第180回国会 衆議院 社会保障と税の一体改革に関する特別委員会-22号

○古屋(範)委員 おはようございます。公明党の古屋範子でございます。

 大臣、日々、税と社会保障一体改革、本当にお疲れさまでございます。

 きょうは時間がありませんので、早速、労働契約法の質疑に入ってまいります。

 非正規労働者、平成二十二年の調査によりますと、一千七百六十五万人ということで、被用者全体の三分の一を超えるという状況になっております。厚生労働省の推計では、約一千二百万人が有期労働契約と見られていまして、非正規労働者の多くが有期契約者になっているということが見てとれます。

 有期契約にあった場合には、雇用の不安定さ、あるいは処遇の低さ、このようなことが課題となっております。特にリーマン・ショック以降、非常にこれが社会問題化をしたというわけであります。

 こうした有期契約労働者が、不安定さを取り除いて、そして安心して働けるようにしていくことが非常に重要であるかと思います。

 本改正案、この有期労働者の約三割が五年以上の長期間にわたって不安定な雇用にとどまっているという現状に鑑みて、安定的な雇用環境を確保するために必要な措置であると私も考えております。そして、不合理な差別の禁止規定についても、有期雇用であることを理由とした正規労働者との労働条件の格差が不合理とみなされるときは、裁判所は是正措置、あるいは損害賠償を命じることができる、努力義務ではなくて、端的に差別を禁止したという点、ここは大きく評価したいと思っております。

 しかし、今最も注目をされております五年後の無期転換、この実効性にやはり疑問が残るわけです。年数五年を超えて勤務をしている約三割、三百六十万人の有期労働者のうち、本法案の施行後、実際どの程度の方々が本当に無期転換になっていけるのか。本法案の狙いどおりに無期転換が図られるかどうか、この導入効果についてお伺いしたいと思います。

○金子政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の無期転換ルールの趣旨につきましては、今議員からも御説明がございましたけれども、有期契約と申しますのは、契約が終了すれば雇用が終了するということでございまして、必ず次回の更新の保証があるわけでもございません。こうしたことで、雇用を継続する方にとっては大変不安定な状態でございまして、そういった雇いどめを恐れて年休の取得などができないとか、それから、労働条件についての交渉力も弱くて低い処遇に固定される問題があるというようなことで、こうした問題に対処するために、有期労働契約が長期間反復更新された場合に、その濫用的な利用を抑制して雇用の安定を図るという趣旨で設けたものでございます。

 現在、五年の転換ルールがどの程度の割合でいくかというのは、先ほど申し上げましたように、なかなか予見しがたいわけでございますが、我々としては、こうした無期転換ルールの趣旨が実現されますよう、改正法の成立後、十分な周知と、それから企業のお取り組みを促しながら、その徹底に最大限努めていきたいというふうに考えております。

○古屋(範)委員 ぜひ、無期転換の促進、そしてその検証を常にしていっていただきたい、このように思います。

 さらに、この無期転換ルールの導入は、結局、労働法の場合には、規制強化をしていった場合に、なかなかその狙いどおりにいかないという側面があります。結局、五年間の手前で雇いどめをしてしまうのではないか、無期転換をさせないといいますか、しない、使用者側がその手前で雇いどめをしてしまうのではないかという指摘もございます。

 非正規労働者のうち世帯主以外の方々が占める割合は約七割で、女性は約八割、一千十万人が世帯主以外ということであります。その一方で、正社員として働ける会社がなかったからこうした非正規に甘んじているという方が一八・六%、いわばここのところが非常に問題である。低収入、家庭が持ちたくても持てない、また、子供を持ちたくても持てない、あるいは、将来、低所得、無年金、生活保護になりかねないという懸念があります。

 こうした無期への転換が図られていく場合に、五年の手前で雇いどめをされてしまうおそれがある、これをどう防いでいくかというのが非常に重要な課題だと思います。具体的に、この雇いどめ、どのように防いでいくおつもりでしょうか。

○小宮山国務大臣 やはり、今回の無期転換ルールの趣旨からしましても、五年のところで雇いどめが起きてしまうと、この狙いとは全く違うことになってしまいますので、先ほども答弁させていただきましたように、何とか円滑に無期労働契約に転換させていく、これが一番大きな課題だというふうに思っています。

 このため、制度面の対応といたしましては、今回の法律案の中で、判例法理である雇いどめ法理、この法制化を盛り込んでいます。これによって、五年の時点でも雇いどめが無条件に認められるわけではないということが法文上も明確にされていると思います。

 また、有期労働契約の更新の判断基準について、労働基準法に基づいて、書面の交付により明示を行うように、これは省令の改正によって義務づけることを予定しています。これによりまして、不意打ち的な雇いどめの防止にもつながると考えています。

 それからまた、先ほども申し上げましたが、五年到達時に雇いどめされずに無期労働契約への転換が円滑に進みますように、有期契約労働者ですとか無期転換後の労働者のステップアップ、これが企業にとってメリットになりますので、それに取り組む事業主への支援ですとか、業種ごとの無期転換のモデル事例を集めて周知をする、そうしたこともあわせて行いたいと思っています。

○古屋(範)委員 正社員になりたかったけれどもなれずに有期に甘んじている、何としても正社員を目指したい、そういう方々が、無期労働への転換によって少しでもステップアップをして、安定した雇用に、正社員への道が開けるような方途をぜひとも開いていただきたいと思っております。

 次に、端的にお伺いいたします。

 正規雇用と今回の無期雇用への転換、この違いは何なのか、お伺いしたいと思います。

○金子政府参考人 お答えいたします。

 無期労働契約への転換は、契約期間はなくなる、つまり無期契約になるということでありますけれども、必ず処遇の向上が伴うものではないということでございます。同一の場合も当然あり得るということでございまして、正社員転換という場合には、通常、契約期間がなくなるだけでなくて、処遇の向上でありますとか、それにあわせます責任の加重、責任が重くなるということだろうと思いますが、こういったことを伴うのが一般的というふうに考えております。

○古屋(範)委員 今御答弁いただきましたけれども、無期雇用に転換しても、賃金などの処遇の向上が伴わないということであります。これでは、結局、ずっと無期雇用になっていて、正社員への道が閉ざされてしまうのではないかとの懸念もあります。

 有期労働者の賃金水準は正社員と比較して低いというのが一般的でありまして、これは朝日新聞の記事なんですが、同じ時期に入社した正社員の年収との差は五百万円近くも開いたということですので、正社員だったか、あるいはそうでなかったかということが生涯の年収に非常に大きく響いてしまうというのが現実であります。

 こうした有期労働者の処遇改善、これは非常に重要だと思っております。この改正案では、無期労働に転換された労働条件というのは、契約期間のほか、別段の定めがある部分を除いて、現に締結している有期契約の内容である労働条件と同一とされています。これでは、無期労働に転換されても、処遇の低さというのは結局解消されない、むしろ格差を固定してしまうのではないか。

 さらに心配なのは、無期転換に当たって、別段の定めがあれば、労働条件を引き下げることが認められている点であります。別段の定めがない限り、もとの低いままという趣旨が普通の解釈でありますけれども、逆に、さらに労働条件が下がってしまう。パートタイム労働法では、パート労働者について、無期転換の前後にかかわらず、事業主は、通常の労働者との均衡処遇の確保に努めることが基本となっております。

 そこで、無期労働に転換された労働者の労働条件が正社員と比べて低いままではなく、正社員の労働条件との均衡を考慮して、有期労働契約時の労働条件よりも引き上げられる、このようにしていくべきと考えますけれども、いかがでしょうか。

○西村副大臣 お答えいたします。

 古屋委員御指摘のように、やはり格差の問題というのは、この法案の中でどうやって縮めていくかということは大変重要なテーマでありまして、労働条件を引き上げていくという御指摘については、私たちも極めて重要なことだというふうに考えております。

 今回の改正は、有期労働契約の雇用が不安定であって、雇いどめを恐れて年休取得等の権利を十分に行使することができないといった課題を解消することがまずは重要であるという視点に立ちまして、無期転換によって、雇用不安をなくし、労働者としての権利行使も容易にして、安心して働き続けることができるようにするためのものであります。

 こうした無期転換によって、使用者との交渉力が向上することで継続的な能力形成も容易となりますし、また、処遇の改善や正社員に向けたステップアップにつながるものでありますので、無期転換ルールは正社員化推進の基盤になるというふうに考えております。

 厚生労働省では、無期転換された労働者が無期転換後も継続的な能力形成や処遇の改善が図られるように、さらに正社員への転換に向けてステップアップすることができますよう、無期転換労働者の雇用管理に関するモデルの開発や先進的好事例の収集、普及を初めとして、現場労使の取り組みを後押しするための方策について検討し、実施してまいりたいと考えております。

○古屋(範)委員 今回の改正案では、有期から無期にまず転換をして、安心して働ける状況の中でその次を目指そうということなんだろうとは思います。しかし、労働条件の引き上げは非常に大事な問題でありますので、無期労働へ転換を円滑にするための企業の取り組み、あるいは、その後の継続的なキャリア形成、処遇改善を支援する施策、今るる述べていただきましたけれども、ぜひこれが実のあるものとなるよう取り組みをしていただきたいと思っております。

 次に、多様な正規雇用の活用についてお伺いをしていきたいと思います。

 非正規雇用、非常にネガティブな印象が多いわけですけれども、自分のライフスタイルに合わせた働き方ができるという面もあるかと思います。問題は、先ほども言いましたように、正社員になりたいんだけれども非正規雇用しかなかったという方が二割を超えているという、ここが非常に問題で、特に若い層に多く、長期化をしている、ここが非常に大きな問題だと思います。

 厚生労働省の若年雇用調査で、在学していない若年労働者の最終学校卒業から一年間の状況を見ますと、卒業時無業だった若年労働者のうち、現在正社員である者は約三五%ということですから、やはりスタートで正社員になれないと、その後もなかなか正社員になれないという現状ですね。現在正社員以外の労働者である者が結局六五%もいるということになっています。将来、無年金、低年金になる可能性があるということで、家庭も持てない、少子化を加速させることにもなりかねないと思っています。

 そこで、政府の方も、先般、望ましい働き方ビジョンというのを発表されましたね。その望ましい働き方ビジョンの中で、典型的な正規雇用とは別に、勤続年数に応じた待遇ではなく、正規雇用とはいえ、勤務地、業務が限定をされていて時間外労働がない、多様な正規雇用の活用というものが提案をされています。

 特に女性は、出産、育児を行ったり、あるいは介護もあると思うんですが、しかしながら、やはり正規雇用であるということは、生活が安定をし、将来的にも老後も安定をしていくということにつながりますので、育児とか介護が必要な期間は、ある程度、転勤とかあるいは長時間労働も抑えて、昇進も望まない、しかしながら、正規雇用で働き続けて、非常に幅のある柔軟な働き方ができる、これは非常にすばらしい提案だと思っております。

 多様で自由な働き方を選べる、なおかつ正社員であるというこうした考え方、これからも議論を進めるべきではないかと思っております。大臣、いかがでございましょうか。

○西村副大臣 望ましい働き方ビジョンについて言及をいただいて、ありがとうございます。

 委員御指摘のとおり、出産や子育てなど人生の各ステージで、働く人の希望に応じた多様な働き方を選べるようにすることは大変重要なことであると考えております。

 このため、平成二十一年の育児・介護休業法の改正によりまして、事業主が三歳未満の子供を持つ親を対象とする育児のための短時間勤務制度等の措置を義務化いたしました。また、事業主が小学校就学前の子供を持つ親を対象とする短時間勤務制度を導入して労働者に利用させた場合には、子育て期短時間勤務支援助成金を支給しております。さらに、今度は介護の方も加えてですけれども、育児・介護休業法で義務づけられた期間を超える育児や介護、そしてまた、社会、地域貢献活動への参加などを目的とする短時間正社員についても、広く導入されることが望ましいと考えております。

 このために、好事例等を紹介するウエブサイトの運営や、事業主が制度を導入して労働者に利用させた場合の奨励金の支給等により、事業主による短時間正社員制度の導入を支援しておりますが、また今後とも積極的に施策を検討してまいりたいと考えております。

○古屋(範)委員 最後の質問になります。

 先日、四十代の女性の方から同僚の五十代女性の就職状況についてのお手紙をいただきました。派遣であったとしても、やはり二十代、三十代のような方に関しては働き先が多いんだけれども、もう五十代になると派遣でさえない、また、再就職をするにもなかなか厳しい、これが現実だというお手紙をいただきました。五十代の女性を雇用すること、これは社会に大きな労働力になっていく、働く意欲がある五十代の女性を雇用することで、社会が活気づき、生きる希望にもつながっていく、そのことで生活保護の受給者が減って、五十代ではまだまだ若い、自分も社会の一員として働こうという前向きな気持ちを持ち続ける、日本の社会が女性に優しい社会であってほしい、このようなお手紙をいただきました。

 私も五十代なんですが、やはり周りを見ると、五十代で就職をしていくというのは非常に難しい。募集のときに、確かに年齢差別はなくなったんですが、現実にはそこが非常に難しいと思っております。生活保護の受給者を減らす、あるいは将来の低年金、無年金を減らすという意味でも、この働く意欲のある五十代の女性の働く場所を確保していく、非常に重要なことだと思うんですが、大臣、いかがお考えでしょうか。

○小宮山国務大臣 今回、社会保障改革の中でも、若者も女性も高齢な方も障害をお持ちの方も、全員がその能力を発揮して就労をするという、全員参加型社会ということをうたっています。

 おっしゃるように、特に中高年齢の女性の働く状況が厳しいということはわかっておりますので、厚生労働省としては、ハローワークでなるべく寄り添う形できめ細かな相談をすること、また、常用雇用への移行を前提として、中高年齢者、四十五歳以上を試行的に受け入れた事業主に対する支援、こうしたことも行っていまして、とにかく、女性は特に元気ですから、しっかりと働ける状況をつくるということは社会を元気にするためにも必要だと思うので、しっかり取り組みをしたいと思います。

○古屋(範)委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

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