最後まで寄り添ってくれた公明党(公明新聞 2016年2月12日付)

ブラッドパッチ療法の保険適用を喜び合う中井氏(左から2人目)、川野さん(同3人目)、鈴木さん(同4人目)と古屋副代表(同5人目)ら=2016年1月20日 衆院第2議員会館


脳脊髄液減少症 ブラッドパッチに保険適用


患者や家族らの長年の悲願がついに実現―。交通事故など体に受けた強い衝撃で脳脊髄液が漏れ、頭痛や目まい、倦怠感などの症状に見舞われる脳脊髄液減少症。この治療に有効な「ブラッドパッチ療法」(硬膜外自家血注入療法)の公的医療保険の適用が10日、厚生労働相の諮問機関から同相に答申された2016年度の診療報酬改定案に盛り込まれ、正式に決定した。患者の経済的負担の軽減が期待される上、病症の研究も進み、多くの患者の救済につながることが期待され、患者や家族などの関係者から喜びの声が寄せられている。患者団体らと協力しながら、同症への“無理解の壁”を突き破り、国を動かした公明党の取り組みについて、関係者の話を交えながら追った。

真心のネットワーク政党

全国の患者らと共に

「全国の患者に寄り添い続けてくれた、真心のネットワーク政党である公明党のおかげです」

こう語るのは、「脳脊髄液減少症患者支援の会」の事務局長で、千葉県船橋市に住む川野小夜子さん。川野さんの息子は、28年前の小学3年生の時、学校遊具から落下して同症を発症した。当時、外傷により脳脊髄液が漏れる病症は医学界では認められておらず、多くの患者と同様、「原因不明」「異常なし」などと診断され、病院をたらい回しに。23~28歳までほとんど寝たきりの闘病生活を余儀なくされた。

その後、インターネットを通じて同症の存在を知り、自身もこの病気の患者である仮認定NPO法人「脳脊髄液減少症患者・家族支援協会」の中井宏代表理事と出会い、支援活動に携わるようになる。

一方、中井代表理事は2002年に同協会の前身となる「鞭打ち症患者支援協会」を設立し、活動を始めたが、“無理解の壁”を前に打つ手のない状況だった。

そのころ、中井氏や川野さんらの相談に乗っていたのが、地元・千葉県の公明党県議(当時)だった。中井氏らの相談を基に、県議会では03年12月、公明党の推進で同症の治療推進を求める意見書を全国に先駆けて採択。この後、意見書採択は公明党の推進により全都道府県に広がった。意見書の採択は全会一致が原則であり、政党間の調整が難しい。まさに公明党の底力が発揮された形だった。

また、公明党の地方議員は各地の議会で同症の周知・啓発など対策を要請。患者団体も議員を介して、都道府県知事らに治療のための施策の推進を求め、啓発を図る勉強会なども各地で開催した。

この十数年間、同症支援に取り組む政党の動きはさまざまあったが、ほとんどが途中で立ち消えたという。「結果が出るまで共に闘い続けてくれたのは公明党の議員だけでした」と語る川野事務局長。“一人の声”に耳を傾けて代弁し、議員が交代しても後任者がつながり続け、患者らと共に運動を「地域から地域」へと広げてきた公明党が、支援の波を大きなうねりに育てていった。

国と地方が連携し訴え

国会質問や要望書など “一人の声”粘り強く

「国と地方」の連携を通じて“一人の声”を実現するのが公明党の真骨頂だ。今回の保険適用決定は、まさにその典型例といえよう。

04年3月、先ほどの千葉県議から連絡を受けた公明党の古屋範子衆院議員(現副代表)は、脳脊髄液減少症について治療法の研究と保険適用を求める質問主意書を政府に提出。同年12月には、浜四津敏子代表代行(当時)が川野事務局長らと共に、厚生労働省に治療推進を求める10万人以上の署名簿と要望書を提出した。

さらに、06年3月の参院予算委員会では、脳神経外科医でもある渡辺孝男参院議員(当時)が質問に立ち、ブラッドパッチ療法への保険適用を強く主張。翌4月には、党内に対策チームを立ち上げ、国と地方で党を挙げて取り組む体制を整えた。

06年11月には、「脳脊髄液減少症患者支援の会」子ども支援チームの鈴木裕子代表らが、公明党の衆院議員であった池坊保子文部科学副大臣(当時)と会談し、学校現場における対策を求める約2万人の署名と共に文科相あての要望書を提出。これを受けて、07年5月末、全国の教育委員会などに同症で苦しむ子どもに適切な対応を求める同省の事務連絡が徹底された。なお、12年9月には同症への対応をより明確した事務連絡が全国に通達されている。

鈴木代表は、当時中学1年生だった娘が発症し、病気に対する周囲の無理解の中、「育て方が悪い」などと中傷され、親子共に苦しんできた経験を持つ。それだけに、学校現場への啓発が進んだことについて、「公明党がいなければ、ここまで来られませんでした。議員一人一人が誠心誠意、病気の支援に取り組み、きめ細かい対応をしていただき、感謝の気持ちでいっぱいです」と喜びを語っている。

公明議員の質問機に厚労省が研究開始、有効性を実証

症状に苦しむ患者たちの声を国や地方で代弁しても、同症が外傷で発症する可能性や、ブラッドパッチ療法の有効性が科学的に実証されなければ、保険適用の要望は認められず、掛け声倒れに終わってしまう。

この困難を突破する契機となったのが、07年3月からスタートした厚労省の研究。前年の渡辺元参院議員の国会質問に応じて、同省の補助金を基に開始されたものだ。「医学界全体で認められるには、科学研究で証明されないと信用が得られない。何とか前に進めたかった」と渡辺氏は振り返る。

これにより、11年10月に研究班が画像による診断基準を発表。12年5月には、ブラッドパッチ療法が、公的医療保険の対象にするかを評価する「先進医療」に承認され、同療法を行う際の入院費などに保険が適用された。

そして、先進医療で同症を治療する医療機関を対象にした研究班の調査により、「ブラッドパッチ療法は9割で有効」との報告がなされ、16年1月に先進医療会議が「保険適用が妥当」と結論。厚労省の諮問機関が保険適用を承認した。かつては医学界で「あり得ない」とされた常識が、患者団体と公明党の執念により覆された瞬間だった。

中井代表理事は「公明党は私たちの訴えを信じて、14年間一緒に闘ってくれた」と感謝しつつ、「これからも基準や制度の隙間にある人たちの声や、小さな声に耳を傾け続けていってほしい」と期待を添えた。

病気の社会的認知に意義

厚労省研究班代表 日本脳神経外科学会理事長
嘉山 孝正氏

脳脊髄液が漏れて目まいや頭痛が起きること自体はよく知られる病態だったが、外傷が原因で漏れるかどうかは医学界で意見が分かれていた。その意味で、ブラッドパッチの保険適用が承認されたのは、この病気で苦しんでいる、または苦しんでいた人が社会的に認知されたということだ。最も大きな意義となる。

研究班が策定した画像診断基準は、関連学会の全ての医師が見ても脳脊髄液が漏れていると科学的に判断できるものとなっている。この診断基準に基づきブラッドパッチ療法を行えば効果は高い。

ただし、今後は、その基準に満たない軽い脳脊髄液の漏れにも的確な判断を下せる基準が必要となる。また、画像診断の際に用いるCTスキャンによる放射線被ばくの影響など、大人よりも特別な配慮が必要な子どもの診療体制を進めることも重要だ。

決定は画期的な第一歩

同症研究の第一人者である 国際医療福祉大学熱海病院教授
篠永 正道氏

今回の保険適用の決定を心待ちにしていた患者らは本当に多い。画期的な第一歩と言える。

また、単に患者の経済負担が軽くなるだけではない。高額療養費制度や生活保護受給者への医療扶助の対象ともなり、喜びの声は大きいと思う。さらに、労働災害保険や自動車損害賠償責任保険(自賠責)の制度のあり方にも大きく影響を及ぼすだろう。

保険適用が決定したが、この病気の知名度を引き続き広めていくことが必要だ。子ども患者の発症原因としては部活動などでの事故が多いので、学校現場への啓発や小児医療との連携も欠かせないだろう。公明党には、一貫して脳脊髄液減少症への支援を取り上げてもらった。今回の保険適用の大きな力になっていると感じる。これからもこの問題に積極的に取り組んでもらいたい。

ブラッドパッチ療法

髄液が漏れている脳と脊髄を覆っている硬膜の外側に患者自身の血液を注入して漏れを止める治療法。脳脊髄液減少症のうち一定の診断基準を満たす脳脊髄液漏出症について、厚生労働相の諮問機関が1月20日、保険適用を承認した。4月から適用予定。

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