第174回国会 衆議院 厚生労働委員会 7号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 本日は、子ども手当法案につきまして、鳩山総理に基本的な論点についてお伺いをしてまいります。よろしくお願いいたします。

 まず初めに、私たち公明党が拡充をしてまいりました児童手当の改正における民主党の対応と本法案の関係性についてお伺いをいたします。

 現行の児童手当制度、議論が始まりましてから十年以上の年月を経まして法案提出に至って、施行に当たっては、三年間、段階的に支給対象を広げてきた、そういう経緯がございます。

 また、その後も、御存じのとおり、公明党は平成十一年十月以降、連立政権に参画する中で、一貫してこの児童手当拡充に取り組み、五回にわたって改正をしてまいりました。

 平成十二年には、支給対象が義務教育就学前までに拡大。翌年の十三年には、支給率を支給対象年齢の児童の七二・五%から八五%に引き上げる、この所得制限も緩和をし、十六年には支給対象を小学三年修了前まで、さらに十八年には、小学校修了前までに拡大をするとともに、支給率を九〇%に引き上げる、こうした所得制限の緩和。そして十九年には、三歳児未満への支給額を一万円に引き上げる、このような改正を行ってまいりました。

 この児童手当の拡充をばらまきと批判し、法改正に伴う四回のこの拡充案すべてに民主党は反対をしてこられました。このパネルにあるとおりでございます。

 総理、限られた財源の中でだれもが納得できる形で児童手当を拡充する、こうしたやり方が、現実の財源を考えれば責任ある現実的な政策の進め方ではないか、このように思います。

 そして、問題点は、本法案の内容が、公明党が拡充し、民主党がことごとく反対をしてきた現行の児童手当制度の上に成り立っているということであります。ここで私が指摘したいのは、本法案の内容が、公明党が拡充をして、そして民主党がこれほど、四回も反対をした児童手当、その上にそのまま乗っかっている形になっているこの子ども手当の制度設計そのものであります。

 質問のたびに何度も申し上げている点でございますが、児童手当法の規定に基づく給付に上乗せして支給されているこの子ども手当法案、これは、手当の名称は違いますけれども、実態としては児童手当の拡充にほかならない、こう言わざるを得ないわけであります。公明党が主導してきた児童手当制度の拡充がなければ、現政権でこの二十二年度だけでもさらに大きな財源が必要となっていたはずであります。

 現行の児童手当の枠組みを活用する本法案を提出されたわけであります。これまでの児童手当に反対をしてきた民主党の対応、これが誤りであった、このことを率直にお認めいただきたいと思います。いかがでございましょうか。

○鳩山内閣総理大臣 古屋委員にお答えを申し上げたいと思います。

 私ども、野党という立場の中で、公明党さんが児童手当、それを時代的に徐々に拡充をされてきた、そのたびに、まだこれでは不十分だということで反対をしてまいりました。今、そのことに関しては、反対をしてきたということの御指摘、そのとおりでございまして、そのことを否定する何物も持ち合わせておりません。

 むしろ私は、具体的に、平成十二年から十九年の改正において、支給対象者の範囲の拡大とか、あるいは手当額の拡充、所得制限の緩和といった拡充が図られてきたということは、いわゆる子供の健全育成の面から見れば、それなりに大きな役割を児童手当は果たしてきた、そのように理解をすべきだと思っております。

 その児童手当の上に、平成二十二年度の私どもの法案はある意味でそれをさらに大幅に、所得制限を外す、額をふやす、中学まで含むという形で拡充をさせていただいたということでございまして、ある意味での健全育成の、子供の発育の意味においては思いを同じくする立場だ、そのことはやはり申し上げるべきだと思っております。

 公明党さんが努力されてこられたこういった児童手当制度の拡充の歴史というものを基礎にしながら、私どもとしては新たな子ども手当という制度を構築いたしたと思っております。ただ、平成二十三年度以降の制度設計ということになると、まだそのことに対してはこれからの議論に任す必要があるということでございますが、平成二十二年度の私どもの子ども手当に関しては、今申し上げたとおりでございます。

○古屋(範)委員 総理御自身、児童手当の拡充があったからこそ今回の子ども手当法案の提出がある、こう御回答になったというふうに受けとめております。言い直せば、今回の子ども手当制度はやはり児童手当の拡充にほかならない、このことを再度指摘しておきたいと思います。

 そこで、この二十三年度以降の子ども手当についてお伺いをしてまいります。

 本法案の附則第二条には、「子ども手当の平成二十三年度以降の制度の在り方等について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」とあります。

 要するに、これは、二十三年度以降の子ども手当については、今総理もおっしゃいましたように、支給額や費用負担のあり方等について全く方向性が示されていないということではないか、こう私は本会議で質問いたしました。長妻大臣からは、昨年の十二月の四大臣合意を踏まえつつ、平成二十三年度予算編成過程において、財源のあり方も含めて改めて検討することとなっている、また、政府全体で本格的な制度設計に向けて検討し、改めて法律案を提出したいとの御見解を示されました。

 しかし、民主党のマニフェストでは、二十三年度以降は満額の一人二万六千円を支給する、これが国民との約束でありました。これにつきましては、ことしに入って、政府内でも財務副大臣の否定的な発言が飛び出す、総理御自身の発言にもぶれが見られます。

 満額支給するためには、五・三兆とも五兆五千億とも言われる巨額な財源が必要であります。これをどのように手当てされるんでしょうか。

 鳩山総理は、二月八日の衆議院予算委員会におきまして、事業仕分け等による無駄の排除による歳出削減努力を徹底する、このように答弁をされております。果たして、この無駄の排除によってのみ、子ども手当に係る巨額の財源を賄うことができるのか。子ども手当制度を恒久な制度として継続していくとするなら、確かな安定財源を示す必要があります。二十三年度以降において子ども手当制度を恒久的な制度とするのであれば、子ども手当の趣旨、目的に相応した制度設計を早急に示すべき、このように考えます。

 そこで、鳩山総理に改めて、この子ども手当、二十三年度以降、満額の二万六千円支給できるのか。地方負担、また事業主負担、このあり方も含めた制度設計、そして財源についてお伺いをいたします。

○鳩山内閣総理大臣 古屋委員から、二十三年度以降の子ども手当に関してのお尋ねがございました。

 私ども、平成二十三年度以降、当然これは恒久的な財源を見出す必要があるということで、満額、すなわち二万六千円、国民の皆さんにお約束をした満額を支給したい、そのような思いを今持っておりまして、すなわち、マニフェストどおりに実施することを考えているところでございます。

 言うまでもありません、そのためには財源をどのように確保しなきゃならないかということでございます。

 先ほど、中期財政フレームの話もあったわけでございますが、この財源の確保に関しては、行政刷新の担当大臣の努力のもとで、独立行政法人あるいは公益法人などに対して抜本的な見直しを図っていきながら、歳出というものの削減を徹底していくというのがまず一点ございます。それとあわせて、予算の見直しも徹底して行わなければなりません。

 制度設計に関して、今ここですべてが、結論が出ているというわけではありません。むしろ、平成二十三年度の予算編成過程の中で、財源のあり方を含めて、関係方面の皆様方の御意見などもしっかりと承りながら結論を得たいと考えているところでございます。

○古屋(範)委員 満額を支給したい、そういう御希望、そして、そのために歳出削減の努力を行い、あるいは制度設計についても今後の検討である、そのような御答弁でありました。

 経済的に非常に厳しい子育て家庭におきまして、では、二十三年度以降、我が家の生活設計は一体どうなっていくのか、こうした将来予測が立たない、このようなことがあってはならないと思います。

 こうしたこと、子供の生活環境、養育環境に直接影響が及ぶわけであります。早急に二十三年度以降の財源、制度設計を明らかにしていただきたい。これは国民のために明らかにしていただきたい、このことを再度申し上げておきたいと思います。

 次に、児童養護施設等に入所している子供についてお伺いをしてまいります。

 本法案では、子ども手当は子供を監護する親に支給をされる。最も援助を必要としている子供に手当が支給されない、このようなケースが問題となっております。例えば、両親がいなくて児童養護施設等に入所をしている子供、また虐待により措置入所をしている子供、あるいは里親のもとで育てられている子供、このような子供たちであります。

 その一方で、今大変問題になっております虐待、また育児放棄、このような問題を抱えた親は、給付を受け取ったにもかかわらず、それを子供のために使わない、このようなケースが予測されるわけであります。さらに、配偶者からの暴力を受けている被害者が子供を連れて別居している場合、こうしたときにも手当が子供のために使われるためには、確実にその被害者側に支給をしていく必要があります。

 次代の社会を担う子供の健やかな育ちを支援する本法案において、最も援助を必要としている子供に対して手当が支給されない、このようなことがあってはならないと思います。

 厚生労働大臣は、法案提出後、各委員会で、安心こども基金を活用して子ども手当を支給するという意向を示されております。この場合、安心こども基金による措置がどのようなものか、またDV被害者へ支給する仕組みをどのようにお考えか、二十三年度以降における手当についてどのような制度を盛り込むのか、改めて総理から御答弁をいただきたいと思います。

○鳩山内閣総理大臣 これは長妻大臣が先般話されたとおりだと理解をしておりますが、いわゆる児童養護施設などに入所しているお子さん方こそ、本来子ども手当が支給されるべきである方々だと思います。そういった、苦しい、あるいは困った、かわいそうな立場の子供たちに対する配慮というものが必要であることは、論をまたないことだと思っております。

 こういった、いわゆる施設内の親がいないお子さん方については、子ども手当、この平成二十二年度においては支給されないということになりましたけれども、安心こども基金の中の地域子育て創生事業というものを活用して、実質、施設に対してではありますけれども補助をすることによって、子ども手当相当分が支給されることにいたしたいということでございます。

 そのようなことを二十二年度は行わせていただきますが、平成二十三年度以降の制度設計の中でも、こういったことはしっかりと考えていかなきゃならないと思っています。まずは、二十二年度はこのようなやり方にすることになりましたが、時間がありますので、その間に、平成二十三年度以降のあり方に対して、子ども手当をどのようにしてそういった方々に支給できるのか、真剣に考えて答えを出す必要があるのではないか、私はそのように考えております。

○古屋(範)委員 ただいまの御答弁、今回、私が先ほど申し上げたことを法律案に盛り込むべき、このように思いますが、この点はいかがでしょうか。今回の法律案に盛り込むべきと思いますが、いかがでしょうか。

○鳩山内閣総理大臣 恐縮ですが、今回の法律案には盛り込まずに、今申し上げたような形でしっかりと手当てをするようにいたしたいと考えております。

○古屋(範)委員 最後に、二十三年度以降の総合的な子育て支援策についてお伺いをしてまいります。

 公明党では、四年前にこうした少子社会トータルプラン、坂口元大臣を本部長といたしまして、約二百ページにわたる総合的な子育て支援を提示いたしております。

 そして、今回、政府では、子ども・子育てビジョンというようなものを発表されました。これに関しましては一定の評価をするところでありますが、問題は、やはりその財源であります。

 二十三年度以降、子ども手当の満額支給だけでも、五・三兆あるいは五・五兆とも言われる財源が必要であります。この財源そのものが見通しが立たない中で、その他のこうした子ども・子育てビジョンについてどれだけの財源を充てることができるのか、この点、非常にこれは不明確であるというふうに思います。子育て支援のバランスを欠いているとの指摘を受けても仕方がない、このように思います。

 フランスにおきましても、V字形に出生率が回復している、それは、現金給付だけではなく、一九九〇年代から現物支給というものにシフトしてきた、その効果が上がっているわけであります。現金給付だけではなく、しっかりとこうした総合的な子育て支援が必要だというふうに思いますが、これについていかがお考えでしょうか。

○鳩山内閣総理大臣 今、古屋委員がおっしゃいましたように、総合的な子育てのビジョン、子供ビジョンというものが必要だということは、私も同意でございます。その思いのもとでビジョンをつくらせていただいている、そのようにも理解していただきたいと思っています。

 私どもは、数値目標という言い方がいいかどうかわかりませんが、子育て支援に関しても、いわゆる待機児童の解消のために、毎年五万人ずつというような形で保育サービスを強化できるようにしたい。そのためには、しかし財源が要るぞというお話もございました。

 財源の手当ても含めて、私ども、やはり少子高齢化、高齢化対策も充実しなければなりませんが、やはりこれからの日本というものを考えていく上で、子供に対するビジョンをしっかりと総合的につくり上げるということは大変重要であります。そのための財源というものの手当ても生み出していきながらビジョンを示してまいってきているとも思っておりますが、さらに総合的なものに仕立て上げるための工夫もこれから考えてまいりたいと思っておりまして、ぜひ公明党さんのさまざまな御協力も願えればと思います。

○古屋(範)委員 総合的な子育て支援策、これを強く求めまして、質問を終わりにいたします。

 ありがとうございました。

Follow me!