第183回国会 衆議院 厚生労働委員会-19号

○古屋(範)委員 おはようございます。公明党の古屋範子でございます。

 きょうは、参考人の皆様、国会においでいただき、それぞれの立場から貴重な御意見をいただきましたこと、心から感謝を申し上げます。

 私は五年前から、特に精神保健の中でもうつ対策に取り組んでまいりまして、総合的な治療から、また、職場、学校への復帰のための総合的なうつ対策の政策提言をつくりまして、今日まで取り組んでまいりました。予算の面ですとか、さまざまな面で一歩ずつ進んできているという実感はございます。その中で、川崎理事長ともお会いをし、さまざまな御意見も伺ってまいりました。初めに川崎参考人にお伺いをいたします。

 今回、法律の改正で、保護者制度の廃止ということが盛り込まれました。今回の改正の一番の柱となると思っております。この保護者制度の廃止は、先ほども意見陳述にございました、家族会の方々にとっても悲願であったと思います。改めて、今回この法改正が行われることに関して、御所感がありましたらお伺いしたいと思います。

○川崎参考人 川崎です。

 この保護者制度というのが一体どういうものであるのか、私ども、議員の先生方のところに伺ってもなかなか御理解されていなかったというのが、実は大変大きな私どもの課題でありまして、精神障害者の家族には、いわゆる扶養義務者にあわせまして、プラスアルファで保護者制度というのがありまして、保護者になった者に課せられる責務というのがあります。

 その中でも大きかったのは、医療につなげるということで、この医療につなげることが大変に難しい精神障害者が多くいまして、特に、病識がないといいますか、自分は病気ではないという人をいかに医療につなげるか。それで、家族は本当に一人で孤軍奮闘しておりまして、先ほどの、音量を大きくする人も、そんなにボリュームを上げているのにというわけですけれども、やはり本人が自分は病気ではないということで、なかなか医療につながらなかったんですね。それで、最終的にどうしたかといいますと、通報入院です。強制入院で入院してしまったということで、やはり家族との関係性が悪くなるということです。

 強制入院と言いましたのは医療保護入院になりますけれども、精神科の入院に関しては、いわゆる措置入院と任意がありますけれども、措置は、これは自傷他害がありますのでいたし方ないと思いますが、本当に、訪問型のアウトリーチによって本人がしっかりと医療の必要性を感じるような、そういう入院体制をつくっていただきたいなというのが思いであります。

 以上です。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 私たちも、会期末まで残りわずかになりましたけれども、本法案の一日も早い成立を期してまいりたいと思っております。

 そこで、この保護者制度が法改正をされて廃止された後なんですが、精神障害者の家族の方々、また精神障害者御本人の治療、地域の生活において、これからどのような役割を果たしていかれようとしていらっしゃるのか。また、必要なサポート体制についてもあわせてお伺いしたいと思います。

○川崎参考人 川崎です。

 保護者制度がなくなって、家族が、一体何が変わるか。はっきり言いまして、いわゆる法律の保護者制度の中で決められていたことから解放されるということで、家族自身の精神的なものはかなり軽くなりますけれども、家族がやること、やはり治療の必要性とか、本人のいろいろな世話をすることとか、保護者制度がなくなったからといって、家族自身の本人へのかかわりが変わるということはありません。

 家族は、私も母親ですけれども、本人が本当に幸せに生きてほしいという思いで、やはりいろいろな必要なことは世話をするわけですけれども、そういう責務から外されたということが、他の障害にない制度です、身体にも知的にもない。身体、知的の障害を持った御家族と一緒に精神障害の家族も地域で暮らせる、そういう思いでおります。

○古屋(範)委員 これによってかなりの精神的な負担が軽減されるということですけれども、やはり現実には、精神障害者を持った御家族にとっては、さまざまなその他の負担というものは続いていくわけですので、そこへのしっかりとしたサポート体制というのは行っていかなければいけない、強化をしていかなければいけないんだろうというふうに思います。

 また、重ねて川崎参考人にお伺いしたいと思います。

 検討チームの提言に代弁者ということがございましたけれども、今回の法案には盛り込まれなかったということであります。担い手の役割、いろいろ意見が分かれて具現化できなかったということなんですけれども、参議院においては、三年後の検討規定の対象に、代弁者も含めた精神障害者の意思決定等への支援のあり方を追加する法案修正が行われたわけでございます。

 この代弁者制度についてどう思われるか、お伺いをしたいと思います。

○川崎参考人 実は、この代弁者につきましては、なかなか最終的な議論が詰められなかったということで今回の法案には載らなかったんですけれども、今回附則で載りましたように、今後、三年間の見直しの中で、どのような人を代弁者にするかとか、代弁者の制度化、それをどうするかということは、一応、私ども家族会といたしましては大変に関心のあるところで、やはり、本人の人権擁護も含めまして、しっかりとしたそういう体制づくりは必要であるかと思っております。体制づくりを期待いたします。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 次に、籠本参考人にお伺いをいたします。

 医療保護入院における家族等の同意ということで、先ほど、明確なガイドラインが必要であるという意見陳述をいただきました。

 改正後の保護入院につきましては、精神保健指定医一名の診断に加えて、家族等のうちのいずれかの者の同意が必要とされているわけでありますが、家族の同意が医療現場の混乱を招くのではないかとの指摘がございます。

 厚労省の説明では、医療保護入院に当たっては、同居する家族等が、病識のない精神障害者に付き添って診察を受ける場合が実際上ほとんどであり、入院時に家族とのトラブルが発生することは少ないのではないかというようなことを言っているんですが、やはり、十分このような問題は予測し得る、だからガイドラインが必要だという御意見でよろしいんでしょうか。

○籠本参考人 先ほども申し上げましたが、現場の感覚としては、そんなに大きな混乱はないのではないか。やはり、御本人のことをお世話されて、心配されて連れてこられる家族の方の同意ということであれば間違いないのではないかと思います。

 ただ、やはり、こういう御時世でございますので、財産の問題だとか、家族間の利害関係等も含めまして、いろいろそういう場合が想定できないわけではないので、そういうことが起こった場合にきちんと毅然と判断する基準が必要だというふうに私は考えております。

○古屋(範)委員 よくわかりました。実際上はそれほど多くはないとは思うけれども、やはり、万が一そういう問題が生じたときのためにガイドラインをつくっておくべきだという御意見でございますね。ありがとうございました。

 次に、続けて籠本参考人にお伺いをいたします。

 精神病院管理者による退院促進措置ということがこのたび盛り込まれました。先ほどの意見陳述の中でも、この件に関しましては、入院時点から必要だという御意見でございました。多職種、家族、地域の支援を含めて対応を見据えて、そのときからスタートをすべきだという御意見でございました。

 やはり、病院に頑張れ、やれと言っても、これは非常に難しいと思います。人的な配置、あるいは予算面、この辺について、御要望をお伺いしたいと思います。

○籠本参考人 これも、適正な精神科医療を提供するための人員配置について、自治体病院としても要望しているところなんですが、やはり、今の現状では、もう先生方御存じだと思うんですけれども、一般医療は入院患者に対してたくさんのお医者さんが配置されている、精神科の場合は、精神科特例という形で、三分の一でいい、看護師さんも四分の三でいいというようなことがあります。

 その辺、私は意見でも言わせてもらいましたが、全ての入院患者さんについて、どの病棟でもそれを一気にそういうふうにせよということはなかなか難しいとは思うんですけれども、少なくとも一般医療と同等なことを、どうしても初期にやらなければならない、医療導入時にやはりきちんとした提供をせないかぬというその思いは、我々、病院のスタッフは皆持っております。

 そのためには、やはり、少なくとも急性期の病棟に関しては、一般医療と同等の人員配置ができるような配慮をお願いしたいというふうに思っております。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 続きまして、栗原参考人にお伺いしたいと思います。

 障害者を雇用するに当たって、中小企業で経営が大変な中、一億以上の投資をして、障害を持った方々が働けるような体制をつくったということでございました。大変すばらしい取り組み、また経営をしてこられたと思います。

 しかしながら、やはり中小企業においては経営が大変、ましてや障害者を雇用するために何か改めて踏み出すということは非常に難しいのではないかと思います。

 ここを乗り越えて障害者雇用をふやしていく、ここに対するさらなるアドバイスがございましたら、お伺いをしたいと思います。

○栗原参考人 特別なあれはないんですが、私の場合は、働きやすい職場環境を常に心がけているというのが一番だと思います。

 それで、私どもの会社も、やはり高齢の障害者も結構いるわけです。その人たちがみんな定年までいけるかどうかというと、それは、いける人はいいですけれども、四十代、五十代でリタイアする方も結構いるわけです。

 ですから、私どもの会社では、今やっているのは、福祉に行く間のワンステップに、時間を少し短くする。ですから、八時間を六時間ぐらいにするとか、時間を短くして、それで働いていただくというようなやり方も今しております。今現在、そのやり方で三名おります。

○古屋(範)委員 きめ細やかに取り組んでいくということだと思います。ありがとうございました。

 もう時間がなくなってまいりました。坂本参考人にお伺いをいたします。

 やはり、福祉から就労への、ここの支援スキルが少ないという御意見を先ほどいただきました。私もここのところ、医療と就労を結びつけていくために、今、障害者職業センターというものがありますね。都道府県に一つですので、非常に混んでいて待機者も多いというふうなことでもございました。ここのところに力を入れて、予算などもつけてきたんですけれども、やはり、専門的な就労に向けての相談、指導ができる、こういう人材育成をしていくために、そうした専門家のスキル、知識の普及ということが必要だと思うんですが、この点、いかがお考えでしょうか。

○坂本参考人 まさにおっしゃるとおりだと思います。やはり、福祉の現場において、現場で寄り添って支援をする方たちというのは非常に多くいらっしゃると思うんですけれども、今おっしゃっていただいたように、障害の特性であったりとか実情に合った支援の技術を身につけている人というのは、まだまだ多くないと思っています。

 今おっしゃっていただいた各都道府県にあります障害者職業センターなども、やはり、一カ所というところと、あと、人材がなかなかいないというところ、山梨などになりますと、山梨の中心の方は利用できるんですけれども、私どもの圏域は山際にありまして、山際の方は利用できなかったりとかという不公平さもあったりするので、誰もが同じようにそういった支援サービスを使えるように、もしくは、そういったところにそういった人材が派遣できるようになればいいなというふうに考えております。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 時間の関係で全員の参考人の方に質問できず、申しわけございませんでした。

 皆様の御意見を参考にし、さらに議論を深めてまいります。ありがとうございました。

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