第211回国会 衆議院 厚生労働委員会-2号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 所信に対する質疑を行ってまいりますので、よろしくお願いいたします。

 まず、認知症について質問してまいりたいと思います。

 我が国は大変高齢者の比率が高いわけなんですが、今、約六百万人の認知症の方々がいらっしゃるということでございます。二〇二五年には、六十五歳以上の五人に一人が認知症になるとの推計もございます。

 私も、認知症について取り組み始めて十年になります。二〇一四年には、国会において総理に対して、日本の認知症に関する国家戦略が必要であるということを申し上げました。また、基本法を作るべきだということも申し上げたところでございます。二〇一七年には、公明党内に認知症対策推進本部を立ち上げまして、これまで精力的に活動を行ってまいりました。二度にわたる提言を作り、官房長官にも提出をしてきたところでございます。その後、我が国初の省庁横断の認知症に関する国家戦略、新オレンジプランができまして、また、認知症初期集中支援チーム、これも全市町村への設置を推進してまいりました。

 この基本法、公明党案を作りまして、自民党に協議をお願いし、共同で国会に提出をいたしましたが、解散で廃案となっております。現在、超党派の議員連盟で多くの関係者からヒアリングを行いまして、各党の代表でこの基本法の協議を行っているところでございます。

 我が党で、全国三千人の議員で、高齢者に関する意識調査を行ったことがございます。その中で一番関心が高かったのが、自分や家族が認知症になったときが不安だという声が六四%ということで最も多い回答でした。

 認知症の方々の尊厳を守る、また、認知症に関する国民の理解を深めて、認知症になっても安心して希望を持って暮らせる共生社会をつくっていくことが肝要かと思います。

 これに対する伊佐副大臣のお考え、また、今、我々国会議員の側で作っておりますこの基本法案について御見解をお伺いいたしたいと思います。

○伊佐副大臣 認知症につきましては、誰もがなり得るものというのと同時に、また多くの人にとっても非常に身近なものに今なっておりますので、これまでも、公明党の皆さんから独自案をいただいたりとか、あるいは意識調査を全国で展開していただいていること、政府としてもありがたいというふうに思っております。

 今、超党派の議連で議論が進められているというふうに承知をしておりますが、政府の方では、令和元年六月に関係閣僚会議で決定をいたしました認知症施策推進大綱というものに基づいて施策を展開をさせていただいております。その中には、認知症の発症を遅らせ、また、認知症になっても希望を持って日常生活を過ごせる社会を目指すと。そしてまた、認知症の方や家族の視点を重視しながら、共生と予防を車の両輪とした施策を推進してございます。

 そういった意味でも、先ほど委員の御指摘のありました、この共生社会を構築していくということは非常に重要であるというふうに考えておりまして、今後も議連における議論の状況について注視してまいりたいというふうに思っております。

○古屋(範)委員 この基本法の議論も今行っている渦中でございますが、田村先生を中心にしながら、各党、本当に真剣な御議論をいただいております。特に、当事者の方々のお声もしっかりと伺いながら、よりよい法律案を取りまとめてまいりたいというふうに決意をいたしております。よろしくお願いいたします。

 次に、認知症に関しまして、伴走型支援についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 私も、認知症に取り組み始めましたそのきっかけとなった有識者の方々から、最も進んでいるイギリスなどでは、やはり認知症の当事者を中心とした政策をつくっているということを伺いました。認知症になったら、そこから長い旅に出ると思ってほしい、そこには、まず最初、当事者がどんな旅にしたいのか、その意思を確認した上で、地図を持ったり、いろいろ必要なものを準備をしなければいけない、その旅にはやはり伴走者が必要だ、そのような御意見を伺ったこともございます。

 私も、もう六十五歳を過ぎて、とても身近な問題になってまいりましたけれども、家族、また両親、また自分自身も認知症かもしれないと感じたときに、じゃ、どこに相談に行ったらいいのか、はっきりと自覚している方というのは大変少ないのではないかというふうに思います。

 ですので、この認知症の人、また家族に対して、早い段階から関わって、変化にずっと寄り添い続けていく、支えていく、共に考えながら気持ちを支えて、理解と受容を促しながら適切な情報、知識の提供を行っていく存在が必要だと思います。認知症の人、家族が考えて自ら選択できるように支援をしていく伴走者の存在というものが求められています。伴走者が、認知症に関わる専門的な知識、ネットワークを使いながら、認知症の進行による状況の変化とか、それに悩む家族に寄り添っていく、地域の人々の生活を応援する、これが大きな安心につながってくると思います。

 厚労省では、令和三年度に、認知症伴走型支援事業を創設されました。これは、認知症の人とその家族に対して、専門的な相談、助言を日常的に継続して行う伴走型の支援拠点を市町村に整備していくということで、本人、家族の支援体制を充実させるものであります。しかし、なかなか、これがまだ設置が進んでいない状況にあります。不安の解消、安心につながるこの伴走型支援の拠点整備、早急に進めていただきたいと思っております。

 この整備促進について、厚労省の考えを伺いたいと思います。

○大西政府参考人 お答え申し上げます。

 認知症につきましては、先生に先ほどお言葉をいただきましたように、令和元年六月に関係閣僚会議で決定をいたしまして、政府全体といたしまして、認知症施策推進大綱に基づきまして、認知症の発症を遅らせる、認知症になっても希望を持って日常生活を過ごせる、そういった社会を目指しまして、認知症の方御本人また御家族の視点を重視しながら、共生と予防、これを車の両輪とした施策を推進しているところでございます。

 地域包括センターを含めまして様々な相談窓口はあるわけでございますが、特に伴走型を強化した対応といたしまして、先ほど御紹介いただきましたように、伴走型支援ということで、令和三年度、認知症伴走型支援事業を創設いたしたところでございます。

 これは、認知症の方御本人の生きがいにつながるような支援ですとか、専門職ならではの日常生活上の工夫などの御助言を差し上げる。また、家族の精神的、身体的負担軽減につながるような介護方法の効果的なやり方ですとか、介護の不安解消に係るような助言、そういったものを継続的に行っていくような伴走型支援拠点ということで、市町村が整備するための経費を補助しているところでございます。

 これを推進するために必要な考え方ですとか手順などをマニュアルとしても作成をいたしまして、本事業の周知を、地方公共団体、関係団体に周知を行っているところでございますが、御指摘いただきましたように、令和四年度時点で全国で八自治体というところにとどまっておりまして、今後、本事業を実施している市町村から、取り組んでいるところは極めていい感じで取り組んでいただいておりますので、事例を収集いたしまして、地域特性に応じた展開方法を検討するなど、更に効果的な推進に努めてまいりたいと考えているところでございます。

○古屋(範)委員 せっかく事業を創設されて、予算も取っているんですが、現時点で八か所しか設置をしていないということであります。ほとんどは、やはり認知症グループホームが担ってくださっているようでございます。この事業が広がらないその原因も精査しながら、是非、この取組が広がるように推進をしていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、低所得者の認知症グループホーム入居者への家賃補助についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 低所得の認知症高齢者にとって、お金の心配がなく認知症の介護を受けたいと思うのは当然のことでございます。認知症グループホームは、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けていくことができるよう、今構築が進められている地域包括ケアシステムの一環として期待をされています。

 この認知症グループホームは、介護部分については介護保険でサービスを受けられるけれども、家賃とか食費は自己負担、また、新築、個室対応、共有部分が多いところは、家賃が高くて高額な負担になっております。

 これに対応するために、介護保険の地域支援事業として家賃補助制度というのがあるんですが、これを採用している自治体というのは僅かなんですね。ですので、低所得であっても安心して適切な住まいを確保して認知症介護を受けたい、そういう御希望をかなえるためにも、全国の市町村がこの家賃補助制度をもっと積極的に活用できるよう、国としても支援すべきだと考えますが、いかがでしょうか。

○大西政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、認知症の方を対象といたします居住系サービスとして認知症グループホームがございます。こちらで認知症の方がそれぞれの状況に応じて適切な介護サービスを利用できる環境をしっかり整備していくことは、大変重要であると考えてございます。

 このため、認知症グループホームにつきましては、地域の特性に応じましたサービス確保を進めるとともに、専門研修を受けました介護職員によりますサービス提供について介護報酬上の評価を行うなど、認知症グループホームの入居者の方に対しまして質の高いサービスが提供されるよう、取組を推進しているところでございます。

 御指摘の家賃補助についてでございますけれども、家賃、食材料費及び光熱水費の費用負担が困難な低所得の入居者の方に対しまして利用者負担の軽減を行っている事業者さんに対しまして、地域支援事業の任意事業でございますが、こちらのスキームを活用した助成が可能となっているところでございます。現在、令和三年四月時点の数字でございますが、百二市町村という数字になっているところでございます。

 この事業につきまして、こうした補助制度を引き続き活用いただくことによりまして、地域の実情に応じた必要な支援が行われるよう、自治体にしっかり働きかけていくとともに、認知症になりましても希望を持って暮らせる社会の構築に向け、認知症施策推進大綱に基づく取組を推進してまいりたいと考えております。

○古屋(範)委員 この家賃補助制度を活用しているのは百二市町村ということで、僅か五・九%なんですね。認知症になっても、グループホームの場合には、やはり住み慣れた地域で、いわば自分の自宅のように、ついの住みかとしてここは住み続けていくことができますので、是非、この家賃補助制度を多くの自治体で活用していただけますようにお願いしていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 次に、福祉用具の貸与についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 福祉用具貸与の利用者は、今二百五十三万人ということで、居宅サービス利用者全体の六二%に達しております。一方で、給付費では、居宅サービス全体の七・一%ということで、少ない費用で多くの方々に利用されている。御存じのように、車椅子とかベッドとか、そういう必要不可欠なサービスであります。

 今般の物価高騰の中で、福祉用具の貸与事業者にとっても、メーカー側から購入する福祉用具の費用、また運搬費、燃料費、水道光熱費など、本当に高騰していて、直接な影響を受けています。

 物価高騰をレンタル価格に転嫁するというのは、介護保険制度の中ではとても難しいんですね。介護保険の福祉用具貸与は上限価格が設定をされておりますので、次回の見直しは令和六年度、この間、上限価格を超えた貸与価格設定というものはできないわけです。

 物価高騰は、福祉貸与事業者の経営環境を非常に厳しいものにしています。事業者の経営努力のみでは対応していくのは困難です。福祉用具サービスの適切な提供をし続けていくために、ここへの早急な支援をすべきであると考えます。

 また、さらに、事務負担軽減も重要な点であります。計画書の書式統一というものは喫緊の課題になっております。こうした業務の効率化、また介護分野のデジタル化というものも進めていかなければならないと考えております。

 先日、私、ホームステーションらいふ高井戸というところに行ってまいりましたけれども、人手不足の中で、人でなければできない介護はもちろん人でするんですけれども、効率化できるところはICTを導入する。ここでは特に人工知能を搭載したロボットを導入していまして、夜間の見守り、これも、エレベーターをちゃんと使って、階下まで行くようなことができるようになっているロボットでありました。また、こういう手すりとか館内の除菌作業も、このロボットが行っておりました。

 二〇一二年四月、福祉用具サービスの計画書が義務づけられまして、書式は事務所ごとと定められています。この標準化に向けて、全国福祉用具専門相談員協会は計画書の参考様式を作成、改定して、二〇一八年度、厚労省からも自治体を通じて事業者に周知をしております。

 書式の簡素化、標準化の検討がICT化の推進につながると思います。これを機に、福祉用具サービスの計画書においては業務の効率化をするために全国統一の書式とすべきではないかと思うんですが、この点について、局長、答弁をお願いいたします。

○大西政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、物価高騰への対応ということでございました。

 物価高騰の影響は、福祉用具貸与事業者の皆様も、介護事業者の一つということで、当然受けておられると思っております。そういう方々への御支援につきましては、電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金を活用し、自治体において、地域の実情に応じた必要な支援を実施をしていただいているところでございます。昨年来、自治体に対して積極的な活用をお願いをしてきました結果、多くの自治体で、光熱費の増加等に対応する給付などの支援を実施していただいているところでございます。

 こうした交付金の活用によりまして、地域の実情に応じたきめ細かい支援が行き渡りますように自治体の後押しをいたしますとともに、次期介護報酬改定に向けた議論も行っていく中で、物価の動向、介護事業者の皆様の収支の状況等を注視をしてまいりたいと考えております。

 また、福祉用具貸与計画書の書式統一につきましても御提言ございました。

 この計画書につきましては、法令上、様式が定められているものではございませんが、平成二十五年度に調査研究事業を行いまして、その結果を活用いたしまして、全国福祉用具専門相談員協会の皆さんとともに計画書の参考様式を作成をさせていただいております。

 当該様式につきましては、随時改定を、アップデートを行いつつ周知を図ってきておりまして、令和二年度の調査では、約八割の事業者さんがこれを使用いただいている、一部参考にしておられるというものも含まれておりますけれども、という御回答をいただいているところでございます。

 さらに、令和四年度、サービスの質の向上を図るためにこの様式の改定案を作成して、試行的に今使用しているところでございます。事例の分析を行うなど研究事業として取り組んでいるところでございまして、その調査結果などを踏まえまして、書式の統一を含めました福祉用具貸与計画書の在り方について、次期介護報酬改定に向けた議論の中で検討してまいりたいと思います。

 先生お言葉いただきましたように、ICT、ロボットの活用などで生産性の向上を進めていくことは大変大事でございます。しっかり取り組んでまいりたいと思います。

 ありがとうございます。

○古屋(範)委員 介護保険制度の方は、必要な介護事業者による自治体への文書提出というのを全国共通の電子データによる申請、届出システムでの処理に切り替えるということで、二五年度完了を目指しているということでございます。是非とも、この福祉用具の方も、これとともに統一をしていただきたいと思っております。

 もう一問、予定しておりましたけれども、ちょっと時間でございますので、以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

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