第210回国会 衆議院 本会議-4号

○古屋範子君 公明党の古屋範子です。

 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 新型コロナウイルスを含め、感染症に強い国をつくることは政治の責任であります。公明党は、自宅療養者に欠かせないパルスオキシメーターの配備や、ワクチン確保、接種促進など、新型コロナ対策をリードしてきました。

 第七波では、感染力の非常に強いオミクロン株の影響で、新規感染者数が急速に拡大し、医療現場も逼迫しました。医療従事者の御尽力と国民の皆様の御協力により新規感染者は減少しておりますが、第八波の到来や、遠くない将来に新たな感染症が発生するとの懸念も示されております。

 感染症のパンデミックから国民の命と暮らしを守るため、これまでの知見や経験を生かしながら、感染症に備えた万全の体制構築が重要であります。

 今年の冬は、新型コロナウイルスと季節性インフルエンザの同時流行の懸念が指摘されています。

 新型コロナの患者が一日四十五万人、インフルの患者が一日三十万人規模で同時に流行し、ピーク時には一日七十五万人の患者が生じる可能性があると推計されています。

 公明党は、松野官房長官に、同時流行の可能性を踏まえ、緊急要請を行いました。

 この秋冬にも到来する可能性がある第八波対策、特にコロナとインフルの同時流行について、国民の命を守るために万全の体制で臨むべきと考えます。

 新型コロナに関しては、オミクロン株対応のワクチン接種が始まりました。十月二十日、厚生科学審議会で、これまで五か月以上とされていた接種間隔期間が三か月以上に短縮されました。

 ワクチンの有効性や安全性に関する情報とともに、接種間隔期間の短縮についても、国民への周知、広報を徹底し、早期の接種を呼びかけるとともに、自治体への丁寧な説明と支援に全力を挙げるべきです。また、コロナとインフル双方のワクチン接種も促進すべきです。

 総理の答弁を求めます。

 公明党は、コロナ感染拡大の始まった二年前の党大会重要政策において、既に、的確かつ迅速に対応する日本版CDCの創設を明記し、国の司令塔機能の強化に向け提言してきました。

 政府がまとめた次の感染症危機に備えるための対応の具体策において、内閣感染症危機管理統括庁の設置等が決定されております。感染拡大防止と社会経済活動を両立するには、政府が一丸となって対策を実施する必要があります。速やかに実効性のある組織が設置されるべきです。

 感染症対策の司令塔設置に対する岸田総理の決意を伺います。

 次に、感染症法等改正案について伺います。

 本法案の提出は、昨年十一月、岸田総理の、感染症危機管理の抜本的強化策を取りまとめるとの発言から始まりました。

 そして、本年六月、有識者会議の報告書で、感染拡大防止と社会経済活動の両立に向けた課題と取り組むべき方向性等が示され、本年九月の、次の感染症危機に備えるための対応の具体策の決定等があったと承知しております。

 厚生労働大臣に、これらの経緯も含めて、法案提出に至る経緯を伺います。

 本法案は、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれのある感染症の発生及び蔓延に備えるため、国、都道府県及び関係機関の連携を強化することで、病床、外来医療、医療人材の確保の強化等の措置を講ずるものと承知しております。

 法案の趣旨について、厚生労働大臣に伺います。

 本法案では、平時からの計画的な保健医療提供体制整備として、国の基本指針、都道府県の予防計画、都道府県と医療機関等との協定等を整備することになっております。平時からの備えは大変意義のあることと考えます。

 一方で、新たな感染症への対応は、起きてみないと分からない点もあります。これらの内容が厳格過ぎれば臨機応変な対応が難しく、その内容が曖昧であれば実効性を欠くことになりかねません。国、都道府県、医療機関等と緊密に連携しながら、基本指針、予防計画、協定のいずれも、具体性と柔軟性のバランスに十分配慮した運用をすべきと考えます。

 厚生労働大臣の見解を伺います。

 都道府県等と医療機関等の協定締結については、正当な理由なく協定を実行しない場合の勧告や指示、公表の措置が創設されます。

 一方、協定を締結した医療機関は、一般の医療を行っており、やむを得ず協定を実施できない可能性もあります。正当な理由の内容が不明確であれば、どのような協定不履行が許されないのか分からず、医療機関が協定締結に二の足を踏むことになりかねません。

 正当な理由とはどのようなものなのか、基礎となる考え方や想定される具体例について、厚生労働大臣の見解を伺います。

 本法案では、健康観察の医療機関等への委託の法定化、自宅療養者生活支援についての都道府県と市町村の情報共有の仕組みが整備されております。

 ただ、健康観察や感染症医療に全ての医療機関等が参加するとは限りません。高齢者等にとっては、通い慣れているかかりつけ医の対応が何よりも安心です。地域のかかりつけ医が健康観察や感染症医療に積極的に対応できるような取組が必要と考えます。また、かかりつけ医と健康観察等を実施する医療機関等の連携円滑化の取組も重要です。

 地域のかかりつけ医と感染症医療等に対応する医療機関との連携確保について、厚生労働大臣に伺います。

 本法案では、予防接種の対象者確認、記録作成、保存等が整備されます。

 接種券、費用請求の電子化など予防接種事務全体のデジタル化は、国民の利便性向上、また、地方公共団体、医療機関の事務負担軽減のために強力に推進すべきです。また、発生届の電子化、入院患者の状況報告届出義務化、感染症サーベイランスシステム等のビッグデータ化など、感染症対策関係全体のデジタル化、情報基盤整備も実施されます。

 デジタル化や情報基盤の強化による国民の利便性向上について、本法案成立後どのように取り組まれるのか、厚生労働大臣の答弁を求めます。

 本法案では、マスク、非滅菌手袋等の個人防護具や酸素濃縮器等の医療機器を感染症対策物資として平時における物資の備蓄を可能とし、緊急時における感染症対策物資の確保についての法的枠組みが整備されることとなっております。

 緊急時の物資不足は国民に大きな不安を与えるため、需要にしっかりと対応する必要があります。政府の取組を伺います。

 感染症に強い国を実現すべく、公明党は、これからも、国民の命と健康を守るため、全力で取り組んでいく決意を申し上げ、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 古屋範子議員の御質問にお答えいたします。

 新型コロナとインフルエンザの同時流行等についてお尋ねがありました。

 新型コロナとインフルエンザの同時流行への備えについては、今月十三日、発熱外来や電話診療、オンライン診療体制の強化等による保健医療体制の強化、重点化策を取りまとめたところであり、都道府県と協力し、万全を期してまいります。

 オミクロン株対応ワクチンについては、オミクロン株の種類にかかわらず、オミクロン株成分を含むことで、従来ワクチンを上回る重症化予防効果等や、今後の変異株に対するより高い効果が期待されております。

 また、接種間隔を三か月以上に短縮しており、様々な媒体を用いて情報発信し、希望する全ての対象者が年内に接種を受けていただけるよう、自治体を支援してまいります。

 さらに、この冬のインフルエンザワクチンの接種については、重症化予防効果を目的として六十五歳以上の方等に早期接種を呼びかけており、新型コロナワクチンと併せて、円滑な接種に取り組んでまいります。

 感染症対策の司令塔についてお尋ねがありました。

 政府においては、次の感染症危機に備えて司令塔機能を強化するため、司令塔機能を担う組織として、内閣総理大臣を直接助け、厚生労働省を始めとする各省庁の対応を強力に統括する内閣感染症危機管理統括庁を設置するとともに、厚生労働省における感染症対応能力を強化するため、科学的知見の提供を担う新たな専門家組織として、いわゆる日本版CDCを設置する等の組織の見直しを行うこととしております。

 これらの組織が一体的に連携し、内閣総理大臣のリーダーシップの下、総合的な視点で感染症対策を講じることが重要であると考えており、次期通常国会での法案提出に向け、準備を進めてまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣加藤勝信君登壇〕

○国務大臣(加藤勝信君) 古屋範子議員より、七問の御質問を頂戴いたしました。

 法案の提出に至る経緯についてお尋ねがありました。

 新型コロナ対応については、これまで、昨年十一月の全体像による取組や、その後のオミクロン株の特性を踏まえた保健医療体制の確保に取り組んできたところであります。

 そして、本年六月には、有識者会議において、次の感染症への備えとして、政府の対応に対する客観的な評価や中長期的視点からの課題の整理が行われ、感染拡大に病床確保が追いつかない事態が生じた、陽性判明後、治療開始が遅れ重症化する事例や在宅で亡くなる事例が生じた、医療用マスクや抗原定性検査キットの需給の逼迫により医療機関や国民が入手しにくい状況が生じたなどの課題が指摘をされました。

 このため、九月には、次の感染症危機に備えた中長期的観点から必要な対策を講ずるため、新型コロナウイルス感染症に関するこれまでの取組を踏まえた次の感染症危機に備えるための対応の具体策を取りまとめました。この対応の具体策を踏まえ、さらに関係審議会において検討いただいた上で、今般の改正案を提出したところであります。

 法案の趣旨についてお尋ねがありました。

 今般の新型コロナウイルス感染症対応においては、医療機関の迅速な人員確保、入院調整、病床確保の困難さ、保健所業務の逼迫、医療物資の不足などの課題があり、平時からの感染症危機管理の重要性が浮き彫りとなりました。

 これを踏まえ、次の感染症危機から国民の生命及び健康を守るために、平時からの予防計画に沿った医療機関との協定の締結や、保健所機能や検査体制の強化、機動的なワクチン接種の実施等について政府としてその枠組みを法定化し、流行の初期段階から速やかに立ち上がり機能する保健医療提供体制の構築を図ることを目的として、感染症法等の改正を行うこととしたものであります。

 基本指針等の運用についてお尋ねがありました。

 今般の改正案では、国が定める基本指針や都道府県等が定める予防計画の記載事項を充実させるとともに、都道府県が定める予防計画には、協定に基づく病床確保数等の具体的な数値目標を定めることで、実際の感染症発生、蔓延時における実効性を確保することとしております。

 国において基本指針を策定するに当たっては、都道府県や医療関係者等の御意見をしっかりと踏まえつつ、今般の新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえ、感染症の特性に合わせて柔軟に対応できるよう、厚生科学審議会感染症部会で御議論いただくこととしております。

 また、都道府県が予防計画を策定する際は、自治体、感染症指定医療機関、学識経験者の団体等で構成する都道府県連携協議会で協議することとしており、平時からあらかじめ意見交換を行うことで関係機関の連携が強化され、地域の実情に応じ、また、感染症の性質に応じた柔軟な対策が可能となるようにしてまいります。

 協定を履行しない正当な理由についてお尋ねがありました。

 協定を締結した医療機関が感染症発生、蔓延時に協定に沿った対応をしない場合の正当な理由については、感染状況や医療機関の実情に即した判断が必要でありますが、例えば、病院内の感染拡大等により医療機関内の人員が縮小し、協定の内容を履行できない場合などが該当するものと考えております。

 今般の改正案の施行に当たっては、こうした考え方を医療機関等に十分に周知するなど、協定の締結が円滑に進むよう、丁寧に対応してまいります。

 かかりつけ医と感染症対応医療機関の連携確保についてお尋ねがありました。

 今般の改正案では、各医療機関の機能や役割に応じた協定を締結し、感染症蔓延時に発熱外来や自宅療養者に対する医療を担う機関をあらかじめ適切に確保し、明確化することとしています。

 かかりつけ医によっては、こうした機能を有する場合もある一方で、こうした機能を有しない場合もあり得るところであります。

 そうした場合に当たって、感染症医療を担う医療機関と日頃から患者のことをよく知るかかりつけ医の連携の確保は重要な課題であります。連携確保の在り方について、感染が拡大し医療が逼迫している中でどのような対応が可能であるかという観点も含めて、関係者の意見を聞きながら検討してまいりたいと考えております。

 感染症対策の情報基盤強化についてお尋ねがありました。

 今般の改正案では、対象者の確認等の予防接種事務のデジタル化に向けた規定を整備し、これまで紙で行われていた事務を効率化することで、自治体や医療機関等の負担軽減を図ることとしております。

 また、医療機関による発生届の電磁的方法による入力等を強力に推進するとともに、電磁的に収集した疫学情報のレセプト情報、ワクチン接種情報等との連携分析等を可能とし、保健所、医療機関等の負担軽減や感染症の重症度等の迅速な把握、分析、感染症に関する研究等に利活用できることとしております。

 改正案が成立した暁には、自治体や医療機関等の意見を丁寧に聞きながら、円滑な施行に向けた準備を進め、情報基盤の強化を推進してまいります。

 感染症対策物資等の確保についてお尋ねがありました。

 新型コロナを始め感染症有事への対応において、医療現場に必要な物資が円滑に行き渡るように取り組んでいく必要があります。そのためには、事業者に対して生産、輸入の促進や出荷調整について要請を行い、感染症対策物資等を確保する必要があります。

 今般の改正案では、こういった要請を法律上に位置づけ、また、これに伴う必要な支援を行うことにより、その実効性を確保することとしており、引き続き、感染症有事における物資の確保にしっかりと取り組んでまいります。(拍手)

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