第166回国会  本会議 第27号

○古屋範子君 公明党の古屋範子でございます。

 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま議題となりました日本年金機構法案及び国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案について、内閣総理大臣並びに厚生労働大臣に質問いたします。(拍手)

 我が国の年金制度は、二十歳以上のすべての国民を加入対象として、世代間扶養を行う仕組みであり、国民生活を支える社会保障の中核をなすものであります。

 しかしながら、その適正な運営を任務とする社会保険庁は、平成十六年以降に相次いで明らかとなった不祥事や業務運営に関するさまざまな問題により、残念ながら、国民の信頼を失ってしまいました。年金制度の安定的な運営を図るために、社会保険庁については、根本的な見直しを断行しなければなりません。

 今回の法案は、昨年末に我々与党が取りまとめた改革方針に沿って、公的年金の運営体制の再構築を図るものであります。社会保険庁を廃止するとともに、公的年金制度の運営に対する国の責任はしっかりと堅持する一方、一連の運営業務は、新たに設立する非公務員型の公法人に担わせるものであります。

 公的年金は、国に対する国民の信頼をその基盤とするものです。今回の法案による新たな事業運営体制のもとでも、制度運営に対する国の責任が十分に確保されていることを国民に明らかにすることが、公的年金の安心、信頼につながるものと考えます。

 そこで、今回の改革案において、国は具体的にどのような形で公的年金制度の運営に対する責任を果たしていくのか、安倍総理にお伺いをいたします。

 次に、日本年金機構における組織運営についてお尋ねいたします。

 社会保険庁改革は、社会保険庁を廃止するだけにとどまるものではなく、新たな組織のもとでいかにして国民の信頼回復を図るかが最も重要なポイントです。

 これまで社会保険庁において生じたさまざまな問題の主たる要因として、長年にわたる地方事務官制に由来する、組織としての一体性の欠如やガバナンスの不足が指摘をされてきました。

 日本年金機構では、こうした社会保険庁が抱える構造問題の解消やガバナンスの強化という課題にどのように対応していくのか、厚生労働大臣にお伺いいたします。

 次に、年金個人情報の保護についてお尋ねいたします。

 平成十六年には、社会保険事務所の多数の職員が、有名人の年金の納付記録を業務目的外で閲覧するという不祥事が発生し、社会保険庁では、三千名を超える職員の処分を行いました。

 公的年金を運営する組織には、膨大な個人情報が集積をされています。社会保険庁を廃止して、非公務員の日本年金機構にその業務を行わせ、さらに機構から積極的に民間へのアウトソーシングを行うに際しては、年金個人情報の保護が十分に図られなければなりません。

 年金新組織において、どのように年金個人情報の保護を図っていくのか、厚生労働大臣にお尋ねいたします。

 次に、国民年金保険料の収納対策についてお尋ねいたします。

 近年の取り組みの成果として、国民年金保険料の納付率は改善の兆しが見えてきたと認識をいたしておりますが、なお一層の納付率の向上が最重要課題の一つであることは変わりありません。

 民主党からは、この点に関し、社会保険庁と国税庁を統合した歳入庁において、国税庁の徴収ノウハウを活用し、国民年金保険料の納付率改善を図るとの考え方が示されておりますが、国民年金と国税では徴収の対象が大きく異なり、また徴収業務の基本的な性格も異なることから、納付率の改善にはつながりにくいのではないかと考えております。

 やはり、国民年金保険料の収納対策には、保険料の納付が将来の給付と密接に結びついているという年金制度の特性を踏まえつつ、他制度との連携も図りながら、未納者の属性に応じたきめ細かな対策を講じていくことが重要です。

 その中で特に、納付率を年齢階層別に見た場合、若年者の納付率が他の年齢層に比べて低く、若年者の納付率の向上に向けた実効性のある取り組みが極めて重要であると考えますが、若年者に対する取り組みに関する厚生労働大臣の御見解をお伺いいたします。

 次に、年金保険料の使い道についてお尋ねいたします。

 社会保険庁における予算執行については、保険料の無駄遣いとの厳しい批判を受けてきました。この点については、年金保険料は年金給付のためだけに使うべきであり、それ以外の経費には充てるべきではないとの議論もございますが、そもそも、予算の無駄遣いは財源のいかんにかかわらず許されるものではなく、国民の理解を得るために何よりも重要なことは、無駄遣いの排除の徹底、予算執行における透明性の確保にあると考えます。

 公的年金の事務を新年金法人に行わせても事務費の無駄遣いが生じないよう、どのような措置を講じられるのか、また、保険料の使途についてどのように国民に明らかにしていくのか、厚生労働大臣にお伺いをいたします。

 最後に、国民サービスの向上についてお尋ねいたします。

 これまで社会保険庁が提供するサービスについては、年金相談の待ち時間が長い、送られてくる通知書の内容が不親切など、利用者の視点を欠くものでありました。

 こうした声にこたえようと、公明党は国民の視点に立った改革を進めております。十年来の取り組みによって、社会保険庁が年金受給者に対し生存確認を目的に毎年提出を求めてきた現況届が廃止をされました。さらに、年金が幾らもらえるかわからないといった不安を解消するため、自分の年金に関する情報をわかりやすく通知するねんきん定期便が三月より一部前倒しをしてスタートしており、平成二十年度から本格実施されることとなっております。

 社会保険庁も、平成十六年度以降、民間から登用した村瀬長官のリーダーシップのもと、各般にわたる業務改革がなされ、お客様志向のサービス向上に努めているものと承知をしております。

 とりわけ、公的年金は人の一生涯にわたる超長期の保険であることから、年金記録の適正な管理は極めて重要であると考えます。

 昨年来、年金の申請漏れの実態が指摘をされ、問い合わせが相次いでおりますが、これは公的年金に対する国民の不安のあらわれであると思われます。こうした不安にこたえるためにも、社会保険庁は加入歴の再確認を強く呼びかけるなど、丁寧な対応をすべきであると考えます。そして、国民一人一人に対しても、若いときから、保険料納付実績について、将来の給付との関連性も含めてわかりやすく説明することができる、国民に親切な組織でなければならないと考えます。この点に関する安倍総理のお考えをお尋ねいたします。

 社会保険庁改革は、これまで与党が責任を持って進めてまいりました。改革の目的は、社会保険庁の組織や職員の擁護ではなく、国民生活の基盤となる年金制度を守ることにあります。今後さらに、与党は政府と一体となって、国民の視点に立った改革を推進していくことを強く表明し、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 古屋範子議員にお答えをいたします。

 公的年金制度の運営に対する国の責任についてのお尋ねがありました。

 今回の改革案では、非公務員型の日本年金機構を設置し、能力主義、実績主義に立って、規律の回復と事業の効率化を徹底することとしておりますが、あわせて、公的年金制度に関する国の責任はしっかりと堅持することとしております。

 具体的には、国が引き続き保険者として公的年金の運営や財政に関する責任を担うとともに、機構の業務や予算については国が直接管理監督するなど、国民が信頼、安心できる公的年金制度とするための体制を実現してまいります。

 年金記録の確認等についてのお尋ねがありました。

 年金の記録については、今日では、さまざまな年金制度に加入した場合であっても、基礎年金番号で統一的に管理される仕組みとなっております。ただ、基礎年金番号が導入される以前の記録が統合されていないケースが残されており、これが御指摘のような問い合わせとなってあらわれています。

 このため、社会保険庁では、年金記録相談の特別強化体制を整え、年金記録の確認を幅広く国民の皆様に呼びかけており、今後さらにその周知に努めてまいります。

 また、平成二十年度からはねんきん定期便を本格的に導入するなど、国民に親切でわかりやすい年金情報の提供により一層尽力してまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇〕

○国務大臣(柳澤伯夫君) 古屋範子議員にお答え申し上げます。

 まず第一は、社会保険庁の抱える構造問題とガバナンスへの対応についてお尋ねがございました。
 今回、提案いたしております日本年金機構におきましては、かつての地方事務官制に由来する閉鎖的な組織体質を改めまして、組織のガバナンス強化を図ってまいる所存であります。

 このため、地方組織を都道府県単位からブロック単位へ再編するとともに、都道府県域を越えた人事異動を行う方針を徹底いたします。また、能力と実績に基づくめり張りのきいた人事給与体系を導入いたそう、このように考えております。

 さらに、外部の方に理事会に入っていただくなどの意思決定機能の強化や、監査法人監査の導入などの措置を講じて、外部の声を取り入れていく、こういうことをやっていく所存であります。

 これらによりまして、これまで指摘されてきた社会保険庁の構造問題の解消を図り、国民の皆様の信頼を得られる新しい組織としてまいりたい、このように考えております。

 次に、年金新組織における年金個人情報の保護についてのお尋ねがございました。

 年金個人情報は、プライバシー性の高い情報であることから、本法案におきましては、まず、機構の役職員に法律上の守秘義務を課しますと同時に、機構が利用、提供できる年金個人情報の範囲を法律上細かく限定している、こういうことをいたしております。

 また、民間への委託に当たりましても、委託先に個人情報保護の適切な管理のための措置を講ずることを求める規定を置いておりますし、法律上、委託先の役職員に守秘義務を課し、これを罰則で担保することによりまして、年金個人情報の保護の徹底を図ることといたしております。

 次に、年金の被保険者についての、全体の問題ではあるけれども、特に若者に対する国民年金保険料の収納対策をどうするのかというお尋ねがございました。

 御指摘のように、若年者の納付率を向上させることは、国民年金全体の納付率の向上を図る上で極めて重要な要素であると考えておりまして、まずは年金制度に対する若年者の理解と信頼を高めなければならない、このように考えております。平成二十年度から本格導入されるねんきん定期便は、若者だけに行われるものではありませんけれども、特に若年者には年金を実感する機会となることを期待いたしております。

 また、若年者の納付率向上のための具体策といたしましては、従来より、コンビニでの納付など保険料を納めやすい環境を整備いたしますとともに、三十歳未満の負担能力の乏しい若年者に対しましては、納付猶予制度を導入するなどの対応を図ってまいりました。本法案におきましては、学生納付特例制度の利用を拡大するため、大学等が学生等の委任を受けて申請手続を代行できる仕組みを盛り込んでいるところであります。

 今後とも、これらのきめ細かな対策の徹底を図り、若年者を含む国民年金全体の納付率の向上に全力を挙げてまいりたい、このように考えております。

 年金新法人における事務費についてお尋ねがございました。

 今回の法案では、従来御批判をいただいてきた、保険料により福祉施設を行うことができる旨の規定は廃止をいたします。そして、事業の範囲としては、年金相談、年金教育と広報、年金情報提供などと明示的に列挙をいたしまして、真に必要なものに限定することといたしております。

 また、日本年金機構におきます適切な経費の執行の観点から、厚生労働大臣が機構の事業計画や予算を毎年度認可するなどといたしまして、このような手続によって厳しく無駄遣いのないように監督をしてまいりたい、このように考えております。

 さらに、機構が行う調達に当たりましても、民間企業人も参画する調達委員会で厳格な審査をするほか、年金保険料の使途が国民の目に明らかになるように、ホームページで予算を公表することを予定いたしております。

 こうした取り組みによりまして、無駄遣いの排除を徹底していきたい、このように考えます。(拍手)

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