第198回国会 衆議院 予算委員会-4号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 本日は、認知症に関して質問してまいります。

 この認知症に関しまして、私、総理に、きょうが三度目の質問をさせていただくことになります。

 二〇一四年、私は、高齢化率の高い我が国にあって、国を挙げてこの問題に取り組む国家戦略が必要だということを総理に申し上げました。そして翌年、一五年に、認知症施策の総合戦略、新オレンジプランを策定されました。さらに、私は同年、この根幹となる基本法をつくるべきだということを主張いたしました。その後、私も厚生労働副大臣を務めさせていただいたときに、この分野、特に力を入れて取り組んでまいりました。

 そして、二〇一七年、公明党内に認知症対策の本部を立ち上げまして、更に精力的に有識者また認知症の方当事者の声を聞く、あるいは精力的に現場に足を運び、提言をつくってまいりました。そして、一七年十二月、総合的な認知症施策の推進に向けた提言、これを菅官房長官に提出をさせていただきました。

 この一番目に掲げましたのが、基本法の成立でございます。この基本法を作成してまいりまして、このほど法案が完成をいたしました。このような内容になっております。

 認知症の人が尊厳を保持しつつ暮らせる社会を構築していく、これを目的としております。そして、基本理念は、認知症の人や家族が、居住地域に関係なく、当事者の立場に立った支援を受けられるよう推進していく。また、教育、地域づくり、保健、医療、福祉、雇用等の関連分野における総合的な取組として推進をする。国、地方公共団体、事業者、国民の責務も規定をいたしました。そして、普及のために、認知症の日、月間なども盛り込んでおります。そして、基本計画の策定、基本的施策、このような基本法を策定いたしました。今、自民党に協議を呼びかけているところでございます。

 この作成をする中で一番心がけたことは、当事者の方々の意見を聞いていく、それをできる限り盛り込んでいくということを心がけて法律をつくってまいりました。

 高齢化のスピードが世界一の日本、二〇二五年には約七百万人の方々が認知症になるという推計もございます。

 昨年末、政府におかれましては、関係閣僚会議を設置されました。これは大変評価ができると思っております。この夏までに大綱をつくられるということでありますけれども、ぜひ、その大綱にこうした我が党、与党の基本法の考え方もしっかり盛り込んでいただきたい、また、当事者の声も聞いていただきたいというふうに思っております。

 認知症の方々の尊厳を守り、また、その意思が尊重される、希望を持って暮らすことができる共生社会の実現に向けて、総理のお考えを伺いたいと思います。

○安倍内閣総理大臣 古屋委員が長年にわたって認知症の問題に熱心に取り組まれておりますことに敬意を表したいと思います。

 認知症対策については、二〇一五年に策定した新オレンジプランに基づき、総合的な施策を進めてきたところであります。

 今後、認知症の方の大幅な増加が見込まれる状況を踏まえれば、更に踏み込んだ対策を検討し、速やかに実行していく必要があります。

 そのため、昨年末、認知症施策推進関係閣僚会議を設置し、その新たな体制のもと、認知症の方の支援ニーズと認知症サポーターをマッチングする事業の創設、そして地域住民が認知症の方を見守るSOSネットワークの充実、さらには認知症の方とその家族や地域住民が触れ合う機会となる認知症カフェの増加など、認知症の方々に優しい地域づくりを通じた、共生と予防を柱に、夏までに新オレンジプランを改定することとしております。

 認知症の人を社会全体で支えるため、必要な施策を政府一丸となって推進していく考えでありますし、また、公明党始め与党の皆様からさまざまな御意見も伺いたい、このように思っております。

 ありがとうございました。

○古屋(範)委員 先ほど石田政調会長からもありましたように、私たち、昨年、全国約三千名の議員で百万人の訪問・調査運動を行ってまいりました。その介護の分野の調査の中で、やはり認知症に対する不安というものが非常に大きかったということが明らかになりました。

 この国民の不安を払拭するためにも、総理を先頭に、認知症の方々にとって優しい共生社会の構築に向けて、全力で取り組んでいただきたいと思っております。

 次に、具体的な施策について伺ってまいりたいと思います。

 今、総理からも若干ありましたけれども、我が国では認知症のサポーターが一千万を超えております。私も受講をいたしました。これは本当に世界に誇るすばらしい制度でありますけれども、このサポーターの方々の役割がまだ明確になっておりません。大変もったいないというふうに思っております。この認知症サポーターの方々の役割を明確にしていく、そして、期待する役割に応じた継続的な研修を提供するということも必要だというふうに思っております。また、サポーターの組織化も行っていって、増加する認知症の人を支える支援体制にサポーターを組み込んでいく必要があると思っております。

 また、もう一つ、認知症の人に優しい環境づくりについてお伺いをしてまいります。

 私、富士宮市を訪問いたしました。ここは、市長の理念のもと、認知症に優しいまちづくりをしておりまして、認知症のスポーツイベントを行う、ソフトボール大会などもあるんですが、ランニングなどもありまして、こうした認知症の人たちを子供たちも応援をしていく。サポーターの養成講座も、地域、事業所だけではなくて、中学、高校でも行っていく。また、認知症サポーターのいる小売店では、ステッカーを張って認知症の人を見守っていく。さまざまな取組がなされております。

 イギリスは、認知症に関して最も進んだ国だと思っておりますが、守るべき憲章を掲げております。認知症の人に優しいまちづくりの条例、産業界でも憲章を設けています。金融機関あるいは小売業、交通機関などでその行動規範がつくられております。こうした認知症の人に優しいまちづくりについて、二つ目にお伺いいたします。

 また、もう一つ、若年認知症についてお伺いをしてまいります。

 私、丹野智文さんという方にお会いをいたしました。三十代で若年認知症と診断をされ、そのとき、絶望のふちに立たされる。仕事をどうしていくか、あるいは家族、生活をどうしていくか。そのときに、同じ認知症の人が支えていくということが必要だということをおっしゃっていました。介護ではなくて、今必要なのは、支えていく、そういう存在があることだ。車の営業をやっていらしたんですが、会社の理解を得て、営業でなくほかの部局に移って、今仕事を継続されています。

 こうした若年認知症の方々に対する就労継続、また経済的問題など、高齢の方とはまた違った支える仕組みが重要だと思っております。

 以上三点について、根本厚生労働大臣の答弁を求めたいと思います。

○根本国務大臣 今、委員御指摘のように、要は、認知症サポーター、これは一千万人を超えています。私も受講しました。これについては、来年度からは、学ぶから実践というコンセプトで、認知症の方の困り事などの支援ニーズとサポーターをつなげていく新たな仕組み、これはやはり全体のまちづくりの中でもやっていかなければなりませんので、地域ごとに創設するということで、更に認知症サポーターの方に一歩進んでいただいて活躍の場を広げていただきたい、こう考えております。そういう新しい試みをしたいと思います。

 それから、若年性認知症の方は、就労や経済面、社会参加など、特有の問題を抱えています。現在、都道府県に若年性認知症支援コーディネーターを配置していただいて、この中心になって、若年性認知症の方やその家族に対する相談支援、あるいは、今就労のお話がありましたが、医療、福祉、就労等の関係機関のネットワークの構築、これを一体的に進めております。やはり若年性認知症の特性に配慮したきめ細かな支援が必要で、この支援を推進していきたいと思います。

 それからもう一つ、就労の問題も含めて、やはり生活に密着している各サービスにおける環境づくり、これも不可欠であって、金融、交通、小売、不動産などの各業界における認知症バリアフリーに関する取組を推進する場として、この春ごろ、産業界、医療、福祉業界、行政等を広く巻き込んで、まだ仮称でありますが、日本認知症官民協議会、これを立ち上げたいと思っております。

 いずれにしても、社会全体で取り組んでいきたいと思います。

○古屋(範)委員 最後に、予防についてお伺いをしてまいります。

 関係閣僚会議では、共生と、そして予防をもう一つの柱、車の両輪として柱を立てていらっしゃいます。

 認知症に係る社会的費用は年間十四・五兆という研究報告もございます。それに比べて、この予防、調査の研究のための予算、これは非常に少ないと言わざるを得ません。この大幅拡充が必要です。

 また、予防の研究とともに、認知症高齢者に優しい介護、また看護の手法開発の研究も非常に重要であり、これを普及させなければいけないと考えております。

 この点に関し、総理の見解を求めたいと思います。

○安倍内閣総理大臣 高齢化に伴い認知症の方が大幅に増加することが見込まれる中で、認知症に関する研究を進め、この分野の予防や治療法を確立することが重要であります。

 現在、認知症のリスク因子を明らかにするための、地域住民を対象とした大規模な追跡調査や、治療薬の開発に向けた研究に資する患者登録の仕組みの構築等を今進めております。

 また、認知症の方に対する優しい看護、介護手法の開発については、疾患や重症度別にどのようなケア手法が有効か、介護施設等に協力をいただき、研究を進めてきているところであります。

 夏までに新オレンジプランを改定することとしておりまして、予防や治療の研究開発についてもしっかりと推進してまいりたいと思います。

○古屋(範)委員 認知症の人が希望を持って暮らし続けられる、その社会の構築を強く求めて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

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