第201回国会 衆議院 科学技術・イノベーション推進特別委員会-3号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 本日は、大臣所信に対する質疑ということでございます。

 私からは、新型コロナウイルス感染症関連の質問をしてまいります。よろしくお願いを申し上げます。

 猛威を振るう新型コロナウイルスが出現をしてから、世界は未曽有の脅威にさらされております。世界秩序というものも揺れ動いておりますし、経済は大きな打撃を受けております。また、我々の生活そのものも変化を迫られてきたところであります。

 この新型コロナウイルス感染症対策で、我が国は、まず二月にクルーズ船の対応で大変苦労をいたしましたし、また海外からも批判にさらされました。しかし、厚労省始め関係省庁、DMAT、懸命に対応されたというふうに思います。

 私も地元が神奈川なんですが、既にこの時点から、専門病院ではなく一般病院で患者を受け入れて、医療関係者も必死で治療に当たってきたわけでございます。また、日本では大変死亡者が少ないということで、これに関しましても、ミステリアスだとか成功物語であるとか、いろいろな評価があるところであります。

 先日、NHKスペシャルでWHOのシニアアドバイザーの進藤奈邦子氏が、この日本の死亡者の少なさについて、その要因は、名立たる感染症の専門家がいること、また国民の意識の高さだということを指摘されております。

 私も、二〇〇九年、新型インフルエンザが流行したときに、ジュネーブでこのWHOの進藤さんとお会いをしたんですが、そのときも、我が国が近畿エリアで非常に早くから学校を一斉休校したり、あるいはイベントを禁止したということが、当時も、感染症を抑え込むことに成功し世界のモデルとなっている、そのような評価もいただいたところでございます。

 我が国では、罰則つきのロックダウンというような措置は行わず、ここまで何とか感染を減少させてきているというふうに思います。実際、最近、国内の新規感染者は大きく減少して、数十万人から百万人規模の感染者を出している欧米諸国、またブラジルなどとは様相を異にしておりまして、ここまで何とか抑え込んでくることができたというふうに思っております。

 二十五日に非常事態宣言が全面解除をされて、感染を防止しながら、片や経済活動も再開をしていく、そういう段階に入りました。これから懸念をされる第二波への備えが非常に重要だというふうに思っております。

 初めに、この新型コロナウイルス感染症の闘いにおいて、国民が安心して暮らせる、こういう体制をつくっていくために、この感染症を科学的に解明をしていくということが必要であると考えます。竹本大臣の御決意を伺いたいと思います。

○竹本国務大臣 古屋先生おっしゃっているように、今回のコロナ被害で、日本が非常に死者の数が少ない、致死率が大体三%ぐらいです。フランスは一九・六%ぐらいまで高い、二割近くの人が亡くなるということでございます。

 だから、非常に大きい差がありまして、これはなぜかということは、後日というか、これから大きい、学術的な意味でも研究の対象になるんだろうと思いますが、我が国がなぜよかったかというと、一つは、欧米流のタッチングカルチャーというか、お互い握手しハグをするというようなカルチャーがなくて、おじぎで、一定の距離を置いて相手と接触しないという生活習慣、それから、手を洗い、顔を洗い、清潔感のある生活をしている、そんなことが貢献をしているんだろうという説はありますけれども、恐らくそうだろうと思いますが、それだけではないんだろうというふうに思っております。

 それで、感染者と死亡率との関係なんですが、権威ある先生方に言わせますと、やはり死亡率が一番問題だ、感染者の数はそれほど問題じゃない、こういうお説を伺っておりますが、いずれにいたしましても、日本はある種の、成功と言えるかどうかわかりませんけれども、いいパターンをつくり出したのは事実であります。

 先日もG7の科学技術大臣会合で、私はこのことを申し上げました。アジアの致死率が低い、ヨーロッパが非常に高い、これは何か、技術的な意味でもっと学問的な意見の交換をぜひやりましょう、こう言っておりますが、大きい研究課題だと思います。

 我々としては、国民の命を守る責任がありますから、やはり、過去の歴史、一世紀前のスペイン風邪がどうだったか、あれも、一旦あって、六カ月後に第二波、第三波が来ていますから、そういうことも念頭に置きながら、細心の注意を払って対応していかなきゃいけないと思っております。

○古屋(範)委員 竹本大臣から、新型コロナウイルス対策への御決意を伺いました。

 大臣も今、死亡者が非常に少ないということに言及されました。この新型コロナウイルスで死亡する人がなぜ日本は欧米に比べて少ないのか、その疑問に挑む研究、コロナ制圧タスクフォースが発足をされたと伺っております。慶応大学や京都大学など七つの大学と研究機関から成る共同研究グループ、コロナ制圧タスクフォース、さまざまな研究分野から日本を代表する科学者が横断的に結集していると承知をしております。

 この日本の感染者の中で死者が少ないという点に着目をして、日本人の患者の遺伝情報を解析する研究を手がけると伺っております。この研究では、日本人の死亡者を含めた重症者と軽症者の血液検体六百人分の遺伝情報を解析することで、重症化に至る原因を突きとめていこうということだと伺っております。九月には解析結果を発表して、最終的にはワクチン開発を目指すと聞いております。

 このコロナ制圧タスクフォースの概要と目的、また今後の展開について、内閣府にお伺いをいたします。

○渡辺政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御指摘の研究につきましては、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、AMEDでございますが、こちらで、新型コロナウイルス感染症に対するワクチン開発における研究開発課題として、五月七日に採択をされております。

 御指摘のコロナ制圧タスクフォースというのは、先生もう御指摘のとおりに、慶応義塾大学を中心とした研究者から成ります、ワクチン開発を目指して研究課題を実施するために、さまざまな特徴を持った、専門性を持った方々が集まった共同研究グループというふうに聞いております。

 その研究内容につきましては、先生、遺伝学的な特徴ということもおっしゃっておられましたが、特に、人の白血球の抗原、これが非常に遺伝的に多様なバラエティーを持っております。そういったものを中心とした免疫学的特徴という非常に基礎的な研究を解明するとともに、そこから粘膜免疫というもののワクチンの開発をしていくということであると承知をいたしておりまして、AMEDのワクチン開発の支援により研究が進められていくものと承知をいたしております。

○古屋(範)委員 タスクフォースの研究概要を御説明いただきました。

 緊急事態宣言は解除されましたけれども、若干、このところ感染者がふえてきているかなと思います。また、北九州では二十七日、新たな感染者が八人確認をされたということでございまして、ワクチンが開発されるまではこういう状況がやはり続いていくのではないかというふうに思います。

 ワクチンが開発をされ、完成をして、なおかつそれが全国民に接種をされる、ここまでいってやはり安心ということなんだろうというふうに思います。それまでは、私たちは、やはりこの感染というものと隣り合わせで暮らしていかなければいけない。新しい生活様式を取り入れて、常に感染防止ということを念頭に置いて生活をしていかなければならないと思います。

 今、このタスクフォースの研究、ワクチン開発などの基礎研究の部分を担っていかれるということですので、ぜひともこれを推進して、新型コロナウイルスワクチン開発にしっかりとつなげていただきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 次に、今出ましたワクチン開発と実用化、また治療薬の開発の状況、見通し、そして資金面での支援についてお伺いをしてまいります。

 新型コロナウイルス感染症の終息に向けた重要な武器、これは治療薬とワクチンであります。世界で今、研究者が、ウイルスの解明に当たりながら、これらの開発を進めていると承知をしております。

 今月に入りまして、治療薬につきましては、初の薬が承認をされるなど、開発が本格化をしております。開発が最も活発化しているのは、ウイルスの増殖を防ぐ薬、既存薬の転用、研究が進んでいると思います。例えば、エボラ出血熱の治療薬レムデシビル、これは五月七日、特例措置で適用され、承認をされました。また、新型インフルエンザ治療薬のアビガン、承認の手続は六月以降になるのかと思います。また、エイズ治療薬のカレトラが臨床研究に入った。また、膵炎治療薬のフサン、これがアビガンとの併用で高い治療効果が見込めるのではないかということで臨床研究が始まりました。また、抗寄生虫薬イベルメクチン、この治験を研究中だと伺っております。

 まず、この治療薬につきまして、効果、安全性、厳密な検証が今後行われていくと思いますけれども、ウイルスの増殖を防ぐ、また免疫の働きで重症化を防ぐなどのメカニズムに期待が高まっています。まず、この治療薬の開発状況を伺います。

 そして、ワクチンなんですが、WHOによりますと、ワクチン開発については、今、百十八の計画が進行中だということです。このうち、欧米、中国の八件は、もう人に投与をして有効性を確かめる治験の段階に入った。

 一方、我が国では、やはり出おくれが目立つように思います。大阪大学、東京大学、国立感染症研究所、医薬基盤・健康・栄養研究所、タカラバイオなど、いずれも治験の前段階だということを聞いております。

 二十六日なんですが、大阪大学発のバイオ企業アンジェスが、ワクチンの治験を、当初は九月から開始すると言っていたんですが、これが七月から始めるという報道がございました。AMEDが二十億円を研究費として投じることがここは決まっております。

 海外の方が先行しているようでございますけれども、国内に行き渡る量をできるだけ確保するために、やはり国内産のワクチンというものが鍵になってくると思います。安全で有効性が高いワクチンの開発、承認まで通常は二年かかってしまうということなんですが、このワクチンをいつ接種できるのか、実用化の見通しについて、いかがでしょうか。

 また、第二次補正予算案でも、コロナワクチン開発、生産支援が盛り込まれております。十分な予算を確保して、国内産業の育成にしっかりと当たっていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。政府参考人にお伺いをいたします。

○渡辺政府参考人 お答えいたします。

 新型コロナウイルス感染症に関しまして、医療分野の研究開発関連の調整費、それから令和二年度の第一次補正予算、また、今御審議されております第二次補正予算等を用いまして、治療法の開発、ワクチン開発等に取り組んできております。これまで、第一次補正予算を含めまして、研究開発関連は八百三十五億円ということで手当てをいただいております。

 その中で、先生の御質問の治療薬につきましては、日米が中心となって共同治験を実施してきたレムデシビルについて、先生御指摘のとおり、五月七日に特例承認されております。また、アビガンにつきましては、観察研究、臨床研究、企業治験が進められておりまして、有効性、安全性が確認できれば、迅速に薬事承認を行う方針と承知いたしております。

 ワクチン開発に関しましても、AMEDの課題の採択が五月七日に行われたところではございますが、そこも含めまして、複数の研究機関において新しいワクチンの開発が進められております。

 実用化の見通しということでございますが、ワクチンの開発、製造につきましては、大変重要な課題でありますものの、一般的には、当該ワクチンの有効性、安全性の確認や、一定の品質を担保しつつ大量生産が可能かどうかといったことを確認をする必要などがございまして、開発には年単位を必要とするというものでございます。

 いずれにしましても、新型コロナウイルス感染症の研究開発は国民の命と健康を守るための最優先の課題でございますので、私ども、緊張感とスピード感を持って進めてまいりたいというふうに思料いたしております。

 失礼いたします。

○古屋(範)委員 補正予算をつけていただきましたけれども、米国また中国などに比べますと、非常に規模が小さいと言わざるを得ません。しっかりこの機会に国内産業を育成し、国内のワクチン開発に全力を挙げていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 最後の質問になりますけれども、我が国で、新型コロナウイルス感染など、重症の呼吸とか循環器不全に対する集中治療というものは今進歩をしているんですけれども、救命率、治療後の予後、QOLも向上してきました。しかし、ECMO、この治療というのは大都市に限定をされている状況です。地方ではなかなか高度専門治療が受けられない現状がございます。ECMOも配置が少ない、また、扱う専門家も少ないと思っております。

 今回の新型コロナウイルス感染症の重症呼吸不全患者、また劇症型の心筋炎など、循環不全患者が国内で公平に医療を受けるために、ドクターヘリ、またメディカルウイング、これは航空機を利用して患者を搬送するものでありますけれども、こういうものを活用して、地域から高度医療施設へ患者を広域搬送していく、若しくは、医師と機材を地域に搬送して、ECMOを現地で装着して、地域から高度医療施設に患者を搬送するシステムが必要なのではないかというふうに思います。その研究を早急に行うべきだと思っております。

 全国各地で発症した重症呼吸・循環不全患者がひとしくECMO治療を受けられるように、現地でのECMO装着を含めた、装着患者の救急車また空路、ヘリコプター、航空機搬送を含めて、治療のガイドライン作成と搬送システムの構築が求められると思っております。

 高度医療施設への航空搬送をするための運用システムを策定するための研究を行う必要について、政府の考えをお伺いいたします。

○迫井政府参考人 御答弁申し上げます。

 委員御指摘のとおり、新型コロナウイルス感染症が発生した際の感染者を含めた救急患者、それから、循環不全も含めました重症者等の受入れに支障を来さないように、地域全体で、搬送手段それから医療機関の役割分担、これらについて事前に調整をするというのは極めて重要だというふうに理解いたしております。

 航空搬送も含めまして、感染患者の搬送に関しましては、患者の状態でございますとか治療の状況、それから、搬送中に適切な感染管理ができるかなどを踏まえることが非常に重要な点になります。

 このため、今般の新型コロナウイルス感染症への対応といたしまして、都道府県に対しましては、まず、県内の患者受入れを調整する機能を有する組織、部門の設置、それから、当該組織、部門に搬送調整の中心となる患者搬送コーディネーターの配置を求めるとともに、広域の患者搬送体制についても重要でございまして、そういった体制の構築、それから、新型コロナウイルス感染症患者を重点的に受け入れる医療機関、そして、逆にそれら以外の重症者を積極的に受け入れる医療機関、これは役割分担でございますけれども、そういったものをしっかり行うように依頼をいたしております。

 さらに、厚生労働省といたしましては、令和二年度の一次補正予算におきまして、感染拡大の防止それから医療提供体制の整備等を優先的に取り組むことを主眼といたしました緊急包括支援交付金を創設をいたしておりますが、この中で、患者搬送コーディネーター配置と、必要に応じた都道府県を越えた患者搬送の費用でございますとか、先ほど委員御指摘のとおり、ドクターヘリ等のヘリコプターによる広域搬送の際の当該患者を隔離するために、感染防止に必要な設備の整備などの人、物両面から抜本的な強化を図ることといたしております。

 こういった取組を通じまして、患者が適切な医療を受けられる医療提供体制の構築を支援してまいりたいというふうに考えております。

○古屋(範)委員 時間が参りましたので、以上で質問を終わります。ありがとうございました。

Follow me!