではないかとの懸念もあります。

 自助、共助、公助のあり方を含めた社会保障のあるべき姿について、一体改革担当大臣の答弁を求めます。

 法案では、講ずべき社会保障制度改革の検討項目と実施時期及び法案の国会提出時期のめどが明記をされています。

 今後、医療や介護、難病対策などの個別施策の改革の具体的な内容が検討され、工程表に沿って具体化されることになりますが、財源の確保も含め、工程表どおり確実に実行に移していくべきと考えますが、一体改革担当大臣の決意を求めます。

 ちょうど一カ月前、総理は、消費税率八%への引き上げを決定しました。同時に、簡素な給付措置を初めとする低所得者対策等も決めましたが、これらは一時的な措置であり、他方で、社会保障制度における恒久的な低所得者対策も重要です。

 法案には、国保や後期高齢者医療及び介護の保険料について低所得者の負担軽減措置を講じる旨を規定していますが、社会保障の充実における低所得者対策について、田村厚生労働大臣の答弁を求めます。

 法案では、新たに、総理を本部長とする社会保障制度改革推進本部と有識者等から構成をされる社会保障制度改革推進会議を設置することとしています。

 特に、推進会議は、従来の国民会議の後継組織として、改革の進捗状況を把握し、さらに、二〇二五年を見据えて総合的に検討するとしていますが、この趣旨は、本法案による対応以後の制度改革について議論を行うということでしょうか。推進本部との位置づけの違いも含め、一体改革担当大臣の答弁を求めます。

 医療及び介護について伺います。

 日本の医療制度は、世界に誇る皆保険制度を含め、世界的に高い水準にあるものの、一方、現場では、救急医療のあり方、医師、看護師等のマンパワーの不足、特に地方での医師不足など、課題は多岐にわたります。

 特に、少子高齢化の進展による医療ニーズの変化と医療提供体制のミスマッチが解消できなければ、国民医療を守れないだけではなく、医療全体の非効率化をさらに拡大させてしまいます。介護との連携を含めた抜本的な改革が不可欠です。

 医療改革は、平成三十年の次期医療計画を待つことなく改革を急ぐべきと考えますが、厚生労働大臣の答弁を求めます。

 また、皆保険を支える医療保険財政基盤の安定化、特に、国民健康保険の改革は避けられません。公費による支援を拡充しつつ、財政運営を都道府県化していく等の改革の方向性に沿い、見直しを進めていくべきです。

 しかし、公費の投入が少ない、都道府県への運営移行によって域内の保険料が統一されれば保険料が上昇する市町村が生じるなど、懸念の声も上がっております。

 いずれにしても、今後の地方自治に重要な影響を及ぼす改革であることから、国保の担い手である地方自治体と十分に協議を行って進めることが重要と考えますが、厚生労働大臣の答弁を求めます。

 あわせて、保険料の賦課徴収、保健事業の実施等における都道府県と市町村との役割分担についての見解もお聞かせください。

 被用者保険である協会けんぽも、財政的には極めて厳しい状況にあります。改正健康保険法附則、すなわち、協会けんぽの国庫補助率の見直しの検討規定も踏まえつつ、適切な対応が必要と考えますが、厚生労働大臣の答弁を求めます。

 医療制度改革と介護保険制度の見直しは、地域における医療と介護の連携が強く求められている中で、一体不可分であります。中でも、地域包括ケアシステムの確立が極めて重要となってきますが、法案にあるとおり、地域の実情に応じて、高齢者が、可能な限り、住みなれた地域で、その有する能力に応じ、自立した日常生活を営むことができるようにすることが欠かせません。

 地方自治体はもとより、患者や要介護者、家族の意思を尊重した環境づくりが重要と考えますが、厚生労働大臣の答弁を求めます。

 関連して、認知症対策については、地域における早期診断、治療、ケア、相談など、総合的な支援体制の充実を図るべきであり、特に、認知症デイサービスやショートステイの充実、訪問看護の強化など、地域ケアの充実が必要と考えますが、厚生労働大臣の答弁を求めます。

 子ども・子育て支援については、総理のリーダーシップもあり、待機児童解消加速化プランを初め、前倒しで整備が進んでおり、高く評価します。今後、追加の財源も含め、地方自治体など関係者との調整を進めながら準備に万全を期すよう、強く求めます。森少子化担当大臣の答弁を求めます。

 次世代育成支援対策推進法は、次世代育成支援のための行動計画の策定を義務づけることにより、ワーク・ライフ・バランス、仕事と子育ての両立に一定の成果を上げてきました。しかし、他方で、認定取得のインセンティブ・メリットに乏しく、広がりに欠ける面があることも否めません。

 今後の法律延長の検討に当たり、例えば、同法に基づく企業への税制優遇制度の拡充などを検討すべきと考えますが、厚生労働大臣の答弁を求めます。

 そのほか、難病対策について、公平かつ安定的な制度が確立する方向で抜本改革がなされることは、高く評価をいたします。

 最後に、一言申し上げます。

 将来の子供たちに安心の社会保障制度を残していくことが私たちの使命です。

 特に、今般のプログラム法案は、自民、公明、民主の三党合意で策定した改革推進法に基づき設置された国民会議の審議の結果等を踏まえて取りまとめたものです。また、先般、引き続き、当面の社会保障制度の充実のあり方について、三党で協議することにもなりました。

 こうした経緯に鑑み、ぜひ、民主党には、真摯な議論の上、本法案に賛成され、ともに国民に対する責任を果たしていかれるよう強く要望し、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣甘利明君登壇〕

○国務大臣(甘利明君) 四点の御質問であります。

 まず、本法案の意義についてのお尋ねがありました。

 社会保障・税一体改革につきましては、自民、公明、民主の三党で進めてきた経緯がありまして、今回提出をいたしました法案につきましても、三党で取りまとめた社会保障制度改革推進法や、それに基づき設置をされました社会保障制度改革国民会議の審議の結果等を踏まえて取りまとめられたものであります。

 この法案は、今回の消費税率引き上げによりまして必要な財源を確保しつつ実施する社会保障制度改革の全体像や進め方を明らかにし、受益と負担の均衡がとれた持続可能な制度を確立するためのものでありまして、社会保障・税一体改革を推進する上で、重要な法案であります。

 次に、自助、共助、公助のあり方を含めた社会保障のあるべき姿についてのお尋ねであります。

 社会保障におきまして、共助と公助がセーフティーネットとしてしっかりと役割を果たすためにも、自助自立を基本とすることが大事だと思います。その上で、共助と公助を組み合わせ、弱い立場の人にはしっかりと援助の手を差し伸べることが重要であります。

 こうした考え方のもとに、少子高齢化の進展、雇用慣行や家族形態の変化など、社会経済情勢の変化に応じて、自助、共助及び公助を最も適切に組み合わせながら、受益と負担の均衡がとれた持続的な社会保障制度を確立することが重要だと考えております。

 次に、社会保障制度改革の着実な実施についてお尋ねがありました。

 受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度を確立するためには、必要な財源を確保しつつ、今回の法案に盛り込まれた改革の全体像及び進め方に基づき、改革を着実に実現していくことが重要であると考えております。

 このために、本法案では、総理及び関係閣僚により構成をされる社会保障制度改革推進本部を内閣に設置いたしまして、総理のリーダーシップのもと、改革を総合的かつ計画的に推進するための取り組みやフォローアップを行うなど、改革を着実に進めることといたしております。

 最後に、社会保障制度改革推進会議の設置の趣旨についてお尋ねがありました。

 内閣に設置をすることとしている、有識者から成る社会保障制度改革推進会議におきましては、本法案に盛り込まれた当面講ずべき改革の進捗状況を把握しながら、いわゆる団塊の世代が全て七十五歳以上となる二〇二五年を展望しつつ、中長期的な改革について総合的に検討することとしております。

 また、総理及び関係閣僚により構成をされる社会保障制度改革推進本部におきましては、当面講ずるべき改革を円滑に推進するとともに、改革推進会議の審議の結果等を踏まえて対応を検討するなど連携もとりながら、社会保障制度改革を総合的かつ集中的に推進することといたしております。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣田村憲久君登壇〕

○国務大臣(田村憲久君) 古屋範子議員からは、八問ほど頂戴いたしました。

 まず、医療・介護分野の充実策についてのお尋ねでございますけれども、税制抜本改革法に沿って消費税率が一〇%に引き上げられ、増収分が満年度化した場合、五%引き上げ分の十四兆円程度のうち、二・八兆円程度を社会保障の充実に向けることといたしております。

 医療・介護分野については、このうち一・五兆円程度を充てることといたしておるわけでありますけれども、病床機能の分化、連携による、入院期間の短縮を通じた早期社会復帰の実現や、受け皿となる地域の病床、在宅医療、介護の充実を進めるほか、国保や後期高齢者医療制度、介護保険の低所得者などの保険料負担の軽減や、低所得者等に係る高額療養費の上限額の引き下げを図ります。

 また、難病、小児慢性特定疾患に係る公平かつ安定的な医療費助成制度を確立し、その対象となる疾患の拡大に取り組んでまいります。

 次に、低所得者対策についてお尋ねがございました。

 プログラム法案の中で、特に低所得者対策を念頭に置いたものとして、国保や後期高齢者医療の低所得者の保険料負担の軽減、介護保険の第一号被保険者の保険料負担に係る低所得者の負担の軽減、さらには、低所得者等に係る高額療養費の上限額の引き下げ、低所得高齢者等への年金生活者支援給付金の支給などがあります。重複したところは、お許しをいただきたいと思います。

 これらの取り組みをしっかりと推進することで、国民が安心できる社会保障制度を構築してまいります。

 次に、医療改革についてお尋ねをいただきました。

 少子高齢化の進展に伴う疾病構造の変化に対応し、住みなれた地域で、必要な医療・介護サービスを受けながら、継続して生活を送ることができる環境の整備が必要となってきております。

 本法案においても、地域の医療ニーズに対応するため、病床機能の分化、連携を通じた医療提供体制の改革と地域包括ケアシステムの構築を一体的に行うこと、地域における医療従事者の確保や勤務環境の改善を講じることについて検討する旨が規定されております。

 本法案の規定に基づき、医療提供体制の改革については、次期通常国会に必要な法案を提出できるよう、検討を進めておるところでございます。

 次に、国民健康保険の保険者、運営等のあり方についてのお尋ねがありました。

 国民健康保険については、財政支援の充実等により、財政上の構造的な問題を解決することとした上で、財政運営を初めとして都道府県が担うことを基本としつつ、保険料の賦課徴収、保健事業の実施等に関する市町村の役割が積極的に果たされるよう、都道府県そして市町村との適切な役割分担について検討をしてまいります。

 国民健康保険の保険者、運営等のあり方は、地方自治に重要な影響を及ぼすものであり、今後、保険料設定のあり方も含め、地方団体と十分に協議を行い、御意見を伺いながら対応してまいりたいと考えております。

 続きまして、協会けんぽの国庫補助率についてのお尋ねがございました。

 協会けんぽは、みずからは健康保険組合の設立が困難である中小零細企業の労働者とその家族が加入できるよう設立された保険者であり、その財政基盤の安定化は重要な課題でございます。

 このため、協会けんぽへの財政支援については、前通常国会で成立した健康保険法等の一部を改正する法律により、国庫補助率を一三%から一六・四%に引き上げる等の措置を講じたところでございます。同法の附則において、今後の協会けんぽへの国庫補助のあり方についての検討規定が盛り込まれており、これに沿って社会保障審議会医療保険部会等においても検討していくことになると考えております。

 次に、地域包括ケアシステムの構築についてお尋ねがございました。

 国民の多くは在宅での介護を希望し、また、ひとり暮らし高齢者や認知症高齢者等が増加する中で、在宅医療・介護を充実させ、地域包括ケアシステムの構築を推進することが重要でございます。

 このため、在宅の重度の要介護高齢者も含め、高齢者ができ得る限り地域で暮らし続けられるよう、病床機能の分化、連携を図りつつ、在宅医療や二十四時間対応のサービスの推進、医療、介護連携の強化などを図ることが必要であり、厚生労働省といたしましても、国民の期待に応えられるよう、取り組みを進めてまいりたいと考えております。

 次に、認知症施策についてお尋ねがございました。

 認知症施策の推進に当たっては、早期診断、治療、ケア、相談など、総合的な支援体制が重要と考えております。

 このため、厚生労働省では、認知症の方ができる限り住みなれた地域のよい環境で安心して暮らし続けることができるよう、認知症初期集中支援チームの創設による早期支援や、また、地域での生活を支えるためのさまざまな在宅サービスの充実などを盛り込んだ認知症施策推進五カ年計画を策定しており、今後とも、同計画の着実な推進に努めてまいりたいと考えております。

 最後に、次世代育成支援対策推進法に基づく企業への税制優遇制度についてのお尋ねがございました。

 次世代育成支援対策推進法の延長につきましては、本年十月一日に決定した、成長戦略の当面の実行方針を受け、次期通常国会への改正法案提出を目指し、十月より、労働政策審議会で議論を開始したところでございます。

 御指摘のとおり、現在、次世代育成支援対策推進法に基づく認定制度に対する税制上の優遇措置があり、これは平成二十五年度までの措置とされているところでありますが、引き続き、税制上の優遇措置を活用しながら、仕事と家庭の両立を支援する環境を整備していく必要があると考えており、平成二十六年度税制改正要望を行っているところでございます。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣森まさこ君登壇〕

○国務大臣(森まさこ君) 子ども・子育て支援についてのお尋ねがありました。

 昨年八月に成立した子ども・子育て関連三法に基づき、早ければ平成二十七年四月からの本格施行に向けて、現在、子ども・子育て支援新制度の実施に必要な各種基準などについて、鋭意検討、準備を進めております。

 また、政府では、待機児童の解消に向けて、新制度の施行を待たず、待機児童解消加速化プランの取り組みを推進しているところです。

 これらに必要な財源については、追加財源を含め、しっかりと確保できるよう取り組んでまいります。

 また、新制度の円滑な実施に向けて、子ども・子育て会議等において、地方自治体を初め関係者の御意見を丁寧に伺いつつ、十分に調整を図りながら、地域の多様なニーズに応えて、子育て支援が充実していくよう万全を期してまいります。(拍手)

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