第179回国会 衆議院 厚生労働委員会 6号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。朝の質疑に引き続きまして労働者派遣法改正案の質疑を行ってまいりますので、よろしくお願いいたします。

 労働者派遣法が施行されましてから二十年以上が経過をいたしました。労働者派遣制度は着実に発展をいたしております。労働力の需給調整システムとして定着をしてまいりました。

 この派遣制度をめぐっては、さらなる規制緩和を主張する意見がある一方で、これまで規制緩和が非正規雇用の拡大をもたらしている、登録型派遣は雇用の安定、能力開発の面でも問題が生じている、また、特に日雇い派遣は雇用が不安定で労働条件も劣悪であるとか、あるいは、製造業等において偽装請負が発生しているなどなど、さまざまな問題点が指摘をされてまいりました。

 私たち公明党も、この規制改革の流れをいま一度見直していこうという検証をしてまいりました。特に日雇い派遣の原則禁止については、検討し、いち早く訴えて、形にもしてまいりました。

 そして、平成二十二年に提出されて以来、これまで継続となっております今回の改正案でありますけれども、登録型派遣、製造業派遣及び日雇い派遣の原則禁止、あるいはみなし規定の創設等、より強い規制が盛り込まれております。民主党のマニフェストに掲げた項目が、ほぼそのまま反映をされている内容となっております。

 私たちも、製造業派遣、登録型派遣の原則禁止については、中小企業経営の人材活用の圧迫であるとか、悪質な労働環境へ移行するのではないかと慎重な検討も進めてきました。

 改正案では、派遣禁止によって就業ができなくなる者への支援として、職業安定所における職業紹介事業を充実させていくとかを掲げていますけれども、実際、具体案というのは明示をされていないと思います。改正の目的は労働者保護であることを考えると、派遣労働を過剰に規制することによって、かえって派遣労働者の雇用を失わせてしまう結果になるのではないか、このような懸念がございます。

 今回の改正でどれだけの雇用喪失が起きるとお考えか、そして、事業規制の強化が雇用に及ぼす影響、また、どのような労働移動がなされるとお考えでしょうか。大臣にまずお伺いいたします。

○小宮山国務大臣 三党から修正案が出されておりますけれども、お尋ねの政府原案では、登録型派遣や製造業務派遣の原則禁止の対象となる方々はおよそ二十九万人になります。こうした方々が安定的な雇用に移行できるよう支援していくことはもちろん重要だと考えています。

 このため、この原則禁止に関しましては、派遣元事業主に常時雇用されている労働者は原則禁止の例外にするということと、施行日を公布日から三年以内の政令で定める日としまして、労働者の雇用の場の確保に向けて必要な準備ができるよう十分な期間を確保しているということ、またさらに、派遣労働者を直接雇用する事業主へ最大百万円を助成する派遣労働者雇用安定化特別奨励金を活用するなどいたしまして、派遣労働者の方の雇用の安定を図りたいというふうに考えています。

○古屋(範)委員 昨年の本会議で、この点、当時の長妻大臣に質問させていただきました。そのときも、ほぼ同じようなお答えでしたね。政策的に直接雇用となるようにバックアップしていきたいとか、また、事業規制の強化が雇用に及ぼす影響は、その時々の景気、雇用情勢にもよりますが、結局、はっきりとした数値というのはわからないというお答えであったと思いますし、ただいまもその点に関しては明言がございませんでした。要するに、その時々の経済状況、雇用状況による、最大、いろいろな政策も使いつつバックアップをしていく、支援をしていく、そういうことなんだろうというふうに思います。

 この派遣という働き方、私自身は非常に重要であると考えております。特に、この法案が提出をされ、本会議で審議入りをして、その後何が起きたかといいますと、東日本大震災が発生をしたわけですね。ですので、経済状況や雇用状況というのは、提出したときよりもさらに厳しくなっているわけであります。

 ことしの三月の震災発生後、特に、四月においては、前細川厚生労働大臣は、人材関係団体の長を大臣室に招いて、大震災で大量の犠牲者が出て経済的にも大打撃となっている、日本の危機を乗り越えるためにも、人材ビジネスで活躍されている皆さんのお力をぜひおかしいただきたい、このような協力要請までされています。

 実際、現地でも、さまざまな知恵を絞り、仮設での見守りですとかそういうことも含めて、業界の方々も、瓦れきの処理、汚染のチェック、こうした、すぐに人材が必要だというようなものに力を入れて取り組んでくださっているわけです。雇用に非常に役立っているわけなんですね。

 今回の資料にもございます、派遣労働者及び派遣先の見方ということで、登録型派遣を選んだ理由、これは厚生労働省の調査ですけれども、正社員として働く会社がなかったから、これは四六・三%ですから、消極的な理由としてもちろんある。一方で、自分の都合のよい時間に働けるから、二三・九%、家庭の事情や他の活動と両立しやすい、二一・二%。このような、積極的に派遣という働き方を選んでいる方も多いわけです。

 また、派遣労働者また派遣労働の経験者に対するアンケート、登録型派遣については、賛成四一・四%、反対一五・三%。賛成が大きく上回っているんですね。

 さらに、製造業の方に参りますと、製造業で派遣労働者、派遣先を対象としたアンケートによりますと、製造業派遣の禁止、派遣労働者の回答を見ますと、禁止に反対五五・三%です。禁止に賛成一三・五%。派遣先の回答としては、禁止に反対八六・一%、このようなことになろうかと思います。

 また、製造業の派遣が禁止になった場合、派遣先の回答を見ますと、派遣社員を直接雇用し、有期契約社員に切りかえは六八%であるのに対して、派遣社員を直接雇用し、正社員に切りかえる、これは一六・九%にとどまっております。これが雇う側の考え方でもあるわけなんですね。

 派遣者あるいは派遣先双方のニーズというのはこのように非常に多様化をしているわけです。そうしたニーズに対応して、また日本経済を活性化させていくためにも、多様な選択肢が用意されている、この方が私はベターだと思っております。

 この労働者派遣制度、さまざまな仕事とさまざまな労働者ニーズを迅速にまた的確に結びつけることにより、雇用の創造と経済の活性化により貢献できる制度だと考えております。

 この派遣という働き方、大臣、どう思われますか。

○小宮山国務大臣 今委員もおっしゃいましたように、特に東日本大震災の後、いろいろと雇用の状況、さまざまな状況が悪い中で、派遣の働き方が果たしている役割も確かにあると思います。

 午前中も申し上げましたが、最初は本当にバラ色の働き方みたいなことで、十三業種のときに、専門能力を持った方がパートとかよりももっと高い専門能力を評価されて働ける、自分の自由な時間で働けるというやり方だったと思うんですが、次第に二十六業種になり、またネガティブリスト方式で製造業まで入ったことによって、もちろん優良な事業者の方はいいんですけれども、そうでないところも出てきたのだと思います。

 ですから、例えば一カ月ぐらいでくるくると、取っかえ引っかえと言ってはいけないですけれども、かえて、社会保険は適用しないようにするとか、それでマージン率も、今いろいろ改正もしてきていますけれども、非常に安い賃金で働かせるというようなこともありましたし、リーマン・ショックの後の派遣切りというようなこともあって、派遣で働く労働者が守られないケース、これはやはり行き過ぎた緩和された部分は是正をしなければいけないということで今回の改正法にもなったと思います。

 そういう意味では、多様な働き方の一つとして、しっかりと働く労働者の保護も行われて、それで派遣元と派遣先との関係もしっかりと整理をされて、きちんとした働き方ができるようにしていくということが大切だというふうに考えています。

○古屋(範)委員 派遣切りとか、住まいまでなくなってしまう、そういった問題と、この派遣法そのものの法律の改正、これはごっちゃにしてはならないというふうに思っております。

 派遣にかかわるさまざまな問題の原因というのは、まずは、派遣労働の仕組み自体、そのものによるのか、現行の派遣法の不備によるのか、法律が守られていないことがそもそも問題なのか、あるいは働く人と派遣という働き方のミスマッチによるのか、複数の問題があるにもかかわらず原因を全部この法律に押しつける、これは違っているというふうに思います。

 修正案の提案者の皆様にお伺いをしてまいりたいと思います。

 今回、派遣法の修正案をおまとめになりましたその御努力に敬意を表したいと思っております。特に我が党の坂口さん、両党に働きかけつつ、御苦労されたとも伺っております。

 少し前になるんですが、この派遣法の改正につきまして、我が党でもヒアリングを行いました。

 まず、全国中小企業団体中央会をお呼びいたしました。このような見解でございました。例えば、こういう会社がある、繁忙期に六十人程度の派遣労働者を受け入れてアイスクリーム類を製造している中小企業の事例を引かれて、正社員六十人もとても雇えない、派遣法が改正されれば会社を閉じるしかない、小さい企業にはそれくらいの激震だという御意見もありました。

 また、東京商工会議所の関口理事は、製造業にヒアリングをしたところ、派遣が禁止をされた場合、正社員を雇用するとの回答はなかった、このようにおっしゃっていました。

 この登録型派遣の原則禁止、あるいは製造業派遣の原則禁止、修正案ではこれを削除されています。この理由についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 登録型派遣に関しては、不安定雇用だという指摘もございます。その実態を調べてみますと、就業継続を希望する人の多くが派遣として就業を継続されていて、常用雇用が多いということがわかる。派遣労働者に関しては即不安定雇用であるといった見方が根強く残っているわけなんですが、これもある意味、誤解に基づく認識を変えることも重要かと思います。

 また、ヨーロッパの経済危機などの影響で歴史的な円高に今なっております。製造業派遣が原則禁止となれば、雇用者の確保が難しくなって、製造業はますます海外移転をしていく。さらに、これらの派遣が禁止となりますと、製造業務に携わっている九万人、一般事務等の業務にかかわる二十万人、計二十九万人が仕事を失う危険性がございます。

 こうした状況を考えますと、今回、民主党が修正案に合意をして、かつて自公政権が提出した改正案に近い内容の修正案となっていることは、私は大いに評価できると考えております。

 そこで、この登録型派遣の原則禁止と製造業派遣の原則禁止規定を修正案で削除した理由について、提出者にお伺いをいたします。

○坂口(力)委員 お答えをさせていただきたいと思います。

 製造業を含みます登録型派遣の方というのはかなりたくさんおみえになるわけでありまして、そして、登録型派遣を選びたいという人もかなりおみえになります。けさ大西議員から出されましたアンケート調査を見ましても、これは派遣労働者に対するアンケートだと思いますけれども、賛成者が四一・四%、反対が一五・三%、どちらとも言えないが四二・一%、こういう割り振りでございますから、かなりおみえになることは事実でございます。この人たちにとりましてこの働き方がなくなるということは、その多くの人が職を失うということも考えられますので、これは非常に重要な問題だというふうに思っております。

 しかし、逆に、この働き方に反対する人も一五%おみえになることも事実でありまして、正規雇用で働きたいというふうに思っておみえになる人の中にも、非正規しか働くことができ得ない、そういう不満を持っていただいている人も多いことも事実でございます。

 こういう人たちに対して、今後、どのように手を差し伸べていくかということもあわせてこれから考えていかなければならないというふうに思います。

 昔は、国内の働き方におきましては、グローバル社会の現在とは違いまして、企業に対して、このようにすればいい、あのようにすればいいということを言いますと、それに従ってもらわざるを得ないという結果になったわけでありますが、最近はそうではありませんで、グローバル社会ですから、日本の国の中で厳しいことを言いますと、そうすると、国を選んで、諸外国で企業を行うということが行い得る状況になってきたわけであります。いわゆる企業の海外移転というものが非常に多くなってきたゆえんだというふうに思っております。ここのところをこれからどのようにしていくのか、できるだけ国内で企業が生産をする、企業活動をしていただくということを願います反面、しかし、この人たちが外へ出ていくことを阻止することもでき得ないという状況であります。

 それでは、国としてやらなきゃならないことは何なのか。一つは、国内で企業が成長しやすい環境をつくる、これはもうどうしてもそういうふうにしていかなければならないと思いますし、また、新しい産業の育成ということも考えていかなければなりません。新しい産業が生まれやすい環境をどうつくっていくかということも重要だというふうに思います。

 そして、企業に対しましては、やはり企業責任というものがあるわけでありますから、国内において自信を持って活動していただく、そういう環境を国としてもつくりますから、社会としてもつくりますから、何とかひとつ企業の皆さんも自覚を持って責任のある企業活動をしてもらいたい、こういうことをお願いすると申しますか要請する以外にありません。

 そして、最近でも、ホテルでありますとかレストランでありますとか、そうしたところには、三つ星でありますとか五つ星でありますとか、そういう民間の評価も出ているわけでありますから、企業に対しても国民全体がやはり評価をするという時代が来ている。無理に押しつけるというのではなくて、私たちが企業活動のあり方を評価していくということによって、企業もやはり責任ある行動をとってくれるようになるのではないか、そんなふうに考えている次第でございます。

 余りしゃべりましてはあなたの時間がなくなりますから、これだけにしておきたいと思います。

○古屋(範)委員 御丁寧な答弁、ありがとうございました。

 国としての支援のあり方、しかし、規制強化だけではなく、それは産業の育成であったり、あるいは企業の側の責任であったり、また国民の企業に対する評価、総合的なものからやはり働き方というものを改善していくことが必要なのだ、このように感じます。

 次に、日雇い派遣について質問してまいります。

 自公政権当時も、日雇いに関してはさまざま議論をしてまいりました。特に、大手のフルキャストとかグッドウィル、こうしたところが、禁止されている港湾運送業務に派遣を行ったなどなど、事業停止等、処分を受けたこともございました。

 しかしながら、そういう中で、日雇い派遣というものも、大学生であったり、主婦であったり、副業としている正社員であったり、そういう方々にとっては必要な働き方でもあるということは認めざるを得ないと思っております。

 今回、この日雇い派遣の原則禁止の緩和という修正案で、二カ月以内の派遣を三十日以内の派遣にした理由、そしてもう一つ、日雇い派遣の禁止の例外、政令で追加する雇用機会の確保が特に困難な場合等、これについて、具体的にどのような場合を指すのか、お答えをいただければと思います。

○田村(憲)委員 古屋委員から二問御質問をいただきました。

 まず、日雇い派遣の禁止対象、これを三十日以内の派遣とした理由でございますけれども、これは、派遣元事業主が労働者に対して適切な雇用管理責任を果たすべき範囲としては、雇用保険の適用基準である三十一日以上ということを一つの目安といたしました。ですから、それ未満、三十日以内の派遣に関しては禁止とするというふうにしたわけであります。

 それから、もう一点でありますけれども、雇用機会の確保が特に困難な場合ということでありますが、具体的には、六十歳以上の高齢者の方々、それから昼間学生ですね、学生さん、さらには副業として従事する者ということでありまして、生業があられて、土日、休みのときに働いたりですとか、事情があって夜間働かなきゃいけない、こういう場合の副業、こういう方々、それから主たる生計者でない方、夫が主たる生計者で、奥さん、妻がそうじゃなかった場合、こういう場合を想定いたしております。

○古屋(範)委員 ほかにも、求職中であって、就職活動があってどうしても日雇い派遣という形でしか働けないというような方々もいらっしゃるかもしれません。こうした国会での議論をぜひ政省令に生かしてほしい、このように思っております。

 次に、労働契約申し込みみなし制度についてお伺いをしてまいります。

 この労働契約申し込みみなし規定、違法派遣等、派遣先で不適切な派遣受け入れがあった場合、その時点で労働者が通告すれば派遣先から労働契約申し込みがあったものとみなす、こういうものであります。本来、契約というのは両当事者の合意によるのが当然なんですが、この規定は、不適切な派遣受け入れがあった場合には、労働者が自分の雇用主は派遣先だと主張すればそのようになってしまう、違反が恣意的につくられるおそれがございます。

 この規定が適用される五項目があるんですが、中でも、期間制限を超えての受け入れが一番の問題だと思っております。これによって、期間制限を超えて派遣労働者を受け入れたら、そして、労働者がこのみなし規定を適用して主張した場合、派遣元と労働者間の雇用関係が、派遣先と労働者間の関係に一気に移ってしまうというわけであります。

 また、専門二十六業務と自由化業務の区分、これについても、期間制限の問題がどれだけ派遣の実情に合わず、わかりにくい状況なのかは、多くの有識者、関連団体などが指摘をしております。特に、昨年三月以降、長妻大臣当時に出された二十六業務の適正化指導のために、現場は非常に困っている状況でもございます。

 平成二十一年答申においても、使用者代表委員から、そもそも雇用契約を申し込んだものとみなす旨の規定を設けることは、企業の採用の自由や労働契約の合意原則を侵害することからも反対だ、あるいは、派遣先の故意、重過失に起因する場合に限定した上で、違法性の要件を具体的かつ明確にする必要があると指摘をされております。

 こうしたさまざまな問題が指摘をされているこの労働契約申し込みみなし制度、今回、法の施行から三年経過後に施行するということに修正案が出されています。思い切ってこの規定を削除する、このようには考えられないのかどうか。このみなし規定について、お考えをお伺いしたいと思います。

○田村(憲)委員 労働契約申し込みみなし規定、新たな規制であるわけでありまして、これに関しては、今委員がおっしゃられましたとおり、これは派遣先にかかってくる、そういうものでございますので、派遣先も派遣元もこれは大変危惧をしておる部分であります。特に、不意打ちで、急にだめだからといってみなし雇用という話になれば、これはもう怖くて派遣という一つの形態を選べないというような話も我々も聞いてまいりました。

 そこで、三年間は、やはりいろいろとこの問題に関して、議論も含めて、猶予期間をつくるべきではないか。三党で議論をする中において、今委員はこのみなし規定をやめたらいいじゃないかというお話もございましたが、一方で、必要だと言われる党もございますので、そこで、三年間猶予を置いて、そして、そこでじっくり考えながら三年後の施行というものを考えたらどうだということで、このような形になったわけであります。

 特に、おっしゃられましたとおり、専門二十六業務の適正化プランというものが大混乱になりまして、この間までよかったものが急にこれはだめだと言われると、もしこのみなし規定とこれが合わさりますと、いいと思っていたものが急にだめ、そして、みなし雇用しなさいという話になると、もう怖くて使えないという話になりますから、これからこの三年間の間に、この運用に関してもそのようなことがないようにしっかりと議論を深めていくという意味での三年でもございます。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 もうそろそろ時間でもございます。真に働く人のための改正、雇用関係の整備を求めまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

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