第204回国会 衆議院 内閣委員会-15号

古屋(範)委員 おはようございます。公明党の古屋範子でございます。本会議に引き続きまして、質問をしてまいります。
 まず、政府が十六日に発表されました新型コロナウイルス感染症の影響で困窮する人への緊急支援策について、一問お伺いをしておきたいと思っております。

 緊急事態宣言が解除をされ、今、三府県には蔓延防止措置が発せられております。その中で、企業、店舗の倒産、休業、また時短営業に伴う働き手の失業あるいは収入減、雇用情勢は依然として厳しい状況にあるというふうに認識をしております。

 とりわけ、低所得者家庭におきましては、非常に大きな打撃を受けております。昨年、二回にわたりまして、特例給付、一人親世帯には支給をしていただきました。そして、何とか年を越せたという御意見を伺っております。しかし、今迎えております新学期を前に、三月でありますけれども、こうした一人親の家庭の団体、あるいは子供の貧困対策に取り組んでいる方々から、更に給付をお願いしたい、それも一人親家庭だけではなく、二人親家庭がかなり厳しいのだと。特に、二人親家庭で多子世帯、中学、高校というようなお金のかかる子供を抱えている家庭は非常に困窮しているという要望を伺いました。

 ざっくり言うと、一人親家庭と二人親家庭ですと、手当、支援等で、年間百万ぐらいの差が今出てしまっているということでありました。それを三月十五日、緊急提言に盛り込みまして、菅総理にお届けをしたところでございます。

 そして、今回の緊急支援策の柱の一つとして、所得の低い子育て世帯を対象に十八歳までの子供一人当たり五万円の特別給付金を支給するということが決定をされました。本当に関係者から、声を詰まらせて、感謝の声をいただきました。

 今回、二回の給付金と違って、二人親世帯も含めて住民税非課税の子育て世帯全体に広げるということが本当に大きな前進だと思っております。そして、両親がいたとしてもコロナ禍で減収している、そうした家庭があるということで、支給額、第二子以降も今までと違って一律五万円とされました。大変これは大きな支援策だと思います。

 また、更に困窮者向けの貸付制度の利用もしやすくしてくださっております。休業、失業をした困窮者への緊急小口資金、また総合支援資金の特例貸付制度、合計最大二百万円なんですけれども、申請期限を六月末まで延長するということでございます。その総合支援資金の返済免除要件というものも明確にされました。初回分は二〇二一年度又は二二年度、二回分は二三年度、三回目、再貸付分に関しては二四年度に借受人と世帯主が住民税非課税であれば返済を一括免除する。返済が困難だから借りることをためらう人にも利用を促す効果があるのではないかというふうに思っております。

 本委員会でも、二月の十九日、私も質問をさせていただいて、こうした緊急小口資金、総合支援資金の特例貸付けの申請期間の再延長、また、全ての困窮者世帯への経済的支援を求めました。これを盛り込んでいただいたことに感謝をしている次第です。

 それで、真に支援を必要とする人に漏れなく支援の手を届けていくということから、情報の周知が必要だと思います。一刻も早く給付金を届けてほしいと思っております。この周知徹底また給付金の速やかな支給について大臣の御見解を伺いたいと思います。

岸本政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、対象となる低所得の子育て世帯に対しまして適切に支援の手を届けるため、周知、広報をしっかり行っていくことは大変重要であると考えております。

 また、特別給付金の支給に当たりましては、実務を担っていただく自治体において可能な限り事務負担の軽減が図られるよう、きめ細やかな情報提供を行う必要があるとも考えておりまして、一人親世帯につきましては、迅速な支給を実現する観点から、給付を決定いたしました三月十六日以降、支給対象者や支給スケジュールを始めとしまして、自治体が準備に必要とする情報を順次お示ししてきております。

 その他低所得子育て世帯につきましては、今回新たに支給するものでございますので、現在、実務について自治体と意見交換を行いながら、対象者の範囲や所得の状況の把握の在り方も含めまして、具体的な制度設計を行っているところでございます。

 いずれにしても、しっかり取り組んでまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 済みません、参考人の答弁で結構でした。失礼しました。

 低所得の一人親世帯に関しては、四月分の児童扶養手当受給者について可能な限り五月までには支給をしたいということでございます。申請不要ですので、着実に支給をお願いしたいと思います。また、その他の低所得の子育て世帯に関しましても、自治体とも調整を行った上で速やかに、できる限り早急に支給をお願いしたいと思っております。よろしくお願いいたします。

 次に、子育て支援に積極的に取り組む事業主に対する助成制度の創設について伺ってまいります。

 本法律案では、令和九年三月三十一日までの間、子育て支援に積極的に取り組んでいる事業主に対して新たに五十万円の助成を行うということを創設していくということでございます。本会議でも申し上げたんですけれども、この事業は企業に対する直接的な支援となっていて、画期的な支援だと思っております。

 助成対象が、次世代育成支援対策推進法に基づいてプラチナくるみんの認定を取得している中小企業及び当年度又は翌年度にくるみん認定を取得する中小企業ということを想定しております。本事業を創設することによりまして具体的にどのような効果が期待されるのか。

 また、令和三年度予算として二億円が計上されております。事業者当たりの支給額は五十万円ですから、約四百社が該当するということになると思うんですが、この予算で十分と考えていらっしゃるのかどうか。

 これについてお伺いをいたします。

嶋田政府参考人 お答えいたします。

 今回の助成制度は、従業員に対して育児休業の取得を促進するなど子育て支援を積極的に行う事業主に対して助成を行うものでございます。これにより、従業員の子育て支援を積極的に行う事業主を後押しをしまして、企業における子育て環境の整備を進めてまいる、そういった効果が期待されるものというふうに考えております。

 また、平成三十一年四月から一年間にくるみん認定を取得した中小企業は百十六社ございまして、また、令和元年の末時点でプラチナくるみん認定を受けている中小企業は五十九社という状況でございます。今年度取得する企業が一定数増加したという場合であっても、計上した予算の範囲内で執行可能ではないかというふうに考えております。

 今後のくるみん認定及びプラチナくるみん認定の取得促進につきましては、今回の助成制度の周知と併せまして、くるみん制度のそもそもの所管でございます厚生労働省とも協力しながら取組を進めてまいりたいというふうに考えております。

古屋(範)委員 中小企業の数全体からいいますと、三百五十七・八万社の中で、くるみん取得百十六社、また、プラチナくるみんにおいては五十九社ということですので、まだまだ少ないというふうに思います。もちろん、今、コロナ禍で、企業においては厳しい経営が続いているわけですけれども、子育て支援に積極的に取り組む企業、くるみん認定、プラチナくるみんの方ももっともっと増やしていく必要があるのではないかと思います。厚労省とも協力し、底上げをしていきつつ、必要な予算の確保、よろしくお願いしたいと思います。

 引き続きまして、児童手当法改正について質問をさせていただきます。

 今回、特例給付の見直しに関しまして、世帯合算ということは見送りとなりました。高所得者を対象としている特例給付、年収一千二百万円以上の方は対象外とするというわけです。

 財政制度等審議会におきまして、昨年の十一月の建議では、児童手当の見直しとして、所得制限を超える者への特例給付の廃止とともに、世帯合算の所得に基づき支給を判断する仕組みへの変更、すなわち、現行の児童手当の支給要件とされる所得については、世帯における就労形態の多様化等を踏まえ、主たる生計者のみの所得で判断するのではなく、世帯合算で判断をする仕組みに変更すべきだということを主張されております。

 世帯合算につきましては、子育てをしていくために共働きをしなければならない、あるいは、よりよい教育をしていく上で、共働きをして世帯の収入を増やし、そして子育てに充てていく、こういう家庭が多いわけです。また、女性でも、当然、妊娠、出産を経ても自分のキャリアを続けていきたい、こういう女性たちも多くいるわけです。少子高齢社会の中で労働力人口が減少していく。女性にも意欲のある方は働いていただくということが我が国の活力を得ていく上で重要な要素の一つだと思うんですね。

 そういうことも進めている中で、昨年十二月に閣議決定をされた全世代型社会保障改革の方針で、世帯合算方式の導入について引き続き検討されることとなっておりまして、私は、本法案で見送られたことは本当によかったと大いに評価をしているところです。

 この財政審の指摘についての御見解、また、今後の見通しについてお伺いをいたします。

坂本国務大臣 委員御指摘のとおり、世帯合算につきましては、財政審等から、世帯間の公平性の観点から導入を求める重点化の御意見がありました。しかし、一方で、導入した場合、今委員も御指摘されました共働き世帯への影響があるとの御意見もございました。検討の結果、今回の見直しでは導入を見送るということにしたものであります。

 改正案では、附則に検討規定を設け、子供の数等に応じた児童手当の効果的な支給及びその財源の在り方や支給要件の在り方について検討をしていくことというふうにしております。その際には、少子化の状況を始め、子ども・子育て支援に関する施策の実施状況、そして、何よりも、子育て家庭への影響等もよく注視しながら、少子化の進展への対処に寄与する観点から検討してまいらなければいけないというふうに思っております。

古屋(範)委員 総理も、子供は社会の宝であるということを明言されております。その中で、児童手当を拡充していくということは非常に重要なことだと思っております。我が党も、児童手当の創設を提案をし、今日まで累次の拡充をし、様々な経緯を経て今の制度になっているわけであります。改めて、世帯合算はすべきではないということを申し上げておきたいというふうに思います。

 次に、新子育て安心プランの財源についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 政府は、令和七年度までに必要な追加額として約一千四百四十億円を確保するとしています。保育の運営費、ゼロから二歳に当たりましては約一千億円、事業主拠出金です。残りの四百四十億円を、今回の児童手当の特例給付の見直し等により生じる財源を充当していくということであります。

 児童手当の特例給付の見直しによって新子育て安心プランの財源を捻出することについては、本会議でも申し上げましたけれども、子育て関係の予算全体を抜本的に増やさないで、その枠の中で財源をつけ替えるにすぎないのではないかという指摘もありまして、私は、もっと国全体として子育てのための財源を確保していく必要があるというふうに思っております。

 少子化対策、また子育て支援に必要な安定財源の確保については、社会全体で子育てを支援していくという大きな方向性の中で、税財源の検討のみならず、政府全体の予算の中で幅広く検討を行うべきであるというふうに思っております。この点に関して再確認をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

坂本国務大臣 子育て世帯に関する支援といたしましては、これまで、幼児教育、保育の無償化などを行っており、さらに、不妊治療の助成の拡充、そして、新子育て安心プランの実施による待機児童の解消などを行っていくことから、高所得者の方も含め、子育て世帯全体への支援をこれからも充実させてまいります。

 このうち、待機児童問題につきましては、四年間で十四万人分の保育の受皿を整備することといたしました。この運営に必要となる追加費用につきましては、今般の児童手当の見直しによりまして生じる財源等に加えて、企業からも一千億円を追加拠出していただきまして、所要額を確保しております。

 総合的な少子化対策を進めていくための財源確保の方策につきましては、様々な議論があると承知しております。引き続き、少子化社会対策大綱等に基づきまして、必要な、そして、安定財源を確保しながら、少子化対策を全体として確実に進めてまいる覚悟でございます。

古屋(範)委員 公明党は、二〇〇六年に、少子社会トータルプランというものを発表いたしました。これは子育てに関する政策の集大成というべきものでありまして、一年半かけまして、約百五十ページにわたる政策をつくりました。

 この中で、最終提言の手前で、二〇〇五年に中間取りまとめをして、緊急提言を発表いたしました。チャイルドファースト、子供最優先の社会をつくるという上で、内閣府に特命担当大臣を置くべきだということを主張いたしました。そして、少子化担当の特命大臣が設置をされました。

 ですので、坂本大臣、今その延長にいらっしゃるということなんですけれども、確かに子育てに関する政策というものは多省庁にまたがっているという中で、子育てに関する特命担当大臣が必要だと我々も考えておりました。ですので、坂本大臣には、是非とも、子育て支援、また、少子化対策に関する財源確保については、お力を発揮していただいて、しっかりと確保をしていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。

 最後に、子供の権利を守るための基本法の制定についてお伺いをしてまいりたいと思っております。

 子どもの権利条約は、一九八九年十一月二十日に国連で子ども権利条約が採択をされまして、三十年以上が経過をしております。

 児童の権利に関する条約、子どもの権利条約は、子供の基本的人権を国際的に保障するために定められた条約であります。十八歳未満の児童につきまして、子供であっても権利を持つ主体と位置づけ、大人と同様、一人の人間として人権を認める、成長の過程で特別な保護や配慮が必要な子供ならではの権利も定めております。十八歳未満を子供と位置づけて、世界全ての子供たちに自らが権利を持つ主体であることを約束したものです。前文、本文五十四条から成っておりまして、子供の生存、発達、保護、参加という包括的な権利を実現する、確保するための必要な、具体的な事項を規定しております。

 二〇一九年現在、この子どもの権利条約は、国連の加盟国数を上回る百九十六の国と地域で締結をされておりまして、世界で最も広く受け入れられている人権条約であります。ただし、子どもの権利条約を締結しただけでは子供の権利は守られないということであります。

 この子どもの権利条約が採択されて以来、我が国において、五歳未満の子供たちの死亡率は低下して、強制労働が強いられる子供というのは減少したんですけれども、こうしたところから取り残されている子供たちがいることを忘れてはならないというふうに思います。条約を批准した各国政府は、条約の各条項が規定する子供たちの権利を実現するために、当然、国内法の整備など、具体的に進める必要があります。

 公明党の女性委員会では、この三月十六日に、末冨芳日本大学の教授、あるいは、公益財団法人あすのば、子供の貧困対策に取り組んでいる団体の小河代表理事、また、甲斐田万智子国際子どもの権利センター代表理事から、子供の権利保障のための原理原則を定める子供基本法制定の必要について伺いました。

 末冨教授たちは、児童虐待通報の急増が指摘をされている、また、自死も多いという中で、いじめ等の問題に言及をされまして、子供の生存、発達の権利などが守られている状況とは言い難い、子供の権利について、国の基本方針、理念、権利保障のための原理原則が定められる必要があるということを主張されました。

 日本では一九九四年に子どもの権利条約を批准をしております。このとき日本政府は、現行法で子供の権利は守られているとの立場を取って国内法の整備は行わずに、現在も子供の権利を総合的に保障する基本法というのはないんですね。二十五年以上が経過をして、児童虐待も増えています。いじめ、自死、不登校など、深刻さが増していると思います。子供にとっても生きづらさというものが高まっている、この中で、子どもの権利条約が定めている子供の生存、発達の権利、子供の最善の利益、こうした子供の意思の尊重などの権利が守られているとは言えないのではないかというふうに思っております。

 日本では子供に関わる個別法だけがあります。あらゆる面で子供の権利を包括的に定めたいわゆる子供の基本法のようなものがない。児童福祉法とか子どもの貧困対策法はあるけれども、子供の意思の尊重とか子供の最善の利益の優先などを定めるのはあるんですけれども、教育、司法分野においてこれは及ぶものではないんですね。

 国連は基本法の制定を政府に繰り返し求めています。政府は、児童福祉法や児童虐待防止法など、既存の法律で対応しているのだという姿勢です。国際的に見ては、こうした子供に関する法整備が遅れているのではないかというふうに思います。

 この三月なんですけれども、東京都におきまして、議員提案の東京都こども基本条例が成立をいたしました。三月二十六日、子供を社会の一員、権利の主体とすることを明記した議員提案の東京都こども基本条例が成立しました。これは、公明党のまつば多美子都議会議員を座長とする東京都こども条例検討プロジェクトチームというのを会派内に立ち上げて、識者と意見交換をしながら一貫してリードしてきたものでございます。国連で採択をされた子どもの権利条約に基づいて子供の意見が都の政策に適切に反映をされていく、年齢や発達段階に応じて社会参加ができるような環境の整備を定めたものでございます。

 新型コロナウイルス感染症は大きな変化をもたらしました。とりわけ子供への影響というものは大変大きなものがあります。児童虐待、性虐待、性被害だけではなくて、不登校の子供の学習機会の確保など、教育格差、また親が外国人の子供への差別防止など、解決すべき問題はたくさんあるというふうに思っております。こうした子供をめぐる問題を抜本的に解決するため、養育、教育、保健、医療、福祉など、子供の権利施策を幅広く整合性を持って実施するために子供基本法を制定すべきだというふうに私は考えております。

 今るる述べましたけれども、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

坂本国務大臣 非常に崇高な理念、ありがとうございます。

 平成二十一年に我が国においても子ども・若者育成支援推進法というのができました。その基本理念の中には、子供、若者について、個人としての尊厳が重んぜられ、不当な差別的扱いを受けることがないようにするとともに、その意見を十分に尊重しつつ、その最善の利益を考慮することということが明記をされております。

 同法に基づきまして、昨日、子供・若者育成支援推進大綱というのを、これは第三次になりますけれども、決定をいたしました。その中におきましても、子供、若者の人権、権利の保障の課題を挙げております。

 これらを踏まえながら、子供、若者の権利保障を徹底していくことが重要であるというふうに考えております。

古屋(範)委員 児童虐待の死亡案件につきまして、結愛ちゃんの事件、また、心愛ちゃんの事件、本当に悲しい、悲惨な案件がございました。

 その中でも、子供も、例えば教師に対するアンケート調査の中で、自分は暴力を受けているということを表明をしておりました。しかし、それがなかなか生かされずに、受け止められずに、最後、死に至ったということもございました。

 また、他の案件でも、これは中学生なんですけれども、児童虐待で一時保護をされて、それで、自分は家に帰りたくないということを言ったんですけれども、それほど緊急性がないだろうということで一旦家に帰り、その直後に自殺をしたという案件もありました。

 子供だから、むしろ大人であれば、そのような訴えをしたときに、暴力を受けているということであれば傷害ということになると思いますけれども、子供が訴えた、それを真摯に受け止めて、そして、あらゆる、教育や医療や警察などなど、真剣に受け止めていかなければいけないということを考えますと、やはりそうした、子供の権利を保障する、子供の権利を尊重する基本法が必要なのではないか、そのように考えております。

 是非とも、今回の大綱においてそうした視点が盛り込まれたということは大いに評価すべきであり、これからもそれに沿ってしっかりと大臣には子供政策を進めていただきたいと思います。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

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